世界で初めてサンゴの移植と産卵を成功させた男と彼を支える妻、そして家族の軌跡を描いた映画『てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~』(李闘士男監督)が4月24日から全国で上映される。30年前と比べて、実に9割ものサンゴが死滅した沖縄の海を甦らせようと、私財を投げ打ってサンゴの再生に挑戦した金城浩二氏の実話をもとにしている。また、「ダイビングが趣味」というナインティナインの岡村隆史が芸人としてのキャラクターを封印し、体当たりで主役に挑戦した点にも注目だ。
沖縄で生まれ育ち、小さい頃から海と生き物が大好きだったという金城浩二氏は1998年、エルニーニョ現象によってサンゴ礁が大量に白化するのを目の当たりにする。
小さい頃に見た青い海とサンゴ礁をよみがえらせる。子どもたちに、きれいな海を見せたい
と一念発起した金城氏は「海の種」という会社を立ち上げ、今まで誰もなし得なかったサンゴの再生に挑戦するのだ。
とはいえ専門知識ゼロ、「ど素人」からのスタートだったという金城氏。試行錯誤、学会の無理解とバッシング、資金難などにもめげず、1999年から開始したサンゴの移植は2007年6月、北谷町沖でのサンゴの産卵によってついに実を結ぶ。
30年前の10分の1にまで減少した沖縄のサンゴ礁だが、その原因はエルニーニョだけではない。赤土の流出や海岸の消滅など、長年の開発行為に伴う自然破壊もまた、今日の結果をもたらしているのは明らかだ。そして、泡瀬干潟埋め立て事業や、米海兵隊普天間基地の移設先をめぐる動きも、沖縄の海の将来に暗い影を落とす。
けれども金城氏のチャレンジは、たとえそうした状況にあっても、海を甦らせるためのヒントや方法はあるということを私たちに教えてくれる。開発そのものを止めなければ、移植したサンゴの成長も危うい。しかしサンゴの移植を通じて、海や生き物に関心を寄せ、自然をいとおしく思う心を育むことができるなら、それはやがては開発そのものを止める力にも成長するだろう。
映画では主演の岡村隆史に加え、その妻を松雪泰子が好演。國村隼、浅田美代子らベテラン俳優もしっかりと脇を固め、見応え十分だ。
沖縄ブームの終焉がささやかれる昨今だが、映画を通して描かれる金城氏の姿、そして甦ろうと歩み始める沖縄の海に、あなたはもう一度、沖縄を好きになるかもしれない。
『てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~』
4月24日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショー!
金城浩二氏が運営する「海の種」。3500円でサンゴ1株を移植できる
生物多様性の宝庫、泡瀬干潟について知る
普天間基地移設から辺野古の海を守る