ハイハイしていた赤ちゃんが、自分の足で立ち、第一歩を踏み出すー
その瞬間は、すべてのお父さん、お母さんにとって、一生忘れることのできない光景でしょう。
今日ご紹介したいのは、成長の証とも言える「その時」を迎えた赤ちゃんの足にぴったりのベビーシューズです。ブランド名は「ウメロイーク」。
実はこのシューズ、糸と針を使って自分の手でつくるためのキットとして販売されています。お父さんやお母さんの手によって完成する、世界に一足しかない大切な“ファーストシューズ”。それは、2人の女性が「母親になって初めてわかった」という、素直な気持ちから生まれました。
こんな靴も手作りできちゃう!「ウメロイーク」のシューズキット
ではまず、手作りキットでつくることのできるシューズのラインナップからご紹介しましょう。こちらは、アウトドアっぽい雰囲気の「MIC」。男女問わず赤色が人気です。
秋・冬に活躍しそうなジョッパータイプのブーツ「BOO」は、ユニセックスなデザイン。
甲の部分のデザインが美しいバレエシューズ「KOMA」は、女の子向き。夏にぴったりの、鮮やかなブルーが目を惹きます。
これ以外にも全8種類のオリジナルベビーシューズは、大人が履いてもおかしくないほど洗練されたデザイン。「本当に手作りできるの?」と思った方もいるでしょう。でも、大丈夫。デパートなどで開催しているワークショップでは、3時間もあればほとんどの人が靴を完成させることができるそうです。中には、1時間半ほどであっという間に仕上げてしまう方もいるのだとか。
例えば、シューズキットは、こんな形で販売されています。
レザーでできたパーツと一緒に、針と糸、その他必要な部品も全て同梱されているので、何も自分で用意する必要はありません。あとは説明書に従って手を動かすだけ。靴がこんなにシンプルなパーツからできてしまうなんて、驚きですよね。
サイズは、お宮参りなど歩き始める前のお出かけにぴったりの9cmと、歩き始めにちょうど良い12cmの2種類。カラーは、無地8色の他、4種類のプリント柄もチョイスできます。お子様の成長の証に自分で購入するのはもちろん、出産祝いとしても喜ばれそうです。
「ウメロイーク」本田晶さんインタビュー
「ウメロイーク」のシューズの企画・デザインから商品化まで、全ては2人の女性の手によって行われています。元々、靴の専門学校の同級生だった、立石ゆう子さんと本田晶さん。別々の仕事をしていた2人が同時期に母親になって再会したことがきっかけとなり、このベビーシューズが誕生しました。今回は本田さんに、当時から現在に至るまでの想いを聞かせていただきました。
母親になって初めてわかった「つくりたい」気持ち
子どもができて、「手作りのものをつくりたい」という思いが、すごく強くわいてきたんです。それは母親になって初めてわかった気持ちでした。
と、本田さん。立石さんも同じ気持ちを持っていたことを知り、一緒に勉強していた「靴」をつくろうと考えたと言います。
でも、経験の無い方にとって、靴を手作りするのはとても大変なことですよね。それならば、初めての方でも簡単なシューズキットをつくってみようということになりました。最初からキットを考えていた訳ではないのですが、2人で経験や想いを話しているうちに、形になっていったんです。
当時、手作りキットは、いくつか市販されているものもあったとのこと。でもその素材やデザインは、本田さんのイメージしたものとは違ったようです。
需要があるかはわからなかったのですが、私が「本当にほしい」と思うものを形にしてみることにしました。それを展示会で発表してみたら、来てくれた方々が「つくりたい」とか「おもしろい」と言ってくださったんです。「靴をつくれる」ということ自体が驚きなんですよね。みんな同じ気持ちだったんだな、と思い、商品化への自信になりました。
展示会で発表したのは2010年の秋のこと。そこから少しずつ、雑貨店などで取り扱われるようになり、お母さんたちのためのワークショップも開催。こうしてウメロイークは、「本当にいいもの」を選ぶ人々に愛されるブランドとなっていったのです。
子どものために、お母さんのために、自分の経験を詰め込んで。
本田さんと立石さんが「ほしい」と感じたものを素直に形にした、「ウメロイーク」のベビーシューズ。そこには、見た目だけではなく、つくる行程や素材にも、きめ細かな配慮が施されています。
これは私の経験でもあるのですが、妊娠中のお母さんがつくるときに気分が悪くならないよう、通常の靴づくりでは必要な溶剤やノリを使わずにつくれるキットにしました。
また、これから歩き始める子どもの靴は、堅くない方がいい。足首がしっかりとホールドされる形であることも大事です。足の骨が弱いので、靴の選び方によっては骨格が変形してしまうこともあります。このベビーシューズをきっかけに、足を大事に思う方が増えるといいな、と思います。
つくる人や使う人のことを、とことん考えてつくられたウメロイークのベビーシューズ。この他にも、アレルギーの子どもにも安心の「タンニンナメシ」の革を使うなど、細かいこだわりがいっぱいです。市販の子どもの靴には革を使っているものは少ないですよね。でも、そのやわらかな質感と天然素材は、これから一生、身体を支えていく小さな子どもの足を、大事に守ってくれるのです。
親から子へ、伝わる気持ち
ただ、そうは言っても、すぐに履けなくなってしまう子どもの靴。全てを“いいもの”で揃えるのは、経済的に考えても現実的ではありません。本田さんが提案したいのは、これを「記念」の一足とすること。
もちろん、運動するときなどは、スニーカーを履かせてもいいと思います。でも、歩き出すということは、“人になる”と言いますか、まさに「成長の証」とも言える瞬間です。最初の一足は、それを支える大切な道具。記念として、本当にいいものを選んでほしいです。
さらにそれを「自分でつくる」ことで、「記念」に「思い出」がプラスされるのが、シューズキットのいいところ。しかもそれは、親だけの思い出ではないのです。
私は自分の子どものために3足つくりました。今その子は5歳で、当然どれも履けなくなってしまったんですが、今でもつま先だけ入れて履こうとするんです。特別な靴だということを、感じているんでしょうね。
親だけではなく、子どもにとっても、お気に入りの一足に。これは本田さんだけの話ではなく、ワークショップでつくったお母さんたちからも、「これ、○○ちゃんの」と、喜んで履く子どもの様子が伝えられているのだとか。
ワークショップでは、赤ちゃんを連れたお父さんとお母さんで片方ずつ、つくる方もいるそうです。男性も多く、中にはおじいちゃん、おばあちゃんが参加されることも。そんな大人たちの様子から、子どもながらに「自分のため」ということを理解しているのかもしれませんね。想いは確実に、伝わるのだと感じます。
人がつくる「あたたかみ」を伝える、ものづくり
最後に、これからの「ウメロイーク」の展開について聞きました。
やっぱり、ママ2人でやっているので、私たちが本当にほしいと思う気持ちを大切にしたいです。今は、自分の子どもが履けるような、もう少し大きいサイズの靴をつくっていきたいと思っています。
大きくなると、構造上、キットにするのは難しいので既製品になりますが、親子で同じデザインで履けるようなものも考えています。
本田さんのお子さんは現在、5歳と2歳(もうすぐ3歳)。ファーストシューズを履いた子が、成長しても履ける靴、完成が楽しみですね。
さらに、取材に同席してくださったウメロイークの代表取締役・本田幹人さん(本田晶さんのご主人)は、ウメロイークとして大切にしていることを聞かせてくれました。
僕たちが一番大事にしているのは、人がつくる「あたたかみ」がどう伝わるか、ということです。ものづくりの原点をどこに考えるか、ということだと思うのですが、ただ「売るため」だけの物は冷たい感じがします。私たちは、そこに介在する“想い”を商品化していきたい。「小さな感動」と言いますか、人の気持ちが少しあたたかくなるようなものづくりを続けていきたいです。
だからこれからも、量産して利益を優先するのではなく、着実に自分たちの想いが伝わるような流れを選びながら、世の中に出していきたいです。「ほしい」と思ってくれる人に届けられるように。
取材の中で本田晶さんは、ふと、かつて携わっていた、靴の企画のお仕事についても触れてくれました。当時は、「欲しい」といった感情は関係なく、「流行っているから」という理由で量産する、ものづくりの現場にいたのだとか。そして、靴が「ビジネスの手段」となっているような状況に、疑問を感じていたそうです。
母になって、改めて見つめ直した「ものづくり」の原点。「ウメロイーク」のベビーシューズは、ものと人、そして人と人の関わりの本質を、私たちに伝えてくれています。その確かな想いは、一足の靴を通して、親から子へ、そして社会へと伝わっていくことでしょう。
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