こんにちは。海ライター・海洋ジャーナリストの瀬戸内千代です。greenz.jp編集部とは、かれこれ8年ほどのお付き合いになります。
普段は主に、フリーランス記者として雑誌記事やウェブニュースを書いたり、各種媒体の編集やライティングをしたり、海関係の財団やNPOの編集作業をお手伝いしたりしています。最近は、やや報道寄りの仕事が多めです。今回せっかくの機会をいただきましたので、改めて、「書く仕事」について考えてみました。
いま、コンピューターに「かくしごと」と入力したら、「隠し事」と変換されました! しかし、書く仕事ほど隠し事ができない仕事はないと思います。
なぜなら、知識不足も無知も、文章を書くと、恐ろしいほど露呈するからです。冷静で客観的な記事を書いているつもりでも、情報を取捨選択している時点で、わずかながら私情が入り込みます。自らの不勉強や偏見を隠せない、明け透けな仕事なのです。だから、どこまでいってもゴールはなく、しばしば、生きる姿勢まるごとが問われているように感じます。
この仕事に就いて10年、今でも私は、これは人様にお見せして良い文章なのか、どこかにミスが隠れていないか、提出前に何度も躊躇します。何十回も推敲を重ね、悩みに悩み、締め切りが立て込むと、身も心もすり減ります。
そんななかでgreenz.jpは、思い詰めずに書ける貴重な媒体なのですが、それでも「楽ちんに書けちゃった!」という回は一度もありません。少し会っただけで、その方の大切なプロジェクトや生き方を広く発信するわけだから、その責任は重大です。
でも辛いかと言うと、これが、「やりがい」しかないのです。会う方どなたにも魅力があり、体験からにじみ出る宝物みたいな言葉をくれます。そして、書いたものは媒体に残り、場合によっては何年も見ず知らずの誰かに何かを届けることができるのです。
ライターになる人は、ある程度、書くことに自信がある人が多いと思います。でも、だからこそ、扱うテーマは慎重に選ぶ必要があるのではないでしょうか。発信力があるなら、なおさら、方向を間違うと危険です。ヘイトスピーチのような有害な読み物を世に出すぐらいなら、書かないほうがいい。私は本心から、そう思います。
時としてライターは、頼まれるままに書いてしまうこともあると思いますが(過去の反省も込めて)、書き手として働く以上は、自分の中に柱を立てたほうが良いと思います。ちなみに、私の場合は、大げさなようですが、続く世代の幸せにつながるかどうかが判断基準です。
あと、どんな人が書き手に向いているか、と言えば、自分は向いていないのを承知で書きますが、読むのが速い人は有利だと思います。何かを書くとなると、調べなくちゃいけないことや、読むべき本が山積みだからです。私は読書が遅いし、しつこく推敲するタチなので、寝る時間を犠牲にしがち。めちゃ好きな仕事だけど、この点は、おすすめできません。フリーランスなので全ては自己管理次第ですが、まだまだ私は修行中です。
10年ほど前に独立してから、私の名刺の肩書はライター、環境ライター、海ライター、海洋ジャーナリストと脱皮を続けています。大学生の頃までは、活字と同じぐらい好きな海の生き物と向き合う時間が長く、海洋動物学者を目指していました。その余韻で、書き手としても海へ、海へと、にじり寄っているわけです。そして最近ようやく、仕事で2つの夢がドッキングする至福の瞬間が増えつつあります。
あと、ジャンルに関わらず、これまでの取材で出会えた人や思い入れのある土地とのつながりを、細く長く保ち続けたいという野望も持っています。全国各地に出かけられるこの仕事は、旅好きにはたまりません。ただ、自主的な取材には旅費が必要なので、目の前の仕事は地道に頑張らねば。怠惰な自分にムチ打つ日々です。
今回は僭越ながら「作文の学校」の「講師」という役目をいただいたので、これから書く仕事を始める方に、何かをお渡しできたらと考えました。そして思い浮かんだのが、「鳥肌」です。鳥肌、それは感動です。魂の震えです。なんか笑えますけれど、この生理反応、結構、ポイントではないでしょうか。
みずみずしい感性があれば、取材先の一つ一つに没頭できます。疲れ過ぎていたり、感性が鈍っていたりすると、目の前に良い素材が転がっていても拾えません。心身を大事にしましょう。これまた自戒を込めて。
ライターは、感謝と感性と、少しの技術が備わっていれば、誰にでもできる仕事だと思います。見たところ需要はかなりあるので、書く仕事に興味がある方は、迷わず進んでいただきたいです。字数が尽きました。続きは「作文の学校」で語り合いましょう!
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– INFORMATION –
月間30万人が訪れるgreenz.jpの副編集長スズキコウタによる「グリーンズ作文の学校」。greenz.jpに掲載する全記事の校正に関わる副編集長が講師をつとめる本ゼミクラスは、これまで全期満員御礼、総受講者数100名突破、地方から開催要請もある人気ぶり。この度、豪華ゲスト講師を迎えて、第5期の申し込みをスタートします! お申込みはお早めに!
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