参加者募集!未来ワークふくしま起業スクール&ツアー

greenz people ロゴ

「ムリなものはムリ」から始まるビジネスとは? 「クラシコム」青木耕平さんと考えた、“理想”を“手に届く希望”にすること

楽しいけど食えない。食えるけど楽しくない。ソーシャルな会社をつくるとき、続けるときに壁になるのが、「どうやって稼いでいくか」。連載「ソーシャルな会社のつくりかた」では、その壁をブレークスルーするヒントを、様々な角度から探っていきます。

連載3回目となる今回は、「北欧、暮らしの道具店」を運営する、「株式会社クラシコム」代表取締役・青木耕平さんの登場です。ECが主体ながらWEBメディアにも注力している「北欧、暮らしの道具店」は、「greenz.jp」とも同級生(10周年)。

その青木さんは、greenz.jpプロデューサーの小野裕之が、かねてから事業展開の悩みについて腹を割って相談してきたという、“鏡のような存在”。未来への指針となり、伴走もしてくれた師と仰ぎます。一方、プライベートでは気楽な付き合いが続き、対談中も思い出話へと横道にそれる頻度の高さ(!)が、その絆を物語っているようでした。

そんな2人の対談の起点は、ソーシャルな会社が直面するであろう「理想と現実」、「社会性と経済性のバランス」。大好きなんだけど、なかなか事業化できなくて。人を雇いたいけれど、稼げていなくて…。多くの事業体が、こういったはざまで活路を求めているのではないでしょうか。

ソフトな印象の事業をしている反面、ビジネス観はともに“ストイック”。似たもの同士の2人が、この永遠のテーマをいかに切っていくのでしょうか?

青木耕平(あおき・こうへい)

株式会社クラシコム 代表取締役
1972年生まれ、埼玉県出身。2006年9月に実妹と株式会社クラシコムを共同創業。賃貸不動産のためのインターネットオークションサイトをリリースするが、1 年ほどで撤退。2007年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業、現在に至る。

北欧、暮らしの道具店」(EC兼WEBメディア)。
「フィットする暮らし、つくろう。」をコンセプトに、「自分にフィットしている」ライフスタイルづくりのお手伝いをするサイト。毎日雑誌を読むように楽しめ、そこに出てくる商品が気に行ったら、すぐに買うことができる「カートボタンの付いた雑誌」のようなサービスを提供している。「暮らし」にまつわる様々なテーマを特集した連載も好評。(月間PV:約1600万/月間UU:約150万 ※2017年10月時点)

無理なものは無理。まずは所与の条件で考えてみる

小野 僕らの出会いは2014年頃でしたよね。

青木さん グリーンズの存在はその前から知っていて。People’s Books(*)を読む機会があり、どうもふぁっとした外見には似合わない裏付けっぽいものがあるらしいと、すごく興味を持ったのね。で、小野君にお声がけして、単刀直入に「どうやって儲けているの?」って(笑)
(*)「greenz.jp」による「ほしい未来のつくり方」がわかるブックレーベル。greenz.jpのメディア運営を寄付でサポートしてくださるgreenz peopleのために、毎年2冊を製作している。

小野 グリーンズはそのとき、ビジネスとしてはのぼり調子の時期(*)ではあったんですが、一方で営業の手が足りず、新規スタッフをとるか既存のスタッフでしのぐかで迷っていたんです。で、青木さんと出会って間もなく、「僕以外に営業ができる人がいない」って相談をして。

採用したい人の年収と想定している業務を言うと、青木さんは「その年収でそのスキルセットの人は来ないよ」ってバッサリ。グリーンズがどんなに理念型で、グリーンズの持つ魅力的なコミュニティへの参加権利があったとしても、そういう人は最低年収これくらいないと、って。
(*)寄附で成り立つメディア事業と並行して、パートナーの課題に対し、記事連載やワークショップを提供して収益化する「プロジェクト型事業」を増やしていった時期。

青木さん そんなこともあったね。どちらかというと僕は、所与の条件の中でどうするかってことを考えるし、そのほうがブレークスルーを起こせると思ったんだろうね。

小野 そこで僕はなんだか割り切れて、「あ、来ないんだったら、自分でやろう」と(笑)

実際グリーンズも、当時はみんな理想追求型で。それでも、社会性と経済性を両立させることにはすごくこだわっていた。そういうことを分かった上で、理想と現実を踏まえた建設的なアドバイスをしてくれる人って、なかなかいなかったんですよ。

つまり大体が、「いや、今は社会性無視するフェーズだから。一回稼いでから社会性に戻ればいいじゃん」という論調。でもそれができたのって、僕の知る事業体では見たことないんですよ。

青木さん 僕ね、これ、しょっぱなから言っていいかな(笑) 社員や小野君には何回も話しているとは思うんだけど、「うまくやったから、うまくいく」のではなく、「うまくいったから、うまくやれる」なんだよね。

成功と努力に相関関係はないって話なの。うまくいかないと見たら、さっさとやめて別のことをやったほうがいい、と。努力すると時間がもったいない。これが僕の流派なんだよね。

自転車で例えると、乗れる前にいくら乗り方のアドバイスをされても、乗れた瞬間に分かるあの「ああ! こういうことか!」って感覚。それまでにものすごい講釈や、ジャイロ効果がどうのっていう文献を一生懸命インプットしたとしても、あの瞬間に分かる量には到底かなわない。ちなみにそれは、僕がかつてサイドビジネスでやっていた、「せどり(*)」で味わった感覚なんですよ。
(*)古書店等で売られている本を他の古書店等に転売して利益を出すこと。

小野 今でいう、小商いのはしりですよね(笑)

青木さん そう(笑) 今の会社が食えないときに、まだ成功の味を知らなくて。その手ごたえが、「ああ! これか!」って、ビジネスプレーヤーになれた瞬間だったの。

そんなふうに自転車に乗れる人と乗れない人の溝もすごくあって。それは乗れない人からしたら、乗れるってことが“万能”に見えるから。乗れたら飛ぶようにどこへでも行けるんじゃないかと。でも現実は、結構疲れるからそう遠くへは行けないし、注意しないと危ないとか、いろいろ気づくわけ。

ビジネスも同じで、やれるようになってみて重要なのは、「無理なことは無理」って思えることなんだよね。勝手な理想を描きすぎると失敗する。要するに、マーケットという巨大な敵を前にした状態で、そう選択肢はないと。

小野 それで言うと、青木さんに「正攻法(*)のほうが、打ち手の選択肢が多いよ」って言われたことが印象に残っていて。

ソーシャルベンチャーって、始まり方が“トリッキー”なことが多い。亜流とか変わり者だとか、「目のつけどころがいい」とメディアうけした経緯があると、その後もそれを狙って事業展開をしてしまうことも。でも、継続性までもトリッキーなものを基本としてしまうと、どうしても打つ手が少なくなってきますよね。
(*)正面から堂々と攻める定石通りの方法。

グリーンズで言うと、最初からすべて寄付でメディア運営しようとしたところで、成り立たせるのは無理だったと思うんです。そもそも僕らはそれを目指してもいませんでしたけどね。

青木さん 実際、できるだけユニークな継続方法を求めている人も多いんじゃないかな。でも現実、銀行の融資のように王道の資金調達をしたほうが、着実な選択肢が用意されているんだよね。

経済性と社会性のはざまで、
自分のビジネスのあり方を探る

小野 ビジネスになった瞬間に、やっていることが自分のものでありながら、社会のものとなり、そこには商品やマーケットという機会であり制約条件がある。当たり前だけど、自分のやる気やリソースをかけ続ければ、必ずそれと比例してマーケットも大きくなるわけではないんですよね。

そんなときに、“スタンス”を変えられない社会起業家って結構多い気がして。なぜなら、自分が感じたひとつの感動の瞬間を社会に広げていきたいというような、現場に限りなく近い感覚で起業するので。

でもビジネスって、例えばアフリカのケニアに行って、五感で感じたその場の良さを、「写真集」で伝えていこう、といった発想なんですよね。自分が感じた100という喜びを30という喜びに抑えて、さまざまな人に提供していこう、というような感じ。100は伝えられないけれど、写真集でケニアを追体験してもらえるし、そこへ行くきっかけもつくっている。

そんなふうに周りに提供したいものを、因数分解をすることで要素を切り出して、その小分けにした要素をブラッシュアップしていくという発想に変わらないと、ビジネス化は難しいと。

青木さん ビジネスって、そこに他者が介在するわけじゃない? たとえば、「僕だけが納得している」という、言わば円の輪っかが矛盾なく閉じている状態から、そこに「小野君が気に入る」ってなったら、円にするための構成要素が二つに増える。そこに「儲かる」っていう構成要素が増えたら、その分輪っかが閉じにくくなる。そこに「投資家」や「取引先」がって…という、できるだけ複雑な利害関係者を矛盾なく一つの輪で閉じていくっていう話になる。

つまり、動物っていいよね、というところまでは一緒だけど、やっぱり間近で見たほうがいいって人と、そんなのは怖いっていう人とがいて。でも「写真集」だったらみんな見たいだろう、という発想。そういうふうに、どんどん経済性を追いかけていくと、抽象化せざるをえない

その上で例えば、「自分が味わったアフリカのそのままの良さを伝えること」だけにこだわるのなら、もしかしたら、ビジネスというプラットフォームは向いていないのかもしれないね。どちらがいいかという話ではなく、ビジネスを進めていく上で、自分のやりたいことはビジネスではないかもしれないという可能性も含めて、自分が本当に望んでいることを突き詰めることも、すごく重要なんだよね。

小野 そういう意味では、僕も、マネタイズを急がないほうがいいよ、というアドバイスはしますね。例えば週1日の午前中だけ「ボランティア」と割り切って3年間続けてみたら?とか。

いきなり自分の生活を全部かけてとか、3人丸抱えしていくとかになると、あなたが感じている良さが失われる可能性もある。それに抵抗があるなら、他で収入源を持ちながら、もっと無理なく続けられる形で進めてみたらって。

クラシコムジャーナル」は、青木さんが主導で展開するクラシコムの“ビジネス的な側面”にフォーカスしたWebメディア(2016年11月スタート)。その中でも多様なビジネスプレーヤーに、青木さん独自の視点で切りこむ対談記事は、これを読んでいる読者ならきっと楽しめるはず

越権せずに互いの持ち場でがんばることが
対等なパートナーシップを築く

――2017年9月、10周年を迎えた「クラシコム」。その長い年月の中で、ほとんど“苦労”というものを感じなかったという青木さん。それは「自分に向いていることしかやってこなかったことが大きい」と振り返ります。創業直前の34歳のとき、その原点となる忘れられない瞬間がありました。

俺はもう成長しなくていい。
横浜・青葉台のブックファーストから帰る夜道、歩道橋の上で。知らないことをどんどん吸収していき、できることを増やそうとしていた自分に終止符を打ったのだとか。

青木さん つまりそれは、「結局自分の持ちものでがんばるしかない」っていうことなんですよね。

小野 見切りをつけたわけですね。

青木さん そう。言ってみれば、僕と(共同創業者である)妹は、お互いに嫌なことを押し付け合って、仕事を成り立たせてきたわけ。

僕の中ですごく得意なことがあるとしたら、「ひたすら心配すること」。あらゆることを超エクストリームに心配できる能力(笑) 一方で、妹は性格も得意分野も全然違って。「成功するイメージしかない」「普通にやっていれば100年続くじゃない」なんて発想ができるのは、僕にとっては貴重な存在ですよ。

僕は、先に不安が見えると一歩も動けなくなることがある。そんなとき、妹にそれをそっと渡すと、僕にとっては手放したい時限爆弾のようなものでも、彼女はそれを抱えて勢いよく前を向いて走ってくれる。そこをなんとなく僕が周囲と調和を取りながら自分たちの領域をつくってきた感じで。

妹・佐藤友子さん(取締役・「北欧、暮らしの道具店」店長)と。青木さんの役割は全社的な戦略の策定と資源配分、経営資源の調達とマネージメント、アライアンス、新規事業開発、全社的なクリエイティブ、マーケティングや広報など。佐藤さんは、現場のマネージメント、顧客対応、読みもの・商品のクオリティチェックなどを行う

「北欧、暮らしの道具店」の店長コラムでは、佐藤さんの暮らしを楽しむ姿が、お客さんの共感を集めている。この他、毎日更新されるミニコラムは、スタッフの愛用アイテム、バイヤー・編集チームの仕事風景、提携する料理家のおすすめレシピなどバリエーションに富み、読者を飽きさせない工夫がされている

小野 おふたりの持ち場が違うことは、ほんとに運がよかったんですよね。グリーンズも、ビジョンを描く菜央さん(グリーンズ代表・greenz.jp編集長)とプロデューサーの僕とで、役割分担をしてきました。

さっきの輪っかの話で言えば、良いパートナーって、それぞれが自分の輪っかを大きくしていっている状態だという気がして。でも、多様な能力を一個人の中に取り込んでいくって、限界があるんですよね。かつ2人が同じ場所にいたら、見ている幅も狭く、リスクも大きい。

だからそれぞれが“全然違う部分”で得たものを自分たちの輪っかに積極的に取り込んで、ビジネスをスケールさせていく感じ。そこには「互いの領域を越権しないエチケット」みたいなものも必要だと思います。

青木さん そう、暗黙のね。

小野 あとは、他者にマネージメント的な力を借りたいとき、「この仕事に、あなたの週に1日だけください」っていうパートナーシップもありかと思うんです。

マネージメントの仕事は、業務を人に割り当て管理していくこと。だからマネージャーと現場のプレーヤーとでは、時間的なコミットメントの仕方は当然違います。例えば僕の場合、マネージャーとして関わっているSIRI SIRI(ジュエリーブランド)やANDON(日本橋のおむすびスタンド)については、基本的にいつも現場に立つということはないですし、週1日程度のコミットメントでやっていくことを最初からパートナーたちに理解してもらっています。向き不向きもありますしね。

でもそれだからといって、自分は週に5日関わり、相手は週1 日だけだから、「大事なことを決めるときは、俺のほうが優先な」って話だと…。

青木さん おかしな話になるよね。

小野 プレーヤー側がマネージメント側の人と良いパートナーシップを築くには、そのように時間的に限られた関わりでもきちんと成果を出せるという信頼がないと難しいと思うんです。大切なのは、コミットメントの仕方は違っても、決定権は限りなく対等に持つことなんじゃないかと。

青木さん なるほどね…。それメモっとこ。

おもしろい話に転換して自分含めて“のる”ことで
チームが動いていく

「クラシコム」の職場。

――社長である青木さんが、ここ最近改めて再構築に力を入れている、5人の小さな「エンジニアチーム」。自社オリジナルのECシステムに一新し、制約なしに理想を追求できる土台は整ったものの、一般的なネットショップから、「買い物ができ読みものとしても魅了的な雑誌」へと脱皮するには、まだまだステージが無限にある状態。現場に漂う責任の重圧…。青木さんはチームを集めて言います。

今は誰も知らない。「北欧、暮らしの道具店」にエンジニアチームがあることすら知らないだろう。でも、今や国民的サービスとなった「クックパッド」も、創業当時は「世のエンジニアが行きたい会社」になるとは誰もが想像をしなかったのでは。同じように、「クラシコム」のエンジニアチームが、いつの日かベンチャーのエンジニアたちの「行きたい会社ベストテン」に入るとしたら、話としておもしろいだろう? 僕らのチームの新しいミッションは、「世のエンジニアがどんどん入りたいと思うようなチームになること」。俺たちの本業はそれだ!

青木さん …すると、本人たちへのサジェスチョンは、常に「お前今さ、このチームが加わりたいチームになっているか?」。それだけで、「なんかアウトプットがダサい」「自分たちの想いがきちんと外に伝わっていない」などと、自分たちで考えるわけですよ。そうすれば、自然に成果は出てくるんだよね。

小野 なるほど。青木さんって、さっきの「心配する能力」の話のように、“見立ての力”を使って、そこに向かって物語をつくるような課題設定が得意ですよね。自分にも課しているし、チームづくりにおいても、「この定量的な目標を達成せよ」とかじゃなく、相手にバトンが上手くわたるように、抽象度の高い定性的な目的を設定する

青木さん そういう、おもしろくなる勝負にしなきゃいけないときってあるじゃない。ソーシャルベンチャーが食えないってときも、食えなくって辛いっていうよりも逆に食えなくてよかったー!って話になんないのかな、とか。話としておもしろいことにどう転換して自分も含めて“のる”か、ってことにしか希望を見出せなくて。

小野 でもそれって、ものすごく経験値が要ることだと思います。経営者が上から目線で俯瞰したもの言いをすると、現場との乖離が生じてしまうし、現場の声を聞きすぎると実力以下の目標に成り下がってしまうし。

青木さん 多分、実感のもてる「希望」を見せることしか新しく事業をはじめる意義ってないと思う。それを提示する責任は、やっぱり経営トップや、少なくとも経営チームにはあるよね。要は本人にとってのベネフィットが明確になっていて、実現可能性もきちんと感じられる、適切な目標が与えられている状態。これはすごく意識しているな。

「北欧・暮らしの道具店」の広告コーナー「BRAND NOTE」。クライアントの商品、サービス、それらが生まれた背景を、おもしろくて役に立つ内容に編集し、「読みもの」で紹介していく。作り込みの深度が特徴で、広告記事を追いかけて発する「BRAND NOTEの舞台裏」のコーナーは、裏の裏まで見せ尽くす価値を存分に感じさせてくれる内容。(2017年11月時点で、45ブランド・134本の広告記事を企画・制作)

青木さん もうひとつ例を挙げると、2015年から「広告」の事業を始めたんだけど、最初の課題設定は、「日本一プレミアムで、それに見合った値段で売れる商品を作ろう!」だった。もちろん手間を惜しまず丁寧につくりこんでいる上での話だけど、その広告を相場でとか、あるいはもっと安く売ろうっていうと、もう課題自体がつまらなくなっちゃう。

だったら世の一番高い広告の1.5倍くらいで売れる金額をつけて売ろう、ってほうが話として断然おもしろい。「その値段じゃ合わない。誰も買わないよ」となれば、本気でやる価値がないし、その時は潔く撤退しようと、ある程度腹もくくっているんだよね。

ものごとをありのまま捉えると、見えてくるもの

青木さん それと、今のところ店舗運営をしていないのは、全国に100店舗広げようって話を、今のような“実感の持てる希望を感じる”話にできる自信が、僕にないからなんだよね。でも、そのうちそういう意味付けを求めてきたり、自分で物語を描いちゃったりするスタッフが現れたら…。受け手の問題もあるかもしれないな。

小野 それで言うと、相手がどのようにその状況を認知しているかに対する、「思いやり」や「想像力」も必要かと。

僕が今やっているANDON(日本橋のおむすび屋)では、実はオープンの本当に直前まで、お店でご提供するメニューのコンセプトが決まり切っていなかったんです。店舗運営は武田昌大くん(通称トラ男)に一任しているし、結局は現場を運営する人がそれを信じられることが大切なので、僕がそれを決めないほうがいいかもな、と。だから僕は、情報収集のきっかけだけをつくって、何がおとしどころになるのかを楽しみに待っていて。

紆余曲折あって、つい先日、現場で軸が決まったんです。すると、「俺もそれを分かっていたけど、自信がなかったんだよね」とか「言葉にしてみて、そうだったんだと気づいたよね」とか、そこにいるみんなが同時に“腑に落ちる感覚”があったんですよね。

青木さん さっきのエンジニアの話も、現場スタッフと話していて気づいたことも多かった。どうやったらこの人が目をキラキラして仕事に向かえるのかな、と素直に見つめたときに、自分の仲間になりたいって人が現れることをいやだと思う人って絶対いないじゃない?最初はそんな直観。

人は無意識に見たいようにものごとを見ているから、ものごとを「ありのままに見る」って実は相当難しい。でもそれができたときに、それまで凸凹さえ分からなかった、目の前の世界の解像度が上がるというか。普通の中にあるすごさのような、いいことも見えるようになるんだろうね。

(対談ここまで)



「無理なものは無理」という前提ではじまったこの対談。ふたを開けると、不思議と2人の想いが前向きに交錯し、建設的な議論の大地が広がっていました。

自分の才能をある段階で見限ることは勇気のいること。でも仮にそうしてみると、他者の能力をより尊重し、結果的に上手く周囲の力を活かすことにつながるのかもしれません。

また、よく「仕事は楽しんでやろう」と言うけれど、ビジネスとしてやっていくには、他者なり自分なりが、それ相応の新しい課題設定をして、楽しみかた自体をリデザインしていく必要もある。そうかといって、他で上手くいった事例をそのまま当てはめても、動かないのが人間。その答えは、その現場それぞれ、人それぞれの中にあるのでしょう。

そして、そもそも「稼ぐぞ!」と意気込む前に。
等身大の自分を支点にして、まっすぐに世界を見てみると、霞のような理想ではなく、現実的に手の届く希望が見えてくる。そんなわくわくした予感もしてきました。

まだまだ深堀の余地がありそうな、「ソーシャルな会社のつくりかた」。連動して開催中の、「グリーンズの学校」の「ソーシャルな会社のつくりかた」クラスでは、青木さんも講師を勤めています。ちなみにこのクラスは2期以降も継続していく予定ですので、こちらもご期待ください。

(本記事は2017.12.18に公開されたものです。)

– INFORMATION –

第2回開講決定!グリーンズ流・プロデューサー塾はじまります!
「ソーシャルな会社のつくりかた」クラス

ソーシャルなプロジェクトや事業や会社を経営する人のための「ビジネスとチームづくり」を、一緒に学びませんか?

詳しくはこちら

【ソーシャルな会社DATA】
社名 株式会社クラシコム
設立:2006年9月
代表者:代表取締役 青木耕平
社員数:40人(2017年12月1日付)
事業内容:EC事業、メディア事業、広告事業、スイーツ製造販売事業、雑貨企画販売事業
グループ会社:KURASHI&Trip 株式会社、株式会社 OYATSUYA SUN