『生きる、を耕す本』が完成!greenz peopleになるとプレゼント→

greenz people ロゴ

中国で廃棄された自転車、2万3千台。どうにかしたい! その思いが生んだアップサイクルによる、未来型移動式ライブラリー「The Shared Lady Beetle」とは?

突然ですが、あなたは移動式ライブラリーを見たことがありますか?

これまでgreenz.jpでは、南イタリアの移動図書館「Bibliomotocarro 」や、手押し車図書館から始まった「男木島図書館」など、公共サービスが届かない僻地に、まるでポップアップストアのように出現し、本を通じたコミュニケーションを生み出す様子についてお伝えしてきました。

今回ご紹介するのは、そんな移動式ライブラリーに「アップサイクル」をかけあわせた「The Shared Lady Beetle」。カブトムシの形をした、なんともフォルムが可愛らしい自転車の図書館です。

「アップサイクル」とは、廃棄物や使わなくなった物を利用して、別の物を生み出すこと。単に素材の原料として使ったり再利用をしたりする「リサイクル」とは違い、新しい価値が生み出されるのが特徴です。

そんなアップサイクルでつくられたこの自転車ライブラリーの素材はなんと、全て工業用廃棄物! ボコボコしたシルバーの車体は、まるでアンティークの月探査機みたいで、なんだか見ているだけでワクワクしますね。

4つの車輪やハンドル、パイプは、廃棄された自転車から。そして、本棚は古木材から、本棚を包む羽のような扉は鉄のカーシートからつくられました。棚の一番下は、子どもが座れるように設計されています。

さらに、棚を組み変えることができるので、いろいろなものを入れて運ぶことが可能。つまり、移動式カフェや移動式クリニックにもなれるのです。

都市と地球を守るために、廃棄物を宝に変えましょう

この移動式ライブラリーをつくったのは、北京を拠点とする会社「LUO Studio」。創設者のLuo Yujie(以下、ルオさん)は、教育に携わる友人が学校でたくさんの教材を運ぶとき、スーパーで使う買い物カゴみたいなもので運んでいると聞き、「小さくて手頃な収納カート」をつくれないかと思いつきました。さらに調べてみると、友人以外にもたくさんの教師が、教育現場でものを運ぶときに同じような悩みを抱えている知り、開発に取り掛かります。

移動式ライブラリーをつくった株式会社LuoStudioの創設者、Luo Yujieさん

開発を始めたちょうどそのとき、ルオさんは、自分の住んでいる北京で大量に廃棄されているあるモノに心を痛めていました。中国では、シェアサイクルのサービスが始まりやいなや、数十社の会社が一気に参入して急速にサービスが拡大しました。しかし、マナーの悪さや供給過多により、町はシェアサイクルの規制を強化。その結果、2017年までに23,000台の自転車が捨てられることになったのです。(WIREDより)。

捨てられた自転車が山積みになった空き地

中国福建省の厦門の自転車墓地

そこでルオさんは、自身が開発する「収納カート」の素材に廃棄自転車を使おうと決意。この移動式ライブラリーには、ルオさんが大切にしている未来へのメッセージが込められています。

シェアサイクルは、たくさんの工業用原料を消費し、ただでさえ少ない都市の公共空間に侵入しました。そして、最後は、恐ろしい廃棄物の山に投げ捨てられたのです。私たちは、今まで遭遇したことがない都市の問題に前向きに取り組むべきです。都市と地球を守るために、廃棄物を宝に変えましょう。目の前で起こる状況の変化に、ちゃんと確実に対応していくために。

素敵な取り組みだなと思ったあなた。実はアップサイクルは、お家でも簡単にできます。何かをつくりたいと思ったとき、ホームセンターに行って材料を買うのではなく、まずは身の回りに使えるものがないか、見渡してみましょう。

たとえば、greenz.jpで紹介した「あずきアイマスク」や「マイ箸・マイスプーンケース」は、着なくなった洋服や使わなくなったハンカチでつくることが可能。野菜を育てるのも、「The World’s Smallest Garden」なら空き瓶でできます。

捨てようと思っていたものが新しく価値あるものに生まれ変わったときの喜びは、子どもの頃、トイレットペーパーの芯やダンボールでつくった工作が完成したときの喜びに似ています。あなたも、ゴミが減って宝物が増えるアップサイクルな暮らしにチャレンジしてみませんか?

[Via dezeen, inhabitat, The Atlantic]

(Text: 會田貴美子)