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子どもたちの放課後を救え!大人がプロデュースするもうひとつの学び舎「放課後NPOアフタースクール」

Creative Commons:Some rights reserved by ajari

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小学校低学年の子どもたちが集まってデジタルゲームを無言でうつむきながらやっている光景を見たことはありませんか?「近頃の小学生は…」と思わず言いたくなります。しかし、私たち大人は子どもたちが楽しめる遊びの場・学びの場をつくれているでしょうか。

地域の大人が放課後の先生に!

放課後NPOアフタースクール」は「子どもたちの放課後を救え!」という理念の下、首都圏を中心に「アフタースクール」を放課後の小学校にて開校しています。子どもたちの居場所を作り、地域にいる特技のある大人を”市民先生”として発掘し、放課後プログラムを設計し、開催しています。そのプログラムは大変魅力的です。

例えば、シェフにお菓子づくりを学べたり、弁護士と模擬裁判が出来たりと様々です。子どもたちは小学生のうちに勉強ばかりではなく、社会に出たときに役立つスキルを身につけられるようになっています。様々な仕事をしている大人に出会うことで子どもたちの夢もひろがります。

地域のコックによる料理教室

地域のコックによる料理教室

衝撃的だったアメリカのアフタースクール

このような「放課後NPOアフタースクール」はどのような思いで立ち上げられたのでしょうか。代表の平岩国泰さんにお話を伺いました。

「放課後NPOアフタースクール」代表 平岩国泰さん

「放課後NPOアフタースクール」代表 平岩国泰さん

もともと私は会社員で、30歳になった時、子どもが生まれました。ちょうどその時期、「子どもの連れ去り事件」のニュースがよく流れていました。自分の子どもがこのような事件に巻き込まれたら…と考えると恐ろしかったです。

また、会社で人事の仕事をしている時、就職活動をしている大学生の元気の無さが気になりました。そして、この原因は「大人はつまらない」と子どもたちが思っているからではないかと考えるようになりました。子どもたちが大人になることに希望を持てるようになるにはどうすればいいのか、自分にできることはないか、と色々考えました。

同時に、ずっと会社員を続けていくことに対しても違和感を抱くようになっていました。私は野球部だったので、高い目標を立てて、チーム一丸となって夢中になって練習し、強い相手に挑むという経験をしてきて、それがとても楽しかったのです。会社員は大いに勉強にはなりましたが、大きな会社にいるとそこまで自分が心から夢中になれるものではありませんでした。仕事は人生の時間の中でも一番時間を費やすので、もっと熱くなりたい、充実させたいと思っていました。

こんなモヤモヤとした毎日を変えたのは親友からのある話だったそうです。

そんな時に、親友からアメリカの小学生の放課後について話を聞きました。アメリカでは、20~30年前から国をあげての放課後改革が行われ、その主役はNPOです。

放課後NPO“と呼ばれる団体が広まっていて、放課後の小学校に「アフタースクール」が開校され、子どもたちはそこで過ごし、市民先生が来ることで様々な経験が出来ています。勉強が出来ずにドロップアウトしてしまったり、不良になってしまう子は一気に減ってきているのです。

アメリカのアフタースクール(平岩さんご自身が視察に行った際撮影した写真)

アメリカのアフタースクール(平岩さんご自身が視察に行った際に撮影)

この話を聞いたとき、自分がやりたいことはこれだと思いました。自分が会社員として育ててもらった力を子どもたちのために注ぎ込んで、社会に恩返ししたいと思いました。

今の子どもたちの放課後からは、時間・空間・仲間、略して”サンマ”(3間)が失われたと言われます。公園から子どもたちの姿は消え、日本では小学校低学年の子が行ける場所は学童保育くらい。学童保育は施設が限られていたり、時間に制約があったり限界が多く、学童で働く方々も大変な思いをされています。

東京では高学年の子はほとんどが受験をし、塾に通っています。勉強ばかりしていると他の子がライバルにしか見えなくなったり、勉強が出来ないというだけで「落ちこぼれ」にされてしまう子が増えてしまっています。「友達がみんな塾に行ってるから」と友達に会うために塾に行く子も増えていて、何だか満たされない顔をしている子どもが多いのです。そんな日本でも子どもたちの”安全で豊かな放課後の世界”をつくりたいと考えるようになりました。

はじまりは地区会館での放課後プログラム

やりたいことが明確化した平岩さんは、会社員の仕事と両立してプロジェクトをスタートさせます。まず何から始めたのでしょうか。

アフタースクール」の活動を開始したのは2005年11月です。まず最初に小学校に「アフタースクールをやりませんか?」と電話をかけたのですが、当然怪しまれて、すぐに切られてしまいました。仕方がないので、世田谷区の地区会館で「放課後プログラム」をはじめることにしました。しかし、学校でチラシを配ることさえも許されず集客が難しかったです。何とか地域の方に協力をしてもらい第1回目の料理プログラムは生徒数5名でスタートしました。

その後、週1回で「放課後プログラム」を2年間続けていくと、内容が地域で徐々に評判になり、30名くらいの子どもたちが集まるようになりました。私は会社の休みが水曜日で、毎週その日に活動してました。「水曜日は放課後の日!」になるといいなと思いました。

小学校での「アフタースクール」が実現!

地区会館での活動は活発化してきましたが、平岩さんが目指す小学校での「アフタースクール」を任されるという形ではありませんでした。小学校で「アフタースクール」の活動が出来るようになったのは活動開始から3年目だったそうです。

小学校で活動出来るようになったのは地区会館のプログラムに参加する子どもの保護者による紹介がきっかけでした。元々、区の運営で小学校の放課後施設があって、そこで出来るよう学校側に交渉して下さったのです。

そちらでは、1年間かけて子どもたちと建築士・大工さんが一緒に家づくりをしました。2年目にはデザイナーさんとインテリアに取り組み、内装・外装を作りました。継続的に、スケールの大きなプロジェクトに取り組めるのは学校での活動ならではです。

活動当初は、子どもたちを集めるのに苦労していたのですが学校の中で案内も出来るようになったので、自分たちはプログラムづくりに専念出来ました。それからは他の小学校にも活動の場をひろげられるようになりました。

大工さんによる建築の授業の様子"

「放課後NPOアフタースクール」の法人化へ

平岩さんは活動を続けていくうちに、もっとひろめていきたいという思いが強くなってきました。

活動から4年目の頃、会社とNPOの両立が段々忙しくなってきました。会社では残業無しで帰れるよう効率よく仕事をし、NPOの仕事は朝5時に起きて7時までの2時間と夜にするようになりました。忙しく感じることもありましたが、生活リズムはきちんとしました。

しかし、「放課後NPOアフタースクール」の活動がどこか中途半端になってしまっている気がしていました。うまくいかないことがあると「中途半端にやっているからダメなんだ」と自分を責めることもしばしばでした。

NPOを始めた頃は「もし喜ばれない活動なら他の方法をしよう」という気持ちでしたが、子どもたちはもちろん、保護者も市民先生となる社会人にもとても喜ばれました。「あなたたちがいてよかったわ」という声が「あなたたちがいなくなると困るわ」という風にいつしか変わってきました。そんな時、個人の活動からNPO法人として、組織として展開していこうという思いが強くなりました。

そして、会社を辞め、NPO法人に専念することに決めました。始めたころにまだ赤ちゃんだった娘に約束していました「あなたが小学生になるまでに何とかします」。約束しながらも自信がなかったので、誰にも言いませんでした。何とかならなかったかもしれないけれど、娘が小学校に入るタイミングで、私も会社を辞めて本格的に飛び込みました。私なりに娘との約束を果たしたつもりでしたが、無謀なチャレンジを後押ししてくれた家族には心から感謝しています。

「放課後NPOアフタースクール」スタッフの皆さん

「放課後NPOアフタースクール」スタッフの皆さん

法人化した後、2011年には「新渡戸文化アフタースクール」が開校し、アフタースクールの運営を全て任せてもらえるようになりました。プログラムもどんどん充実化し、企業がCSR 活動の一貫として市民先生になるプログラムも増えていきます。現在では、250種類以上のプログラムがあり、参加してくれた子どもは累計で25000人以上になりました。50社以上の企業ともコラボレーションしてきました。

私たちスタッフも放課後プログラムを開催するようになりました。特技がある人もない人も誰でも放課後の先生になれると思っています。

(株)アルビオンの社員による「ハンドクリームの作り方」

(株)アルビオンの社員による「ハンドクリームの作り方」

一番楽しみなのは子どもたちの未来

今後のさらなる目標についてはこう語ります。

現在、「放課後NPOアフタースクール」は私立の学校中心で、利用者負担の有料サービスとして展開しています。この形も良いのですが、私たちが目指したいのは子どもなら誰でもいつでも参加できる「アフタースクール」です。

将来的には、全国の公立小学校で行政のサービスとして開校できるようになることが目標です。そのために、まずは公立小学校で私たちに「アフタースクール」を毎日任せてもらえるようになることを1つの目標としています。そうして出来た「アフタースクール」がモデルになって、全国各地で地元のNPOが立ち上がり、それぞれが地域で始めていけるといいですね。

NPO同士は連携して、「アフタースクールネットワーク」も作っていきたいと思います。アメリカを視察した際に”コミュニティラーニング“という言葉をよく聞きました。子どもたちは地域のコミュニティの中で育てていくべきだという考え方です。日本はもともと、隣の子どもも叱れるようなコミュニティの中で子育てが出来る文化のあった国でした。それを少し現代風に形を変えたものが「アフタースクール」です。

子どもたちと平岩さん

子どもたちと平岩さん

また、子どもたちの将来も平岩さんは楽しみにしています。

アフタースクール」に来ている子どもたちの未来を想像するのがとても楽しいです。将来、例えば、市民先生の影響でスポーツを始め、オリンピックで金ダルをとった子がテレビのインタビューなどで「市民先生がかっこよくて始めました。アフタースクールのおかげです」なんて答えてくれたら嬉しいでしょうね。

アメリカでは「アフタースクール」で過ごした子が、大人になって「アフタースクール」のスタッフになるケースもあるようで、それも素敵ですよね。

1人の娘さんのためのプロジェクトはたくさんの子どものためのプロジェクトに広がっているんですね。

「パパは子どもが好きだから、子どものための会社を作ったんでしょう」と小学2年になった娘に言われて嬉しかったですね。今までのことが報われたようで本当に胸が熱くなりました。

自分の子どものことを考えて始めた1人の父親のプロジェクトですが、日本の子どもたち全てのものになればいいと思っています。子どもたちみんなが「アフタースクール」で輝くことを夢見ています。

子どもを育てるのは学校の先生に任せればいいと思っていませんか?実は放課後の先生は私たち、地域の大人なのです。自分の特技を活かして、知恵を絞って、子どもたちに自分の伝えたいメッセージを伝えてみたいですね。

「放課後NPOアフタースクール」のプログラムを調べてみよう!