一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

「いかしあうつながり」がもっと豊かになるように「生きる、を耕す。」 greenz.jpは、合言葉をリニューアルします

みなさん、こんにちは!編集長の増村江利子です。

2006年7月16日に創刊したWEBマガジン「greenz.jp」は今年、17周年を迎えました。こうしてWEBマガジンを続けられているのは、多くのみなさんの支えがあってこそ。記事を読んでいただき、そしていつもあたたかく見守っていただき、本当にありがとうございます。

2023年4月に編集長に就任して、これまでグリーンズが抱えてきた思いはそのままに、グリーンズメンバーみんなで、こんな社会を目指したいね、そのために、グリーンズはこんなことをやっていきたいね、という話を重ねてきました。

そして、17周年を機に、グリーンズの合言葉を「生きる、を耕す。」に変更することにしました!まずは、この言葉に行き着いた経緯をお話しできればと思います。

他の誰でもない、自分なりのリテラシーをもつ

私自身が暮らしを見つめ直すきっかけとなったのは、2011年の東日本大震災にあったように思います。それまで私は、電気が原発でつくられていることは知りながらも、それがどこでつくられたものなのか、恥ずかしながら、あまり気にしたことがありませんでした。

福島の原発でつくられた電気が、大消費地ともいえる東京に運ばれ、スイッチのオン・オフでいとも簡単に、湯水のように使われている。スイッチの裏側に思いを馳せたこともない自分に、いったい私は何をやってきたのだろうかと大きなショックを受けました。

そして、藤野電力による発電ワークショップに参加しました。小さな太陽光パネルとバッテリーがあれば、電気って自分でつくることができるんだということに、何かひとつの答えを見た気がしました。そして栃木県那須市にある非電化工房の藤村さんにお話を伺って、食べものも、エネルギーも基本的に自給自足であることに、豊かさと強さを感じたのでした。

藤野電力によるワークショップ(撮影:荒川慎一(D-KNOTS))

ワークショップでつくったミニ太陽光発電システムを、自宅でいろいろな家電につないでみました

当たり前のように享受しているものごとに、依存しないこと。
自分の手を動かしてつくることで、他の誰でもない自分なりのリテラシーをもつこと。

そこから私は、冷蔵庫を手放し、掃除機を手放し、あらゆる生活家電と向き合って、洗濯機だけ使うという暮らしをすることになりました。暮らしのサイズを小さくし、自分の使うものや購入するものが、どこで、どのようにつくられて運ばれてきたのか、そして捨てたあとはどのように処分され、最終的にどこへ行くのかを考えるようになりました。

電気を使わない、自然の冷蔵庫

9坪程度の小さな家に、家族5人と犬猫5匹で暮らすことは、容易ではありません。ロフトスペースは狭く、布団が3組しか敷けないため、子どもたちは毎晩のように足がぶつかると文句を言っています。生ゴミを土に還すことをきっかけに始めたコンポストトイレも、家族5人分を土に還すことは、きれいごとでは済みません。土に還したあとは、トイレを全て解体して、洗って…。でも、そうした一つひとつの選択を、少しも後悔してはいません。

9坪程度の母家と、お風呂・トイレ棟

ダンボールコンポストに白いふわふわしたものが…。このカビこそが、分解を助けてくれます

“当たり前”を手放して、「生きること」そのものを、耕すように試行錯誤すること。そうか、私がやってきたことは、「生きる、を耕す。」ことだと気づいた時、いま必要なのは、それぞれの人が、生きかたを耕すことなのではないか、と思いました。その人なりの、生きかたでいい。どんなアクションでも、どんな小さなことでもいい。他の誰でもない、自分なりの“ものさし”を見つけることが、生きかたを耕す支えになってくれるのではないかと思うのです。

「耕す」ことがなぜ重要なのか

一方で、「耕す」という言葉を使うことについて、繰り返し考えました。リジェネラティブ(再生的)な農業においては、不耕起栽培という「耕さない」方法が、地力を高めるために重要だと考えられているからです。リジェネラティブな農業だけでなく、さまざまな場面において、手をかけ過ぎず、自然の力を信じて、見守ることも大切なのではないか、とも考えました。

けれどもいま、目の前にある現実として、私たち人間の産業的な活動が地球を疲弊させていることは、疑いようがありません。海は汚染され、化学物質や有害廃棄物によって大気も汚染され、温室効果ガスに起因した地球温暖化が進み、生物多様性はどんどん失われ、鉱物資源やその他資源も減少し、酸性雨が降って、森林破壊が進み…、こうしたバランスを失った世界のうえに、私たちは立っています。

私たちにできることは、なんでしょうか。環境問題は、政府や市町村や企業が立ち向かうべきことでしょうか。もちろん、そういった側面もあるでしょう。でも、私が一番のぞみたいのは、一人ひとりの個人の暮らしを通じた行動が、社会を変えていくことです。私たちは、社会を変えることだって、できる。人間は、多様ないのちを育む思想をもち、リジェネレーション(再生)を担うことのできる、唯一の存在であると思っています。そう、私たち一人ひとりが担い手として、リジェネレーション(再生)をするという役割を担っていると思うのです。

ここで思うことは、先ほど出した「きれいごとでは済まない」ということです。私たちは長らく、従順な「消費者」だったように思います。例えば食料は、スーパーに行けば山のように売られていて、お金さえあれば、いつでも誰でも入手することができます。でも、生きていくために必要な食料を生産することから、離れすぎてしまってはいないでしょうか。食料生産は、農家さんが努力をすればいいことなのでしょうか。

誰にでも、できない理由があると思います。そもそも、暮らしを全て自分でつくることは難しい。だから、信頼できる人や企業にお任せをする選択をしてもいいし、感謝の気持ちを持って、応援する側にいてもいいと思います。その場合は、感謝の気持ちを耕すことで、その行動は「消費」や「浪費」ではなくなるのではないか、と思いました。そうして耕された気持ちは、その人の気持ちをふかふかにして、何か別のいい循環を生み出す土壌になってくれるのではないか、とも。

ちなみに英語で「文化」を「カルチャー(culture)」といいますが、同じく英語で「土地を耕す」ことを「カルティヴェイト(cultivate)」といいます。どちらも「大地を耕す」という意味のラテン語「colore」が語源なのだとか。

そこで私は、もう一度、目の前の自然に向き合うこと、悩んで、試行錯誤して、生きかたや働きかたを問い直すこと、あらたな価値観を持つこと、あるいは感謝といった温かい気持ちを育むことを「耕す」という言葉に込めたいと考えました。

家のドアをつくっているところ

さかのぼって考えれば、阪神・淡路大震災で私たちが経験したのは、都市部の脆さではなかったでしょうか。東日本大震災で私たちが経験したのは、何があっても生きていけるリテラシーを持つことの強さではなかったでしょうか。そしてコロナ禍で私が希望を見いだしたのは、「店舗にマスクが並んでいないのであれば、自分でつくればいい」と多くの人が気づいたことでした。

大きな科学技術の進展ではなくとも、自分の暮らしのなかで、誰にでもできることがある。いま、私たちの暮らしが経済に寄与している社会のなかにいるように思うのですが、本来的には、逆なのではないかと思います。私たちの暮らしや大切にしたい連帯があって、それをさらに豊かにするために、経済を回したい。これをひっくり返すには、当たり前のように享受しているものごとに依存せず、他の誰でもない自分なりの“ものさし”をもつ、つまり「耕す」ことが必要なのではないか、と思ったのです。

これまでの合言葉を、クレドとして残す

さて、グリーンズの合言葉を変更するという大きな節目ですので、これまでの「greenz.jp」の合言葉を振り返ってみることにしましょう。

2006年の創刊時の合言葉は、「エコすごい未来がやってくる」。2005年には京都議定書が発効されたり、2006年にはアル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領が主演するドキュメンタリー映画『不都合な真実』が発表されたりと、地球環境はこのままではまずい、という風潮が起き始めたタイミングだったように思います。

進行する温暖化やエネルギー問題、貧富の格差も広がっているにもかかわらず無関心層も増え、暗いニュースが多かった当時、「じゃあ、私たちはどうすればいいの?」という問いにポジティブな、一石二鳥以上のグッドアイデアを伝えるメディアが「greenz.jp」でした。

その後、合言葉は「エコすごい未来がやってきた」に変わりますが、そこでの主役は、一人ひとり。みんながそれぞれ主役になって、自分が心の底からやりたいことを実現できる社会をつくる。そんなスタンスは、のちに「ソーシャルデザイン」と呼ばれ、「ほしい未来は、つくろう。」(2013年)という合言葉へとつながっていきました。

全国から「greenz.jp」を応援してくれるライターが集結し、ライター自身が「心から伝えたい、広めたい」“マイプロジェクト”が記事として寄せられていく。お互いの信頼関係とコミュニケーションから生まれる「本気の記事」が集まったことで、読者も一気に増えました。

そして、「greenz.jp」というメディアと、「green drinks」などのコミュニティ、「せんきょCAMP」や「わたしたちエネルギー」といったムーブメント、グリーンズの活動を支えてくれる「greenz people」やビジネスまで巻き込んで、ひとつの生態系のようにつながるようにもなりました。

ただ、活動にのめり込むことで、自分たち自身が忙しさの中で疲弊し、家族の幸せも置いてけぼりになってしまっていました。それを「幸せのドーナツ化現象」と呼び、どのようにソーシャルデザインが進化していくべきなのかを考え、その答えとして出てきた合言葉が、「いかしあうつながり」(2018年)でした。

そしていま、新しい合言葉の前に私たちはいます。ここで、誤解のないようにお伝えしたいのは、これまでグリーンズが大事にしてきた“ものさし”を、これからも大事にしていきたいということ。「生きる、を耕す。」ことで、「いかしあうつながり」がもっと豊かになり、結果的に「ほしい未来は、つくろう」がより実現しやすくなるのかもしれないのです。

そこで、特にこの2つの合言葉は、グリーンズメンバーのクレド(行動指針)として、ずっと持っておこうと決めました。

ほしい未来は、つくろう。
いかしあうつながりを、つくろう。

WEBマガジン「greenz.jp」は、まだまだ、道半ばです。greenz peopleのみなさん、読者のみなさん、ライターのみなさんと一緒に「生きる、を耕す。」を探しに行って、深めていきたいと思っています。よかったら、みなさんも一緒に、自分なりの「生きる、を耕す。」をしてみませんか?

(イラスト:蒲沼 明)

– INFORMATION –

3/17開講!リジェネラティブデザインカレッジ
~自然環境を再生して、社会と私たち自身もすこやかさを取り戻す~
(2/15までのお申し込み、先着30名は早割!)


本カレッジは「環境再生」を学ぶ人のためのラーニングコミュニティ。第一線で挑戦する実践者から学びながら、自らのビジネスや暮らしを通じて「再生の担い手」になるための場です。グリーンズが考える「リジェネラティブデザイン」とは『自然環境の再生と同時に、社会と私たち自身もすこやかさを取り戻すような画期的な仕組みをつくること』です。プログラムを通じて様々なアプローチが生まれるように、共に学び、実践していきましょう。

詳細はこちら