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編集者はライターを鼓舞する”伴走者”であるべきだ。greenz.jpの記事は、どう完成度を高めているか。編集術をスズキコウタが徹底解説!

こちらは、2023年5月より共創編集マネージャーに就任したスズキコウタの執筆により、2017年12月9日に公開した記事を再編集してお届けするものです!

以前、greenz peopleピープルの方から、「赤入れの原稿を見せてほしい!」というリクエストを頂きました。この要望を寄せてくれた方は僕と同じく編集の仕事をされていて、どのように赤入れをして、原稿のクオリティを高めているのか。編集者が口を出しすぎると、自分の思い描くカタチに寄せすぎてしまうんじゃないかと悩まれていたようです。

今回は初回公開時2017年の赤入れ≒校正の方法を記した返信をベースに、2023年の現在も盛り込んでお話しましょう。

スズキコウタ

スズキコウタ

これまで4000本を超える記事の編集、広告の製作、ワークショップ運営や講演活動に携わる。2015年より、作文力〜編集力を鍛える「作文の教室」を日本全国で展開。300人を超える卒業生が、編集者・ライター・社会起業家・非営利団体の運営などで活躍している。 2020年、若い世代の声を可視化し、実験・挑戦する現場としてグリーンズ内に第2編集部「greenz challengers community」を結成。2016年〜2022年までgreenz.jp副編集長。2023年より、共創編集マネージャーに就任。

2019年「しあわせの経済」国際フォーラム実行委員、2021年「ローカリゼーションデイ日本」実行委員。2022年より、ぎふメディアコスモス「メディコス編集講座」の監修・講師を担当。

大事なのは、添削者にならないこと

メディアを運営する人、そして記事の編集校正をする人にとって、

(1)原稿クオリティの追求
(2)そのメディアらしさの演出
(3)ライターの書き味・個性を尊重する

の3点をどのようにバランスさせるかは、常に最重要課題だなと感じています。いや、むしろそれを重要課題に据えていない媒体があってはいけない、、、とさえ思いますね。

greenz.jpのライターさんは、他の媒体でも書かれている方が多くて、彼・彼女たちに聞くと時に「他媒体、これはもはや編集者の原稿で、私の要素は消えてしまった…」と感じるときもあるそうです。そんな話も聞いているからこそ、greenz.jpはライターさんが書きたいことを自分の言葉で伝えられる、その自由度を保つことは重視したいと思ってます。

僕らが大事にしているのは、僕らが「添削者」にならないこと

添削者って、いわゆる学校のテストでマルバツをつけるような感じになってしまう。なので、僕は如何に「伴走者」になれるかということに気を配って、編集校正作業をするようにしています。では、どのように「伴走者」的な編集・校正術をしているか、特別に赤入れ原稿のスクリーンショットも出しながら紹介しましょう。


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先方確認校をつくるまでは、CMSに入れない!

まずgreenz.jpでは、初稿は必ずWordファイルかGoogle Documentsで提出いただくようにしています。例外を除いて、いきなりWordpressなどのCMSに入稿いただくことはありません。先方確認できるクオリティに高めるまでは、WordかGoogle Docsが編集の舞台となります。

初稿が届くと最初に僕がするのが、流し読みです。いろいろ気になる点を発見しつつも、とにかく流して最後まで読み切る。それで編集担当者としてピンとくるかこないか。この感覚を大事にしています。

すっごくピンと来て、「もうこのまま先方確認を進めていいです!」と太鼓判を押すときもありますが、やはりピンと来ないときが、どうしてもあります。それは書き手の表現スキル不足による場合もありますし、編集部とライターの共通認識がグリップしきれていない場合、記事のプロットの建て方が良くない場合、のいずれかですね。

こうした、あまりにピンと来ないときは、Wordファイルに触らずに丁寧なEメールでディレクションをすることにしています。なぜなら、どんどん修正箇所が増えてライターさんの持ち味が消えてしまうし、僕らが校正に要するエネルギーと時間も膨大になってしまいます。

Eメールでは、なぜピンと来ないのか、どうすればピンと来る原稿になるのか、そして今の原稿で活かせる素敵なポイントをお伝えし、第二校の準備に取り掛かってもらうわけです。

いよいよ原稿を触り始める

さて、ここからは原稿を触って、校正・編集に入っていきます。

初稿の場合、変更履歴を入れて僕のアイデアに修正するのは最小限にし、コメントを入れて問いかける形にし、ライターが第二校でどんな改善案を出してくるか様子を見るようにしていることも多いです。僕らが直すと、ライターさんが熟考し成長する機会がなくなってしまう。そして、ライターさんの個性も消えていってしまうからです。

コメントにおいては、細かい表現のブラッシュアップや、記事のプロットのマイナーチェンジを提案します。

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最近はひとりの編集者がWordファイルを返すのでなく、会議でみんなで話しながら校正をしたり、Slackに入稿して手のあいているメンバーが校正を重ねることも。Google Documentsならではの利便性ですね

「添削者」でなく「伴走者」になるには

そしてコメントを入れるときに大事にしているのは、改善・修正点だけを入れないこと。読んでいて「うわぁ、この表現は見事だ!」とか、「よくぞこの話を聞き出してくれた!」とうれしくなったときは、その喜びも書き込むようにしてます。

不足点を突くだけでは「添削者」になってしまうので、改善するべきところを伝えつつも、素晴らしいと思ったこともちゃんと伝える。これがライターさんに、編集者を「伴走者」と思ってもらうためにはすごく大事なんです。

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先に、初稿では変更履歴を入れるのは最小限にするとお伝えしました。しかし、全く入れないわけではありません。僕の場合は、誤字脱字、言葉の回りくどさを感じた箇所、そしてgreenz.jpの定める用語ガイドラインに沿っていない箇所は変更履歴で修正します。

たとえば「つくる」「つながる」「できる」などは、ひらがなで表記統一するルールに決めているので、そういった言葉が漢字になってしまっていないか。そして数字やカッコが全角と半角が入り混じっていないか。こういう細部に偏執的にこだわるのは、大事にしています。

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こうしてコメントを入れ、変更履歴を入れ終わったら、最後にタイトルについて考えます。ライター自身のタイトルが採用されることもあるし、各記事担当の編集者のアイデアの場合のときもあれば、最終段階で原稿チェックをする編集長・副編集長判断になる場合もあり、時それぞれ。でも、僕はこの3軸で各ひとつずつでも候補作をつくるようにしています。

(1)プロジェクト/記事全体の内容を集約表現して考えたタイトル
(2)書き手としてグッと来た部分にフォーカスして考えたタイトル
(3)読者目線で、どこが一番興味を持ってもらえる部分か考えて、そこにフォーカスして考えたタイトル

この3案のタイトルに書かれたコピーを活かしながら、最終タイトルを決めていきます。

この3案のタイトルに書かれたコピーを活かしながら、最終タイトルを決めていきます。

こうして、初稿の校正作業は完了! ライターに原稿ファイルを送り返すわけですが、最後に愛情コメントを加えるのも大事にしています。

特に駆け出しのライターやライターインターンの場合、どのように自分のライティングスキルを向上していけばいいのか、悩んでいる方が多いです。なので、「前回頂いた原稿と比べてどこに進化を感じたか」というポイントをお伝えしたり、シンプルに記事の感想を書いたり。こういう一工夫が、機会的な添削・校正を、書き手人材の育成にまで拡張させると確信しています。

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第二校以降は、少しずつ僕らの主張も出すようにする

こうして原稿をライターに戻すと、やがて第二校が届きます(初稿が素晴らしいライターさんには、第二校の準備を頂かない場合もありますが)。

第二校には、僕らのフィードバックに対して、ライターが熟考したアイデアが詰まっているわけですが、それら全てを採用するわけでなく、僕らの編集部としての意向も入れていきながら最終調整をする。なので、コメントではなく変更履歴を入れることが中心になります。

そして僕らの意向を盛り込んで完成するのが、先方確認用の原稿です。やがて先方チェックが済んだ原稿はWordpressに入稿され、最終微調整を経て公開となります!

今回ご紹介したのは、もともと2017年11月に書いたスズキコウタ流の校正術。さらに考え扱う領域が広がる「編集術」のごく一部ですが、2023年を迎えて現在でも変わらずに、この校正手法を続けています。

とにかく全員に共通しているのは、ライターが愛を込めてgreenz.jpに書いてくれた原稿なのだから、愛を込めてお返ししようというマインドセット。そして、「どうしたらgreenz.jpにとっていい記事になるか?」ということだけでなく、「どうしたらライターさんが伝えたいことが明確にシンプルに伝わるようになるか?」を考え、編集校正を人材育成の観点でも捉えていると思います。

なので、おそらく相当、手間をかけている方かもしれません。
「ウチは、毎日何本も記事を公開するから、こんなに丁寧な対応はできないよ」と思われるかもしれません。

ただ、いくつかの部分でも、今回ご紹介した僕らのメソッドが参考になれば幸いです。

このふたつが、「書く」「企画する」などの「DO」よりも前に大事にしたい、編集者の「BE」と考えています

生活者が社会とつながるための「作文の教室」

2016年11月から開始した、僕がメイン講師・監修をつとめる「作文の教室」は、おかげさまで毎度超満員の人気ぶりでうれしく思っています。最近は、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」や「国土緑化推進機構」を通じた林業地域とのコラボレーションなど、開催する場や内容も幅広くなってきました。そして社会全般を見ても、プロのライターや編集者を目指す方々向けの物を中心に、ライタースキルが身につく学びの場は本当に増えましたね。

(詳しくは、こちら!)

僕が「作文」と銘打ち、そこにフォーカスしているのは、「メディア」だとか「ライター」だとか「編集」という言葉には人それぞれ、さまざまな解釈があるから。そして、普通に友人に手紙を書いたり、地域のおすすめポイントを気軽に書くスキルがほしいという層の人びとつながりたいという思いがあります。「作文の教室」はオンライン・現場・外部団体とのコラボでの地方開催など、常に動いているので、タイミングが合うときにでも、ご参加ください。

そして、日々いろいろな実験を繰り返し、その現在における最適解をスクールプログラムとして共有しているgreenz.jpチーム、第2編集部「GCC」、あるいは僕個人でも。取材や相談をしたい方・媒体もウェルカム! ぜひお問い合わせください。

・PVやイイネ数を指標にしないメディア
・共創型の記事製作手法の追求
・お互いのアイデアを尊重し、フェアでフラットな創作時の関係性
・メディアにとってのライターさんの価値
・メディアにとってのパートナー団体の価値
・「手法」としてのメディア、「装置」としての記事
・「媒体読み」の未来

– INFORMATION –

スズキコウタ監修! 岐阜を編み、岐阜を集める「メディコス編集講座」第3期

「みんなの森ぎふメディアコスモス」とのコラボレーションで展開している編集講座。6000円の破格で、全6回の講座+オンラインサロン参加費+宿題フィードバックまで込みの超お得な講座になっています。第3期の申込受付は、6月30日(金)まで。開催期間は7月末から10月頭まで。鵜飼のシーズンでもあります。東京から通われた方もいるので、この夏の勉強旅行としていかが?
詳細は、https://medicos-cp.jp/event/lectures/p6024/ へどうぞ。(スズキコウタ)

– INFORMATION –

あなたの街で「作文の教室」「編集講座」を開催しませんか?

https://greenz.jp/sakubun_gakkou_shucchou/