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バス停から都市空間を変身させよう! オランダ発、昆虫たちと共存し空気をきれいにする「Mobiroof」

人々の交通の足として利用されているバス。その待ち時間やバス停を利用したユニークな取り組みを、これまでgreenz.jpでは記事にしてきました。

たとえばソーラーパネルで自家発電することができたりジャズの音楽が流れたり電子書籍を読むことができたり。いるだけで楽しくなりそうなバス停がたくさんあります。

今回ご紹介するのは、オランダのユトレヒト市にあるバス停です。写真を見てどんなことが気になりますか?

Photo: courtesy Mobilane

実はこのバス停の屋根は、「セダム」と呼ばれる複数の多肉植物で覆われていて、ミツバチや蝶など昆虫たちの新しい生息地になっているのです! オランダの「mobilane」社のMobiRoof(モビルーフ)カセットという植物の屋根が使われていて、他にもベンチに竹が使われていたり、バス停の基礎にリサイクルされたコンクリートが使われています。

多肉植物のセダム

世界では、都市化や農業、森林伐採の影響で昆虫たちが生息地を奪われ、20年の間に40%の昆虫が減少しているといわれています。オランダも例外ではなく、棲む昆虫が約半分になっている自然保護区域もあるそうで、絶滅の危機に瀕している種もあるのだとか。(出典元: オランダの新聞・NRC

この背景には都市化があって、1950年の地球では農村部に都市部の2倍の人口がいましたが、2008年にそれが逆転。現在はおよそ半数の人が都市部に住んでいます。2050年には都市に住む人は全人口の2/3になるとも言われていて、その中でもオランダは、国土面積に占める都市面積の割合が65.8%と、世界で一番都市化が進んでいる国なのだとか。
(出典元:世界の中の日本を知る、世界ランキング

そこで、ユトレヒト市では都市部の生物多様性を保全するために、市内の316のバス停をMobiRoof(モビルーフ)カセットにしていて、そのうちの96のバス停にはソーラーパネルがついています。メンテナンスは春と秋にするだけでOK。また、この屋根にすることのメリットは他にあって、大雨の時の水を吸収してくれるそうです。

気候変動による大雨や洪水は「都市型水害」と呼ばれ、地表がアスファルトやコンクリートで覆われていることによって水が地表に浸透・吸収することができずにおこります。オランダでも大雨がたびたび起こりますが、植物の屋根のバス停は、この水をゆっくりと吸収し、一部を蒸発させてくれる役割もあるのです。

さらに「MobiRoof」のもうひとつのメリットとして、都市部の自動車の排気ガスや産業から排出された細かいほこりを捕えて空気を浄化するという特性があります。

Photo: courtesy Mobilane

ユトレヒト市はこのバス停だけでなく、電気で走るバスへの切り替えも進められていて、その電力の供給源は風力発電によるものを利用するなど、環境対策を積極的に進めている様子。2028年までには市内を走るバスの100%を電気で走るバスに切り替えるという目標も掲げています。

都市部に住む私たちは、つい自分たち人間の都合だけを考えてしまいがちです。緑は公園にあって整備されたものがいいとか、虫は少ないほどいいとか、自分たちの快適さだけを追い求め、多様な生物と共存しているという実感が持てない人も多いのではないでしょうか。

Photo: courtesy Mobilane

日本の都市化は15.4%ですが、そこに住んでいる人の割合は人口の65.8%にのぼります。毎年のように大雨や洪水で悩まされている現実もあり、決して他の国のことではありません。

生物多様性の視点を持って限られた土地を眺めてみると、すでにあるバス停の屋根を利用したり、民家や学校、マンションやビルの屋上などを緑地として活用するなど、色々なアイデアが浮かびます。人間だけでなく、全ての動植物にとって住みやすい環境にしたいものですね。

[via https://www.fastcompany.comhttps://www.technologyreview.jphttps://www.bbc.com
https://www.mobilane.com, ©Barbra Verbij / courtesy Clear Channel]

(Text: 山崎久美子)
(編集: スズキコウタ)