グリーンズ新旧編集長・鈴木菜央と増村江利子対談:共に探究して見つけた「暮らしを自分でつくると楽しい」という生き方

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同居人は野生生物! アムステルダム発、人間が自然の生態系のなかで暮らすシェアハウス「Proto-ZOÖP Zeeburg」は都市型生活を変える?

今日の舞台はオランダのアムステルダム
増え続ける人口に対して物件が少なく、深刻な住宅不足に陥っています。

現在、需要に応えるための都市開発が勧められていますが、今度は元々そこに住んでいた野生の生き物たちが、それによって深刻な住宅不足に陥ってしまうことも否めません。

そんな住処に困っている生物たちと、一緒に入居できる住宅があるとしたら…?
今日は2024年に着工が決まった、野生生物と居住スペースを分かち合う住宅を紹介します。

プロジェクトの名前は、「Proto-ZOÖP Zeeburg」。増え続ける市内の住宅需要に対応するため開発が進められているSluisbuurtというエリアの一角に建築されるものです。

アムステルダム中心部から少し離れた場所にあるこのエリアは水辺にあり、毎年一万人を越える新しい居住者の流入に対応するために、エリア全体では約5,500戸の建設が見込まれています。

私たちは、スズメやコウモリ、ある種の蝶など、現在都市から姿を消しつつある生物たちの生息地を、建築のなかで再現しようとしました。

と語るのは、建築家パートナーのJos-Willem van Oorschotさん。人間以外の利益も共に考えたデザインの住まいということでしょうか。一体どんな工夫がされているのか見てみましょう。

[画像: B1 デザイン/チーム AM-VenhoevenCS-DSL 提供]

まずは、階段状に建物の高さを変えたデザイン。異なった環境を好む生物それぞれに住処を提供するための構造だそうで、雨水を貯めて植物に水を与えるためのシステムも組み込まれているとのことです。

12、17、20、40mとさまざまな高さの屋根はそれぞれ気象条件が異なり、地面に近く湿っている屋根もあれば、日光にさらされて乾燥している屋根もあります。草が高く茂る屋根は、鳥や動物に隠れ場所や食料を提供することも想定されているのだとか。どうやら、住む部屋によって、同居する動植物も変わるようです。

[画像: B1 デザイン/チーム AM-VenhoevenCS-DSL 提供]

また、建物正面の壁には、鳥の巣と昆虫のホテルが組み込まれているそう。スズメには小さな穴と箱、コウモリの家は長くて狭いつくりなど、入口の方角も含め、入居を想定している動物が住みやすいように設計されています。南側の壁では、電力を生成するソーラー パネルの後ろ側にも住まいを提供。地面に置かれた割れのある石の壁は、植物を根づかせ、魚の繁殖場所となることを意図しているそうです。

マンションには家族、カップル、独身者向けの82戸の住居があり、総床面積は最大10000㎡。ソーラーパネルや三重ガラスなど、熱効率への配慮もデザインに組み込まれています。メインストリートに面した建物の1階には、生物多様性を研究する非営利団体を含む、自然と関係の深い団体が入居する予定だそうです。

[画像: B1 デザイン/チーム AM-VenhoevenCS-DSL 提供]

屋上緑化や部分的な壁面緑化はよく見られるようになったとはいえ、そこが生き物の生息地になることが「結果」として起きることと、「目的」として宣言することには、大きな違いがあるように思います。

一般的な住宅では、居住空間にやってきた生物は、飼育するのも駆除するのも居住者の自由に行われているなかで、同居を前提としたこの住居の場合、入ってきた生物を捕獲したり、駆除したりすることがどう取り扱われるのか、気になるところです。

[画像: B1 デザイン/チーム AM-VenhoevenCS-DSL 提供]

着工は2024年、竣工は2026年の予定とのこと。「将来的には、建築をデザインする際に動植物を含めることは、当たり前になるでしょう」とvan Oorschot氏は言います。

人間以外の生物との同居が当たり前になる未来。それは生活スペースで人間以外の生物と遭遇するとき、彼らを「侵入者」ではなく、「同居仲間」と感じられるようになる世界なのかもしれません。

「人間」の求める生活の質と、共に暮らす「同居仲間」の住みやすさは常に一致するわけではないはずです。それをどこまで譲り、どこで線を引くのか。きっと住民同士で探りながら運営していくのだろうと想像します。それは、これまで住民同士が語り合うことのなかった領域です。

だとしたら、この建築の完成は、想像以上に「人間」と「人間以外」の関係性を変える、大きなインパクトをもたらす転換を意味するのではないでしょうか。

着工はまだこれからですが、そんな未来を想像すると、ちょっとだけ「人間以外」の誰かと自宅で遭遇するときの感覚が、変わるような気がしました。

(Text: 高橋友佳子)
(編集: スズキコウタ、greenz challengers community)

[via FAST COMPANY]