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問題解決ではなく”問いの創発”。安宅和人さんの「風の谷を創る」プロジェクトに見る「コ・クリエーション」とは

これまで10年以上にわたって、「コクリ!」で地域や社会の変容を見てきた三田愛さんが、いま、地球生態系全体へと、そのコ・クリエーションの力を広げていこうとしています。その名も「地球中心・生態系全体のコ・クリエーション研究(地球コクリ!)」。

この連載は、愛さんが次なる使命として歩み始めた「地球コクリ!」の探究に伴走しながら、その中で見えてきた気づきや発見を読者の皆さんにも届けていこうという試みです(愛さんが地球コクリ!を始めた想いは、こちらの記事をぜひご覧ください)。

世の中にはたくさんの言葉があふれていて、自分の血肉となっていない言葉は似たような顔をして通り過ぎていってしまいます。

たとえば、あなたは「コラボレーション(協働)」と「コ・クリエーション(共創)」という言葉の違いを説明できるでしょうか。

一見、どちらも「複数で力を合わせて新しいものをつくり出す」という点でよく似ているように思えます。しかし、10年にわたって「コ・クリエーション」を研究してきた三田愛さんは言います。

愛さん 「コラボレーション」は、その目的が共有できるレベルではっきりしています。その目的に向かってお互いの力を合わせることで、より大きな成果を出そうとするのがコラボレーションです。

それに対して、私が研究している「コ・クリエーション」では、目的も課題もまだはっきり見えない段階で当事者が“本質的なもの”とつながります。そして、その感覚が仲間と共有されることで、みんなのエネルギーが高まり、予想もしない未来を築いていきます。「コ・クリエーション」のプロセスは目に見えない活力に満ちていて、当事者は使命感にも似たような感覚で道を切り拓いていくことになります。

「コラボレーション」はよく耳にする言葉でもあり、上記の説明からイメージもしやすいでしょう。一方で、愛さんの言う「コ・クリエーション」とは一体どういうことなのでしょう。

・目的も課題もまだはっきり見えない段階で当事者が”本質的なもの”とつながる
・その感覚が仲間と共有されることで、エネルギーが高まり、予想もしない未来を築いていく
・目に見えない活力に満ちていて、使命感にも似たような感覚で道を切り拓いていく

これらの説明は「コ・クリエーション」を実体験していない人にとって、ふんわりとしていて、つかみどころのないものかもしれません。

そこで、今回は実際にコ・クリエーションのプロセスを通じて「風の谷を創るプロジェクト」を立ち上げ、進めている安宅和人さんの取り組みを紹介していきます。

愛さん 私は今、地球生態系全体のコ・クリエーション(地球コクリ!)の研究をしていますが、実はコ・クリエーションの結果、地球課題に取り組むプロジェクトはすでに生まれていて、そのひとつが安宅さんの「風の谷を創る」プロジェクトなんです。

この記事では安宅さんのプロジェクトを紹介しながら、愛さんの言う「コ・クリエーション」とはどんなものなのかを見ていくことにしましょう。

安宅和人(あたか・かずと)

安宅和人(あたか・かずと)

慶應義塾大学 環境情報学部教授。ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)。
マッキンゼーを経て、2008年からヤフー。前職ではマーケティング研究グループのアジア太平洋地域中心メンバーの一人として幅広い商品・事業開発、ブランド再生に関わる。2012年よりCSO(現兼務)。全社横断的な戦略課題の解決、事業開発に加え、途中データ及び研究開発部門も統括。2016年より慶應義塾SFCで教え、2018年秋より現職。総合科学技術イノベーション会議(CSTI)専門委員、内閣府デジタル防災未来構想チーム座長ほか公職多数。データサイエンティスト協会理事・スキル定義委員長。一般社団法人 残すに値する未来 代表。イェール大学脳神経科学PhD。著書に『イシューからはじめよ』(英治出版)、『シン・ニホン』(NewsPicks)ほか。

三田 愛(さんだ・あい)

三田 愛(さんだ・あい)

「コクリ!プロジェクト」創始者/株式会社リクルートじゃらんリサーチセンター研究員/英治出版株式会社フェロー
集合的ひらめきにより社会変容を起こす「コ・クリエーション(共創)」の研究者。地域イノベーター、首長、企業経営者、官僚、農家、クリエイター、大学教授、社会起業家など、約300名のコミュニティメンバーと共に実証研究を行う「コクリ!プロジェクト」創始者。現在は自然と人間の分断を超えた共創をテーマに「地球生態系全体のコ・クリエーション(地球コクリ!)」の研究に取り組む。米国CTI認定プロフェッショナル・コーチ(CPCC)。内閣官房、国土交通省、経済産業省など官公庁での各種委員を歴任。

「コクリ!キャンプ」で生まれた「風の谷を創る」プロジェクト

今回の記事にご登場いただく安宅和人さんは、プロフィールを見ていただければ明らかな通り、ものすごい経歴の持ち主です。

かいつまんで列挙してみても、マッキンゼーでの様々な商品・事業開発とブランド再生、イェール大学脳神経科学プログラム学位取得(Ph.D)、ヤフー株式会社CSO、慶應大学環境情報学部教授……。

このような誰もが名前を知っているような大学や企業だけでなく、10兆円基金の立ち上げにつながった内閣府総合科学技術イノベーション会議(CSTI)基本計画専門調査会委員、内閣府デジタル防災未来構想チーム座長、様々な数理データサイエンスAI教育議論のベースになっているデータサイエンティスト協会でのスキルチェックリストおよびタスクリスト作成、数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度検討会副座長など、国家レベルの問題解決にも数多く携わり、ご活躍をされています。

ベストセラーとなった安宅さんの著書『イシューから始めよ』や『シン・ニホン』が手元にあるという人もいるかもしれません。

課題解決のプロフェッショナルであり、国からも企業からも引っ張りだこな安宅さんについて、愛さんはこう語ります。

愛さん ついつい輝かしい経歴に目を奪われがちだけれど、実際にお話をしていると、安宅さんにはお茶目な一面もあって、少年の心を忘れずに持っている人。子どものころに海で遊んだことや魚釣りをしたことを、とても愛おしそうに話してくれたことがあります。きっと安宅さんの根っこにはそんな故郷の原風景があるんじゃないかなと私は思っています。

コクリ!キャンプ2017に参加したときの安宅さん(写真右)

そんな安宅さんが進めているのが「風の谷を創る」プロジェクトです。実は、このプロジェクトは愛さんが2017年に主催した「コクリ!キャンプ」で生まれました。

「風の谷を創る」とはどんなプロジェクトなのでしょうか。どうやって誕生し、どのように進められているのでしょう。順を追って見ていくことにしましょう。

都市集中型の未来に対するオルタナティブとしての「風の谷」

「風の谷」というネーミングに、すでにピンときた人もいるかもしれません。このプロジェクトの名前は、映画『風の谷のナウシカ』に由来します。

『風の谷のナウシカ』の世界では、ほとんどの土地が人の住むことのできない腐海に覆われていて、その風上に「風の谷」があります。風の谷には常に風が吹き込んでいるので、腐海の毒にさらされることなく、人々は生活できるという設定です。

現実の世界を眺めてみると、産業革命以降、世界の人口は増え続け、人々は都市に集まってきました。人が地方から都市へ流出した結果として、集落を維持することが難しくなり、近い将来に消えるとされる「限界集落」は、日本だけでなく世界各地に存在しています。

このままでは、郊外が打ち捨てられ、人間が都市にしか住めない世界になってしまうのではないかと、安宅さんは映画『ブレードランナー』(※)の世界を引き合いに出して危惧します。

※映画『ブレードランナー』(1982年公開)では、2019年を舞台とし、人間が都市にしか住めなくなった世界が描かれている。

人間が都市にしか住めない世界が、次世代に残す未来なのだろうか……。

そんな問いを抱きつつ周りを見渡してみると、今はデータ×AIなどの技術により、これまで不可能だったことが可能になってきているという状況が目に入ってきます。

安宅さんが目指すのは、テクノロジーの力を最大限に使って、自然とともに人間らしい豊かな暮らしを実現すること。そのための行動プロジェクトが「風の谷を創る」プロジェクトなのです。

安宅さん 今の疎空間の実態はとても残念な状況と言えます。山間の荒れ果てた廃屋、林業の効率のみを追求した森林、人間中心に築かれた防潮堤、美しい山並みを縫うように設置された送電線……。こういった景観は求心力を失ってしまっています。

僕らがこれまでの検討の中から、生み出す必要があると思っているのは開疎(開放×疎という意味)な空間としての美しさを持ちながら、ダイナミックな知的生産が多様な集まりと出会いの中から生まれてくる空間です。

安宅さん 前者だけであれば成功したリゾート空間であり、後者だけであれば成功した都市がそれに当たります。

なお、ここで僕らの言っている都市というのは、一般的な意味の大都市圏とそれ以外のような考えではなく、人口密度数千人以上の人が集まっている空間であり、地方であっても都市と疎空間に分かれているという理解です。たとえば東京23区は人口密度が約1.6万人ですが、大都市の方々がよく観光で訪れる沖縄の那覇市は人口密度が約0.8万とりっぱな稠密都市と言えます。

疎空間でありながら求心力を失っていない場所としては、たとえば、全域が世界遺産となっているイギリスの湖水地方や、フランスの一番美しい村に選ばれているゴルド、市街地の歴史地区が世界遺産に登録されているイタリアのピエンツェのような場所があります。

フランスのゴルド ”Gordes” by levork is licensed under CC BY-SA 2.0
https://search.creativecommons.org/photos/95dd6141-9f31-4234-81bf-1b8b77a81c7d

イタリアのピエンツァ ”Pienza” by moedermens is licensed under CC BY 2.0
https://search.creativecommons.org/photos/fe3bad01-9f4b-41fb-b2ff-c698100386b4

安宅さん 疎空間において、土地の景色と、五感的な心地よさ、そして食や文化などの人の営みが調和した空間を目指すべきで、これを我々、風の谷を創る検討を行っている面々は「絶景・絶快・絶生」と表現しています。

圧倒的に美しい景観と、今の都市がもっているダイナミックな出会いや知的生産がかけ合わさったとしたら……。それは次世代に残したい未来に違いありません。

非日常の空間で湧き起こってきたものの正体とは

安宅さんにこの風の谷のアイデアが降りてきたのは、「100年後を変える時代のうねりを、今、ここから起こす」という目的で開かれた「コクリ!キャンプ」でのことでした。

安宅さん 僕の場合、アイデアって大体ふわっと電撃のようにくるんです。
考え続けた末に、意識的に”無”の時間をつくると、そのときに創発が起こります。

ただ、「コクリ!キャンプ」では”今まで考えたこともなかったようなこと”が起きました。

当時、安宅さんは慶應大学、ヤフー、様々な国関連のお仕事に加え、データサイエンス協会のスキル定義委員会や10兆円基金の設立に向けた働きかけなどのことで、目が回るほど忙しかったのだそう。

安宅さん コクリ!キャンプに誘われたときは、愛ちゃんの言うコ・クリエーションがどんなものなのか、さっぱりわからなかった(笑)

しかも、当時は限界というべきスケジュールで動いていたので疲労もかなりたまっていて、多くの取材や面会の依頼も断っており、「30分でも寝かせてくれ〜!」というくらいの状態だったんです。

ただ、忙しすぎる日常の中で、このままではいけないという意識がどこかにあったんだと思います。忙しいけど全然違うことをやるのも人間、大事かもしれない、コクリ!キャンプに参加することで何か変わるかもしれないといった気持ちもありました。

鎌倉市にある建長寺。臨済宗建長寺派の大本山で、日本の禅の中心地のひとつ

そうして建長寺でのコクリ!キャンプに参加した安宅さん。当日のことを、次のように振り返ります。

安宅さん まず、建長寺の非日常的な空間が、自分を日常からブツっと切り離してくれました。建長寺の仏像って、ものすごく怖いんですよ。びっくりするくらい怖い。ビビりあがるような存在感がある。

忙しすぎるほどの日常から、一気に非日常の空間に引き込まれた安宅さん。さらに、これまでにない体験をしていきます。

安宅さん コクリ!キャンプでは、植物を観察するとか不思議なことをしたのですが、それがよかった。

植物を観察してスケッチをする参加者

コクリ!キャンプ参加者のスケッチ。普段しないレベルで植物を丁寧に観察して描かれている

植物を観察したあとは生け花に取り組んだ。写真中央が安宅さん

安宅さん 「”頭”じゃない入力による頭」というか。コクリ!キャンプでのアプローチは、脳における神経保持的にいうと、表面にある記憶ではないレベルにたどりつかせようということをしていたんだと思います。

自分の知覚に集中をかけるとか、体と体との接点の中から言語化できない部分を引き出そうとするとか、そういうことに情熱をかけていて、実際に一定以上の成功をしているように思います。

SPTという、自分の現状で起こっているスタック(行き詰まり)を身体で表現するワーク。スタックを身体で味わい尽くし、感じるがままに身体を動かしていく。思考(論理)だけでなく「身体(感覚・直感)」を使うことで、言葉にならない課題が可視化され、見えなかった痛みへの気づき、未来への願い、解決の糸口が浮かび上がってくる

安宅さん こういった一連のアプローチ群は、深い気づきを得るためには不可欠なんじゃないでしょうか。

そして、安宅さんに変化が訪れます。

安宅さん あの日、建長寺で起こったことの特殊さは、日頃僕が考えてる意識にはなかったものが吹き出してきたということです。その頃、「このままだと日本が滅びるんじゃないか」という問題意識から、思いつくことを片っ端からやっていたんだけど、さらにもうひとつ深い自分の”何か”が出てきた。

それは自分でも思いもよらなかったような「都市しかない未来への怒り」でした。

なぜそんなことが起こったのかは分からなくて、今も、別に都市に対して怒っているわけじゃないんだけど……。あの場の特殊なセッティングと空気が引き起こしたんだと思います。

当時の安宅さんの様子を振り返って、愛さんは言います。

愛さん コクリ!キャンプの五感や体を使うワークによって、安宅さんは「自分の根っこ」とつながったんだと思います。そして、地球全体、システム全体を感じ、地球の願いや痛みを感じられる状態に至ったのではないでしょうか。その結果、地球の願いが安宅さんを通して噴出してきたんだと思います。

これが冒頭の説明の「目的も課題もまだはっきり見えない段階で当事者が”本質的なもの“とつながる」ということにあたります。

愛さん それは安宅さんに限ったことではなく、多くの参加者に起こる現象でもあります。

自分という媒体を通じて、地球やシステムの声が出てきて、自分は”役割”としてそれをやる。自分はこのために生きていたんだ、というのがストンとつながる瞬間があるんです。

創発と立ち上げがセットになっているから種火が消えない

そうやって生まれた「風の谷」のアイデアを、安宅さんは130名の参加者の前で発表しました。

安宅さん コクリ!キャンプはセミオープンの場であるということもポイントで、創発と立ち上げがセットになっているわけですよ。130人の前で発言したら、もうなかったことにはできないから、自分が種火になって、やらざるを得ない(笑)

130人の前で風の谷の発表をしている瞬間

安宅さんが種火となったこのプロジェクトには、キャンプ当日に賛同者が集まって議論が交わされました。

コクリ!キャンプ当日の議論のメモ

その後、錚々たるメンバーが仲間として加わっていきます。

風の谷を創るプロジェクトには50名以上の多種多才なメンバーが集う(プロジェクトサイト/プロジェクトメンバーより)
https://aworthytomorrow.org/people/

すでにこの記事で紹介してきたように、風の谷を創るプロジェクトは、都市集中型社会に対するオルタナティブを持続可能な形で創るにはどうしたらいいかを問い続け、実現に向けて取り組み続けるという運動論です。

安宅さんはコアメンバーとともに奥会津や遠野などへと赴いて、「谷」的な場を肌で感じながら考えを深めると同時に、「風の谷憲章」をまとめていきました。そして、経済性、インフラのことから研究を進め、プロジェクトの加速とともに研究の領域を文化空間業へと幅を広げていきます。

2021年春の段階では、空間デザイン、インフラデザイン、エネルギー、森・田園、まち・商業、生活&オフィス、食と農、教育、ヘルスケアの10の領域で検討が進められているのだそう。

立ち上げから4年が経った現在は、群馬県のとある町で新たな動きがスタートしつつあります。冒頭の説明の二つめである「感覚が仲間と共有されることで、エネルギーが高まり、予想もしない未来を築いていく」という段階の途上にあるのではないでしょうか。これからどんな未来につながっていくのか、今後の展開に注目です。

コ・クリエーションの価値は「深い問い」を生み出す力

今回のインタビューで、コ・クリエーションについて「最初は何を言っているのかよくわからなかった」と本音を教えてくれた安宅さんですが、今、改めてコ・クリエーションをどう捉えているのかをうかがってみると、こんな答えが返ってきました。

安宅さん コ・クリ(エーション)で取り組まれ、生まれているのは、目的が自分の中にあるのかすらもわからないことに対して、そこから吹き上がってくる何かに力を与える「場」づくりなんだと思います。

さらに、話はコ・クリエーションにおける「創発」に及びました。

安宅さん 創発自体はどこでも起きているし、僕自身もそうだけど、知的生産活動で食べている人は、創発をコンスタントにやる技能なのか技を持っています。

でも、コ・クリエーションの場合は、創発が通常の問題意識の外で起きる。だからまるで魔法のように見えるんだと思います。それが人とのつながりのなかで自分の内側から発生するんだからオーセンティック(authentic)だよね。

そんなコ・クリエーションの価値を、安宅さんはどんな点に感じているのでしょう。

安宅さん コ・クリエーションの価値は、やっぱり「深い問いを生み出す力」でしょう。僕が参加したコクリ!キャンプは、解くに値する問いが生まれる場でした。コ・クリエーションでは、“問題の解決”が行われるのではなくて、“問いが創発されている”ということが偉大だと思う。

コ・クリエーションについて考えていくうちに、安宅さんの口から繰り返し語られた「問い」というキーワード。愛さんは「問い」の持つ力こう語ります。

愛さん よい問いには、本人が気づいていなかったものを引き出す力があります。日常では訊かれることのないような問いに出合うと、私たちは潜在意識にアクセスすることができ、本当は大事だったことに気づくことができます。それが本質的な問いであるほど、人は探究し続けることになり、さらには周りの人を引き寄せます。

安宅さんの言うように、「深い問いを生み出す力」がコ・クリエーションの価値のひとつであることは10年におよぶ研究に照らし合わせても、間違いありません。

コクリ!キャンプで話す愛さん

コ・クリエーションのプロセスを通じて安宅さんの中に湧き上がった「人間が都市にしか住めない世界が、次世代に残す未来なのだろうか」という問い。その問いのもとにさまざまな能力を持った人が集まり、「風の谷を創る」プロジェクトはどんどん発展しています。

愛さん 明確な課題に対して解決法を模索すると、私たちの創造力はロジカルな思考の延長線上に現れます。そのため、課題解決型の思考回路では人間の創造力に限界があって、ひとつの課題を解決する以上の創造性が出てくる機会は多くありません。

それに対し、コ・クリエーションでは、そのプロセスで潜在意識からの問いが出現します。それは、本人も予想しなかったような本質的な問いで、それに向き合い探究し続けた結果、予想していなかったような創造が起こります。だから、コ・クリエーションは予想もしなかったような未来をつくることができるんです。

問いが本質的だと行動したり実践したりするためのエネルギーが生まれます。そのエネルギーが共感を生み、仲間を呼び、創ろうとする未来の可能性が革新的に感じられる。その点が、コラボレーションとの大きな違いであり、コ・クリエーションがとってもパワフルな理由でもあります。

多忙を極めるなか、「何かが変わるかもしれない」とコクリ!キャンプに参加した結果、風の谷を創るプロジェクトを立ち上げて推進している安宅さん。以前と比べて人生が激変したといいます。

安宅さん 自分の人生で風の谷みたいなことをやるなんて思っていなかったし、今や1週間で知的生産的な活動に使っている70時間のうち20時間もこのプロジェクトに充てていて、平日の夜も休日も風の谷のことをやっている。以前にもまして忙しくなっちゃって、「どうしてくれるんですか!」って言いたい(笑)

そんな風に話す安宅さんは、言葉とは裏腹にとても楽しそうに見えました。

愛さん 普通は仕事が増えたら嫌なのに、なぜかわからないのにやってしまう。しかも”楽しそうに”というところが、コ・クリエーションなのかな。人間は本質的なものを追っているとき、意義を感じて幸せなんだと思います。

約130人が参加した「コクリ!キャンプ2018」

ここで、記事の冒頭で紹介したコ・クリエーションの説明を、もう一度見てみましょう。

・目的も課題もまだはっきり見えない段階で当事者が”本質的なもの”とつながる
・その感覚が仲間と共有されることで、エネルギーが高まり、予想もしない未来を築いていく
・目に見えない活力に満ちていて、使命感にも似たような感覚で道を切り拓いていく

最初にこの説明を読んだときよりも、「コ・クリエーション」の輪郭がはっきり見えてきたのではないでしょうか。

新型コロナウイルスの世界的な流行をはじめ、これまでの常識では予想できないことが次々と起こる時代に、従来の課題解決型のアプローチには限界があります。今こそ、コ・クリエーションが価値を発揮するときがきています。

この連載では、コ・クリエーションを研究してきた愛さんといっしょに、今後も地球規模のコ・クリエーションである「地球コクリ!」を探究していきます。次回もどうぞお楽しみに。

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