10/30(土)開催の「作文の教室」1DAY編で、"わたしにしか書けない" を見つけよう!

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読者の見ている「景色」を変える記事をつくるため。僕がこれからも続ける「そうそう! これだよ!!」を探す旅。

ロケットが落ちてくる村を探し求めて。

衛星ロケットから切り離された部品が落下してくる村がある。小学生の頃にそんなドキュメンタリーを観た記憶があったものの定かではなく、危険と宇宙への憧れが同居したその村のことは、おそらく夢で見たのだろうと思っていた。

ところが、20代後半のある日、美術書専門店のSALEワゴンのなかに「その村」は存在していた。ジョナス・ベンディクセンという写真家が旧ソ連の人々の暮らし幻想的に写し取った写真集で、まさに人工衛星が落下する村を訪れ、衛星ロケットの残骸で遊ぶ子どもたちを撮影した写真が何枚もあった。「そうそう! これだよ!!」昔、テレビで観た村は実在していたのだ。

ライターという仕事は、この体験に似ているのかも知れない。取材を受ける人のなかに、なんとなくぼんやりと存在している(もしかすると存在していることに気が付いていないかもしれない)思いや考え方を、取材を通じて確かなものとして表に出してくることができれば、その記事はこれまで誰にも書けなかった記事になる。(いや、それがかなり難しいのだけれど)そういう瞬間をつかみたくて書いている。

地域の編集や情報発信にはライターとしての関係づくりが役立つ

20歳の僕は、劇団員だった。

溯って20代の前半。僕は劇団員だった。大学在学中に友達から借りた映画の録画の後に、演劇公演の録画があった。むしろ僕はその演劇がこれまでに観たどんなものよりも面白くて、在学中に役者を募集していた劇団のオーディションを受け、小劇場で舞台に立つことを始めた。小規模な劇団はなんでも自前でやらなければならない。僕は役者と同時に公演の宣伝を担当した。いわゆるチラシのデザインや文章をつくる役目だった。

今から思えばそこで初めてプロのデザイナーや演出家の間に立って(というか何も知らなかったので教えてもらいながら)舞台の本番の3ヶ月前にはチラシを完成させるディレクションの仕事だった。その時、出会った写真家とは10年後に独立したときに事務所をシェアすることにもなった。数年後に劇団員を辞めて最初の就職活動をした際に、ポートフォリオ代わりに持参したのは、演劇のチラシの束だった。人に情報を「伝える」ために格闘したチラシたちだった。

編集の経験を生かして団地でコミュニティをつくる仕事も経験

人間の欲求について書く、求人広告に出会う。

最初の就職で、未経験の僕を拾ってくれたのは、求人雑誌や転職サイトの記事をつくる代理店だった。当時は、1人に1台Macが支給されてデザインも取材もコピーライティングも撮影も全部自分でやるという制作スタイルで、毎週20本くらいの原稿を入稿していた。これが肌にあった。

いろいろな会社の現場へ出かけて、まるで大人の社会見学が仕事になったようだった。金型の町工場、人材派遣会社、リサイクルショップ、珈琲卸、文房具製造、蕎麦屋、ホームセンター、石けんメーカーなど様々な職種に触れ、つい最近まで劇団員をやっていたので社会の仕組みがわかっていなかった僕には新鮮で好奇心が搔き立てられた。

さらに、求人広告は、お金、名誉、やりがい、使命、人間関係、など人間の心を左右する切り口が無限にあるので、人の温度感を感じる記事をつくることができた。たとえば、社長の人生のドキュメンタリーにして、その人生観に共感した人を採用する記事などは、書いていても楽しかった。企業と求職者、異なる立場にいる人の思いをつなぐ仕事だ。社会に人と人の新しい関係を生むことの基礎をここで学ばせてもらった。

取材先とのコラボでイベントを企画運営したことも

実はこの頃、奈良の村の実家から車で30分かけて市街の駐車場に車を置き、さらに電車で40分かけて大阪の職場まで通うという生活を1年間続けていた。

昼間は都市部のど真ん中で働き、夜はまた200人くらいの農村部に帰ることで、異なる環境、価値観の社会を往復。都市農村という二項対立的な関係ではない、循環できる関係を意識するきっかけになり、この体験が現在も、様々な価値観を言葉や編集でつないでいきたいという仕事のあり方に現れている。自分で設立した法人の目指すことは、「関わり方のグラデーションが多様な社会をつくる」としている。

ひとりで書いているのでは、ないということ。

その後、転職や独立を経て、greenz.jpでも記事を書くようになった。いつも思うのは「ひとりで書いているのではない」ということ。取材先の方が持っている、まだ言葉にならない思いと一緒に書いている。編集者が世の中に丁寧に伝えたいという思いと一緒に書いている。原稿を確認される方からの修正指示やコメントは、共同執筆の一環だと考えている。

書くことは関わる人みんなの共同作業

それは、誰かにとっての「ロケットが落ちてくる村」を探し当てる共同作業。方法論も進め方も毎回同じではないし、文体も変わる。だけど、探し当てたときは、この記事を読む前と、読んだ後では読者の見ている「景色」が変わる。今すぐ何かを始めたくなるかもしれないし、自分のやってきたことに自信を持つかもしれないし、誰かに感動を伝えたくなるかもしれない。

いろいろな人にとっての「そうそう! これだよ!!」をこれからも、一生懸命探し続けていきたい。

– INFORMATION –

東善仁さんもゲスト参加! 15周年、7000本突破間近のgreenz.jpがためてきたノウハウを伝授する「作文の教室(実践編)第9期」

greenz.jp副編集長のスズキコウタが主宰する「作文の教室」(実践編)は、創刊2006年のウェブマガジン「greenz.jp」が大切にしてきたノウハウをもとに、作文力=執筆力+編集観察力を伸ばすことができる実践的なオンラインクラスです。
講師: スズキコウタ、宮田晴香さん、丸原孝紀さん、東善仁さん、狩野哲也さん、廣畑七絵さん、greenz challengers community
https://school.greenz.jp/class/sakubun_2021_04/