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家事するパパが社会を変える!クリエイティブな”家事シェアリング”で、「ただいま!」と帰りたくなる家庭づくりをサポートする「tadaima!」 [マイプロSHOWCASE]

Some rights reserved by normalityrelief

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突然ですが、既婚男性のみなさん、家事、手伝っていますか?
独身の方も、家庭を持ったとき、家事をする自分が想像できますか?

「耳が痛い…」なんて思ってしまった方もいるかも。近年は、「イクメン」「料理男子」といった言葉がもてはやされてきていますが、調査結果などを見る限り、男性の家事参画状況はまだまだ十分とは言えません。でも今日は、そんな人にこそ読んでほしい、幸せな家庭環境をつくるヒントに溢れた取り組みのご紹介です。ちょっとしたきっかけで、家庭内の雰囲気も自分自身の気持ちも大きく変わってしまうかもしれません。

家族が協力し合う、居心地のいい家庭づくりをサポートするNPO法人「tadaima!(タダイマ)」の取り組みをご紹介します。

「tadaima!」とは?

http://npotadaima.com/

http://npotadaima.com/

「tadaima!」は、主に共働きの夫婦を対象に、出産準備や部屋の模様替えを行うためのプログラムを提供することにより、家事シェアリングなど、夫婦が協力し合う居心地のいい家庭づくりのサポートを行うNPO法人。「10年後も、20年後も「ただいま!」って帰りたくなる家庭を実現する」をビジョンに掲げ、2011年11月22日(いい夫婦の日)に法人化し、活動を開始しました。

現在の事業の柱は、「両親学級」と「赤ちゃんを迎えるための部屋づくりプログラム」の2つ。
「両親学級」は、妊娠期の夫婦を対象に、産後の生活を知り、どのような準備が必要かを考える場を提供するもの。奥さんの社会復帰を前提に、生まれた後にしなくてはならないことを2人で具体的にイメージしながら学んでいきます。

自治体や病院が行っている両親学級と違い、ここでは、奥さんの身体の状況や、親に来てもらってお願いする具体的な家事まで、産後の生活を細かくシミュレーションします。これにより、環境と心の準備を整え、産後、「何が起こっても想定内」という状況をつくりだすことを目指しています。

助産院で行われた「両親学級」の様子

助産院で行われた「両親学級」の様子

また、「赤ちゃんを迎えるための部屋づくりプログラム」は、その名の通り、産後に暮らしやすい部屋をつくるために、模様替えのアドバイスを行うもの。特に、産後1か月くらいまでの時期は、母親の身体を回復させる事が最優先とされるため、できるだけ母親が動いたり指示したりしなくても済む部屋づくりが欠かせません。

そこでこのプログラムでは、その後の子育て環境も見据えながら、産後を快適に過ごすための部屋づくりを約1〜2ヶ月かけてアドバイスし、家具購入など、実際に部屋づくりが完了するまでをサポートしています。

どちらもポイントは、2人で参加すること。プログラムを通じて、家のことは奥さんに任せっきりになりやすい旦那さんも一緒に、2人で未来の生活について具体的にイメージしていくことが、その後の家庭環境を良いものにするためのカギになります。「tadaima!」では、この他にも、パパの家事をクリエイティブにする「パパ家事プロジェクト」などユニークなプログラムにより、夫婦が協力し合う快適な家庭環境づくりをサポートしています。

ドキッ!夫婦関係を決定づける分かれ目は、出産〜妊娠期にあり

でも、これらのプログラム、「家事シェアリング」という視点で考えると、少し遠回りのような気がします。それに、どれも妊娠〜出産までの期間にある夫婦を対象にしたもの。「居心地のいい家庭」をつくるために、この時期にフォーカスし、「出産準備」や「部屋づくり」のプログラムを提供する意図はどこにあるのでしょうか?「tadaima!」の代表・三木智有さんにお話を聞きました。

「tadaima!」代表の三木智有さん

「tadaima!」代表の三木智有さん

実は、妊娠〜出産、産後の時期こそがその後の夫婦の信頼関係の分かれ目なんです。

そう言いながら、三木さんはまず、ドキッとするグラフを見せてくれました。横は時間を、縦は妻から見た夫の信頼度を表しています。

夫婦の信頼度を表すグラフ。赤い曲線に注目!

夫婦の信頼度を表すグラフ。赤い曲線に注目!

妊娠・出産などのライフイベントでは、旦那さんは傍観者になりがちですが、実はこの時期こそターニングポイント。この時期に信頼関係ができるとその後も良好な関係が維持できますが、逆に奥さんからの信頼度が落ちると、その後なかなか回復できない夫婦が大多数なんです。個人差がありますが、この時期に、離婚間近にまで信頼度が落ちる方がかなりの確率でいらっしゃいます。

グラフを見ると、年月を重ねても夫に対する信頼度が低迷を続ける恐ろしい赤い曲線が…。これは三木さんが10代から80代まで、様々な年齢層の夫婦100人にヒアリングを行って得られた結果とのこと。さらに、スムーズな家事シェアリングのためにもこの時期が最適と言います。

いきなり「家事をして」と言っても拒否反応を示してしまう男性が多いと思います。でも妊娠〜出産期は、奥さんの変化もあり、「何かやらなきゃな」という気持ちが多少なりとも芽生えているとき。この時期は、ある意味、今後の夫婦関係を築くためのチャンスでもあるんですよね。

三木さんはこれらの検討を重ねた末、妊娠〜出産という大事な時期を迎えた夫婦を対象にしたプログラムを提供することに決めたのです。

必要なのは2人のコミュニケーション。
クリエイティブなプログラムできっかけづくりを。

さらに、「部屋づくり」など、直接の家事シェアリングとは違うアプローチをしている理由については、こう語ります。

事業を検討し始めた当初は、家事をシェアすることでパートナーシップが良くなるだろうと思っていたのですが、ヒアリングをしていく中で、シェアが大事なのではなく、「コミュニケーションがうまくいっているからこそ、家事のシェアができる」ということがわかりました。

家事の話になると、「時間がない」と感じてしまう旦那さんもいると思いますが、必要なのは、時間の投資ではなく、パートナーシップやコミュニケーションです。家事に時間を割いた、という事実ではなく、オーナーシップを持ってふたりが向き合い、まずは相手の変化に気付いて、大変なときに手伝ってあげることが大事。そのためには、普段のコミュニケーションが不可欠なんです。

信頼関係を築くために必要なのは、家事などのスキルそのものよりも、2人のコミュニケーション。『tadaima!』が提供するプログラムは、コミュニケーションのためのきっかけづくりなのです。

「両親教室」も「部屋づくりプログラム」も、出産準備や部屋づくりというイベントを通して、2人で未来を描いてもらうためのクリエイティブな取り組みです。「部屋」のような具体的なものがあれば、オムツをどこに置くとか、片付けなくてはいけない場所とか、産後の生活のイメージがどんどん明確になっていきますよね。そういう具体的な要素があれば、男性もモチベーションがあがり、実際、これまで参加された旦那さんたちも自然に積極的になっていくのが分かりました。

実際やってみると、奥さんからも「思ったよりも言っていることが伝わっていなかった」「身体の変化をそこまで想定していなかった」という声が聞こえてきて、改めてコミュニケーションの重要性を感じました。このプログラムがきっかけとなって、夫婦がコミュニケーションをうまく取れるようになり、今後の夫婦関係がより良いものになることを目指しています。

「両親学級」や「パパ家事」などと聞いて腰が引けてしまう男性も、クリエイティブに考えられる部屋づくりなら、積極的に参加できるかもしれませんね。コミュニケーション不足から、愛し合っている2人が信頼関係を失ってしまうのは、本当にもったいないこと。まずはインテリアのワークショップを受講するような気軽な気持ちで「tadaima!」のプログラムに参加してみると、意外な発見が得られるかもしれません。

Some rights reserved by Ken Wilcox.

大事な妊娠期、夫婦のコミュニケーションは大丈夫? Some rights reserved by Ken Wilcox.

原点は「居心地のいい空間をつくりたい」という思い

先ほどからお話を聞いていると、三木さんは夫婦関係専門のアドバイザーのようですが、元々の興味は違うところにあったようです。「tadaima!」を立ち上げた経緯についても聞きました。

学生のときから「居心地がいい空間をつくりたい」という思いがあり、当初はカフェがやりたいと思っていました。専門学校でインテリアの勉強をして、店舗や住宅のインテリアコーディネーターとして企業で働き始めましたが、元々独立思考があり、2年後フリーになりました。新築マンションのディベロッパーなどとお付き合いしながら仕事を続けていたのですが、そんな時にリーマンショックが起こって、仕事のほとんどが無くなってしまったんです。

そうして自分と向き合わざるを得ない状況になったとき、「居心地がいい空間をつくりたい」という僕の原点が思うようにできていないという思いが沸き上がってきました。それに、周囲に「家に帰りたくない」「結婚は人生の墓場だ」なんて言う人も多く、離婚率も高くて。居心地のいい場所を提供している仕事なのに、そこに対する違和感はずっと抱いていたんです。

そんな模索の中で、三木さんの視点は、物から人へと移っていきます。

顧客のために本当に居心地のいい空間を考えると、コーディネートだけじゃなく、家族が向き合うことが大事だということに気付きました。いくらコーディネートしても、ものの扱い方やメンテナンスの仕方を知らなければ居心地のいい空間は保てません。それならば、直接人にアプローチして、居心地のいい空間を自分でつくれるようにすればいいと思ったのです。

そう思い立った三木さんは、2010年、フリーランスの仕事を辞め、任意団体「tadaima!」を立ち上げました。片付け指導やワークショップを通して「人」と向き合う活動を重ね、その後、ETIC.の「ソーシャルベンチャー・スタートアップマーケット」や「社会企業塾」などに参加。多くの人のアドバイスをもらいながら、ヒアリングで顧客と向き合うことを重ねた結果、今の事業形態に行き着いたと言います。

現在の柱のひとつである「部屋づくりプログラム」は、言うまでもなく三木さんのインテリアコーディネーターとしての経験を活かしたもの。模索の末に生まれた「tadaima!」の事業は、これまでの三木さんの様々な経験が全て積み重なったものなのです。

でも、本当の原点は、もっともっと昔にありました。

実は小さい頃、周囲にうまく馴染めなかった経験があります。学校にも友達の中にも、家以外に居場所がないと感じていました。今振り返ると、ずっと「家」と向き合ってきたんだと思います。

三木さんにとって「居心地のいい家」は、子どもの頃からずっと「自分ごと」だったのですね。

男性が家庭に関わることが当たり前な社会に

最後に、「tadaima!」を続けていく上で、大事にしていることについて聞きました。

「10年後も、20年後も「ただいま!」って帰りたくなる家庭を実現する」というビジョンに即したことをやる、ということです。今後は、このビジョンを実現するために、妊娠期を迎える前の夫婦へのアプローチや、部屋づくり以外の手法など、新たなプログラムにも取り組んでいきたいと思っていますが、手法は変わってもビジョンは変えません。

そしていつか、男性が家庭に関わることが当たり前な社会になるといいですよね。今は家事ができる男子は褒められてしまうような存在ですが、それが特別扱いではなくなるような。そのためにも、まずは「かっこいいな」と思われるようなロールモデル的な存在が必要だと感じています。

そんな三木さん、プライベートでは共働きで、家事もこなす、よき夫のようです。奥さんとのコミュニケーションもバッチリと、こっそり教えてくれました。最後に話してくれた「ロールモデル」は、ひょっとしたら三木さん自身が示してくれるのかも? 今後の展開が楽しみですね。

miki03

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