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宝物は足もとにある。秋田発、話題のフリーマガジン『のんびり』のイベントで”あたらしいふつう”を体験! [イベントレポート]

こちらの記事は、“秋田からニッポンのびじょんを考える”フリーマガジン『のんびり』編集部の田宮慎さんに寄稿していただきました。

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2012年7月に創刊され、9月には2号目も発刊、全国各地から大きな反響を呼んでいるフリーマガジン『のんびり』。秋田の食、伝統、文化、そして秋田に暮らす人々を紹介しながら「秋田からニッポンのびじょんを考える」、秋田県が全国に向けて発行するフリーマガジンです。

そんな『のんびり』という媒体を、マガジン以外の接点からも知ってもらったり、秋田県内の人たちにもPRするため、誌面を飛び出して体感してもらおうと企画したのが、10月27日に秋田市で開催された「のんびり祭」です。

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秋田をテーマにした表紙は、第34回木村伊兵衛写真賞受賞の写真家・浅田政志氏が撮影

『のんびり』編集部には、メールやウェブサイトからはもちろん、手紙やハガキでも、たくさんのメッセージや感想が連日のように届いています。そして、ほとんどのみなさんが「秋田を訪れてみたい」と言ってくれることが、ほんとうに嬉しくて、編集部も、そして発行元の秋田県職員のみなさんも、とても喜んでいます。

ただ、『のんびり』がきっかけで実際に秋田を訪れた人が、きちんと楽しめるような体制が秋田にはあるの?という疑問が編集部にあって、その基礎づくりというか、きちんと楽しんでもらうための実験的な試みとしての意味合いも、この「のんびり祭」にはありました。

ウルウルのスタート

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一体どれくらいの人が来てくれるんだろう?ほんとうに県外からもわざわざ来てくれるのだろうか?イベント当日、開始時間ギリギリまで不安でいっぱいでしたが、午前11時、最初の企画「よじろういなりツアー」の集合場所で目にしたのは、20名を超える人! そして、ほんとうに東京や横浜から来てくれた方が!「寝台列車で今朝到着しました!」「『のんびり』をつくっている人たちに会いたかった!」という言葉に、編集部一同、激しく感動!早くもウルウルしつつ、祭はスタート。

「よじろういなりツアー」

この「よじろういなりツアー」は、2号目の特集「よじろういなり」伝説に登場する、会場近くの千秋公園内「与次郎稲荷神社」まで、編集長の藤本智士が参加者のみなさんをご案内し、一緒に神社にお参りするというもの。

お参りのあとは、誌面内でつくった紙芝居「よじろういなり」を、編集部秋田チームの「ヤブちゃん」こと矢吹史子が上演。最後は公園内の東屋で、台風一過の雲ひとつない青空の下、野点の茶会も開催しました。誌面で読んだ伝説を、より身近に感じてもらうことができたのではないかと思います。

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同時刻にスタートしていたのが「のんびり屋台」。創刊号の特集記事の舞台だった五城目町の朝市や、2号目の表紙撮影の舞台となった大仙市大曲からは名物の大曲納豆汁など、誌面に登場した地域にまつわる美味しい&楽しい飲食屋台が出店。「お客さまがたくさん質問してくれて、会話が弾んでとても楽しかった」と、出店者の方たちから言ってもらえたことが、とても良い空気と時間が流れていたことを物語っていたと思います。

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「寒天下一武道会」

屋台で腹ごしらえしたあと、午後2時から行われたのが「寒天下一武道会」! 「秋田のお母さんは何でも寒天で固めてしまう」という編集部秋田チームの一言がきっかけとなって、『のんびり』1号目では「寒天博覧会」なる企画を開催しました。

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内容はいたってシンプルで、地域のお母さんたちに声をかけて、自慢の寒天料理を持ち寄ってもらい、その作り方やエピソードを語り合う、というもの。最後に、最も良かった寒天を出場者と観客のみなさんに投票してもらい優勝寒天を決めます。

これまで開催した五城目町と美郷町で集まった寒天の合計は、驚きの50種類! フルーツ寒天、サラダ寒天、そうめん寒天、なんとチョコレートパンの寒天も! 編集部一同、毎回大興奮の「寒天博覧会」。わたしたちが取材で体験する出会い頭の感動を、ぜひ読者のみなさんにも体感してもらいたい! そんな思いで開催したのが、この「寒天下一武道会」です。

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当日は、過去二回の優勝者に新たな挑戦者を加えた9名の精鋭たち(初の男性出場者も!)が、自慢の寒天を持ち寄りました。舞台となった野外特設ステージは、秋晴れの陽の光に照らされキラキラと輝く美しい寒天たちに誘われて、あっという間に100人ほどのギャラリーでいっぱいになりました。県外から来た人も、県内の人も、実に多彩な寒天を持ち寄って下さった出場者の話に耳を傾け、味わい、みんなニコニコ顔。

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地元の野菜や果物をいかに美しく固めるか? 家族が求める食感は?孫が喜ぶ寒天とは?日々、台所で研究が重ねられた寒天は、その思いや経験値があればあるほど、ぎっしりと中身が濃く、そして固い!

寒天哲学とでもいうべき暮らしの哲学、そして、そこはかとない探求心は、まさに未来へと伝えたいニッポンのクリエイティビティ!寒天下一武道会にお越しいただいたみなさんの笑顔を見て、あらためて『のんびり』が伝えていくべきことの意義を確認しました。

「のんびりのつくりかた」

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夕方からは場所を屋内に移して、トークイベント「のんびりのつくりかた」を開催。「行き当たりばったりの取材!」「合成していない表紙!」など、誌面づくりでも話題豊富な『のんびり』。

一体どんなふうに作ってるの?という読者の声に答えるべく、県外チームからは編集長の藤本智士、写真家の広川智基も参加し、秋田チームの編集スタッフとともに『のんびり』制作の裏側やエピソードを紹介しました。

県外メンバーと県内メンバー

編集長の藤本智士は神戸、アートディレクターの堀口努は大阪、写真家の浅田政志と広川智基、そしてイラストレーターの福田利之は東京という、異なる地域を拠点に活動する県外のメンバーと、秋田県に暮らすメンバーとが、いわゆる外注の関係ではなく、ひとつのチームとして編集部を構成し、制作している『のんびり』。

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冒頭、編集長の藤本智士から、メンバー紹介も兼ねて、多地域メンバーで構成される編集部が、実際どのように動いているのか、なぜこのスタイルなのか、という話や、自身の秋田についての印象、『のんびり』に込める思いなどが語られ、トークはスタート。その後はリラックスした雰囲気の中、編集部で用意したキーワードを会場の参加者に選んでもらいながら、トークは進んでいきました。

県外・県内それぞれの視点が絶妙に合わさって生み出される企画の話、このプロジェクトに賭ける秋田県庁の担当者の方々の話、宝物は自分たちの足もとにあって、それを編集者やデザイナーなどのクリエーターが、どういう視点や角度で切り取り、的確なクオリティで表現するかという話など、県外からの方も県内の方も、終始真剣な眼差しで耳を傾けてくれていました。

秋田からニッポンのあたらしい “ふつう” を提案

県内各地から足を運んでくださった方はもちろん、東京や横浜から、青森県など隣県から、また「車で来たから寒天下一武道会には間に合わなかった」という方は、なんと!遠く長野県から!本当にたくさんの方々にご参加いただきました。

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今回、県外から参加してくださった方の多くが、それぞれの地域でまちづくりに関わっていたり、デザインを仕事にしている方でした。秋田の動きに未来を見据えて、わざわざ秋田まで来てくれたことを、編集部一同、ほんとうにありがたく思っています。

同時に、寒天博覧会をはじめ、地域の足もとにある宝物をあらためて見つめ、わたしたちが編集とデザインの力を信じてつくったコンテンツが、各方面に着実に伝わって評価されていることを、読者のみなさんと直接お会いして実感できたことが、とても大きな収穫と励みになりました。

わたしたち『のんびり』編集部は、参加してくださった方々が、それぞれの地で、足もとにある宝物と出会い、「あたらしいふつう」が各地に広がっていくことを心から願っています。

最後に、『のんびり』にも毎号掲載している、わたしたちの思いを、あらためて。

秋田にはうまい飯とうまい酒があります。
その豊かさが秋田の実直なものづくりを支えてきました。
そして同時に、秋田の人々のなかには
大らかで力強い『のんびり』精神が育まれました。

そんな のんびり秋田は
右肩上がりな経済成長というゴールなきゴールに向かい
懸命に走ってきたニッポンにとって
まるでビリを走るランナーのように映っていたかもしれません。

けれど世の中は変わりました。

順位など気にせずのんびり歩いてきたことが
まさに『ノンびり』となる時代がやってきました。
日本人の多くは今、うまい飯が食べられて
うまい酒が飲めるという当たり前の豊かさについて考え直しています。
しかし秋田では昔も今も、ずっと
それが人々の暮らしの真ん中にありました。

ビリだ一番だ。上だ下だ。と
相対的な価値にまどわされることなく
自分のまちを誇りに思い、他所のまちも認め合う。
そんなニッポンのあたらしい “ふつう” を
秋田から提案してみようと思います。

わたしたち編集部の一方的な思いで始めたこのイベントを全力でお手伝いしてくれた、『のんびり』を一緒につくっている秋田県職員の方々と、準備や当日のサポートを手伝ってくれたたくさんの仲間に、編集部一同、心から感謝しています。またやりましょうね。笑

『のんびり』3号目は12月中旬発刊予定!
詳細情報は『のんびり』Facebookページにて配信中。『のんびり』ウェブサイトでは、誌面で紹介しきれなかった方々のインタビュー動画「あきたびじん図鑑」や、話題の表紙撮影のメイキング動画を公開中。全国の配布場所も掲載しているので、ぜひチェックしてみてください。

(Text:田宮慎、Photo:Tomoki Hirokawa)

秋田からニッポンのびじょんを考えるフリーマガジン『のんびり』

田宮慎
76年秋田生まれ。大学進学を機に上京。02年より都内の商空間デザイン会社に勤務。全国の駅ビルを中心に商業施設(SC)の企画・開発・プロデュース・コンサルティングに企画プランナー・ディレクターとして携わる。また、設計者・デザイナーらのチームを束ねるディレクターとして東京・大阪を中心に店舗デザインを行う。

2009年秋、秋田に拠点を移し、2010年に「casane tsumugu」を立ち上げる。「地域資産のデザイン」をテーマに、プロダクトや地域商品の企画・デザイン、企業や商品、地域等のプロモーション・コミュニケーションデザインを行う。秋田~北東北を起点に、地域固有の持続可能な地域資産を(再)発掘、(リ)デザイン、価値最適化し、人々の想いを重ね、未来へと紡ぐことが目標。