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アメリカ政府主催の環境共生住宅のコンテスト「SOLAR DECATHLON」。 優勝作品が評価されたポイントは、自然の脅威から身を守るデザインだった!

Solar Decathlon 2013

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

20年程前から一般家庭用に販売が開始された太陽光発電。10年程前から、より多くの人々に広まり始め、現在の普及率は全世帯の4.6%なのだそう。(出展元

そんななか、ソーラーパネルをただただ自宅やビルの屋根に置くだけではなく、コミュニティや農地での運用例が増えています。実際これまでにgreenz.jpでも、ロンドンの街にあるソーラー充電所「Solarbox」や、日本の農地に太陽光パネルを設置する「ソーラーシェアリング」などをご紹介してきました。

太陽光発電のもっと多様な応用方法を考えてほしい。そんな機運が高まる中、アメリカ政府が主催し開催された、大学生対象の環境共生住宅コンテスト「SOLAR DECATHLON」をご紹介します。
 
University of Cincinnati
コンテストにはユニークな作品が集まります

「SOLAR DECATHLON」に参加した大学は、カリフォルニア大学やイェール大学などの超有名校もふくめ、全部で20校。2015年10月8日からの10日間、カリフォルニア州オレンジカウンティの大きな公園に建てられた住宅が審査されました。

コンテストの名前を直訳をすると「太陽光10種競技」。その言葉通り審査基準は10個。太陽光還元効率やデザイン、さらには市場への参入、会場での一般客とのコミュニケーションなど様々な10の視点が求められます。

「SOLAR DECATHLON」の目的は、ひとりでも多くの人に太陽光発電に興味を持ってもらい、知識を深めてもらうこと。期間中は一般の人も見学をすることができ、参加大学の学生が発電の仕組みや住宅全体の説明をしてくれます。
 
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当日はたくさんのお客さんで会場は超満員!

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みなさん、大学生のお話に興味津々!

見た目も機能も、学生のものとは思えない想像以上の作品

出展されている作品はどれも魅力的な作品ばかりで、ついつい環境共生住宅であることを忘れてしまいます。そんな素敵な作品を全てご紹介したいところですが、今回は特に個性的かつ機能的な3つをご紹介します。

まずご紹介するのは、8位のドラリー大学の作品「ShelteR3」。青と白の上品なコントラストが特徴的な外装となっています。しかし、この上品な外装の素材はトルネードにも耐えることができる耐風性を持っているとのこと。また、屋根いっぱいに敷き詰められた太陽光パネルは、日本の一般家庭の平均消費電力5156kWhの約1.4倍の7050kWhもの電力を発電してくれます!(出典元
 
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ShelteR3

続いて2つ目は、5位のミズーリ工科大学の作品「THE NEST HOME」。おしゃれなレストランのような外観ですが、こちらも機能は充実。年間に約5600kWhを発電するソーラパネルの設置はもちろんのこと、空調と照明の過度な電気使用を自動的に抑えるセンサーも家の随所に取り付けられています。

さらに、排水循環の機能も備わっており、水の消費の25%もの量を再利用してくれるのだとか。そんな持続可能性をテーマに設計された作品が5位にランクイン!
 
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THE NEST HOME

優勝作品の決め手は、自然の脅威から守るための設計

そして、最後にご紹介するのはスティーブン工科大学(以下、SIT)が設計をした「SU+RE HOUSE」。今回のコンテストで見事1位に輝いた作品です。
 
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“SU”はsustinable(持続可能な)、”RU”はresilient(快活な)の省略。

「エネルギー還元率を向上させることよりも、まずは消費電力をどこまで削減できるかに力を注いだ」と話す彼らは、消費電力をアメリカの一般家庭と比べ91%も削減させることに成功したことが評価されたのだとか。

さらに優勝の決め手となったのは、毎年アメリカに大きな被害を与えるハリケーンから身を守るために設計されデザインです。

SITがあるニュージャージー州はニューヨーク市の南、アメリカの東海岸に位置しており毎年大規模なハリケーンに襲われています。その中でも記憶に新しいのがハリケーン・サンディ。2012年10月29日に上陸し、死者280名、全壊を含め35万戸以上の被害が出ました。そんな大きな自然の脅威に対して、「SU+RE HOUSE」はどのような機能を備えているのでしょうか?

1つ目は、暴風や大雨から家を守ってくれる防御壁です。通常は発電をするために空を向いている太陽光パネルの一部が、ボタンひとつで窓に覆いかぶさり防御壁として機能してくれます。
 
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通常は、発電に使用されている屋根ですが…

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雨の日には、このようにガラスの粉砕や雨水の侵入を防いでくれます。

そして2つ目は、近隣への緊急電力の供給機能です。ハリケーンから自分だけを守るのではなく、被災した方へ電力供給のため屋外には電力充電装置があります。万一、電線が切れてしまった場合にも、被災した方への電力供給を優先する設定に切り替わります。
 
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電線につながってる時は屋内を優先に、電線が切れた時は屋外を優先に電力供給をします。

このように電力を提供することで緊急時の地域社会のハブとして「SU+RE HOUSE」は大切な役割を担うことができます。

ハリケーンへの対策機能が高い評価を得て、見事「SOLAR DECATHLON」で優勝をしたSITの学生たちですが、彼らの目標は優勝ではなく自分たちの街の復興だと話しています。

ハリケーン・サンディから2年経っても、3年経っても、私たちの地域の復興は滞っています。そして、複雑な問題がまだまだたくさん残っています。私たちは、ただただ安全でハリケーンに耐えることのできる持続可能な家をつくりたいだけなんです。

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「バンザーイ!」のポーズで「SU+RE HOUSE」の完成を喜ぶメンバーたち。

今後、「SU+RE HOUSE」は約4150万円で一般に販売を始める予定とのこと。ハリケーンが頻繁に上陸する地域の人からは実際に「住んでみたい!」という声も多く、かなりの反響があったそうです。

これまではどんな場所にでも設置できるようにと開発されてきた太陽光発電ですが、今後は「SU+RE HOUSE」のようにそれぞれの地域に適した機能が必要になってくるのかもしれませんね。

[via SOLAR DECATHLON,flickr,SU+RE HOUSE]