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協力し合って、みんなで子どもを育てる。これは立派な平和活動なんだ。 抑圧から抜け出しニーズに向き合う「子育て」の実践ヒント(後編)

ハロー! ソーヤー海だよ。今回も「パトリアルキー」(支配構造)の視点=「子ども(弱者)は親(強者)にしたがう」みたいな「抑圧の習慣」から抜け出すための、子育ての実践編パート2を紹介するよ。

▽パート1はこちら
従わせるより、向き合う。平和で持続可能な未来をつくる第一歩「子育て」の実践ヒント(前編)

6 「親にしたがわなくていい」と伝える

この間紹介した、僕のNVCの先生であるミキ・カシュタン(Miki Kashtan)とアニーナ・カシュタン(Arnina Kashtan)の姉妹の記事では、「(親や大人に)従順ではない子育て」をするためには、「したがわない自由を持っている」ことを子どもに自覚してもらうことと、それを親が応援することが大切だと言っている。

「親の言うことにしたがわなくていい権利がある」って教え続ける、ということだね。
まあ実際、親の立場だと「そんなのムリでしょ」って思うときもあるけど(笑)、僕も挑戦しようとしている。

例えば、「お父さんはこうしてほしいけど、押し付けたくはないから、君はどうしたいの?」みたいな感じで、できるだけ聞こうとしている。正直、上手く行かないことのほうが多いと思うけど、どこかから変えないと始まらないから、余裕があって落ち着いているときは、そうするように意識しているよ。お互いが実現しようとしていることを、どうやって実現できるか考えたり、相談したりしてね。

7 子どもの安心感や信頼を満たす

親子のつながりを強力に深めるのが、子どもと共感(心に寄り添う)すること。子どもと対立しても、子どもは、世界観も感じているものもニーズも違う、自分とは違う存在だということを意識して、好奇心と敬意をもって理解することに努める。この行為自体がパワフルな愛情表現でもある。「僕は、君のことを本当に知りたいんだ」っていう姿勢。パートナーシップにも有効だよ。

特に子育てでは、「安心」「自由」「自分に忠実であること」「守ってもらえること」というニーズを、子どもが十分に得られる環境をつくることが重要。このうちのどれか、ではなく、すべてだね。自分の本音を安心して言えて、聞いてもらえて、守ってもらえて、必要なときに愛情をもらえる、という安心感や愛情表現や信頼を、遊びとかを通して育てる。

ミキとアニーナの記事によると、トラウマに関するある研究では、安心して育った子どものほうが、厳しく育てられた子どもよりも、大変な事態で適切に対応できるそうなんだ。

世の中は厳しいから、厳しく育てないと将来の厳しさに耐えられない、という考えが流行っていたけど、そうやって「もっと頑張れよ!」みたいに言ってしまうと、孤独になって、自分の内側と外側が分離してしまって、気持ちを押し殺したまま育ってしまい、大人になっても悪影響を与えてしまう(詳しくは、前回も紹介したダニエル・J.シーゲル『生き抜く力をはぐくむ愛着の子育て』[大和書房]を参照してね)。最悪の場合、そのタフに育て上げられた傷ついたファイターが、独裁者になって多くの人を苦しませてしまう。

あと、例えば、「君が宿題を忘れたから先生に怒られたんでしょ? 君が悪いんだよ」っていうのは、自分が先生や権力者側の立場にいる表現なんだよね。僕らは基本的に物事をそういうふうに見るトレーニングを受けてきているから、例えばセクハラだって、「服装がどうだ」とか、「そういう気持ちにさせるほうが悪い」とか、立場が弱い人が悪い、権力側はきっと正しいという思考傾向がある。

良し悪しは概念で、権力がある人が決めるもの。誰も悪くない。なるべく、それぞれが何を大切にしたいか(=ニーズ)に寄り添うことに努める。特に、立場が弱い子どもに。男女平等の話題はよく聞くけど、大人と子どもの平等の話はほとんど聞いたことがない。

つらい体験をしたときに、解決はしなくても親がちゃんと寄り添ってくれることで、自分の内側で起きていることを自分で認められるようになって、自分で自分の安心を取り戻せるようになるんだよね。だから大変なことが起きても対応できるようになる、と。

子育ても同じで、さっきの宿題の場合も、親がいかに正しいかを代弁するんじゃなくて、「君はそれだけ辛い体験をしているんだね」と子どもに寄り添う。自分が信じていることを否定する必要はないし、子どもの気持ちを否定する必要もなくて、苦しんでいる子どもにただ寄り添うんだ。

で、この「寄り添う」っていうのは、「守る」のとはニュアンスが違って、「ともにいる」ことが大事になるんだよね。NVCでは「共感と同意は違う」という話をよくするんだけど、そもそも子どもと同じ視点を持つことは難しいわけで、必ずしも子どもに同意しなくてもいい。子どもがどういう気持ちなのか、なるべく寄り添うことと、ただ「聞いてるよ」じゃなくて、「君と一緒にいるよ」「君が伝えようとしていることを受け取っているよ」って、伝えてあげる。

そうすると、子どもは「自分のなかで感じてることは、感じていいんだ」って認識する。怒りでも悲しみでも、「それでいい、それがいまの君の本音だから」って。気持ちを押し殺す必要はないんだって伝える。そうやって子どもと「ともにいる」ことで、子どもはつながりのなかで自立できるようになる。

そのときのちょっとしたコツは、子どもが何を感じているか、何を求めているかを、疑問形で聞くこと。親が「お前は○○だ」って言っちゃうと抑圧的になるから、「○○なの?」みたいにして、子どもと探っていくほうが、協力しあう関係ができるんだ。

それを続けていくと、子どもも自分の気持ちとの付き合い方がだんだん上手になっていく。そうすると、自分にパワーと自信と選択肢が身に付くんだよね。いわゆる「自己肯定感」っていうやつ。これはいまの日本では圧倒的に少ないと思うけど、ちゃんと身につけば、「これは自分の価値観と合わないから、やりません」って主張できるようになるんだよね。「誰かが言ったから、やる/やらない」ではなく、言われたことを検討して、自分とつながりながら自分の価値観を育む。

生きていれば大変なことは起こるし、それを全部回避することはできないけど、子どもひとりで全部を負わなくてもいい環境をつくることはできる。解決できなくても、ちゃんと一緒にいて、話を聞いてあげるだけで、すごく支えになるから。寄り添いながら共感する(accompany)ということだね。

8 自分のニーズを子どもに伝える

子どものニーズだけじゃなく、自分のニーズともしっかりつながり続けること、つまり自己共感も欠かせない実践になる。なるべく子どもがいないときに自分とつながる時間をとるようにして、満たされている/満たされていないニーズとつながる。あと、「なんでわざわざこんな大変なことをやっているんだろう?」って、人生で大切にしたいことを思い出す時間に充てるのもいいと思うよ。

もっと言えば、自分のニーズを子どもにちゃんと可視化することも大事。例えば、子どもがおやつを食べたがっている場合。まずは子どもに、「おやつを食べたいんだね。ワクワクしているの?」みたいにして、寄り添う。だけどそれが夜中で、僕がおやつをあげることに戸惑いを感じていたら……。

そんなときは、「絶対ダメ!」ってしたがわせるんじゃなくて、「この時間におやつを食べたら、夜に寝れなかったことが何回かあったでしょ? それで僕も寝不足になってイライラして言い合いになったじゃない? そういうの、もうやりたくないんだよね」って、僕のなかで何が起きているのかをちゃんと可視化すると、子どもも徐々に僕の状況を理解できるようになるんだ。

「透明性」っていう言い方をするんだけど、そうやって、「君が悪い」じゃなくて「そういう状況になっている」とちゃんと伝えて子どもと共有することで、「大人にもニーズや限界があるんだ」みたいに子どもも理解できるようになるし、「じゃあどうしようか」って子どもと一緒に考えることができる。子どもの主体性を育みながら、協力関係を育てていく。

そんな感じで、たとえ子どもに伝わってる感じがしなくても、なるべく自分のニーズを伝えるようにする。僕も、娘が2歳の頃から僕のニーズを伝えるようにしているけど、それは自分の訓練でもあるんだよね。

9 罪悪感を手放す

子どもと意見が合わなくて対立したときは、なるべく罰や罪悪感を使わない。もし、罪悪感から「何かをしない」という感じになったら、「誰かが悪いんじゃなくて、残念ながら、お互いにとっていい方向が見つからないんだ」みたいにしてフォローして、「いい/悪い」を強化しない。

子どもも、親が教えなくても、いろいろなところから「いい/悪い」が情報として入って来るから、流されちゃうし、罪悪感だって強化されてしまう。親はそれを前提にして、罪悪感をなるべくキャッチして、その奥にある大切なものに寄り添っていく。で、親は親で罪悪感を抱えていると思うから、その実践を大人だけでなく子どもと分かち合うのも大事になる。

あと、いろいろと難しく感じるときは、自分の技術が足りないのが問題なんじゃなくて、僕らが生きている環境やシステムが圧倒的に壊れているからだ、と思い出すことも大事。そうすることで、自分の気持ちがちょっとやわらぐよ。

10 怒っちゃったあとはフォローする

すごくいっぱいいっぱいで余裕がないとき、たまに怒りが爆発しちゃうときが、僕にもある。ものすごく怖い顔とすごい声で子どもに向かって怒りを大きな声で放出してしまうんだよね……。子どもにとっては相当な恐怖だよね、普段は愛情を得ている存在からそんなことされたら。

そんなときは、自分もコントロールを失っているから、とりあえず怒りの感情から自分を取り戻せるまで待って、落ち着いて自分とつながって、罪悪感を手放して、子どもと関係を修復したいという気持ちになってから、ゆっくり子どもに寄り添って、「いまどんな気持ち?」「さっきは怖いって感じていたのかな?」みたいな感じで、共感してみる。

そのとき、子どもは最初、「遊ぼう!」みたいに笑ってくることがあるんだよね。辛い気持ちを消化しきれないから、とにかく楽しいことに状況を切り替えようとしているんだと僕は思う。そんなときはちょっと粘って、「さっきは怒鳴っちゃって、きっと『怖い』って感じたと思うんだけど、ごめんね」みたいに謝って、「でもそれは君が悪いことをしたからじゃなくて、お父さんは本当に余裕がなくて、ほかのことでもイライラしていたから爆発しちゃったんだ」って伝える。娘にそれを伝えたら、何分かしてすごく号泣したことが何回かあったんだよね。

そんな感じで、自分だっていつもベストの状態でいられるわけじゃないけど、だけど関係性はいつでも修復できる。まめに修復することで信頼や理解が深まる。だから子どもの様子や反応をなるべく見つけるようにして、あとででもいいからフォローする。そして「子どもが悪いことをしたから」ではなく、親の心のなかで何が起こっていたかを伝える。怒りを含め、自分の感情の責任をとる。

11 信頼を深める

わりと対立してなくて安定しているときに、関係性を深める会話をするのもおすすめだよ。

例えば、「昨日何回も、パパのことを叩いていたけど、そうするとお父さんはイライラすることがあるから、次に同じことが起こったら、『話を聞いてくれる?』って言うのはどうかな?」みたいに、2人が協力しあえる表現や合図を一緒につくっておいて、過去の痛みを振り返りながら一緒にもっといい方法を見つける会話を通して、信頼関係を深めていく。

協力したい意図と、対等さを強化していく感じかな。

これって、対立しているときは難しいんだけど、余裕があるときはいろいろと選択肢も増えるんだよね。

12 そのほかのヒント
また長くなっちゃったから、最後にそのほかのヒントをリスト化しておくね!

・尊敬している大人と同じくらい、子どもの話を真面目に聞く、子どもの言うことを真面目に扱う
・子どもが大人に教えようとしていることを、敬意をもって聞く
・命が危ないとき以外は自分の権威を使わないように練習する
・子どもと意思決定する。対等であるという土壌をなるべくつくる
・「~してあげる」を減らす、子どもを信じる
・人工的な空間(オンラインを含め)での時間を減らして、自然のなかで共に過ごす

また長くなっちゃったね! 最後に僕からのメッセージを送るね~。

You do not inherit the earth from your ancestors,
you borrow it from your children.

地球は先祖から受け継いでいるのではない、子どもたちから借りたものだ
(サン=テグジュペリ)

平和な未来を実現するために、僕たちにできる一番重要なことは、協力しあって安心を育む子育てに取り組むこと。これこそ、立派な平和活動! お母さんや親だけではなく、みんなで子どもを育てて、子どもに育ててもらう。

そのなかで、代々受け継がれている痛みやトラウマを癒していく。クセや常識を変えることは簡単ではないけど、同じことを続けても、同じ結果になって、悲劇が長引くだけ。自分に優しく、子どもに優しく、地球に優しく。We are all connected.

僕は、戦争と環境破壊のない平和な未来を育むために、自然に根ざした共感的な子育て、お互いのニーズに寄り添う子育てに取り組みたい人とつながっていきたい。探しあって、一緒に助け合おう! あなたのギフトと出会うことを楽しみにしている。

(編集: 岡澤浩太郎)
(編集協力: スズキコウタ)
(協力:高橋華奈、山崎久美子)