「脱東京」
この単語に思わず反応してしまったあなたは、こんなことを感じているかもしれない。
都会の暮らしに疲れてしまった。
会社と家の往復ばかりでつまらない。
今は東京でもいつかは田舎に帰りたい。
都心で生活している人からよく耳にするこれらの言葉。そんな人に選択肢として提案したい生き方、それが“脱東京”だ。
最近では仕事をしながら郊外で暮らしたり、都心と郊外の2拠点を構えたり、といったライフスタイルを実践している人たちが確実に増えている。でも多くの人は、お金持ちだけのもの、自分には夢物語と、チャレンジもせずに諦めてしまっているのが現状だろう。実にもったいない話だ。
「脱東京ゼミ」はこのような潜在的にある需要に答えた「ローカルでクリエイティブに生きる=脱東京、ローカリズム」の実践を目指す、誰でも参加できる「ゼミ」。主にクリエイティブ層を対象とし、全6回に渡りトークやワークショップで構成されている。
今日は、先日1月26日、東京R不動産ディレクターの馬場正尊氏をゲストに迎えて開催された第2回ゼミの様子をレポートでお届けする。次回以降参加の検討材料になればと思う。
この日の会場は原宿Sunshine Studio cafe。定員30名のところ、会場は満員御礼。約半数が第一回から継続参加で、開始前から会場は熱気に溢れていた。
今回はトーク形式のゼミとなり、まずは寺井氏よりマチヅ・クリエイティブ、および脱東京ゼミの紹介、趣旨説明からスタートした。
“クリエイティブによる街の改造”をテーマに活動するマチヅ・クリエイティブはNPO法人KOMPOSITIONからスタートアップしたプロジェクト。街づくりにはまず人材が必要という発想から、クリエイティブ層に属する人々を都心から誘引するためにスタートしたのが「脱東京ゼミ」だ。この講座ではクリエイターの脱東京を支援するため、地方で活躍する講師のトークや、ケーススタディーとして千葉県松戸市へ移転する方法を実践的に学ぶワークショップなどを開催する。
まず、「脱東京」とはなんだろう?寺井氏が掲げた定義は以下の3つ。
1:地方に個性のある拠点を持つ
2:地方と東京を横断して生活する
3:「東京」に縛られずに生きる
決して、田舎に引きこもって暮らしたり、地方に拠点を移すと言うだけを意味しないところがポイント。田舎で暮らすのももちろんよいのだが、それだけでは少々ハードルが高い。郊外の商業エリアとして使われていた地域を、住居や事務所をつくるなどといった、これまでと違う形式で活用することによって街を活気付けていく方法も実践を交えながら考えていくのがこのゼミの面白さだ。
さて、脱東京ゼミの一つのポイントは、クリエイティブ層にターゲットを置いていること。これは、人口比率で当然職業が限られてくる田舎では、自分の仕事をクリエイトしていかなければならないから。クリエイティブ層には、その可能性があるという考えだ。
もう一つ重要なポイントは、地方に拠点を持つ為に欠かせない地元とのコミュニケーション。寺井氏より、コミュニケーションのコツが具体的事例を交えながら紹介がなされたが、商店街や町内会が存在する組織の複雑さや、商店街や広場の持ち主の話など、実に興味深い話題が盛りだくさん。地元に関する知識や理解なしではクリエイティブな活動はできない困難さを実感しながらも、その面白さや魅力に会場も興味津々といった様子だった。
基礎知識やコンセプトを共有したところで、ゼミは馬場氏によるプレゼンテーションへと進んだ。馬場氏は現在、日本橋(東京都中央区)に事務所を構え、浜松町(東京都港区)と房総(千葉県)に2つの生活拠点を構えた生活をしており、仕事においても、「房総R不動産」「山形R不動産」といったユニークな地方展開を積極的に行っている。馬場氏からは、現在の生活や仕事に至るまでの経緯やこれからの展望、また、脱東京の魅力や成功の秘訣についてのトークが展開された。
非常に興味深かったのは、「山形R不動産」を立ち上げた経緯のお話。このサイトは、馬場氏が特任准教授として定期的に通うようになった東北芸術工科大学とのコラボレーションで、主に「空き物件のリノベーションを提案するサイト」となっている。古くなった旅館を学生のシェアオフィスとして再生し、結果として高利回りの物件になった事例をはじめ、地元の理解を得ながら学生とともに積み重ねた成功体験が、現在地元に活気を与え始めている。また、本当は仕事があるのなら地元でやっていきたいと思っていた学生たちが、これをきっかけに地元でいきいきと活動し、よりいっそう街が元気になっていることも印象に残った。馬場氏の仕事の本当の効果は、こういったところに表れているのかもしれない。
また、非常に示唆に富んでいたのは、商業で失敗した場所を商業で再生しようとして大抵うまくいかず、そこに「住む」という新しい概念を持ち込むことが成功に結びつける秘訣だということ。街を再生するためには、人口、そして流入人口を増やすことが欠かせない。居住と商業の小さな再統合を組み合わせていくことで町が活気づいていくとのことだ。
これ以外にも、街と溶け込むための秘訣や地元との関係作りの奮闘エピソードなど、馬場氏のソフトながら軽快なトークに、会場は大いに盛り上がりを見せた。多くの事例が示しているのは、クリエイターと田舎の相性がとてもよいということ。馬場氏いわく、“クリエイターは社会の実験台”。フットワーク軽く、チャレンジ精神旺盛なクリエイターは今、元気がないとされる田舎や地方都市に最も必要とされている存在なのかもしれない。
今回のゼミ全体を通して強く感じられたのは、生き方、働き方の選択肢がもっとあっていいというメッセージだ。収入も消費もハイカロリーな都会生活と、ローカロリーで済む田舎生活。たとえ週末だけでも脱東京できる拠点が郊外にあると気持ちも暮らしもぐっと豊かになり、今よりもバランスの取れた生き方ができるのかもしれない。現在の馬場氏の生活も、ほぼ週末だけ房総へ向かう生活だが、そんな「半・脱東京生活」でも地元との交流や田舎ならではの体験を楽しみ、生活は豊かになっている様子。さらに、郊外に仕事ができる拠点があれば、生き方はもっと自由で多様になってくるだろう。
多様な生き方が可視化され、脱東京がぐっと身近に感じられたところで、では具体的にどう動いたらよいのか?ゼミは第3回へと続いていく。次回は2月6日(土)、いよいよ会場を松戸へ移しての開催だ。お申し込みは今すぐ、こちらからどうぞ!
定員:30名
料金:無料(会場によってはワンドリンクオーダー制となります)
応募:http://www.machizu-creative.com/post-tokyo/ よりお申し込みください
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平成21年度 起業研修事業(中小企業庁支援事業)
[主催]株式会社全国商店街支援センター
[事業事務局]みずほ情報総研株式会社
[受託先]NPO法人KOMPOSITION / マチヅ・クリエイティブ
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※第1,2回は終了しました。
■第3回
2月6日(土)13:00~19:00
@席亭(松戸) http://www.gates-inn-gallery.com/chaji-chaji-print.html
講師:
北池 智一郎(店舗経営コンサルタント/TOWN KITCHEN代表)
寺井元一(マチヅ・クリエイティブ代表/NPO法人KOMPOSITION代表理事)
脱東京のモデルケースとなる千葉・松戸駅前に行き、具体的にまち歩きして
商店街の物件を見てから、クリエイターにとっても重要な「仕事の基本」を考えます。
■第4回
2月12日(金)18:00~21:00
@東神田(CETエリア)周辺
講師:
シミズヨシユキ(有限会社ズィープロダクション代表取締役)
寺井元一(マチヅ・クリエイティブ代表/NPO法人KOMPOSITION代表理事)
東京・東神田のCETエリアにお邪魔して、実際のお店の様子や店舗運営を体感
しつつ、CETを運営しているシミズヨシユキ氏に「東神田で何が起きたのか」伺います。
■第5回
2月20日(土)13:00~19:00
@松戸商工会議所
講師:
橘昌邦(株式会社アフタヌーンソサエティ/東京理科大学非常勤講師)
北池智一郎(店舗経営コンサルタント/TOWN KITCHEN代表)
寺井元一(マチヅ・クリエイティブ代表/NPO法人KOMPOSITION代表理事)
1~4回のゼミをもとに、実際に「松戸に拠点を移すとしたら」「アトリエや工房を
構えるとしたら」「ショップを作るとしたら」というアイデアを作ってみます。
■第6回
3月6日(土)13:00~19:00
@松戸商工会議所
講師:
橘昌邦(株式会社アフタヌーンソサエティ/東京理科大学非常勤講師)
北池智一郎(店舗経営コンサルタント/TOWN KITCHEN代表)
寺井元一(マチヅ・クリエイティブ代表/NPO法人KOMPOSITION代表理事)
ゼミ参加者でアイデアを発表しあい、フィードバックを交換し合います。
松戸の商店街など地元の方やビルオーナーの方にも参加いただく予定です。
また橘昌邦氏によるゲーム形式のまちづくりワークショップも行う予定です。
■■応募方法■■
http://www.machizu-creative.com/post-tokyo/ よりお申し込みください
※定員に達した場合は抽選とさせていただく場合があります
※6回通し受講の方を優先させていただきます