「アメリカで、高校生がホームレスのためにソーラーパネル付きテントを開発しました」。
そんなニュースを聞いたあなたは、どんな高校生を思い浮かべるでしょうか。
スティーブ・ジョブズも顔負けの天才少年?
それとも英才教育を受けてきた秀才?
いえいえ違います。今回ご紹介するそのエピソードの主人公は、理工系分野には何の知識もなかった、平凡な12人のラテン系の女子高生たちなんです!
物語の舞台は、カリフォルニア州サンフェルナンド・バレー。街には近年ホームレスが急増し、2016年には前年比で36%も増加して7,094人に達しています。(出典元)それを肌で感じていたのが、地元のサンフェルナンド高校に通う女子高生でした。
ホームレス状態を強いられている、地域の人たちを助けたい。
けれど女子高生たちもまた、貧しい家の出身。金銭や物資の寄付をするゆとりはありません。そこで彼女たちが考えたのは、自分たちの手と頭を動かしてホームレスを救うことでした。
プログラミング、はんだ付け、テント縫いに3Dプリント。女子高生たちはおろか、社会人にとっても馴染みのない知識とスキルが必要となるテントの開発。見たことも聞いたこともない技術にぶちあたった彼女たちの道を開いたのは、「DIY Girls」との出会いでした。
「DIY Girls」は、理工系に興味を持ってもらうべく、実技教育の機会を提供することを目的に設立された非営利団体。日本でも理工系の女性は少数派ですが、アメリカでも理工系の仕事にたずさわる女性は全体の4分の1未満。低所得者層が多いラテン系の女性の割合はさらに低く、全体のわずか2%に過ぎません(出典元)。
「DIY Girls」のメンバーになった女子高生たちは、常任理事エブリン・ゴメスさんの指導のもとでプロジェクトを開始。やがて、科学技術や数学の力で社会問題を解決しようとする高校生らに開発資金を支援するプログラム「レメルソンMITプログラム」の助成金を見事に獲得しました。
その資金も活用して女子高生たちは、家を失った人が急場をしのいで安心できる空間をつくるべく、仮設シェルターとして利用できるソーラーパネル付きテントを、丸1年、長期休暇も返上して開発。どこに設営しても電灯からUSB端子まで使える高性能テントでありながら、折りたためばコンパクトなキャスター付きのリュックになる。そんな画期的な仕組みなので、らくらくと移動できて場所をとることもありません。
テントが完成すると瞬く間に地元のテレビ局や有名なラジオ番組から注目をあびることに。今後、女子高生たちが希望しているテントの量産が実現すれば、街の内外に住む多くのホームレスの生活を改善することになるでしょう。
それだけではありません。貧しい家庭に生まれ、特別な教育を受ける機会もなかった女子高生たちがプロジェクトを通して得た知識と技術、そして自信は、今後、女子高生たちの将来の可能性を大きく広げてくれるはず。彼女たちの活躍は他の女子高生たちを勇気づけ、科学に興味をもつきっかけにもなるかもしれません。
私たちは何かやりたいと感じたとき、同時にできない理由も、いくつも考えてしまいます。
お金が無いから。
才能が無いから。
もう年だから。
けれど、まずは一歩踏み出してみる。そうすれば、きっと条件やスキルある仲間の方があとからついてくる。そんなことを女子高生たちは身をもって証明してくれているのでしょう。
(Text: 西川富佐子)
[via The Lemelson-MIT Program, DIY Girls, Inhabitat, Mashable, School on Wheels, Women of Green]