最近「地方」ってコトバが気になる、農業はやったことないけど携わってみたい、町づくりに参加したい‥一度でもそう思ったことのある方に、はじめの一歩を踏み出すのに最適なインターンプログラムがあります。講習から実習まで実質7日間という短期間で、地域づくりや商品開発の一端にまで触れることができるのがよいところ。何かを始めようとする時の気持ちは「好きだから」とか「面白そう」と案外シンプルなもの。そんな風に踏み出したことが、未知の扉を開くかもしれません。
短期間で参加できる「農村六起プレミアムインターンシップ」
「うわ~~~きもちイイ!」今回取材に同行してくれた、greenzのインターンでもある大学生の木村ビオラさん。彼女が千葉県横芝光町に降り立った時の第一声です。田んぼに畑に青い空。
都心から車で約2時間とは思えないこの町が、今回の「農村六起プレミアムインターンシップ」の実地研修先。ここに一体どんな出会いが待っているのか、現地を訪れて取材してきましたが、その前にまず、このプログラムの全貌を紹介しておきましょう。
「農村六起プレミアムインターンシップ」は、NPOふるさと起業塾の、6次産業を促進するプログラムの一つとして行われるもの。6次産業とは、生産(1次産業)から加工(2次産業)、さらに流通およびプロモーション(3次産業)までを融合してビジネスにする新しい産業形態(6次産業)のこと。「農村六起」は、この1~3次産業全てに携わることのできる企業や人材を育成しようと始まった事業なのです。
今回のインターンプログラムは、その中でも、若い方々に夏休みに気軽に参加してもらおうと設定されたもの。まずは4日間、都内で行われる講習でマーケティングやブランディングについて基礎的な知識を身につけた後、実地研修として、実際に農産物の加工・商品開発や、流通、ブランド化、地域活性事業の企画をやっていただきます。
1.講習(4日間)
プレゼンテーション、地域ブランド演習などの講習を都内で受講。
農業や地域活性の分野で活躍されるプロの話を聞く貴重な時間も。
2.実地研修(1日間)
実地調査として千葉県横芝光町へ。ナシを使った商品開発、農産物の流通、町の地域活性事業、といったテーマ毎に企画のヒントを探ります。
3.各チームのグループワーク(任意)
4.中間発表(半日)
5.最終発表(半日)
6.(選ばれたチームのみ)合同最終プレゼン(半日)内閣府からの認定証を授与。
最終発表で優秀と審査されたチームは、9月22日の合同プレゼンテーションへと進み、最優秀に選ばれると、大分県竹田市への視察ツアーに招待されます。なんと、このプログラム全てに無料で参加できるのです。(交通費や昼食代を除く)
さらには、同じ企画をもって別の「インキュベーションプログラム」に挑戦すれば、最高200万円の起業資金を得ることも夢ではありません。
若手のオープンなアイディアが欲しい
同じインターンでも、何か月も遠方でとなるとなかなか勇気がいるもの。その点、このプログラムは期間も短く、都心から近い場所で行われるため、気軽に参加しやすいのが利点です。
けれど敢えて言うならば、始めは気軽な気持でも、ぜひ本気で参加してほしい。なぜなら、受け入れ先の若手農家、青年部が本気だからです。
千葉県横芝光町は、人口2万6000人の町。千葉県は全国でも農業産出額が第3位*と農業が盛んな県で、若手農家も多く、一見農業の未来は明るいものに見えます。けれど農業従事者の数は年々減っているのが現状。横芝光町でも状況は同じです。そんな中、少しでも町の主産業である農業をよくしようと中心になって活動しているのが、農業振興会青年部。今回の受け入れ先も、皆この青年部の面々です。
実地研修では、大きく3つの課題が出されます。参加者はそれぞれ興味のあるテーマ毎に分かれて実地調査を行うことに。
1.キズモノの梨を利用した加工・商品開発のプラン
2.横芝光町で豊富に獲れる米や野菜など、農産物の流通プラン
3.町の地域活性事業、農業体験ツアーのリピーター増加プラン
受け入れ先の一人である城山みのり園の實川(じつかわ)勝之さんは、10年前から梨づくりを始めた、青年部の一人。
うちで皆さんに考えていただきたいのは、キズモノの梨を使った加工プランです。梨を一体どんな商品にしたらいいのか、もしくは商品開発全体でなくても、デザインやネーミングなど、自分の得意分野を活かして、いろんな案を出してほしい。一緒に作っていく感覚で来ていただけたら嬉しいです。
實川さんの梨園に足を運ぶと、そこには、違う品種の梨が接ぎ木によってできるカスタマイズ・オーナー制度といった、實川さんならではのオリジナルの商品も。
興味深げに實川さんに質問を重ねていた木村さん。
やる気があればあるほど、主体的に参加できそうなところがすごくいい。皆年齢が近くてお兄ちゃんって感じで(笑)。話しかけやすいので、いろんなことを気軽に聞けます。
仲間づくりの意味も込めて
続いて、農産物の流通プランと、地域活性事業のテーマを担当するNPO TINAの吉岡さんに、地域活性企画のヒントになる横芝光町の見どころを案内していただきました。地元で生産されるオクラやネギなどの農産物、それらを販売している直売所、そしてなんと九十九里の海までもが横芝光の資源。
すでに毎月農業体験ツアーをやっていて、年間1200人ほどを受け入れています。今後リピーターも増やしたいですし、田畑や海などこれだけ豊かな資源を活用した企画を新たに考えたい。
と吉岡さん。
さらにはなんと、バンガローが立ち並ぶ素敵な宿泊施設とレストランを、地域活性プランでは自由に活用してよいとのこと!ここは吉岡さんの所属するNPOの代表が経営するペンションなのです。「こんな施設を使った自分の企画が実現できるなんて、めちゃくちゃ贅沢!絶対楽しいと思います」と木村さん。
吉岡さんは、2年前にこの地に移住してきた方。都心からほどよい距離でありながら、この豊かな自然の中で暮らす彼は、今回のインターン受け入れについて、こんな本音を聞かせてくれました。
ここでの暮らしは楽しいけれど、地方で仕事をつくるのはとても難しいこと。だからこそ、一人じゃなく仲間を増やして力を合わせてやっていきたい。梨園の實川さんも、今本気で梨の加工を始めようとしていて、今いるスタッフだけでなく、できる人がいるなら任せてもいいと思っている。僕も今回の受け入れは、仲間づくりの意味も込めてやっているんです。
このプログラムは入門編にすぎないけれど、関わり方は自分次第。世代を超えた交流が少ない現代に、彼らのような、農業や地域づくりに本気で向き合う若い大人と出会うチャンスは案外と少ないものです。その出会いは間違いなく貴重なものになる。小さなアクションが大きな扉を開くきっかけになるかもしれません。
(*資料:H21年農業産出額・農林水産省調べ)