『生きる、を耕す本』が完成!greenz peopleになるとプレゼント→

greenz people ロゴ

もう環境を汚す側にはいたくない。Amar de Winterさんが、バリで竹のTシャツ「Nooboo」を立ち上げるまで。

バリに住むオランダ人のAmar de Winterさん(34)は、2016年から竹の繊維でTシャツ「Nooboo」シリーズを作り続けています。

「Noobooというのは、『新しい(Noo)』と『竹(Boo)』を組み合わせた造語。竹の素材の可能性を広げようと思って名づけました」というAmarさん。

Amarさんがこの日に持ってきてくれたのは、すでに3年着ているという淡いブルーのTシャツ。さわるとなめらかで、ふかふかと指がなじみ、頭からかぶっても首元がこすれる感覚がありません。

「3年間、いっぱい着て、いっぱい洗濯しても肌触りは変わらない。丈夫なんです」とAmarさん。

竹ってすごいんです。1分に1ミリの速さで成長するし、光合成のときの酸素の排出量も多い。それにTシャツの製造過程では、竹を使うとコットンに比べて3500リットルも少ない水しか使いません。棄てるときも、竹で作った生地は100%生分解可能で土に還るんです。

私がこのブランドを始めたきっかけのひとつは、竹という素材に出会ったためでした。

Amarさんがこの事業を始めるまで

以前から自分の事業を作りたいという気持ちはありました。

小売店開発の仕事でオランダを拠点に世界を回ってきたAmarさんが、転職してインドネシアに来たのは2015年のこと。

インドネシアはもともと好きな国だったし、当時の恋人がインドネシア人だったということもあって。来た当初は首都ジャカルタの食品関係の会社で働いていました。

そんなAmarさんがジャカルタに1年住むうちに気づいたのは「あまりに汚染がひどいということ。ごみの問題もとても深刻だった。車の中から道にごみを投げ捨てる人たちを毎日見ていました」

私たちは環境を汚してばかりで、環境のために何もしていない。それを見ていて、自分も汚す側の一部になっていくのが嫌だと思ったんです。

Amarさんが環境にやさしい事業を始めたいと思ったのはそんなときでした。

仲の良い友人が環境に配慮したベジタリアン・レストランを始めたのに触発されたのと、そのころ恋人と別れたのもあって、自分がこれから何をするかを考えようと思いました。

当時オランダに帰る心の準備ができていなかったというAmarさんは「ジャカルタの仕事をやめ、自分のための時間を作ろうと、6週間バリに行くことにした。そのときにNoobooを立ち上げることを決めて、3年後の今もバリにいます」と笑います。

デザイナーの義兄と協力してファッションブランドを立ち上げることにしたのですが、一緒にいろいろと調査しているうちに、竹はとても強く、サステイナブルな植物だと知った。

これだと思った。それでバリで竹の繊維を取り扱うサプライヤーを訪ねたのが始まりです。そのとき出会った業者さんとは、今も一緒に仕事しています。

Amarさんが作るTシャツ

こうしてAmarさんが始めたのは「竹のよさを生かしたTシャツ」作り。

汚染をなくしたいという気持ちから始まった事業なので、環境には気をつかっています。原料となる竹は、バリの地域コミュニティで、化学肥料を使わずに栽培されています。Tシャツ作りの過程では水を節約し、染色にも天然染料を使っています。そして、Tシャツが1枚売れるごとにバリの竹林に竹の木が1本植えられるという仕組みを作って、竹林の保全もしています。

私たちのめざす世界は、「地球環境にも、働く人にもサステイナブルな世界」。だからフェアトレードであることもポリシーのひとつ。竹林の栽培をしてくれる人たちから、染め・編みにかかわる職人まで、サプライチェーンのすべてにわたって適正な給与が支払われるようにしています。

「それに、Tシャツ作りの過程でのサステイナビリティも大切にしたいと思っているんです」というAmarさん。2019年9月にKickstarterでクラウドファンディングを行ったのもそのためだと言います。

クラウドファンディングがどうして製造過程のサステイナビリティを後押しすることになるのでしょうか。

クラウドファンディングを通じて、製造前に、Tシャツを買う人が何を求めているかを知れるからです。注文があったものだけを作ることで、無駄に作らなくてもよくなる。無駄が減ると持続可能性が増します。オーダーメイドに近い発想です。

Kickstarterのクラウドファンディングは500万円を集め、Amarさんが考えたのは、「次は日本でやりたい」ということでした。

サステイナブルなプロダクトを日本の人たちにも

次のクラウドファンディング先に日本を選んだわけを聞くと、「もともと日本が好きだったことや日本の染め物文化に興味があったこともあるけれど、日本には『機能性のある繊維』を受け入れてもらえる素地があると思ったから」と話すAmarさん。

これからは、「機能性のある繊維」の時代だと思っているんです。機能性があって品質の良い素材を分かってくれるのは日本の人ではないかと思った。それに、竹は日本でもなじみのある植物でしょう?

もし日本の人に受け入れてもらえたら、将来的には、染め物の職人さんと一緒にプロダクトを作りたいとも思っているんです。日本の伝統文化にはずっと魅力を感じていたし、藍染にも興味があった。これから、伝統を守るためにコラボできることがあればいいなと思っているんです

Noobooのこれからを問うと、「Tシャツやセーターだけでなく、下着にも拡大していきたいと思っている」というAmarさん。

私たちのプロダクトは、竹の繊維も植物性の染色も肌にやさしいから、下着との親和性も高いと思います。

これからも、高品質で環境にやさしいものを作り続けたい。そのために、日本の人たちのように、ディテールを大切にしてくれるであろう場所にプロダクトが届けばいいと思ったんです。

日常使いのできるNoobooの竹Tシャツが、日本のみなさんのお気に入りのTシャツになってくれたらという願いをこめて。日本の人たちにも、ぜひ触って、着てみてほしいと思います。

(Text: 原口侑子)

原口侑子

原口侑子

アジア・アフリカ各地を拠点に活動
個人ウェブサイト『yuko / haraguchi

AmarさんとNoobooのプロフィール

《現在Noobooはクラウドファンディングを行っています》
https://camp-fire.jp/profile/Nooboo-Pure/projects
nooboo.co
instagram.com/nooboo.amsterdam/
facebook.com/noobooamsterdam/
この記事はグリーンズで発信したい思いがある方々からのご寄稿を、そのままの内容で掲載しています。寄稿にご興味のある方は、こちらをご覧ください。