「GLY」というプロジェクト名は、“Girl Loves Yamagata”の略。その名のとおり、女性の地元愛で山形を盛り上げようという活動です。口コミ力など女性が集まった時のパワーはスゴイもの。発起人の田中麻衣子さんは、そのエネルギーを山形を活性するために役立てられたらと考えました。
はじめはサークル活動から始まった「GLY」ですが、いまや本格的に事業化し、よりパワフルな「GLYオフィス」として歩み始めようとしています。
「GLY」主催の芋煮会の様子
山形で働くことに希望がもてなくなった
このプロジェクトを立ち上げた動機は、田中さん自身の山形での苦しい体験にありました。
田中さんは山形県の生まれ育ち。仙台で大学を出た後、山形で高級車のディーラーに就職しました。職種は”内勤営業”。ところが実際の営業は完全に男性中心の仕事で、女性は毎日、お茶出しと車磨きの日々。仕事で何か提案しても「なるべく波風を立てるな」といった風潮でした。
新入りの田中さんはもとより、先輩の女性社員も、直接営業に携わることはできない職場で、本格的に仕事を学びたいと思っていた田中さんは、悩みます。
この時、相談した周りの先輩や友人たちからは、楽でお給料もいいんだから、いい仕事じゃないと言われました。山形だから仕方ないって。自分の気持ちを理解してもらえず、モチベーションを保つ方法がわからなかったんです。山形の人たちのいいところでもあるけれど、面倒は起こすなって感じになるんですよね。
ついに一年後には上京する決心をして、東京で職を得ます。
新しい職場は、山形の時とは正反対。
とにかく自分の頭でモノを考えることを学びました。何か上司に相談すると、必ず聞かれるんです、“で、オマエはどうしたいの?”って。
女性だからといって仕事が制限されることはなく、責任を持って思う存分働けた。山形と東京といっても、いろんな職場があるし、一概に比較はできない。それでもいったい何が、それほど東京と山形で違ったのだろう?
私の周りでの話ですが、山形では男性の後ろであまり問題を起こさずにやっていようとする女性が多かったと思います。今ある現状を前にして「どうせ」じゃなく、「じゃあ、どうしよう?」と考える女性が一人でも増えたら、山形ももっと変わるんじゃないかと思いました。
この時の経験、気持ちが、「GLY」を立ち上げる原動力になっていきます。
女性の楽しむパワーは凄い!女子会から生まれた「GLY」
都心には、興味や関心の近い人たちと知り合い、刺激をもらえるオープンな場が沢山あります。そんな交流は、日々仕事に向き合うやる気や、生きる力を与えてくれるもの。地方では、そんな場が都心に比べれば少ないのかもしれません。
かつての自分を重ねて、田中さんが考えたのは、前向きに生きる女性同士がつながる場やきっかけを提供すること。楽しむためだけのイベントでも、パワフルな女性同士が知り合って刺激し合える関係ができれば、閉鎖的なしがらみにも風穴が開けられるのでは、と考えたのです。
そしてもうひとつ。地元を出たものの、再び湧いてきたのは、家族や友達など大切な人たちの居る「山形」への思いでした。
ちょうどリーマンショック以降で、不景気な時期でした。父の商売も厳しいと聞いていましたし、地元の友人からも山形の経済的な疲弊を耳にしていました。私が「GLY」を始めようと思ったのには、山形大好き!っていう気持ちよりも、何かできることをした方がいいって危機感のほうがはじめは強かったんです。
こうして、山形のPRを目的とした交流会やイベントを実施するプロジェクトとして「GLY」を立ち上げます。まず声をかけたのは、山形の中学校の同級生で、東京に出てきていた10人近くの友人たちでした。よく集まっては女子会をやっていたのだそう。
手書きで自分の思いを書いてコピーしてみんなに配ったんです。山形を元気にするようなことがしたい。一緒にやろうよって。そしたらみんな、やろうやろうって言ってくれて。
初期の頃の活動は、「山形」をキーワードに、メンバーがやりたいことを形にするサークルのようなもの。芋煮会や町コンのような遊びもあれば、山形のことを考えた真面目な企画もあったり。
「やまがた、こうなっどいいずね」(山形こうなるといいね)というテーマでワールドカフェ形式の「ヨリアイ」会議を開いたこともありました。イベントには男性も交え、山形との横断型のものもあり、毎回盛り上がります。
ヨリアイワークショップ
そんなパワフルな活動を地元の人が放っておくはずもなく、市役所から観光PRのお手伝いで声がかかるなど、活動範囲は広がり始めました。
山形市のまるごと推進課から依頼を受けたのは、モンテディオ山形のFC東京戦の試合会場で山形の観光PRでした。企画からやらせてもらえるなら、と引き受け、山形の初心者とツウの人向けにいくつものパターンのお勧めコースを紹介。企画は大成功をおさめます。
「GLYオフィス」の発足、本格的に事業化へ
「GLY」の活動はほとんどボランティアで行っていましたが、田中さんは次第にこれが仕事になったらいいなと考えるようになっていきます。そうなれば、ボランティアで楽しいことをやるのとは切り離して、仕事として受ける形を取らなければなりません。
これまでの交流会やイベントは「GLY」として続け、新たに事業体として「GLYオフィス」を立ち上げる決心をしました。
昨年2011年4月に正式に法人化した「GLYオフィス」。
具体的にどんなことを事業としてやっていくのでしょうか?
今まだ模索中でもあるのですが、山形へのイベント情報を掲載するウェブマガジンを立ち上げて、そこを媒介にしたUターンのサポートや、地元企業のPR活動でお手伝いができたらと考えています。何をやるにしても、山形の女性が楽しく働くことにつながることをしていきたい。
今準備中の企画は、ある企業と組んで、今年6月に山形で行われるイベントで、女性の販売力やアピール方法を生かして山形の商品をPRするというもの。「GLYオフィス」が企画に携わり、山形のボランティアの女性たちにPR販売員として参加してもらいます。
こうして「GLY」のプロジェクトに関わった女性たちが、自分の職場に戻った時に、少しでも前向きに課題を考えたり、積極的に働くようになってくれるようないい刺激を感じてもらえたらいいなと思っています。
現状、「GLYオフィス」の事業に興味を示しているのは行政がほとんど。田中さんたちは、もっと地元の企業を巻き込んでいきたいと話します。
「若い女性の意見が企業の役に立つかもしれない」
行政は、若い人たちへの支援に積極的だけれど、企業は、若い人が戻ってきても何ができるんだと思っている人が多い。同じように、女性の力を商品のPRに活用することが、私たちもまだ示せていないのが現実です。これからの課題ですね。
それに、「GLY」としては、起業するような一部の少数の人たちだけではなくて、もっと一般の女性、普通に働いている女性たちの考え方に影響を与えられたらいいなと思っています。
2012年も、「GLY」のサークル活動は祭りや海コン、芋煮会と予定は盛りだくさん。サークル活動で楽しく熱く盛り上げつつ、「GLYオフィス」の事業もしっかりと、両輪で進めます。
山形県に限らず、ほかの地方でも同様の取り組みができるかもしれないこの活動。今後の「GLY」の動きに注目です。
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