グリーンズでは読者の皆様にご寄付をお願いしています。

greenz people ロゴ

ひとつの商品、ひとつのビジネスモデルでは、私には心の負担が大きかったから。「モコメシ」と「VISION GLASS JP」を手がける小沢朋子さんは、足りないものを組み合わせることで仕事の可能性を広げてきた

「想いが詰まっています」
「実績を積んできました」

気持ちや体験に根ざしていると、一見、素敵な装いに見えます。しかし、仕事への思い入れが強くなると、それ以外をしなくなる。あるいは、仕事の経験を積んでいると、それ以外に踏み出せなくなる。そんなふうに、自ら可能性の芽を摘んでいませんか?

この記事の対談では、成長させたい仕事の可能性を広げていくことについて、小沢朋子さんが答えてくれていました。

連載「ソーシャルな会社のつくりかた」について

2018年で創刊13年目のgreenz.jpは、7年前から「マイプロジェクト」という“自分の想いをプロジェクト化する取り組み”をストーリーで後押ししてきました。記事を通じて各プロジェクトの立ち上げ経緯を伝えてきた7年が経ち、マイプロジェクトに取り組む人たちは、事業化や雇用を検討したり、決断するタイミングに差し掛かっています。

この連載では、そのような「マイプロジェクトのビジネス化」をテーマに記事をつくり、社会起業家を後押ししていきます。発起人でありグリーンズのビジネスアドバイザー・小野裕之は、自身も、都市と地域をつなぐ飲食事業「おむすびスタンド ANDON」や職人技術をいかしたコンテンポラリージュエリーブランド「SIRI SIRI」というソーシャルな会社の経営にチャレンジするひとりです。

また、「せっかくマイプロジェクトを始めたのなら、社会にインパクトを残すところまで継続してほしい」という気持ちで、「ソーシャルな会社のつくりかた」というビジネススクールもグリーンズの学校でプロデュースしています。

本日のお相手

小沢朋子(おざわ・ともこ)さん
モコメシ フードデザイナー/VISION GLASS JP 代表

小沢さんは早稲田大学応用化学科卒業後、千葉大学大学院にてデザインを学び、インテリアデザイナーとして剣持デザイン研究所に勤務しました。2010年フードデザイナー「モコメシ」として独立し、「食べるシチュエーションをデザインする」をコンセプトにします。

食べ物から空間づくりまで、トータルに提案するケータリングを得意とし、メディアへのレシピ提供、飲食店のメニュー開発、広告のスタイリングなども行います。2013年からは夫の國府田典明さんとともにインドのVISION GLASS の輸入事業をはじめました。グラスの耐熱性やシンプルな見た目を活かすさまざまな料理提案と、グラスのブランディング、卸販売をしています。

著書は2冊。『モコメシ おもてなしのふだんごはん』(主婦と生活社)と『大人もサンドイッチ』(グラフィック社)です。

連載10記事目は、小沢さんと小野が対談します(小沢さんのオフィス兼在庫置場にて)

「インドで見つけたVISION GLASS に惚れ込んで、自分たちの子どもみたいな気持ちでいるわけなんですよ」(小沢さん)

小野 春先にメールの整理をしていたら、これまで相談にのってきたマイプロジェクトのビジネス化にまつわる悩みを振り返る機会になりました。改めて、今も一人で悩んでいる方は少なくないんだろうなと感じたりして。

小沢さん 私も悩んでいる最中ですよ。

小野 おや、どんな悩みがあります?

小沢さん モコメシの2、3年後にVISION GLASS JPをはじめて5年。VISION GLASS JPはスタッフが食べていけるくらいに成長してきたことを実感しています。だけど、毎年のように感じていたワクワク感は薄れているように思えるというか。

小野 足踏みみたいな踊り場感があると。

“VISION GLASSはインドの理化学ガラスメーカーBOROSIL社が製造する耐熱グラスです。ミニマルなカタチと直火対応の耐熱性。 毎日の生活で様々に使えるVISION GLASSは、まるでジャムの空き瓶の様。本来の使い方で飲み物を入れても、オーブン料理を作っても、植物を飾っても、カトラリーを入れても、色鉛筆を立てても。使いながら新しい使い方に気づく余白と、日々の暮らしで気軽に使える堅牢さを兼ね備えています。もちろん食洗機に入れても大丈夫。VISION GLASS / GLASS KATORIE 全7サイズです。 VISION GLASS JPは2013年より日本における輸入販売元として、ブランディング/卸/販売を行っています。”([VISION GLASS JP「ABOUT」]より引用)
http://visionglass.jp/about/

小沢さん まさに、そうですね。たまたまインドで見つけたVISION GLASS に惚れ込んで、2年の準備期間を経て販売を始めたので、自分たちの子どもみたいな気持ちでいるわけなんですよ。輸入や卸の仕事も初めてだったので、一般的な商習慣に馴染みがないまま続けてきていて。

小野 商習慣というのは、ファッションブランドで言うと、シーズンごとに展示会を開いたり、新作をリリースするようなことですよね。

小沢さん そうそう。このグラスはすごくストイックなデザインで機能的、流行に左右されるものでもないので、季節に合わせて入れ替える必要はありません。サイズ違いのみをそろえて一生売っていこうと考えていました。もちろんその考えはまったく変わりません。

ただ、続けていくためには、7SKU(*1)は少なすぎた。もう少し品数を増やすとか、買ってくれる人に対しての刺激があった方がいいんだなと、5年目にして気がつきました。だいぶ遅いですけど。それで、新しいものが必要なのかなと思って、同じメーカーがつくっている実験器具を、2019年から販売していこうと、大きく決断して。

*1 Stock Keeping Unit(SKU)とは、カラーやサイズ違いなどを別カウントする最小単位である。

小野 そうなんですね。

VISION GRASSの製造元「BOROSIL社」から仕入れた実験器具。用途はユーザーのお好みに任せて、インテリアにしたり、花器にしたり、制限は設けない

小沢さん はい、なのでBOROSIL社(*2)がもともと製造している実験器具のシリーズの輸入を決めました。仮に実験器具を5型4サイズずつ取り扱えば、20SKUですよね。それだけで取り扱い点数が4倍になるわけです。

*2 ボロシルと読む。1962年に創業したインドの理化学ガラスメーカー。本社はムンバイ。直火対応の耐熱性を持つ、VISION GLASSをはじめ、ビーカーやフラスコなどの理化学用ガラス製品、家庭用耐熱ガラス食器などを製造する。

小野 わかります、わかります。お客さんがいるのに、売るものが少ないんですね。

小沢さん そうそうそう。会社に基礎体力をつけないと、続けたいものも続けられなくなってしまう。目的と手段というかね。

小野 手段として。

小沢さん VISION GLASS に出会った時のような感動があったわけではないのですが、手段として同じ会社の実験器具を取り扱うのはすごく自然なことだし、矛盾はないと思いました。

「A品B品の境目にね。どういうポリシーで商品をつくっているのか、扱っているのかということが如実に表れる」(小沢さん)

小沢さん 最近、倉庫会社と契約をしたんです。在庫を預かってもらって、検品もしてもらう。いずれは全国への発送もそこからやってもらおうと思っています。卸や小売の世界ではすごく一般的なやり方ではあるのですが、うちはなかなかそこへ踏み出せなかった。グラスが子どもみたいに可愛いのと、あとは検品の方法がすごく細かいんです。

うちは検品が一つの価値を作っていると言っても過言ではないかも。

小野 「検品が価値をつくる」というのはおもしろい表現ですね。頭で考えた言葉というよりも、VISION GLASS JPを商っていく中で自然と積み上がってきた経験から生まれた表現のようです。

小沢さん A品B品の境目っていうのにね。その会社がどういうポリシーでものをつくっているのか、お店だったら扱っているのかということが如実に表れていて、すごくおもしろい。NO PROBLEM プロジェクト(*3)の展示会を催す際に11社をインタビューしていて気づいたことなんです。

*3 製品の製造過程で必ず生まれてしまうB品と呼ばれる製品を「NO PROBLEM(問題なし!)」として受け入れることを通して、今の日本におけるデザインと生活の風通しをよくしようとするプロジェクト。[詳しくはVISION GLASS JP「2017年のNO PROBLEMプロジェクト(展覧会・タブロイド)について」参照]

小野 グラスの検品は小沢さんがする?

小沢さん えっとね、今はプレス担当が兼任している。前は検品だけを知り合いにお願いしていたんだけど、関西方面に引っ越しちゃって。でも、いいタイミングでBOROSIL社からくるクオリティも上がってきました。

検品にかかる時間もだいぶ減りましたね。当初はまず埃まみれだったから、見ても傷なのか汚れなのかわからない。洗って、拭き上げて、見る、っていうので、1箱に96個のグラスが入っていたから2時間半はかかった。5年前の話ですけど。

小野 なんで埃まみれだったんでしょう。

小沢さん なんででしょうね。工場の窓が開け放してあるからですかね。まぁ、最近は埃まみれってことはなくなりましたが、それでも、やっぱり迷うんですよね。この傷は手にとった人がどう思うかなとか。すべてをA品、B品にバッバッバッて分けられることなんて、全然ありませんね。

小野 うんうん。

小沢さん 96個検品すると、今は1時間ぐらい。安いけど、時給1,000円にしても1個10円かかるんですね。それがダメだったら商品にならないから。

小野 ただのコストというか。

小沢さん そうそう。でも、本当よくなりました。

小野 それはBOROSIL社に根気強く伝えて。

小沢さん インドの人って1回飲むんですよ。こっちの希望を。すごいなって思う。

小野 うんうん。

小沢さん 明らかに価値観が違うのに。ビジネスの規模も。BOROSIL社はインドでは一流の大企業。それに対して私たちは極小ディストリビューター(*4)。そんなことを言われるなら日本に売らないよと言われてもおかしくないところを「そうなんですか。日本だったらどういうものがほしいの?」って。

*4 ディストリビューターとは、卸売業者または販売代理店のこと。

毎年B品のサンプルを持っていって。同じ傷でも口元にあるとダメで、下のほうだったらいいよとか、そういう細かい話をして。「え、見えない」とか言われたりして(笑)

小野 あはは。

小沢さん そう言いつつも「避けるように努力します」って。いきなりゼロになるわけじゃないけれど、少しずつ良くなっていって。2017年の入荷からかなりよくなった実感があります。

小野 うんうん。

小沢さん インド人て、基本NOと言わない。前向きに生きている。圧倒的な多様性の中で生きていくための術なんだと思います。ひとつの国ではあるけれども、言葉も、紙幣に17言語書かれていたり。

小野 へー、知らなかった。

小沢さん 公用語は一応ヒンディー語と英語ではあるけれど、ヒンディー語も英語も話さない人たちはたくさんいるし。同僚でも、隣の席の人と宗教が違うことはもちろんあるし、北の人と南の人なら国際結婚だという感じなの。

小野 うんうん。

小沢さん だから、インドの人はそういう自分とは違う考えの人が当たり前にいる世界で生きているんだなって思って。日本ってどちらかというと均質な感じがしていて、自分とは違うものを排除しても、一応、村の中では生きていけるよね。だけどインドって違うのが当たり前だから、1回飲むんだなと思って。そこにだいぶ助けられているというか。

小野 だいぶ、だいぶ。

小沢さん 「そっかぁ。相手はうちの価値観を1回受け入れてくれたんだ」「じゃあ、今度は私たちがインドの価値観を受け入れていこう」。それでNO PROBLEMをはじめたんですよ。

「たまたま見つけたグラスを売るって、イベント性と逆の事業で相性がいいんじゃないかな」(小沢さん)

小野 モコメシという料理をつくることから、VISION GLASS JPというものを売ることへと、小沢さん自身の中では自然に移行していけましたか?

小沢さん そうですね……ふたつお話ししたいことがあって。

小野 はい。

小沢さん ひとつは自分に仕掛けたことというか。そもそも、グラスに出合って、いいなと思ったのも、インドに行きつづけていたからなんですけど。インドが好きで好きでみたいな感じではなくって、どこか同じ国に行きつづけたらどうなるかなって実験したんですよ。

小野 またどうして通うことに。

小沢さん 学生の頃にバックパッカーで「今年はどこの国に行こうかな」ってやっていたんだけど、それに飽きちゃって。新しい国っていっても得られる体験が似てきたなと思って。いろんな理由で、英語が通じるとか、比較的近いとか、1ヶ月滞在しても安いとか……カレーも好きだし。

小野 あはは。

小沢さん そうやってインドを選んで、たぶん1回に1ヶ月〜1ヶ月半の滞在で6回ぐらい行きました。はじめて行くときの風景と、何回も行くことで見えてくる風景は全然違って、それがあったからこそグラスに出会えたし、そうなるべくしてなった、とも思っています。

小野 うんうん。

小沢さん それがひとつで、もうひとつはモコメシの仕事との違い。モコメシの仕事ってイベント性が高い。その頃はケータリングが多かったので。ケータリングって早いと半年前ぐらい、近いと2週間前にオファーがきたり。それを1回やって、終わり。何か読めないというか。3ヶ月どれくらいの仕事量があるか、あまりわからないんですよね。

結構、精神的に負担で、私には。

小野 そうですよね。

小沢さん 結果的には忙しく仕事させてもらっているし、対外的に「すごい! ケータリングで活躍しているね」ってコメントをもらっても、内々はそういう不安ってあるにはある。

イベント性の高い仕事と、もうひとつ、常に回っていく、右肩上がりにはならなくても、ベースの収入になる仕事があるといいな。そこに、VISION GLASS のブランディングと販売をする仕事がはまったというか。たまたま見つけたとは思っていたんです。グラスを売るって、イベント性と逆の事業で相性がいいんじゃないかなって思って。

小野 ドキドキしながら。

夫の國府田典明さん。小沢さんと一緒にグラスの輸入・販売事業を行なっている。ウェブ制作管理会社に勤務していた頃、グラスと出合い、同じくドキドキしながら退職してVISION GLASS JPに専念した。

「どんなに小ちゃくやるとしても、10万円は仕入れないと利益は上がらないって、インドの人に教わりました」(小沢さん)

小野 あらちゃん(筆者)も、固定仕事がほしい(笑)

新井(筆者) その通りです。僕の場合は、月末にライターの依頼がきます。翌月は仕事にずっと追われていって、29日ぐらいから声がかかりはじめる。

小野 そんなに遅い?

新井(筆者) そんなに、そんなに。本当に真っ白。

小野 恐ろしいですね。じゃあ、小沢さんと同じ発想でペンを仕入れて売る?

新井(筆者) 仕入れて……ちなみに最初の予算はおいくらでしたか?

小野 どれくらいの数をどれくらいの負担で仕入れていたんですか?

小沢さん 最初はコンテナではなくて、数十万円単位の捻出だったと思うんです。

新井(筆者) それは、それぐらいだったら大丈夫かなってことでしょうか?

小沢さん いきなり300万円だったら。

小野 「おおー(汗)」ってなっちゃいますよね。

新井(筆者) いや、これはあれなんですよ。僕の話をすると、ライターって、聞きに行く、書き起こす、まとめるっていう、工程を切り売りしているんですよ。だから、この工程ごとの単価が上がらないと収入も上がらないっていうのがあるじゃないですか。月にやれる数も限られているし。

それで、どうやったらいいかなって考えたときに、例えば、自分で書いて、自分で刷って、手で売っていったほうが、工程の単価をあげられるんじゃないかとか、考えるわけですよ。

だから、最初に仕入れるときに、数十万円単位だと売上はこれぐらいかなって、どんな状況になることを考えていたのか、すごく気になります。

小沢さん あー、あまりそこまでは考えてない(笑)

小野 だって好きなんだもん。

小沢さん 好きから入っちゃったんですよ。

小野 何か、これは読者目線のひとつで、greenz.jpの読者には3分の1ぐらいフリーランスがいて。ある意味で時間の切り売りをしていると、時間単価をあげる以外のビジネスモデルが思い浮かばないんです。

そこでさっきの質問にもう1度帰ると、ある意味、ケータリングって時間を売るみたいなところがあると思うんですけど、ものを売るっていうところに、よく自然にシフトできたなぁっていう。

小沢さん うんうん。

小野 例えば、15万円とか、30万円とか、実費として大きく感じてしまうかもしれないけれど、3年後にすごく楽をさせてくれる30万円かもしれない。それって少し長い目線で見た見積もり的には辻褄があっている気はするんですね。でも、やったことがない人にとって、そのお金を使うことにハードルがあるっていうか。

小沢さん ありますよね。

小野 ありますよね。

小沢さん 先に、「モコメシのインドの生活道具」という展示販売をしていたのは少なからず影響しているかもしれないですね。そのときに、どんなに小ちゃくやるとしても、10万円は仕入れないと利益は上がらないって、インドの人に教わりました。

小野 だいぶ、インドの人から教わっていますね。

小沢さん それが、グラスで30万円使う、50万円使う、っていうことの練習になっていたかな。結果的にね。

「モコメシのインドの生活道具」で販売した商品の一部

「お金って、稼ぐよりも適切に使うほうが難しいのに、お金を使うことは簡単って、みんな思っている」(小野)

小野 逆に、それぐらい数と予算をかけないと、見せ方に困るし、「ほしい」って言われたときにすぐに出せなくてロスもあるし。ちょこっと過ぎると効率悪いのかもしれないですね。あと自分も本気にならないし。支払ったから、取り戻さなきゃって。

小沢さん 仕入れるにはお金を使ったけど、そのほかのことには最初からそこまでお金を使っていなくて。身内でいろいろできる。ウェブをつくったり、写真を撮影してレシピカードにして出したり。Illustratorをちょこっと使えるとか、PCリテラシーがあるだけで、随分、自分でできることって増えるなと思っていて。

小野 うんうん。

お金って、稼ぐよりも適切に使うほうが難しいのに、お金を使うことは簡単って、みんな思っているような気がしていて。

小沢さん ふーん。

小野 消費と投資って違うんだよ。

小沢さん うんうん。

小野 例えば、なんとなくごはん屋さんを探します。食べログに書いてある評価と、自分の本音をうまく混ぜ合わせて。消費の感覚として。だけど、これぐらい仕入れたらこれぐらい売れるとか、この時期にお金を使ったらどの時期に取り戻しが効くなとか、そういう投資の感覚は使っていかないと磨かれないというか。

小ちゃくてもいいから、お金を使う練習っていうのを、どこでもいいから……結構、やらせてもらえないじゃないですか。

小沢さん 確かに。

小野 教育の一環にもないし。

小沢さん そうね。

小野 「失敗したわぁー」みたいな。失敗しないわけないので、失敗することがいけないというよりは、うまく転び方を覚えて、乗れるようになるみたいな。

小沢さん 本当に。

小野 20万円、30万円みたいなお金はサッと溶かしちゃっても、死なないじゃん。

小沢さん それは絶対に。

小野 ある意味、ちゃんとお金をかけて、ものを仕入れて売っているなっていうことが信用力を生んでいく。「どうせ、この人は2、3回やったら辞めちゃうな」。それでは信用してもらえないわけで。ビジネスって、まさに信用で回っているじゃないですか。

小沢さん うんうん。

小野 何かに投資すると、お金の使い方はうまくなるし、経済って信用で回っている側面が大きいんだなって気づいていくこともできて。こちらが本気を見せないと、向こうにも本気になってもらえない。いくら本気だって言っても伝わらないから、共通言語としてのお金で示す。

すると本気さがある程度は伝わって、信用を生んで「手伝うよ」って。ひとつの政(まつりごと)に、熱狂や求心力が生まれていくというか。

小沢さん なるほどね。勉強になる。

小野 ネット系のサービス立ち上げの話になるような、元手ゼロで、自分でちょこっとサイト運営しはじめたら、新しい切り口だったのでだんだんと売り上げが立つようになって、だから、かかったのはサーバ代だけです、みたいな儲け方を見すぎているというか。

何か、みんなアイデアでどうにかしちゃおうとしちゃう。重しにも機会にもなる、物理的な仕入れや場所にお金を使って、「あー、失敗した」って思ってみるような試し方だってあるのにな。

(対談ここまで)

最後に、小沢さんと小野さんの対談を書いたあと、思ったことを書き留めます。

何かを感じること。あるいは、何かをしていくこと。

それは、時間と場所という流れがセットになっているものだと、忘れてしまいがち。じっと、その局面に留まっていることは誰にもできないから、自分の置かれている時間と場所に目線を合わせてみる。すると、少し前に感じたことやしていたこととは異なる何かのほうが、今は合っているのだと気づく。小沢さんの話から、そんなイメージが浮かびました。

だから、「想い」や「実績」と呼んで、何かを固めてしまうのは、誰かに仕事を説明する他人事のときだけでいい。実際に働いているときは、硬くならずに柔らかく、時間と場所の流れに合わせてあげる。それが可能性を広げることにつながっていくと思います。

もしかしたら、本当に「自分」を大切にしてあげられるのは、少し優柔不断に見えるくらい、状況に応じているときなのかもしれません。時間と場所の流れだけは、自分でコントロールできない可能性に満ちていて、優しいから。

世界をもっと信じたらいいんだよ。