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カフェのテーブルを”放課後の子どもたちの居場所”に!食を通じてコミュニティを育む「コミレスネットワーク京都」の試み [コミュニティデザインの現場から]

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両親は共働き。しんと静まり返った家にひとりぼっちで親の帰りを待ちわびながら、お腹がすいたらコインを握りしめてコンビニへ…。そんな子ども時代の記憶を持つ人は少なくないと思います。

もしもあの頃、近所のカフェにも子どもの居場所があって温かい飲み物を飲んで安心して過ごしていたとしたら?間延びした放課後の時間が違っていたのではないでしょうか。

コミレスネットワーク京都」の世話人・齋藤佳津子さんは、カフェやレストランの午後、お客さんの少ない時間のテーブルを「放課後の子どもたちの居場所」にする試みをはじめました。あくまで既存のお店から「空いている時間と場所」を提供してもらうのがこのプロジェクトのミソ。

子どもたちには安心して過ごせる場所を、お店には“社会貢献”を通じて新しい顧客の流れを提供し、結果として地域ネットワークを編み上げていくことを期待しているのです。

「コミレス」とは、「コミュニティ・レストラン」の略称。特定非営利活動法人NPO研修・情報センター(代表理事:世古一穂さん)が1998年に“食”を核にしたコミュニティ支援を目的に推進してきたNPO起業モデルです。

「コミレスネットワーク全国」を中心に、「安全安心な食の提供」「障害者の働く場づくり」「不登校の子どもたちの出口づくり」「高齢者の会食の場作り」「循環型社会の拠点づくり」など、地域の人々のニーズに合わせたテーマで全国にコミレスを作る動きが広がっています。

食の提供に関しては“地産地消”“旬産旬食”“エコクッキング”が基本。全国各地にコミレスを支援する中間組織が存在しています。そのひとつである「コミレスネットワーク北海道」がサポートする登別の「ゆめみ~る」では、3年前から「放課後の子どもの居場所づくり事業」を実施。齋藤さんはこの流れを受けるかたちで、2011年秋に「コミレスネットワーク京都」の世話人を引き受けました。

学童保育のカフェやレストランを作りたいのですが、本来的な定義を満たすコミュニティ・レストランを作るには資金も人材もたくさん必要になります。

どうしたものかと考えていた齋藤さんは、すでにあるカフェやレストランに対して、ゲストの少ない時間帯を活用する小さな社会貢献事業として「放課後のこどもの居場所づくり事業」を提案することを思いつきます。そのアイデアの元になったのは、齋藤さんの留学中の経験でした。

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ボストン大学に留学していたときシェアハウスをしていたんです。遅くまで大学で勉強して帰ると、誰かが「ごはんあるよ」と食べさせてくれて。私も余裕があるときは、ごはんを作ってあげました。みんなで一緒に食事をして過ごした時間はとてもいい思い出になっています。

また、アルバイトをしていた日本食レストランは、留学生をはじめとした日本人や日本文化に興味がある現地の人のコミュニティになっていたんです。そこで、お店を核とした地域や特定の層のコミュニティの良さを経験して。飲食店には、人と人の関係を結び、その関係性を支えていく可能性があると思いました。

齋藤さんは3人の子どもを育てるお母さん。「コミレスネットワーク京都」の世話人を引き受けた理由のひとつには、「子どもたちが放課後に安心して過ごせる場所があれば」という親心もありました。お店の空き時間を活用して親の帰りを待つ子どもたちの場所を作れば、そこから地域ネットワークを創ることもできるのではと考えたそうです。

震災後、社会貢献をしたいと考える店主さんが増えたこともあり、好意的に受け止めてくれるお店が多いです。具体的には、子どもたちのために1テーブルを貸してもらい、そこで宿題や本を読んだりしながら過ごさせてもらう代わりに、子どもたちにできる“お手伝い”をさせてくださいとお願いしています。

子どもにとっては社会経験になるし、お店の人たちは小学生と向き合う機会にもなる。そして、親たちは子どもがお世話になっているお店だから、家族や友人と食事に行くようにもなると思うんです。そうするうちに、お店と地域が深くつながりあっていくのではないかと思います。

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現在、京都市内の数店舗がこの事業への参加を希望しており、3月から京都市内のカフェ「さらさ3」でモデル事業として「放課後こどもの居場所づくり事業」がスタート。第一回となる3月6日に、小学校5年生の男の子ふたりが約1時間半をカフェで過ごすことになりました。

子どもたちに「どんなふうに過ごしていたの?」と聞くと、「宿題して、お店に置いてあるマンガを読んでた」「宿題を終わった後、お店の人が世界中でひとつしかないピザ(※まかないなのでメニューにないトッピングだった)を焼いてくれた!」とリラックスした様子。

食べた食器を自分で片付けたり、宿題のわからないところを店長さんに質問するなど、お店の人たちとのコミュニケーションもバッチリ! のようです。

「さらさ3」店長の中村季之さんにもお話を伺ってみました。

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最初は、不安や戸惑いもありましたが、僕自身も将来子どもを持つことを考えると、地域が子どもにやさしいのはいいと思います。近ごろは近所づきあいが少なくなっているので、こういうスタイルで子どもとのコミュニケーションをフォローする方法もありなのかもしれませんね。

子どもたちがいる時間は「ノーゲストのときもあったので、お店としても特に問題はなかった」と言います。

「さらさ3」が店を構える三条会商店街は、堀川通と千本通の間の約800メートルの長いアーケードを誇る京都でも屈指の大きな商店街。八坂神社御供社(又旅さん)があり祇園祭の山鉾巡行の夜に八坂神社を出た三基の神輿が勢ぞろいする場所でもあります。

古いお店が軒を連ねるこの商店街に、数年前から若いお店が次々に出店して活気をもたらしているのですが、「さらさ3」はそのムーブメントの発端となったお店。今度もまた、このお店から新しい地域交流の波が生まれるのかもしれないと思うとワクワクしてきます。

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「コミレスネットワーク京都」では、「さらさ3」でのモデル事業を4回実施した後、他の候補店舗に報告を行い次の段階へと進めていく予定とのこと。費用面(預かり料)についても、ほかのコミレスや学童保育の費用を考慮しつつ、これから具体的に検討していくことになります。

また、子どもたちが使うテーブルには「このテーブルは○曜日の○時から放課後の子どもの居場所として提供しています」とステッカーを貼ってもらうことも考えているそうです。地域の人たちに、子どもたちの時間の過ごし方への意識を喚起するとともに、お店と「コミレスネットワーク京都」の取り組みを知ってもらうためのアイデアです。

「コミレスネットワーク全国」の世古一穂さん(特定非営利活動法人NPO研修・情報センター代表理事)は「コミレスネットワーク京都」の取り組みについて、

この事業は企業の社会貢献とコミレスネットワークの協働事業のはじまりです。また、子どもの居場所づくりについては、子どもと親、参加店舗やコミレスのそれぞれがwin-winの関係になるように、安全面や財政面、居場所づくりのシステムを構築していくことが今後の課題です。

とコメントしています。

いつものお店が、地域ネットワークの拠点となり新しいコミュニティを生みだしていく――齋藤さんは、留学中の経験と子育てをする母としての願いを重ね合わせることで、お店のあり方に新しい可能性を見つけました。

きっと私たちも、自らの経験と現在の問題意識を見つめることから、なにげなく日常を過ごしている空間のどこかに新しい関わり方を発見できるのではないかと思うのです。

さらさ3

元煙草屋の古い町家を改装したカフェ・レストラン。おいしいコーヒーと自家製ピザ、イタリアンをベースにしたボリュームたっぷりの料理で気さくにもてなしてくれます。お店の奥には、スタッフ自ら調えたステキな中庭があり、その向こうには元は子どもの勉強部屋だったという離れがあります。離れの内部には足田メロウさんの絵が描かれ、小人数の貸し切り個室としても利用できます。二条城から近く、観光的ではない「ふだんの京都の暮らし」を垣間見ることのできる商店街のカフェです。

営業時間 11:30〜23:00(ランチ:11:30~14:30、カフェ:14:30~18:00、ディナー: 18:00~22:30LO)
定休日:水曜日( 祝日の場合は振替え)
〒604‐8331 京都市中京区三条通り猪熊西入る御供町293 TEL 075-811-0221

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