製品のライフサイクルにおいて排出される温室効果ガスの量を“見える化”して表示するカーボンフットプリント。製品の環境負荷を表示することにより、生活者に買い物の新たな選択基準を与える仕組みとして注目されているが、いよいよ、このマークのついた製品の市場流通がスタートした。
経済産業省などの検証を通過し、第一号商品として販売開始となったのは、イオンのうるち米、菜種油、衣料用粉末洗剤の3商品。10月17日より、まずはお歳暮贈答用の商品「トップバリュギフト」として、店舗、およびインターネットで販売開始となった。
カーボンフットプリントの制度について、まずこれまでの流れをおさらいすると、2008年6月、政府により制度推進が示され、7月に「低炭素社会づくり行動計画」が閣議で決定されたことから取り組みがスタート。これを受け、経済産業省主導の各種研究会やWGが始動し、2008年11月には統一マークを発表、2009年3月からは試行品の試験販売が開始となった。その後、6月にはPCR(商品種別算定基準)の原案策定、認証方法の検討などといった試行事業がスタートし、今回、認証第一号の流通に至ったというわけだ。
カーボンフットプリントのホームページ:左上のロゴが、商品に付される認証マーク
ようやく、という感じではあるが、流通が開始するまでの手順はどのようになっているのだろうか。カーボンフットプリントのホームページによると、PCR(商品種別算定基準)が定められた商品について、まずは企業が商品やフットプリント算出方法の詳細を申請書に記し、「カーボンフットプリントの検証申請」を行う。これを受けた事務局の報告により、PCR委員会が算定結果・表示方法を検証する。この検証を通過し、許諾を受けた段階でカーボンフットプリントのホームページに製品の詳細情報が掲載され、ようやく市場流通が開始となる。CO2換算量の計算方法や表示方法の適正性を判断するため、どうしてもそれなりの期間が必要となるのだ。
だだ、これはPCR(商品種別算定基準)が定められた商品についての流れで、この基準ができていない製品に関しては、その原案制作段階からのスタートとなり、これまでの例では少なくとも最初の申請から認証まで、半年程度の期間がかかってしまうようだ。
さて、このような過程を経て認定されたイオンの対象商品について見てみよう。
カーボンフットプリント表示商品のリーフレット 提供:イオン株式会社
対象となった3商品について、「CFPマーク使用許諾商品一覧」にその詳細情報が1商品につき40ページにも渡り掲載されているが、その過程を経て算出されたCO2排出量を見ると、なかなか面白いことが見えてくる。
特別栽培あきたこまち(4kg)では6.3kg、キャノーラ油ギフト(1kg×6)は9.1kgと、どちらも製品の重さを越す排出量を記録。衣料用粉末洗剤スーパークリーンホワイト(1kg×8)に至っては、なんと51.1kgものCO2量にあたる温室効果ガスを排出していることが明らかとなった。
また、表示には、原材料調達段階と生産段階を表す「つくる」、流通・販売段階を表す「はこぶ・販売」、使用・維持管理段階、廃棄・リサイクル段階を表す「つかう・すてる」の3工程それぞれにおける排出量の割合が円グラフで示されていて、その商品の特徴が非常に良く分かる。この3品目を比べてみても、食品は「つくる」過程で5割を超えるのに対し、洗剤は「つかう・すてる」が6割以上となっている。
イオンの衣料用粉末洗剤「スーパークリーンホワイト」の詳細情報:(カーボンフットプリントホームページより)
粉末洗剤は洗濯機の電力や洗濯後の排水に対する排水処理における環境負荷が高いことなど、その製品のライフサイクルを想像し、なぜこのような結果となっているか考えてみるだけでも新たな発見がありそうだ。
11月16日現在でPCR(商品種別算定基準)が認定されている製品は、4種類(イオンの3商品+出版・商業用印刷物)のみだが、現在PCR原案策定計画に登録済みの商品は既に67種類あり、これらは今年度中に原案が完成する見通しとなっている。日常で生活者の目に触れるようになるにはまだ少し時間がかかりそうだが、カーボンフットプリントは、同様の表示のある商品が店頭に並び、比較することができる状態になって始めて意味を成してくるものだろう。イオンに続き、環境負荷の見える化を行う企業が続々と登場し、生活者の商品選択基準となるほどに普及することを期待したい。
カーボンフットプリントが一般化したとき、私たちの消費行動はどこまで変化するだろうか。それによって現在の企業イメージや勢力図が変わってくる可能性は?
経済的指標だけでは計れない製造業各社の真価が問われる日も、そう遠くはないだろう。
カーボンフットプリントについて、その意義や考え方を学ぼう