表情が読み取れない。他人に対して興味をもたない。そもそも本人に喜怒哀楽の感情表現が見受けられない…。これは自閉症の方のキャラクターの一部です。映画『レインマン』で、ダスティン・ホフマン演じるレイモンドも自閉症でした。
今日紹介する「Build-A-Robot」は、そんな自閉症をもつ子供たちのために作られたおもちゃ。遊びながら自閉症を克服しようというプロダクトなのです。
自閉症の子どもたちは脳の発達障害をもっていて、目で見たこと、耳で聞いたことをそのまま認識しようとします。でも人のコミュニケーションって、見たままじゃないこともありますよね。“笑う”という動作にも、文脈によって“愛想笑い”、“苦笑い”、“嘲笑い”、などなど…。だから彼らは、他人とのコミュニケーションに苦手意識を持っているんです。
「Build-A-Robot」は、喜怒哀楽それぞれがデザインされた頭部のパーツを取り換えることができ、嬉しいとき、悲しいとき、怒ったとき、驚いたときに、その感情をどうやって相手に伝えるかを教えてくれます。
このおもちゃを手がけた、元フォトジャーナリストであるLaura Chun Urquiaga(ローラ・チャン・ウルキアガさん)は、プロのセラピストや自閉症の子どもたちの親を講師として迎え、彼らとの対話を経てデザインしました。普通の子どもたちにも使ってもらえそうな形をしているのは、「“特別”なおもちゃに見えないものがいい」という親の意見に配慮しているからです。
「Build-A-Robot」がユニークなのは、五感をいかしているところです。例えば悲しい顔をした頭はやわらかいフェルトでできています。それに対して怒った顔をした部品はとんがっています。驚いた顔の部品は、てっぺんのボタンを押すとキーキー叫びます。人型よりもロボット型の方が、コミュニケーションを苦手とする彼らにとっては受け入れやすいのだとか。
ちなみに、このおもちゃができるまでのプロセスも素晴らしいのです。素材には再利用したオーガニックな木材を使い、染料は水性。ホルムアルデヒドの入っていない糊は、バイオマスと太陽エネルギーを使っている工場で作られています。パッケージも再生紙というこだわりです。気になるお値段は35ドル。こちらからご購入することもできます。
「Run4u」でも紹介しましたが、「ありのままでいてもいい」という”インクルージョン”というキーワードが注目されています。例えば視力の低下がわかりやすいですが、誰もがみんな何かしらのハンディキャップを持っていると自覚することで、除外するのではなく、近い存在として優しくなれるのではないでしょうか。
今回の五感をいかしたおもちゃは、自閉症ではない子ども達もむしろ喜びそうです。それはある意味、自閉症の子どもたちがいてくれたおかげで気付くことができたアイデアなのかもしれません。
障がいを持った子どもを抱える親とデザイナーとの対話から生まれた「Build-A-Robot」には、きっとたくさんのヒントが詰まっているはずです。
(Text: 石田愛)
[via Co.DESIGN]
自閉症の子供たちのために、お父さんたちが走ります。