「風力発電」と言えば、3本の羽根を思い浮かべる方も多いと思います。実は現在の風車のメカニズムは、400年前の技術のままだということをご存知でしたでしょうか?今ある風車の技術を改良するのではなく、まったく新しいテクノロジーの風力発電機をつくりたい!そんな思いから生まれたのが、今回ご紹介する羽根がない風力発電機「The Saphonian」です。
こちらの風力発電機、今の風車には当たり前の羽根やハブ、変速装置がまったく必要のない機構になっています。なのでコストもほぼ半分ですむそうです。開発したのはチュニジアのSaphon Energyという会社。CEOのHassine Labaiedさん曰く、羽根のないデザインはヨットのメカニズムからヒントをもらったらしいですよ。
ドイツの物理学者で、風力タービン技術の先駆者であるAlbert Betzさんは、後に風車の設計で重要な指標となる「ベッツの法則」というものを生み出しました。それは、風力運動により発生したエネルギーから、最大59.3%をタービンで集めることができる、というもの。
したがって、空気力学上の損失も踏まえると、これまでの風力発電機は平均30〜40%のエネルギーしか集めることができませんでした。しかし、「The Saphonian」は従来の2倍効率的にエネルギーを得ることができるそうです。
驚くべきことはそれだけではありません。蓄圧器という仕組みをつかって電気を貯蔵することができ、風が吹いていないときは貯めておいた電気を使うことができるのです。
従来の風力発電では、騒音で周りの住民の悩まされたり、回り続ける羽根に鳥がぶつかって亡くなるという”バードストライク”が課題になっていました。それらの課題は”羽根なし”にすることで、一気に解決することができるのです。
化石燃料や原発に頼らずに暮らすためには、自然エネルギーを中心とした社会を急いでつくる必要があります。しかし、風力のさまざまな問題や太陽光パネルの製造過程における土壌汚染問題など、「自然エネルギーだから何でもOK!」というわけにはいかないのもっじつ。すべての生産から廃棄までのライフサイクルでどれだけ負担を少なくすることができるのか、しっかりと見極めることが大切です。
今回の”羽根なし”のような画期的なテクノロジーによって、ひとや生態系にスッとなじむ、新しいエネルギーのデザインが生まれていくといいですね。
(Text:緒方康浩)
[via Treehugger]
こんな風力発電機もあります。
Saphon Energy社は大量生産し市場で販売を進めるためのパートナーを探し中とのこと。ホームページはこちら。