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編集者は”チェックする人”じゃない。原稿の質を高める”伴走者”であるべきだ。副編集長スズキコウタが徹底解説する、greenz.jpの編集術

以前、greenz people限定でお届けしていたメールマガジンのQ&Aコーナーで、僕はピープルの方から、こんな要望をいただきました。

それは、

赤入れの原稿を見せてほしい!

というもの。この要望を寄せてくれた方は編集の仕事をされていて、どのように赤入れをして、原稿のクオリティを高めているのか。編集者が口を出しすぎると、自分の思い描くカタチに寄せすぎてしまうんじゃないかと悩まれていました。

その悩みに対して僕が回答したコラムの原稿ファイルが、偶然iMacから発見されたので、ぜひ読者の方々にも共有しよう。それがこの記事です。

大事なのは、添削者にならないこと

メディアを運営する人、そして記事の編集校正をする人にとって、

(1)原稿クオリティの追求
(2)そのメディアらしさの演出
(3)ライターの書き味・個性を尊重する

の3点をどのようにバランスさせるかは、常に最重要課題だなと感じています。いや、むしろそれを重要課題に据えていない媒体があってはいけない、、、とさえ思いますね。

greenz.jpのライターさんは、他の媒体でも書かれている方が多いので、彼・彼女たちに聞くと時に「これはもはや編集者の原稿で、私の要素は消えてしまった…」と感じるときもあるそうです。そんな話も聞いているからこそ、greenz.jpはライターさんが書きたいことを自分の言葉で伝えられる、その自由度を保つことは重視したいと思ってます。

そして大事にしているのは、僕らが「添削者」にならないこと

添削者って、いわゆる学校のテストでマルバツをつけるような感じになってしまう。なので、僕は如何に「伴走者」になれるかということに気を配って、編集校正作業をするようにしています。では、どのように「伴走者」的な編集・校正術をしているか、特別に赤入れ原稿のスクリーンショットも出しながら紹介しましょう。

先方確認校をつくるまでは、Wordで!

まずgreenz.jpでは、初稿は必ずWordファイルで提出いただくようにしています。例外を除いて、いきなりWordpressなどのシステムに入稿いただくことはありません。先方確認できるクオリティに高めるまでは、Wordが編集の舞台となります。

Wordファイルが届くと最初に僕がするのが、流し読みです。いろいろ気になる点を発見しつつも、とにかく流して最後まで読み切る。それで編集担当者としてピンとくるかこないか。この感覚を大事にしています。

すっごくピンと来て、「もうこのまま先方確認を進めていいです!」と太鼓判を押すときもありますが、やはりピンと来ないときが、どうしてもあります。それは書き手の表現スキル不足による場合もありますし、編集部とライターの共通認識がグリップしきれていない場合、記事のプロットの建て方が良くない場合、のいずれかですね。

こうした、あまりにピンと来ないときは、Wordファイルに触らずに丁寧なEメールでディレクションをすることにしています。なぜなら、どんどん修正箇所が増えてライターさんの持ち味が消えてしまうし、僕らが校正に要するエネルギーと時間も膨大になってしまいます。

Eメールでは、なぜピンと来ないのか、どうすればピンと来る原稿になるのか、そして今の原稿で活かせる素敵なポイントをお伝えし、第二校の準備に取り掛かってもらうわけです。

いよいよWordファイルを触り始める

さて、ここからはWordファイルを触って、校正・編集に入っていきます。

最近は初稿の場合、変更履歴を入れて僕のアイデアに修正するのは最小限にし、コメントを入れて問いかける形にし、ライターが第二校でどんな改善案を出してくるか様子を見るようにしています。僕らが直すと、ライターさんが熟考し成長する機会がなくなってしまう。そして、ライターさんの個性も消えていってしまうからです。

コメントにおいては、細かい表現のブラッシュアップや、記事のプロットのマイナーチェンジを提案します。

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「添削者」でなく「伴走者」になるには

そしてコメントを入れるときに大事にしているのは、改善・修正点だけを入れないこと。読んでいて「うわぁ、この表現は見事だ!」とか、「よくぞこの話を聞き出してくれた!」とうれしくなったときは、その喜びも書き込むようにしてます。

不足点を突くだけでは「添削者」になってしまうので、改善するべきところを伝えつつも、素晴らしいと思ったこともちゃんと伝える。これがライターさんに、編集者を「伴走者」と思ってもらうためにはすごく大事なんです。

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先に、初稿では変更履歴を入れるのは最小限にするとお伝えしました。しかし、全く入れないわけではありません。僕の場合は、誤字脱字、言葉の回りくどさを感じた箇所、そしてgreenz.jpの定める用語ガイドラインに沿っていない箇所は変更履歴で修正します。

たとえば「つくる」「つながる」「できる」などは、ひらがなで表記統一するルールに決めているので、そういった言葉が漢字になってしまっていないか。そして数字やカッコが全角と半角が入り混じっていないか。こういう細部に偏執的にこだわるのは、大事にしています。

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こうしてコメントを入れ、変更履歴を入れ終わったら、最後にタイトルについて考えます。ライターインターンの場合は、タイトルを3案用意することが必須です。その3案の方向性は、こんな感じ。

(1)プロジェクト/記事全体の内容を集約表現して考えたタイトル
(2)書き手としてグッと来た部分にフォーカスして考えたタイトル
(3)読者目線で、どこが一番興味を持ってもらえる部分か考えて、そこにフォーカスして考えたタイトル

この3案のタイトルに書かれたコピーを活かしながら、最終タイトルを決めていきます。

この3案のタイトルに書かれたコピーを活かしながら、最終タイトルを決めていきます。

こうして、初稿の校正作業は完了! ライターに原稿ファイルを送り返すわけですが、最後に愛情コメントを加えるのも大事にしています。

特に駆け出しのライターやライターインターンの場合、どのように自分のライティングスキルを向上していけばいいのか、悩んでいる方が多いです。なので、「前回頂いた原稿と比べてどこに進化を感じたか」というポイントをお伝えしたり、シンプルに記事の感想を書いたり。こういう一工夫が、機会的な添削・校正を、書き手人材の育成にまで拡張させると確信しています。

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第二校以降は、少しずつ僕らの主張も出すようにする

こうして原稿をライターに戻すと、やがて第二校が届きます(初稿が素晴らしいライターさんには、第二校の準備を頂かない場合もありますが)。

第二校には、僕らのフィードバックに対して、ライターが熟考したアイデアが詰まっているわけですが、それら全てを採用するわけでなく、僕らの編集部としての意向も入れていきながら最終調整をする。なので、コメントではなく変更履歴を入れることが中心になります。

そして僕らの意向を盛り込んで完成するのが、先方確認用の原稿です。やがて先方チェックが済んだ原稿はWordpressに入稿され、最終微調整を経て公開となります!

ライターと編集者はお互いを受け入れ合い
心でつながることが大事

ライターもエディターも、みんな僕らの仲間! 日頃のオフ会などのコミュニティ運営からも、編集者が「伴走者」になるよう工夫しています。

ライターもエディターも、みんな僕らの仲間! 日頃のオフ会などのコミュニティ運営からも、編集者が「伴走者」になるよう工夫しています。

今回ご紹介したのは、あくまで、2017年11月現在のスズキコウタ流です。今後ベターな方法が見つかれば変えると思いますが、この2年間ほどはずっとこのメソッドをほぼ変えていませんね。greenz.jpには欠かせない大事なエディトリアルパートナーである鈴木菜央、福井尚子、向晴香の3人。そして池田美砂子さんや増村江利子さんのような先輩方も、すごく近い方法で取り組まれている印象です。

とにかく全員に共通しているのは、ライターが愛を込めてgreenz.jpに書いてくれた原稿なのだから、愛を込めてお返ししようというマインドセット。そして、「どうしたらgreenz.jpにとっていい記事になるか?」ということだけでなく、「どうしたらライターさんが伝えたいことが明確にシンプルに伝わるようになるか?」を考え、編集校正を人材育成の観点で捉えていると思います。

なのでおそらく相当、手間をかけている方かもしれません。「ウチは、毎日何本も記事を公開するから、こんなに丁寧な対応はできないよ」と思われるかもしれません。ただ、いくつかの部分でも、僕らのメソッドが参考になれば幸いです。

国民文章力底上げのための「作文の学校」

2016年11月から開始した、僕がメイン講師をつとめる「作文の教室」は、おかげさまで毎度超満員の人気ぶりでうれしく思っています。僕らのように、ライタースキルが身につく学びの場は本当に増えましたね。

僕が「作文」と銘打ち、そこにフォーカスしているのは、「メディア」だとか「ライター」だとか「編集」という言葉には人それぞれ、さまざまな解釈があるから。そしてライターを目指していたり、すでに専業としていないけれど、文章力を向上したい人にも来てほしいです。ぜひタイミングが合うときにでも、ご参加ください。2017年からは地方出張も展開しています。

そして、日々いろいろな実験を繰り返し、その現在における最適解をスクールプログラムとして共有しているgreenz.jpチームを取材したい方・媒体もウェルカム! こんなトピックに興味がある方がいましたら、ぜひお問い合わせくださいね。

・PVやイイネ数を指標にしないメディア
・メディアにとってのライターさんの価値
・メディアにとってのパートナー団体の価値
・「手法」としてのメディア、「装置」としての記事
・僕らが影響を受けた国内外のウェブ媒体

– INFORMATION –


「作文の教室」第10期、申込み受付中!

greenz.jp副編集長のスズキコウタが主宰する「作文の教室」は、今年15周年を迎え、総発信記事本数が7000本を突破した「greenz.jp」が大切にしてきたノウハウをもとに、作文力=執筆力+編集観察力を伸ばすことができるゼミクラスです。スズキコウタによるワークショップに追加して、丸原孝紀さんによるコピーライティング講座、平川友紀さん・ヘメンディンガー綾さん・山森彩さんをお招きしたライター・編集者のキャリアを考えるセッション、さらに土居彩さんによる「あなたの深い答えを知る。心の声を体で感じて書く、“傾聴”ジャーナリング」も行われます。詳細と申込みは、こちらへ!
https://school.greenz.jp/class/sakubun_10th/