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東京湾岸、“木の街”に誕生!日本の職人の技術を発信して「文化」をつくる旗振り拠点「FLAGS新木場」

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ここは、とある街のオーダー家具屋さん。
まずは家具の見本を拝見…と思いきや、案内されたのは入口に並べられた木材の棚の前。そしてお店の方は、ひとこと、あなたにこう訪ねます。

「どの木がお好きですか?」

このお店では、家具の形や色からではなく、素材である「木」を選ぶことから、家具づくりを始めます。気に入った木を見て、デザイナーさんと何を作ろうか、と相談して進めていくのです。

1本1本、それぞれに表情の違う「木」との出会いから始まるものづくり。それは、日本に古くから伝わる技術を持つ職人たちが積み上げてきた営みです。そんな出会いの場を演出し、ものづくりの楽しさと本質、そして日本の職人の技術を伝える新たな情報発信拠点が、この夏、産声を上げました。東京湾岸にオープンした「FLAGS新木場」をご案内します。

全容公開!「FLAGS新木場」はこんな場所

東京メトロ新木場駅から海の方へまっすぐ進むこと約1.5km。倉庫街の中、東京湾が一望できる場所に突如あらわれるモノトーンの建物。ここが、『FLAGS新木場』です。

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入口に足を踏み入れると、まず感じるのは木の匂い。そして、階段状に一面に木が施された空間が現れます。

イベント&ギャラリースペース

圧倒的な世界観を生み出しているここは、イベント&ギャラリースペース。プロジェクターも完備されており、50人ほどを収容してセミナーや上映会を開くことも可能です。

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素材は全て間伐材。細かいところを見ると、ほら、こんな仕掛けも。床がブロック状に取り外しができて、床の高さを変えたり、古くなった木を取り替えたりすることもできるのです。建築材には使いにくいと言われる間伐材の新たな使い道も提案する、新発想のギャラリーです。

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クラフト製品とオーダー家具のショップ&カフェ

2階に上がると、樹齢300年のシンボルツリーがお目見え。ここは「KUKUNOKI」と名付けられたクラフト製品とオーダー家具の注文・販売スペース。約半年前にオープンしました。

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木材が並ぶ棚の隣には、箸、名刺入れ、器、オルゴールなどなど、木を活かしたクラフト製品がずらり。思わず手を触れたくなる、繊細で表情豊かな品々です。

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奥には、東京湾や、話題の東京ゲートブリッジを一望できるカフェスペースも。ここでは、木の家具に腰掛け、木の食器の感触を味わいながら、家具の相談ができます。

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居心地の良さに、ついつい長居してしまいそうな空間です。

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「FLAGS新木場」を手掛けたのはこの2人!
北川健太さん・小澤亮さんインタビュー

「FLAGS新木場」に足を踏み入れると、まず驚かされるのは、木の表情の豊かさ。見たこともない色をした木材、驚くほど心地よい手触りのクラフト製品、大胆にディスプレイされたシンボルツリーの荒々しいまでの生命力……。「木」という存在を全身で感じることができる、そんな空間になっています。

この場所はいったいどんな想いでつくられ、何を伝えようとしているのでしょうか。「FLAGS新木場」の立ち上げに携わった、デザイナーの北川健太さんと、マーケターの小澤亮さんにお話を聞きました。

ふたりは大学の建築学科の同級生で、それぞれ、設計事務所の建築家とIT企業のWebマーケターとして働いた後、この事業で再会。現在は、北川さんのものづくりへの想いを小澤さんが「右腕」となってプロデュースしていく、大事なパートナーの関係です。

小澤亮さん(左)と北川健太さん(右)

小澤亮さん(左)と北川健太さん(右)

「文化」をつくるための、ものの売り方

北川 この場所で「文化」をつくりたいと思っています。職人のつくったものの価値がちゃんと伝わって、使う側も目利きができるようになって、それを使うことに豊かさを感じられるような。そんな文化のある生活を大事にする心を伝えていきたいんです。

と、北川さん。「もの」の価値をちゃんと見極めること、そしてそれを感じながら暮らすこと。大量生産・大量消費の中で、いつのまにか軽視されるようになってしまったそんな「文化」をつくるために北川さんがこだわっているのが、販売方法。冒頭でご紹介した「木から始まる」オーダー家具の注文方法の他、クラフト製品の売り方も特徴的です。

北川 たとえば、このコップは3,675円で、「高い」と思う人が大半だと思います。でも、実はこれをつくるのに2ヶ月もかかってる。丸太の状態から乾燥させて、タイミングを見て一度木を切り出して、また乾燥させて…と、長い時間と手間をかけてやっと完成するんです。

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北川 ここでは、本当の良さを分かってもらうために、実際にこのコップでコーヒーを飲んでもらいます。コーヒーを飲みながら製作過程の話をして。そうすると愛着が沸くし、「それなら3,675円でも買おうか」と、価値がちゃんと伝わっていく。商品一つひとつを、そのくらいのレベルでプロデュースしていきたいんです。

そんな売り方を始めてから約半年。北川さんの丁寧なプロデュースに、東京湾を望む土地柄も手伝って、訪れたお客さんの滞在時間はとても長いのだとか。そしてそんなお客さんとの関係から、こんなことも起こっているのだそう。

北川 こうやって一人ずつ接客していくと、お店のファンになってくださる方も多くて、その人がまたお友達を連れて来てくれる。そうすると、そのお客さんが僕が話したことを説明し始める。お客さんが自ら「伝い手」となっていくんです。

それはものの良さが本当に伝わっている証拠だと思います。そういうコミュニケーションを通して、ここにあるクラフトやオーダー家具が生活の中に溶け込んでいくのが、理想とする形ですね。

「文化をつくる」という想いから生まれた接客スタイルは、着実にその想いを伝える役割を果たしているようです。

職人をめぐる現状に「伝える」立場で向き合う

KUKUNOKI」で販売されているのは、木の風合いが活かされた繊細なクラフト製品たち。そのものの向こう側には、日本古来の伝統技術を受け継いできた職人のみなさんがいます。

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でも、北川さん曰く、仕事が無いために職人の数は減っていき、技術力も落ちていく一方なのだとか。北川さんの「文化をつくりたい」という想いの背景には、こうした現状への危機感も存在しています。

北川 たとえば、建築を見ても、加工された木材でパズルのようにつくっていく建物が大半。街並を眺めても、代々残っていくような建物はほとんどないのが現状です。技術が無くてもできてしまうので、技術を伝える人も減っていますし、現場の大工さんのレベルもどんどん落ちています。技術を持った人の仕事も、どんどんなくなっていく。それを何とかしたい。ちゃんと技術を伝えて、残る物をつくりたい、というのが、僕の思いです。

『FLAGS新木場』デザイナーの北川健太さん

『FLAGS新木場』デザイナーの北川健太さん

そんな北川さんの想いを知る手がかりは、彼の経歴にあります。
北川さんは設計事務所に在籍していた当時、鉄筋コンクリートの建築をメインに扱っており、木を活かすようなものはつくっていませんでした。でも、ある出会いから職人の技術に出会い、「伝えたい」と思うようになったと言います。

北川 設計事務所にいた時代に、ある素材を通して、現在の事業オーナーに出会いました。彼は「クラフトの職人が喰えていない」という状況を見かねて、木材の端切れを彼らに譲ったりしていて、「クラフト製品を扱うお店を作って職人を支えていきたい」という想いを持っていました。

僕自身、コンクリートばかりを扱っていて木本来の良さを出せるようなものをつくっていなかったんですが、本当はそれをやりたかった。オーナーは”木の博士”みたいな人で、話していたら本当に楽しくて。職人の技術が、本当に「残すべき」ものだと言うことも知りました。

建築の方向からではなくて、木そのものと向き合っていったり、職人の技術を伝えるという立場から、自分の目指している建築家像にアプローチしていくのもいいかな、と思って。思い切って事務所を辞めて、この事業に専念することを決めました。

オーナーの想いを引き継いだ北川さんは、職人との対話を重ね、木を活かしたデザインの経験を積み、この場所を立ち上げるに至りました。「伝える」ことに役割を見いだした北川さんの想いが形になったのが、「FLAGS新木場」という場所なのです。

木の街・ 新木場 の“旗振り”役に

ところで、この新木場という場所。かつては木材産業で栄え、世界中から木材が集まってきていたということをご存知でしょうか? 新木場の「木場」とは、海路で東京に運ばれた材木を置く貯木場のこと。1969年、埋め立てによって、かつての「木場」の役割を「新木場」が引き継ぐことになったのですが、その頃の貯木場には、ところ狭しと木材が置かれていたそうです。

でも、海外で製材した安い木材に押され、新木場の街は今、その役割を失いつつあります。木材屋は減る一方で、運送業や倉庫業の街と化し、都が進める「まちづくり」からも取り残されてしまった街。北川さんはそんな新木場に変化をもたらしたいと言います。

現在の新木場の街

現在の新木場の街

北川 新木場には、木に詳しいオヤジさんたちがたくさんいるんです。僕らはここで使う木をこの街で仕入れているんですが、そうするといろいろな話を聞かせてくれて。この場所で僕らが新しい木の使い方を提案することを期待してくれています。

「FLAGS新木場」で場所を設定してオヤジさんたちが木の話をするなんてことができれば、「新木場おもしろいな」と思ってもらえると思う。そうやって、FLAGS(=旗)と言う名の通り、街の“旗振り”役にもなっていきたいですね。

職人の“旗揚げ”のためのギャラリー&イベントスペースに

そして今、2人が思い描いているのは、これから稼働を始めるギャラリースペースの使い方について。ただ期間限定で場所を貸し出すだけではない、ユニークな運営方法を考えているようです。

北川 ギャラリーは、職人や作家がここから“旗揚げ”していくような場所にしたい。そのために考えているのが、展示したものがリアルなアーカイブとして残っていくような仕組み。小さなボックスをつくって、そこにはQRコードがあって、ECショップで作品を購入できるような。ここでやった展示がちゃんと残っていくための仕組みです。

通常のギャラリーは、展示期間を終えたらそこで終わってしまって、何も残らないですよね。でも、職人や作家にとっては、そこから仕事が発生したり、自分の世界観を知ってもらうということが価値になる。彼らは、そこに苦労しているんです。一度展示したら残っていくような状況がつくれれば、彼らにとって利用価値のある場所になると思います。

間伐材でできたギャラリースペース。実は隠し扉もあったりします。

間伐材でできたギャラリースペース。実は隠し扉もあったりします。

さらに北川さんは、こんな夢を描いています。

北川 そんな使い方をすれば、いろんな技術を持った職人の存在がこの場所に残ることになります。職人集団ができあがって、企業と一緒にものづくりをするときには、その中から選んでもらうような循環を生み出していけたらいいですね。そうすると、この空間自体が建築で言う「重要文化財」みたいな役割を果たすんじゃないかって、そんな夢を描いています。

一方で小澤さんは、マーケターの立場から、こう語ります。

小澤 僕は、FLAGS新木場がこれからどう共感を集めて、どうビジネスとして持続できる環境をつくっていくのか、を考えています。

例えば、FLAGS新木場に関わる職人が“旗揚げ”するために、クラウドファンディングの活用をサポートしたり、職人の技術とITの技術を融合させて、間伐材でつくる新しいタイプのガジェットの開発を開発したり。

僕は過去に、建築家になる夢を折り畳んだ人間なのですが、それ以降は、想いを持った人をPRして、いかに輝かせるか、ということに価値を感じています。今は、北川の想いを実現するためにPRして、夢を持つ仲間をここにたくさん集めたい、それが全てです。

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ギャラリー・イベントスペースでは、9月29日にオープニングイベントを開催予定。また、秋には、ある陶芸家の展示が予定されており、連動したイベントも企画中。陶芸教室から始まり、冷やした陶器でビールを味わい、備前焼の話も聞けるような一日を考えているのだとか。「FLAGS新木場」ならではの企画として、とても楽しみなイベント。これらの最新情報は、Facebookページにて随時更新中ですので、ぜひチェックしてみてください。

職人の技術や街の旗振り役として、職人の旗揚げ場所として。
「FLAGS新木場」の今後も注目していきたいと思います。

オープニングイベントも開催決定!最新情報はここでチェック