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ソーヤー海直伝、豊かな暮らしをパーマカルチャーデザインで実現する方法(後編)

ハロー、ソーヤー海だよ! 前回に引き続き パーマカルチャーのデザインについて話していくけれど、実ははいろいろなプロセスがあると僕はとらえていて、ここから先はパーマカルチャーデザインコース(PDC)で教えていることを簡単に紹介するよ。

ちなみにPDCは、世界各国で開催されているパーマカルチャーデザイナーになるための基礎講座

僕たちが行っているPDCでは、2週間の講座の最後に、参加者が土地を現場調査/分析して、クライアントのビジョンを土地の特徴に合わせてデザインを描いていく。PDCを通して、受講生が土地や生態系をより深く理解して、環境を再生しながら豊かな暮らしを実現できるようになってほしいと願っている。

今度は、水の流れや太陽の動き、地質とか、土地の重要な性質を五感で捉えながら、それぞれがどう関係しあっているかを観察して、マッピングしてみよう。例えば、冬至と夏至の太陽光(エネルギー源)が当たる場所の違いをみたり、水の流れ(川、雨、水道など)の全体像を描いてみたり。いま住んでいるところを題材にやってみて。

特に自分の水や食料の全体像――どこでどのように抽出/生産され、浄化/廃棄されているか――を捉えるのは重要! そのサイクルの全体像にかかっているエネルギーや金融資本についても考えてみよう。

そうしたら次は、いろいろな地図を集めよう。その土地の鳥観図、等高線、地質、動植物の生態系区分、インフラ、法的な区画を示したもの……そういう重要な情報を、ひとつの地図にまとめて落とし込むんだ。デザインの対象である土地だけではなく、視野を広げて周辺の重要な情報も入れることがポイント。自然界には境界線はないから。

さらに近所の人にヒアリングして、その土地の情報を集めるのもポイント。そうすることでその人とのつながり=社会資本もできる。これも大事な資源になるよ!

続いて「セクター分析」。自分のコントロールを超えた、その土地の外から来るエネルギーの流れを分析していくんだ。これも結構専門的だから簡単な紹介にしておくけど、例えば、夏と冬で日当たりと風向きはどう違うか、水はどこから流れてきて、どこに集まり、どこに流れていくか……さらに動物の動き、火の動き、災害の可能性や影響とかも考慮して、それらをどう取り入れる/遮断するデザインにするかを考えるんだ。

前編と同じく、Permaculture Design Lab.のフォレストガーデンの例から、セクター分析した図面。太陽や風の向き、人の動きなど、必要な要素をこの図面に落とし込む。

こんな感じでパーマカルチャーって結構科学的なプロセスを踏むんだよね。生態学や生物学、工学や物理とかに、世界中の先住民やお百姓さんの知恵や知識を組み合わせてる実践的な分野なんだ。

それから「ゾーニング」。これは、ゾーン0が家(いつもいるところ)、ゾーン1が頻繁に使う場所(1日1回以上行く)……ゾーン5が自然のままに残す場所、みたいに、自分にとっての心理的な距離を物理的な距離に反映・区分けすること。

ゾーニングした図面。ここでは行く頻度を①毎日、②週に数回、③週に1回以下、④必要になる季節のみ、⑤自然の森(めったに立ち入らない)の5段階に分けている。

例えばキッチン(ゾーン0)のすぐ外にハーブガーデン(ゾーン1)があったら、料理をしている時にすぐに取りに行けて、必要な世話もしやすい(=パーマカルチャーの原則のひとつ「効率的なエネルギープラニング」にあたる)。最近は、自分の心、「自分がどんな暮らしを望んでいるか」をゾーン00と呼んだりもしている。

そうそう、その土地の周りにどういう人がいるか、「人間の分析」もものすごく重要! 植物オタクの人とか、DIY好きな人とか、周りにどういう資源を持っている人がいるかな? もし自分がやっていることに関心がある人がいたら、その人と協力しやすいようなデザインを考える。反対に何かやるとすぐに怒る人がいたら、その人にとってイヤな刺激をなるべく減らして、その人も喜べるようなデザインを考えよう。Problem is the solution!

パーマカルチャーではこうやって全体を見ながらデザインを考えるのが特徴なんだ。だから単にスパイラルガーデンやパッシブソーラーハウスをDIYでつくるだけではパーマカルチャーにはならないと僕は思う。むしろ、そういう「要素」が全体のなかでどうつながり合っているかを大事にするんだ。つまり、システムとしてとらえること。

例えばモバイルハウスなら、DIYで建てるだけじゃなくて、地域の資源を再利用するとか、心地よい空間をつくっていろいろな人の学びの場になるとか、いろいろな関係性のつながりを通して、豊かさの収穫量を増やすことを考えるんだ。

さあ、ここまで来たら、自分がどういう暮らしをしたいかをしっかり想像したうえで、現時点の理想を表した「マスタープラン」を実際に描いてみよう。もちろん生活の事情が変わったり、やり始めるなかで見えてくるものがあったりするから、マスタープランは編集し続けるもの。土地に手を加えてみて、システムがどう機能するかを観察して、必要に応じてデザインし直して、またやってみて……って何度も何度も繰り返すんだ。

ここまでのマッピングを、より効果的になるように何をどこにつくりたいかを細かく考えていく。

例えば、雨水を集めて活用すれば、わざわざ水を買う必要はない。野菜くずもコンポストすれば堆肥になる。持ち寄りごはんとかで周りと助け合えば、外食とかのサービスに頼っていた部分を手放せる。水だけでなく太陽光や土のアクセスも考えれば、食料を生産できるようになる。

思いきって自給自足の暮らしに挑戦するのもいいけど、自分に関心のあることをひとつでも小さくやってみるのが、一番とっかかりやすいアプローチになるんじゃないかな。「デザインの筋トレ」みたいにして始める感じだね。

特に「観察力」は永遠に育てられる、めちゃくちゃ大事な能力。やればやるほど見えてくるものが変わってくる。それから「想像力」。物事には制限があるけど、それにあんまりとらわれず、ワクワクするような非現実的なビジョンを描けるようにしておこう。全体性を深く捉えるのと、未知を思い描くこと。この2つだけでも練習しておくといいかもね。

パーマカルチャーも「道」だから、大きな結果をすぐに求めるより、その道を楽しく歩むことが大事だと僕は思う。道をしっかり歩めば、頑張らなくても素晴らしい結果が育っていくよ。

パーマカルチャーは、ただ楽しいだけじゃない。世界の捉え方が全然変わるし、痩せた土地や汚染された土地に豊かな生態系を再生することだってできる。実際に都会の限られたスペースで生活に必要な食料の大部分を生産している人もいるし、ヨルダンの砂漠をキノコが生えるまで緑化した大プロジェクトもある。

身近なことで言えば、生態系や自然の一部として自分の暮らしをデザインすれば、エネルギーが勝手に循環して、余裕が生まれる。お金の依存を減らして、仕事に費やすのではなくハンモックで過ごす時間を増やせば、もっと豊かな暮らしを実現できる。自然と深くつながって、地球にいる時間を楽しもう!

(編集: 岡澤浩太郎)
(イラスト: Wakana Kawamura)
(写真: Nobuaki Kita)

– INFORMATION –

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