スーパーで野菜を買うとき、みなさんは何をチェックしますか?
ラベルに書かれた値段や産地、または商品の色や形、鮮度をよく見る方もいることでしょう。店内で「産地直送」「地産地消」といったメッセージを見ない日はありませんが、それは私たち消費者が、新鮮な野菜をほしがっていることの証といえます。
どうやら、この消費者マインドは世界共通のようで、ブラジルでは今、あるスーパーの陳列方法が注目を集めているんです。
リオ・デ・ジャネイロを拠点とする、ブラジルの大手スーパーマーケット「Zona Sul」は、一見した様子はごく普通。ですが中に入ってみると、まるで畑のように広がる、野菜売場に目を奪われます。その名も「フレッシュ・ガーデン」です。
畑では、レタス、バジル、ピーマンやネギといったおなじみの野菜が、まるまると実っています。
キャベツも丸ごとこの通り
お客さんは棚から商品を取る感覚で、畑から直接「収穫」して、指定の袋に入れていきます。
自分で摘んで、袋に入れて
香草ならこのように、お気に入りの香りを選ぶこともできます。
今夜のレシピを想像しながら?
斬新な売場に対し、こんな想いを口にするお客さんも。
買い物するのがとても楽しいわ。
若い頃は自分で家庭菜園をしていたの。都会に引っ越してできなくなったから、あの頃が懐かしくて。
ときに指を真っ黒にしながら、収穫したらレジにて会計。もぎたて野菜を手にする瞬間の楽しさは、パックに入った商品からは得ることができませんよね。近くにこんなスーパーがあったら、毎日通ってしまいそうです。
レジは普通のスーパーです
そんな「フレッシュ・ガーデン」ですが、本物の畑ではありません。「Zona Sul」が、ある“こだわり”をアピールするキャンペーンとして、擬似的につくったものなのです。
カラクリを明かしてしまえば、畑に見えているのは、陳列棚に載せられた巨大なプランター。毎朝、産地から運ばれてきた野菜を、スタッフが丁寧に植え直して、畑に見せているだけなんです。育った環境に近い保存方法のほうが、鮮度を保てるといいますからね。
朝にはいっぱいだったガーデンも、品薄になると…
ガーデンができた当初は、触れてもいいものか迷うお客さんが多かったようですが、ひとたび商品だとわかると、「こんなスーパーで買ってみたい!」という声が、SNSで拡散されるように。
すると共感が共感を呼び、野菜の売上は何と18%もアップ。顧客満足度は30%アップするなど、並々ならぬ成果がありました。当然このキャンペーンは、他の店舗にも展開されることになったそうです。
SNSだけでなく、多数メディアに取り上げられました
「フレッシュ・ガーデン」のキャッチフレーズは、“From the earth to your home.” 日本語に訳すと「地球から食卓へ」。
「Zona Sul」が地球と食卓を介在する存在になるべく、わざわざ畑までつくってまで表現したかったのは、商品である野菜の鮮度と、サステナビリティに対するこだわりにあるといえます。
キャンペーンを指揮したクリエイティブ・ディレクターのNicolás Romanó氏(以下、ニコラスさん)は、今回のキャンペーンをこう語ります。
この陳列方法は、すごく手間がかかります。しかし、我々の野菜が本当に新鮮だということを伝えるには、パーフェクトな方法だったと思っています。
最高品質の商品を提供するために、本物の畑をつくりたいのは山々でしたが、できない代わりに、鮮度が維持できる仕入れと輸送、陳列方法を確立したと思っています。
仕掛け人のニコラスさん
greenz.jpではこれまでにも、「ゴミを出さないために量り売りしかしないスーパーマーケット」など、さまざまなスーパーを舞台にした事例を紹介してきました。
消費者はどこで買うかは選べても、どこの生産者から仕入れるかまでは選ぶことができないので、提供する側のスーパーが、ここまで考えてくれるのはありがたいことですね。
スーパーといえば「モノを売る」イメージだけが先行しがちですが、生活に密着した場所だからこそ、社会的なメッセージを発信する会社も増えているようです。そのメッセージを受信する側の私たち個人も、ただモノを買うだけでなく、「どこで買うか」にこだわる賢い消費者になりたいですね。
[via fastcoexist, cada, thestable, adweek]
(Text: 松原裕香子)
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