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ギフト経済(ギフトエコノミー)ってなに? ソーヤー海が経験した、お金の呪縛から解放。そして貢献し合うことで成り立つ経済の可能性。

ハロー、ソーヤー海だよ。今日のテーマはギフト経済(ギフトエコノミー)。資本主義社会のなかでの実験や、シェアリングエコノミーや物々交換とは何が違うのかを、紹介できたらと思う。

僕がギフト経済と出合う前は、それこそお金持ちになって、若い女性と結婚して、子どもがいっぱいいて、でっかい家と車を3台買って……みたいな人生の成功像が僕にも植え付けられていたけど、大学一年生の時にアメリカがアフガニスタンを爆撃し始めたのを目にして、「それってくだらなくない?」って思うようになった。自分が住んでいる国が大勢の人を殺しに行く状況なのに、物質的な成功を追い求めることに意味を感じなくなったんだ。

そして反戦運動をするなかで、戦争は軍需産業や大統領選に欠かせないビジネス戦略だということを知ってから、ますます資本主義経済への不信感が増した。

お金儲けをするために、人を苦しめたり、殺したりすることを促してしまう経済をなぜ僕たちは続けているのか? 

環境破壊もほとんどが短期的利益のために行われてしまっている。
水俣病も、原発事故も、プラスチック汚染も、日本やアマゾンやボルネオの原生林の破壊も、気候変動も。これらは、僕たちにとって致命的な資本主義経済の副作用。

そんな自分が生まれ育った社会に絶望しながら、大学卒業後、最初に就いた仕事がスーパーのレジ係。毎週40時間、自分の貴重な命の時間を安売りして、ロボットのように100人以上になんちゃって挨拶をしながら、数字のゲームのコマを演じていた。

誰かの儲けのために、しっかりとレジに溜まったお金を数えてから、疲れ果てて家に帰ってた。「僕は何のために大学を卒業したのか?」「何のために生きているのか?」って毎日疑問に思っていた。「お金がないと食っていけない」「time is money」「弱肉強食」という世界観に抑えきれない違和感を覚えていた。

とにかく先進国から抜け出さないと、僕のジレンマの「答え」が見つからないと思い始めて、コスタリカのジャングルに移り住むことを決めた。

衝撃だった。だって、ジャングルではお金があっても使うところがないし、お金がなくても食べていけるから。

人間以外のすべての生命がタダ食いしていて、一匹もお金を使ってない!
知ってた!?
資本主義の宗教では「お金がないと食っていけない」ってマントラをみんなで唱えるけど、それが嘘だったってことに気づいたんだ!

それからは資本主義ではない「宇宙経済」にどんどん意識が向いていったんだ。宇宙から無償で送られてくる太陽光を浴びた植物が、栄養を実に代えて、その実をいろいろな生命が食べて、その糞が土に還る……という生命のエネルギーが循環する本質的な経済。すべては恵み(ギフト)なんだ。

例えばいま吸っている酸素だって、海のプランクトンや森の植物からのギフトだよね。僕たちは彼らのギフトによって生かされている。だから呼吸するだけですべてとつながっている(interbeing/共生、相互依存)って感じられる。人間も昔はそんな豊かな世界で暮らしていたって、『懐かしい未来』の著者ヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんや、先住民の方々から教えてもらった。

それから「gift economy」に関心を持つようになった。ギフト経済の実験とを実践をする組織「サービススペース」のサイトによると、ギフト経済は「交換条件が明確に決められていない(見返りがない)」ことって定義されている。そして重要な要素として、①無私無欲(「私がこれをやった」という打算的意識がない)、②受け手が価値を決める(受け取ってどうするかはその人の自由)、③やり取りが1対1で終わらない(Pay It Forward=恩送り)の3つを挙げている。

分かりやすい例を言うと、慈善寄付。見返りを求めず、お金やモノを贈ったり、ボランティアとして参加したり。それから集産主義――例えば狩猟採集民族みたいに、誰が食料を獲ったかは重要ではなく、みんなで当たり前のように分かち合うのも、ギフト経済のひとつの形だと思う。

あとは、ポットラック(持ち寄りご飯)。みんなで食べものを持ち寄って、誰がどのくらい何を持ち寄ったか関係なく、みんなで好きなだけ食べる(僕の経験だと必ず余る!)。

ほかにも臓器提供や献血とか、Wikipediaみたいな、多くの人の自由な貢献で誰にでも無料でアクセスできるオープンソースのものや、クリエイティブコモンズなども身近なギフト経済の形かな。

シェアハウスWELL洋光台にあったギフトパン。こだわりの天然酵母パンだけではなく、お花も生けてあって、心があたたまる愛の表現

母乳もまさにギフト経済! だって、お母さんたちが母乳代を請求し始めたら、ほとんどの人がかなりの借金持ちになるよね(笑)資源があるところ(先進国、大企業、お金持ちとか)にさらに資源が集まる仕組みではなく、母親が赤ちゃんに母乳をあげるように、必要なところに資源が流れる「母乳経済」もギフト経済の特徴と言える。

母乳経済(木多渓)

僕の生活でギフト経済を実践するインスピレーションのひとつになったのは、1年間お金を使わずに生きる実験をしたマーク・ボイルさんとイギリスのブリストルで出会って、「Free Economy Festival」に参加した経験。

みんなボランティアで、廃ビルを掃除して、摘んできた野草やキノコ、お店で販売できない賞味期限が切れた食べものとかを持ち寄って、有名なシェフが料理して200人くらいにタダでふるまうっていうイベントだった。学生、富裕層、ホームレスなどが隣り合わせで無償の5コースディナーをいただく衝撃的な体験。

それから、サービススペースの創設者ニップン・メッタと出会ったのも大きかった。例えば毎週何十人もの人に家を解放して、静かに座る時間(フリースタイル瞑想)の後、家族でご飯をふるまって、寄付も募らずに送り出すことを、アメリカ西海岸のベイエリアでもう20年近く続けていて。本当に何の見返りも求めず、喜びから実践しているんだよね。それについては、彼のTEDxトークをぜひ見てほしい。

もうひとつ、京都で体験したヴィパッサナー瞑想の合宿にも心を動かされた。10日間の合宿の宿泊費も食費もペイフォワードされていて、僕より前に参加した人たちからのギフトで運営されているらしい。

途中で辞めた人は寄付ができず、10日間を座りきって誰かにその体験を贈りたい人だけが寄付できるっていう、お金を出すハードルがめちゃめちゃ高い不思議な仕組み。資本主義的な視点から見れば絶対成り立たないのに、彼らはそうやって世界中に瞑想センターをつくってきた。

今回の記事はここまで。次回はギフト経済について、もっと深く考えて行こうと思う。

(編集: 岡澤浩太郎/協力: あいちゃん、井上真優、置塩ゆかり/イラスト: 川村若菜)

– INFORMATION –

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