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オフグリッド発電が、子どもたちにICT教育をもたらした! インフラが整っていない地域向けに開発されたコンテナハウス「Digitruck」

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Digitruckの中で勉強するタンザニアの子どもたち。真剣にパソコンに向き合っています

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

みなさんは太陽光発電と聞くと、どのようなイメージを持ちますか?

日本では、自然に優しく、持続可能性の高いエネルギーというイメージを持っている方が多いかもしれません。

しかし太陽光発電の魅力は、クリーンさだけではないのです。実際、最近ではソーラーパネルを応用した事例が数多く増えています。

たとえば、ローカルフードを運ぶ自転車コンテナにソーラーパネルを活用した「Foodlogica」や、太陽光を使って空気から飲み水をつくることができる「Fontus」など、greenz.jpでもこれまでにソーラーパネルの応用例を紹介してきました。

そんななか、今回ご紹介するのは、電気のインフラがまったく整っていない地域への応用事例です。電力会社からの供給がない地域において、従来型のインフラを整えるには、莫大なお金と時間が必要。でも、オフグリッド発電の仕組みを電気のない地域にもたらすことで、生活を豊かにし、地域の発展に貢献しようというのです。

今回は、そうした地域のひとつであるアフリカのタンザニアで誕生した、太陽光発電を利用したICTコンテナハウス「Digitruck」について紹介しましょう。
 
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Digitruckに子どもたちが乗り込むところ。はじめてのコンピュータールームにワクワクが止まりません!

「Digitruck」はアメリカに本社を置く半導体・電子部品などの世界最大級サプライチェーンであるArrow Electronicsと、現地で活動を行ういくつかのNPOがそれぞれの得意分野を活かして恊働でつくり、運用している太陽光発電パネルを備え付けたコンテナハウス。

プロジェクトは2014年からスタートし、現在は主にタンザニアの奥地で、現代の情報通信機器を使い方を学ぶことのできるICT教育のためのコンピュータルームとして、「Digitruck」の活用が始まっているのだとか。

「Digitruck」には、電気のインフラが整っていないエリアでも使用できるようバッテリーが搭載され、1日の太陽光発電の電力によって数日間は使用ができます。

コンテナというと、すごく小さいスペースなので、タンザニアのような暑い地域では過ごしにくそう・・・ それに、セキュリティは大丈夫なの? と気になることも多いですが、その心配は不要のようです。なぜなら内装は三重に断熱加工され、盗難などを防ぐために鉄の二重扉も設置! これなら長時間の勉強にも快適なはず。
 
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内装工事の様子。タンザニアの強い日差しの下でも使えるよう断熱加工を丁寧に行っています。

そして内部には、20台のノートパソコン、LEDスクリーン、プリンター、ハードディスクドライブ、ルーターといった機器が搭載。最大18人が同時に作業や勉強ができるようになっています。

「Digitruck」の設置費用は設置場所の状態によっても異なりますが、そのものの製造費用は10万ドル程度。

一見安くはないものの、日本でも未だに各自治体が数千万〜数億円の予算をかけてICT教育の環境を刷新している事実と比較すれば、施設も何もない場所に10万ドルでコンピュータールームができるというのは実は革命的なことなのではないでしょうか?
 

Digitruckがどのようにつくられたかや、子どもたちの嬉しそうな姿を感じられる動画です!

このプロジェクトを牽引するひとりが、NPO団体「Close the Gap」のファウンダー兼マネージングダイレクターである、Olivier Vanden Eynde(以下、オリヴィエさん)は、2003年からアフリカなどを中心に、ICT教育の活動やパソコンの寄付などのプロジェクトを2,500件以上も行ってきたそう。

オリヴィエさんは、その経験も踏まえてこのように話しています。

サブサハラ以南のエリアを中心に、75%以上のアフリカのひとたちは電気も届かないような田舎の集落に未だに住んでいます。インフラの有無によって大きな暮らしの質の差があることは言うまでもありません。

しかし、現代のコンピューターテクノロジーと太陽光発電のシステムを掛け合わせた、「Digitruck」のような新しいアイデアがこうしたエリアに広まれば、格差を小さくする架け橋となり、インフラが不十分な都市から離れた場所でも良い教育や職業訓練などが行えるようになるはずです。

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Neema Internationalのスタッフが英語で子どもたちにコンピューターの使い方をレクチャー!みんな真剣です。

「Digitruck」はこの2年間で計5台が製造され、コンピュータルームとしてだけではなく、電力を伴う機器を使用する小さな病院としての利用もスタート。今後は、サブサハラ以南に住む人々の生活・教育・医療水準の向上を目指し、さらに製造・導入していく予定なのだとか。

今回の「Digitruck」の事例が示してくれたように、暮らしの新しいアイデアは、場所さえ変われば生活が根本的に変わるほどのインパクトを持っていることがあります。

「こんなことに使えたら、実はすごいかも?!」と身近にあるアイデアの活用方法を想像してみると、途上国への応用事例が見つかるかもしれませんね。

[Via:inhabitat,Close the Gap,Neema International,Youtube

(Text: 村上萌)