波乗り道具のサーフボード。FRP(繊維強化プラスチック)製のボードが一般的ですが、木の板を削り出してボードを作るシェイパーが琉球(沖縄)にいると聞きつけ、訪ねてきました。自然の素材で作るサーフボードとは一体、どんなものでしょうか?
沖縄本島最南端の南城市。眼下に東シナ海を見下ろすアトリエで、木製ボード「xalaia(エックス・アライア)」は作られます。シェイパーはフランス人のムラン・ザビエさん。「僕が作るのは、ハワイにルーツを持つ『アライア』と呼ばれるボード。エックス・アライアは波と対話するためのボードです」と達者な日本語で語ります。
エックス・アライアの身上はザビエさんいわく「削る、けずる、削る」。桐の集成材からムダなぜい肉をそぎ落とすように削り込んだプロポーションは「クルマに喩えるとフィアット・チンクエチェント」なのだそう。続けてこんな説明もしてくれました。
「アメリカで発達した今時のFRPのボードは、イージーな波乗りを実現するために分厚くして浮力を稼いでる。これはクルマでいうとベンツだね(笑)。それもいいけど、エックス・アライアならもっとプリミティブに波とたわむれることができるよ」。
つまりこういうことです。浮力に余裕のあるボードと違い、エックス・アライアの木製ボードは波が来ないかぎり乗っても沈むだけ。しかし一たび波をつかめば、水面を滑走することで浮力が発生して「水の上に立つ感じ」を味わえます。FRPボードのような安定感はないかわり、テクニック=波との対話のレベルに応じたサーフィンを楽しめるというわけ。
サーフィン歴28年のザビエさん、元々は工業デザイナーとして多忙な日々を極めていました。けれども、ひたすら生産と消費を繰り返すだけのファストな社会の中でデザインを続ける意味を自分に問いかけた末、生活のペースを落とすことを決意。1999年から沖縄に移住し、ナチュラリスト兼デザイナーとして生きる道を選びます。
そんなザビエさんにとって、エックス・アライアは単なるボードではなく、持続可能なモノづくりを実現するための手段であり、そしてザビエさんの生き方そのもの。アトリエの南側に面する畑では桐やクスノキなどの苗木を植え、サーフボードをまさに自然の恵みで作るところから始めています。
エックス・アライアではアライアの製作・販売だけでなく、ボードのシェーピング(研削=けずり)やサーフィンのレクチャー、苗木の植林などが体験できるワークショップも用意しています。誰かが植えた木でボードを作り、自分が植えた苗木で次の世代がサーフィンを楽しむ―。波乗りの起源はハワイですが、ひょっとしたらサーフィンの先人たちも、時間をつうじて地球と自分がつながるワンネス(一体感)を、波の上で感じていたかもしれません。
筆者はまったくのカナヅチですが、エックス・アライアのボードでなら波乗りにチャレンジしてみたいと思いました。あなたもスローな波乗り体験、してみませんか?
xalaia(エックス・アライア)のすべてがわかる!
ザビエさんのアトリエは、この道中にて訪問しました