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楽しいけど食えない、食えるけど楽しくない。その向こう側に行くには? グリーンズ鈴木菜央・小野裕之が語る「ソーシャルな会社のつくりかた」

ソーシャルな領域に関心のある人々が、会社やNPOといった団体をつくり、事業を立ち上げた時、多くの場合に壁となるのが、「どうやって稼いでいくか」ということ。

理念やビジョンを大事に活動していきたいけれど、うまくそれを持続可能な収益につなげられない。逆に、収益は上げられるようになったけれど、なんだか初心の理念・ビジョンからずれてきている気がする…そんなジレンマに陥っている人も少なくないと思います。

それらソーシャル業界特有の悩みに応えるべく、グリーンズの学校ではこの秋、新クラス「ソーシャルな会社のつくりかた」を開講します。

ソーシャルな領域で事業を立ち上げ、収益を上げて持続的に発展している会社やNPOの、主にプロデューサー的立場の方を講師として招き、組織運営やビジネスモデルについて学んでいく全8回の連続講座。マイプロジェクトの枠を越えて、事業や組織としてソーシャルな課題に向き合い、ブレイクスルーを起こしていきたい人たちのための、実践的クラスです。

今回は、開講に先立って、グリーンズ代表理事・greenz.jp編集長の鈴木菜央と、グリーンズ事業統括理事・プロデューサーの小野裕之の対談をお届けします。

楽しいけど食えない、食えるけど楽しくない、その両方の過渡期を経験してきた、事業体としてのグリーンズの歩みを棚卸ししながら、「ソーシャルな会社のつくりかた」についてたっぷり語っていきます。

やりたいことでは食べていけない。
稼いでいくたび疲弊する。
限界を感じたとき、誰かに頼ろうと思った

小野 さて、何から話しましょうかね。「ソーシャルな会社のつくりかた」

菜央 そうだね、どうしようかね。

小野 ソーシャルな事業をやっている団体を見ていると、菜央さん的なビジョンを描く役割の人と、僕みたいにプロデューサー的な役割の人、そのどちらか片方しかいなくて、社会性とビジネスの両立に苦しんでいる団体が多いのかな、という印象があって。

菜央 そうだね。

小野 素晴らしいモデルは必ず、表向きに見える“価値提供モデル”と、その価値がより強化されて続いていくための“継続モデル”とが一体になったかたちをしていて。その影の立役者が、プロデューサー。いわばジブリの宮崎駿監督における鈴木敏夫プロデューサーのような存在(*)です。

(*)宮崎監督の構想がどんなに素晴らしいものであっても、それだけでは映画は完成しない。資金を集め、スタッフを集め、制作現場を用意し、映画完成後も、映画館を確保し、宣伝をし、グッズやDVDを販売し、次の制作費を確保する。その一連の流れがすべて揃って初めて、映画づくりと言える。その全体プロデュースの役割を担うのが、鈴木プロデューサー。さらに言えば、宮崎監督は一度も、自分で撮る映画のテーマを自分で決めたことがない、なんて逸話もあるほど。映画づくりはいつも、鈴木プロデューサーの「宮さん、つぎは◎◎をテーマにした映画を撮ってみないかい?」という問いかけがスタートになっているのだとか。

でも、特にNPO法人のような非営利組織の形態をとっているところは、プロデューサータイプの人間の方が少ないのかな。「なかなか稼げる事業がつくれない」とよく相談を受けます。

今でこそグリーンズも、連載やスクール、ワークショップを組み合わせて企業や自治体とプロジェクトをやっていくという独自の稼ぎ方を確立してきたわけですけど、そもそも僕が入る前ってどんな状況でしたっけ。

菜央 うん、まずはそこから振り返ろうか。もともと2006年に別の会社で始まったウェブマガジン「greenz.jp」の運営を、3人の有限事業組合としてスピンアウトさせたのが、団体としては始まりだった。

でも、当時は「greenz.jp」自体が全くお金を生んでなかったのね。ウェブのデザインもまだまだ使いづらくて、でも、それを改善するための投資をすぐに回せる状態ではなかった。

2006年7月、創刊した当時の「greenz.jp」トップページ

菜央 それで、「greenz.jp」で短期的にお金を生み出すことは諦めて、まずはとにかく編集プロダクションとしてお金を稼いで身を立てていこうという判断をしたわけです。

小野 ウェブの運営とかパンフレットの制作とかいろいろやってたんですよね。

菜央 そう。メディアをやってて環境や社会問題に詳しいということと、メンバーにデザインや編集のバックグラウンドがあるという強みを活かして、短期的にお金を生み出そうと考えた。

で、編プロとしてとにかく営業して受注して制作して…1年ぐらいかけてお金を貯めて、「greenz.jp」の専属スタッフを雇ったの。これ自体は当時としてはかなりがんばった方だと思う。

greenz.jp専属スタッフを雇った2008年当時の中心メンバー。一番右が鈴木菜央

菜央 それで「greenz.jp」自体のコンテンツづくりや発信にもある程度力を入れられるようになった。でも、その後も相変わらず編プロがお金を稼いで、「greenz.jp」は稼げない、という状況から脱却できなかったんだよね。サイトの知名度や求心力自体はだいぶ上がってきたんだけれど。

小野 確かに、僕が入った2009年当時すでに「greenz.jp」は知る人ぞ知るウェブマガジンって感じで、情報感度の高い人には注目されていましたからね。でも内実はそれ自体では全然稼げてなかった、と。

菜央 なんだか精神と身体が分離しているような感じで。編プロサイドのスタッフは相当ハードに働いていたから疲弊していく。一方で「greenz.jp」のスタッフは自分たちがお金を生んでいない負い目が、やっぱりあって。

このままじゃ良くないな、と。どうしたらこのねじれを解消して、「greenz.jp」単体で食べていけるようになるのか、自分たちの行動に自信を持って幸せになっていけるのかと、いろいろ模索したけど、どうにもうまくいかなくて…。

これはもう、お金を稼ぐのが得意な人の脳みそを借りるしかないなと思って、「日本仕事百貨」(当時の「東京仕事百貨」)に求人記事を書いてもらって出したの。そこで小野っちと出会ったんだよね。

小野 なるほど。でも、最後まで立ち上げた自分たちでやり切ろうとは考えなかったんですか?

菜央 やろうとも思ったんだけど、もう限界だなって。やっぱり何か新しい複雑な問いに挑む時には、余裕が必要なのね。でも当時は毎日が忙しくて全くその余裕がなかった。これはもう、得意な人に頼るしかないと。

だから何人か面接してすぐにおのっちと出会えたのは幸運だったよね。「あーもうこの人だ!採用」って(笑)

余剰を生み出しては一番大切な領域に投資していく。
その先にしか組織の成長は描けない

菜央 逆におのっちからすると、入ってから今に至るまではどんな風に振り返る?

小野 僕は0から1をつくっていくのは得意ではない人間だから、プロデューサーとしての期待をもって迎え入れてもらえたのはありがたかったですね。相思相愛的で。

その上で、4, 5年ぐらいのリードタイムを持って、グリーンズらしい稼ぎかたをじっくり本質的に追求できたことが、大きかったと思います。自分たちらしくないことで無理やり急いで稼がなくてよかったというか。

菜央 そうだね、むしろ健全な稼ぎ方を確立していかないと続かないね、ということでおのっちに来てもらったわけだからね。

小野 でも最初の頃はいろいろ試しましたよね。広告モデルも模索して営業に回ったり。鳴かず飛ばずでしたけど(笑) でも、いずれにせよ広告だけに依存する形ではやりたくないよねって話はしていたし、それで良かったのかもしれません。

グリーンズの人たちは頑固だから、やりたくないことは本当にやらないですよね(笑) その分、自分が何をやりたいかをお互い表明しなくちゃいけないという厳しさもあって、だから純度の高さを保てたのかもしれないですけど。

菜央 むしろ、純度高くやっていくためには、最初は4,5年ぐらいのスパンで見ないとダメだったのかもね。1〜2年で結果出そうって思ってやってたら全然違う形になっていたかもしれない。

小野 そうですね。だから経営上も、編プロの受託制作事業をいきなり辞めるのではなく、新しい稼ぎ方を模索しながら徐々にフェードアウトしていきましたよね。これまでの方法で貯めた資本をできるだけ先行投資に回して、取れるリスクは取りながら、それでも会社全体が回っていくようなバランスで舵取りをしていって。だから僕もその間ずっと給料は出ていたし、そこが無給だと厳しかったと思います。

菜央 これはソーシャルな分野であろうとなかろうと同じだと思うんだけど、経営的な視点から初期のグリーンズを振り返ると、やっぱり、いきなりやりたいことはできないっていう当たり前のことが見えてくるよね。

やりたいことはたくさんあるけど、今はできない。じゃあどうするかって、余剰をいかに生み出すかということだと思ったの。今、この瞬間に稼げる方法でまず資本をつくって、その資本を長期的に成長できる領域にしっかり振り向けていく。

それを地道に続けていくと、資源を振り向けた分が自分たちの成長という形で還ってきて、ようやくそこで団体としても次のステージにいけるようになるんだよね。その積み重ね以外の方法で変わることってできないなって思う。

だから、僕もスタッフも「greenz.jp」ではすぐには食えないってことは分かってたけど、それでも年間で1,000万ぐらいはこのメディアに投資していこうって決めて、それを5年間続けてきた。紙媒体に比べると破格だとは思うけど、とにかく成長のための原資をきちっと振り向けてコミットするっていうことをやらないと、メディアにせよなんにせよ、やりたい形はつくれないなって思うよね。

2011年当時の「greenz.jp」。お金は稼げなくても、記事のクオリティや使いやすさにこだわり、先行投資を重ねていった

菜央 当時は、クラウドファンディングのような仕組みもなくて、それが僕たちの取れた唯一の方法だった。でも、会社をつくった身としては、「苦労して投資をしていこう」って決めてやってきたから、それがこうして今、形になっているのはとても嬉しい。

ヒトという資本を最大限に活かすには、
関わる人たちの夢を実現できる場をつくること

小野 ここまでの話から、グリーンズは、経営上はうまくバランスを取りながら自分たちらしい事業をつくって成長させてきた、と言えるかもしれない。でも、そうは言ってもお金がなかった時代ってありましたよね。

ライターさんの原稿料も相場と比べると相当安い金額だった時期もあったわけで。それでも多くの人が当時関わってくれたのは、どうしてだと思います?

菜央 組織が次のフェーズに成長していくためには資本が大事だという話をしたけれど、お金以上に重要なのがヒトっていう資本。そこにどうアクセスできるかで組織の成長は左右されると僕は思う。

僕らはグリーンズの組織体を、2012年に株式会社からNPO法人に切り替えたんだけど、それは、NPOというのが、より多くのヒトのリソースにアクセスできる組織体だと思ったから。

グリーンズにはライターさんをはじめ、本当にさまざまなスキルを持った素敵な人たちが関わってくれているけど、もし彼らとギャランティだけの関係でつながって仕事をお願いするとしたら、きっともっとすごい金額を支払わないと同じクオリティの企画や記事ってつくれないと思う。いや、いくら払ってもつくれないぐらいすごい記事を、ライターさんはつくってくれている。

関わるライターさんそれぞれが本当にやりたいことを、グリーンズという場を通して一緒に実現していくという文脈や関係性なら、お金だけじゃない理由で一緒に仕事ができるようになるんだよね。

才能にあふれ、個性豊かなgreenz.jpライターのみなさん。2015年のライター合宿にて

菜央 関係性に頼りすぎて、やりがい搾取みたいにならないように気をつける必要はある。でも、「一人ではできないことが、ここに来るとみんなで実現できる」って実感してもらえる場をつくることが、たくさんのヒトの力という資本にアクセスしていく上でとても重要だと思う。

小野 もちろん、事業の成長に応じて徐々に原稿料も上げているし、今後ももっと上げていきたいと思っている。けれど、お金がないと仕事をお願いしちゃいけないのかって言ったら必ずしもそうではないということですよね。

「グリーンズの可能性を広げるために、あなた一人ではできないことを、この場で一緒に始めさせてもらえませんか」と呼びかける。グリーンズという場に力を注いでもらうことと、その人自身の成長のベクトルを一致させることができれば、今すぐに大きな金額を生み出せるわけではなくても、健全な関係性でのお仕事はできると思います。

そういう意味では、NPO法人という形態を選んでいるのも理にかなっているのかもしれません。NPO法人の場合、経営者であっても株式保有といった特権やメリットは無いわけで。それは、お金だけではない社会的な目標を大義名分として周囲の人たちを巻き込んでいく上で、説得力を持ちやすい構造だと言えるんだと思います。

菜央 株式会社が市場に株を発行して資金を調達するのに対して、非営利組織の場合は、人々の協力したい気持ちが株式市場みたいなものなんだよね。そのためには法人格以上にその活動実態が大事。

みんなのやる気を持ち寄って、相互に応援し合いながらやりたいことを一緒に実現していくという場をつくることに、まず大きな価値がある。その上にちゃんとしたお金が乗っかってくるとさらに最高だねってことだと思う。

People’s Books最新作『NPO greenz Annual Report 2017』では、NPO法人グリーンズの会計報告も明らかにしています。詳しくはこちらの記事

幸せを追求しながら
ナチュラルにお金とも向き合っていける。
そんな新しい世代感覚に期待したい

小野 僕はソーシャルな事業をやりたいっていう、いろいろな人や団体から相談を受けるんです。でも中には、これまで話してきたような、事業の収益や成長ということと、なかなかまっすぐに向き合えないでいるなという印象を受ける団体もあります。

本当にやりたいことをやろうとしたら、お金とちゃんと向き合った方が楽なはずなんだけど、どうにもそれが選べない。そうなってしまうのは何が原因なんでしょう。

菜央 うーん…世代的な影響もあるけど、「お金は悪いものだ」っていう概念がまだまだ残っているのかもしれないね。

たとえば日本社会を戦後の焼け野原までさかのぼって考えた時、そこでの経済活動、お金を稼いでいくことは生きていくこととほとんどイコールだったわけじゃない。自分が働いて稼いで家族を食べさせていくことと、社会を豊かにしてより良い方向に持っていくということに、ほとんど矛盾がなかった。

菜央 だけど、経済が成長していく中で、再分配の仕組みがうまく機能せずに富が一箇所にどんどん集中して労働者が低賃金で搾取されたり、環境問題みたいな外部不経済が起きたりという問題が顕在化していく。そのことへの問題意識が大きかったのが70年代の学生闘争の世代だと思う。

ある種それは時代の必然だったのかもしれないけれど、その世代にはどこか「お金を扱うことはよくない」という概念があって、それが非営利団体をやる上でのお金や収益への抵抗感につながっているのかもしれない。

小野 あぁ、なるほど。

菜央 でも、最近の新しい世代の様子を見ると感覚はだいぶ変わってきていて、また経済活動の原点に立ち返ってきている気がするんだよね。

自分や家族や周りの人が食べていけて幸せになれて、社会も良くなっていく方向で仕事をしたい。その過程できちんとお金とも向き合って回る仕組みをつくりたい…。そういうのが今の新しい世代にとってナチュラルな感覚で、お金というものに対して健全な向き合い方をしている印象がある。

ただ、その新しい感覚がまだピンとこない人も多くいて、特にお金に抵抗感がある層との混ざり合い度合いが大きいのが、ソーシャルとか非営利のフィールドなのかもしれない。それを乗り越えていくのが僕たちの世代の宿題なのかもしれないね。

全ての企画が、
誰かの「本質的な想い」から始まっているかどうか

菜央 結局、「ソーシャルな会社」って何なのかっていうと、リソースを提供してくれるたくさんの周りの人たちとちゃんと向き合っている会社なんだろうと思う。

逆に、理念やビジョンはいいことを掲げているのに、今ひとつ成果や成長につながっていない場合は、やっぱりどこかで、関わる人たちとまっすぐ向き合いきれていない部分があるんだと思うな。

それは、本質的にはNPOだろうと株式会社だろうと同じだと思うんだけど、特にソーシャルな事業をやる団体の場合、より厳しく問われてくるところだと思う。

小野 僕たちの場合は、メディアをやっていることも大きいかもしれないけど、自分たちの知識やノウハウを先に提供すること自体にはほとんど抵抗がないんですよね。

むしろ大事にしているのは、僕たちのノウハウに触れてもらった結果、その人にどんな気づきや学びがあったか。そしてその気づきが意義深いものであったなら、それを活かして一緒に何か事業をやればいい、というスタンスで。

だから、マイプロジェクトを始めたいという人や、クライアント候補となる企業からの相談は、その人や企業が本当にやりたいことを見出すまでしつこく掘り下げていて聞いていきますよね。

菜央 逆に納得しないと僕らもお金もらわないよね(笑)

小野 まだその人や企業が発揮できていない才能や、掘り下げられていない問いに光を当てているかということを、かなり重要視して意思決定しますね。

菜央 どの企画も常に、誰かの本質的な想いから始まっているか、ということはすごく大事にしていると思う。

小野 そういうスタンスでやると、なかなかスケールとかスピードが出にくいのはわかっている。でも、このめんどくさいやり方の中で最大限のスピードとスケールでどこまでいけるのかなって試してるところはありますよね。だから、目標設定の方法とかも、一般の会社とはちょっと違うと思います。

菜央 そもそもあんまりガチガチに目標設定したことってないよね(笑) むしろ大事にしているのは「問い」かな。その人や企業とプロジェクトを一緒にやっていく上で、どんなことを掘り下げていくのか、そこをいつも意識している。

西鉄天神委員会とのプロジェクトでは、先方の「まちに才能のある人が集まり育っていく環境をつくることができないか」という問題意識に対して、まちを良くすることをミッションとして掲げながら、「収益性は低くても事業を行うプレイヤーを増やしましょう」と提案。greenz.jpでの連載(写真上)とともに、ワークショップを複数回開催した。さらに既にグリーンズとつながりがあった「福岡移住計画」と協同で、コミュニティワークスペース「HOOD天神」(写真下、提供:福岡移住計画)の立ち上げに至った。現在グリーンズでは、こういったプロジェクト型の取り組みを強化している。詳しくはPeople’s Books最新作『NPO greenz Annual Report 2017』の全文が読めるこちらの記事

菜央 あとは…何でもかんでも手当たり次第にやらない。いざという時はすっぱり“やめる”っていうことも意識しているかなぁ。何度も言うように、資本は有限で、余剰をどう投資するかが大事で、本当に自分や組織が成長していこうと思ったら、手当たり次第じゃ絶対に長期的な成長は生み出せないから。

小野 もちろん部分部分で、スタッフが実感できる、量的・質的な成功体験をつくっていくことは大事だけど、そこは案外ナチュラルに調整しながらやっている気がしますね。

菜央 短期的な利益を追わなくていいように、というのはいつも気をつけているけど、グリーンズに関わっている全員に、何かしら楽しめること、得られるものがあるようにというのは工夫しているよね。

何よりも人生って楽しむためにあるから、僕たちは関わる人たちと一緒に幸せになっていきたいのであって、別に大きくなること自体が目的ではない。その意味では、僕らの考え方は、地域商店みたいなものに近いのかもしれない。みんなの幸せを大事にしながら、なおかつ大きくなっていけるなら、それは素晴らしいことだけどね。

漠然と共有されている「新しい感覚」。
その正体をみんなと探求していきたい

小野 さきほど、目標よりも「問い」が大事だという話もしましたが、これからどんな問いを立てて、スクールをやっていきましょうか。

菜央 一言で言うならば、ソーシャルな会社の担い手が共有している「新しい感覚」に、名前をつけるっていうことじゃないかな。これまでグリーンズのことを語ってきたけれど、もっと多様な企業・団体の具体的な事例まで広げて見ていって、それらに共通している価値観みたいなものを見出していけると面白いと思う。

小野 そうですね。共通項を見出すってのがたぶんゴールですよね。スクールの名前も「ソーシャルな会社のつくりかた」とあえて抽象的にしていますが、簡単には解が見えない問いに対して、講師や受講生のみなさんと一緒に向き合っていくことで、共通項や基準をあぶり出していけたらいいなと思います。

(対談ここまで)

関わる一人ひとりの本質的な想いを起点にしながら、事業全体として持続発展が可能な健全なお金の循環を生み出すにはどうすればいいか…。

ソーシャルな会社をつくっていく上で向き合い続けなければならない問いについて、組織としてのグリーンズの歩みを振り返りながら、グリーンズ代表理事・greenz.jp編集長の鈴木菜央と、グリーンズ事業統括理事・プロデューサーの小野裕之の2名が語った本対談、いかがでしたか。

この秋からはじまるグリーンズの新しいスクール「ソーシャルな会社のつくりかた」クラスでも、ソーシャルな領域で活躍するさまざまな企業・NPOの方々を講師にお招きし、理念と収益性が一致する組織やビジネルモデルをどのように確立していったか、それぞれのケースをお聞きしながら考えていきたいと思います。

また、「greenz.jp」の記事としても、「ソーシャルな会社のつくりかた」をテーマに、スクールと連動した連載を展開していく予定です。

スクールの講師や受講生の方々のみならず、この記事を読んでくださった皆さんとも一緒に、ソーシャルな会社・事業に共通する「新しい感覚」の正体を探求していければ嬉しいです。

(本記事は2017.9.15に公開されたものです。)

(撮影:都甲ユウタ

– INFORMATION –

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