いよいよやってくる夏フェスシーズン。今年はどのフェスに参加しようか、まだ迷っている方もいるのでは?フェス参加経験のある方なら存じだと思うが、夏フェスにおいて、エコはもはや当たり前のこと。グリーン電力、ゴミ分別、リユース、リサイクル、オーガニックフード……。アーティスト、来場者、スタッフみんなが一丸となった取り組みがますます活気を帯びている。夏フェスで初めてエコに興味を持ったという人も実は多いらしい。
そこで、greenzではエコスゴイ夏フェスの代表選手をどどーんとご紹介!ここまで進化した各フェスのエコな取り組み。その歴史と最新情報をたっぷりとご覧ください。
■ap bank fes ’09 (7月18日~20日)
~フェス初の100%マイ箸を目指す5年目。食もグッズもさらに進化!~
エコな夏フェスといえば、ご存知ap bank fes!小林武史、櫻井和寿の2人が立ち上げたap bankが運営し、二人が参加するBank Bandがホスト役となってゲストを迎える形式のステージは、このフェスならでは。静岡県・つま恋の自然の中で、存分に音楽とエコを感じることができる。eco-resoという魂が流れるこのフェスでは、あらゆるところに環境配慮が見られ、訪れる人の心に様々なつながりを与えてくれる。5回目を迎える今年のテーマは“原点回帰”とあって、エコに対する取り組みもさらに本質に挑戦するものとなっている。
ap bank fes’09ロゴマーク
これまでも継続して取り組んできた自然エネルギー、ゴミの11分別、オーガニックフードなどに加え、今年フェスとして初めて挑戦するのは、マイ箸、マイカトラリーの持参率100%を目指すこと。無料の割り箸などは提供せず、忘れてしまったら有料販売のスプーンや箸を利用しなければならないという徹底ぶりは他に例をみない。その周知のため、Webなどでエントリーするチケット先行予約においても、予約確定前にこのことに同意しなければ購入できない仕組みをとっている。
ちょっと厳しすぎ?と思うかもしれないが、チケットを忘れたらフェスに入場できないのと同じように、マイ箸・マイカトラリーはap bank fesへのパスだと思えば、意外となんでもないことなのかもしれない。それにお気に入りの箸で食べるとさらにおいしく感じるかも!?100%達成のため、参加者のみなさんはどうかお忘れなく!
一方、今リユース食器の使用を継続しつつも、今年はさらにマイ食器の持参も“推奨”している。フェス当日、みんなのおいしい笑顔がマイ箸やマイ食器と共にあるのだろうか。考えただけでワクワクしてくる。
ap bank fesで使用されるリユース食器
ではその食器でいただく食事は、というと、こちらも今年から新たな取り組みが登場!環境にもからだにもおいしい飲食店がならぶオーガニックフードエリアはもはやap bank fes名物といってもよいだろう。
ap bank fesのオーガニックフードエリア
そんなオーガニックフードエリアに、今年“食良(たべよし)くん”というアイコンが登場する。食への取り組み基準として店先に張り出されるこのアイコンは、そのお店の取り組みをひと目でわかりやすく表示し、食べる前に出店者の思いを知るきっかけに、と考えられたものだ。
食への取り組みを表す食良(たべよし)くん
ご覧のとおり顔の部分に有機(=オーガニック)、公平(=フェアトレード)などの漢字が並び、また取り組み年数も「食良くん」が教えてくれる。“おいしい”だけでは終わらせない可視化の仕組みは参加者にどんな影響を与えるのか。今年のフードエリアは大注目だ。
さらにさらに、毎年大好評のオフィシャルグッズも進化!今年はTシャツとタオルにプレオーガニックコットンを使用した。プレオーガニックコットンとは、オーガニックコットンに認定される前のコットンのことで、これを製品化して販売することで、生産農家を支えることができる(くわしくはコチラの記事へ!)。フェスのTシャツとしては初の試みとなるこのTシャツを着て、その心地よさと意義を感じてみよう。
昨年同様、観客が帰った後の芝生にゴミがひとつも落ちていない光景が見られるのだろうか。今年もまもなく、あの空間とみんなの笑顔に出会える!
■ FUJI ROCK FESTIVAL ’09 (7月24日~26日)
~夏フェスのエコの先駆者的存在~
次に紹介するのは、言わずと知れた日本の夏フェスの代表格であるフジロックフェスティバル。新潟県・苗場という大自然を舞台に、テイストやスタイルの違う大・小ステージがあらゆるところに存在し、それぞれの自由なスタイルで自然と音楽を存分に楽しむことができる。3日間で200近いアーティストが出演し、のべ12万人もの人が集まるビッグフェスも今年で13回目。歴史と共に環境対策も来場者に浸透し、その厚みを増してきている。
FUJI ROCK FESTIVAL ‘08 の様子
まずは資源循環への取り組みからご紹介しよう。“世界一クリーンなフェス”を目指すと公言しているとおり、今ではお馴染みとなった国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」によるごみゼロナビゲーションを真っ先に導入したのがフジロック。ボランティアスタッフによるゴミ分別指導やオリジナルゴミ袋を配布する姿は多くのフェスで見られるようになった。きちんと分別されたゴミのうち資源物は、環境対策本部などに集められ、リサイクルされる。
彼らが目指すのは、参加型の仕組みづくり。ゴミを捨てる人がいて、拾う人がいるという構造ではなく、イベントに参加するすべての人々がゴミの削減に向け協力することを目指しているため、あくまでイベント参加者の「手助け」をするというスタンスを取っているのが特徴だ。フェスにおいてゴミ削減への協力体制に自ら参加することにより、環境配慮型ライフスタイルの浸透へのきっかけづくりとなることが、彼らの目指すところだ。フジロックをはじめとする夏フェス会場では、あれこれ考えながら列に並び、ゴミの分別でさえも楽しんでいるお客さんに出会える。今年もクリーンなフェスティバル作りに積極的に参加してみよう!
さらにフジロックでは、カップは植物由来原料100%の生分解性プラスチックを、割り箸は国内間伐材製を利用。この割り箸は使用後、建築資材に生まれ変わる。また、昨年は前年2007年に回収したペットボトルから生地を作り、スタッフ・ジャケットに利用するという新たなリサイクルプロジェクトを発足。あらゆる資源を有効活用し、その先へつなげる取り組みが多数行われている。
また、カーボンニュートラルへの挑戦も、フジロックで特筆すべきポイント。世界各地で植林を行うことにより、イベントで排出するCO2を相殺するという取り組みは、フェスとしては先駆け的存在。2006年には地球温暖化防止を目的とする国際環境基金グローバル・クールの立ち上げにも参加し、その活動を本格化。一部のステージは、バイオディーゼルや太陽光といったクリーン・エネルギーですべてをまかなうなど、積極的な導入を行っている。また、昨年はあの発電床を参加者に体験してもらうなど、参加者への啓蒙にも力を入れている。
CO2削減に取り組むNEW POWER GEARのロゴ
さらに、環境問題や社会問題と向き合うフィールドとしてNGO VILLAGEを設置しているのも非常に興味深い。今年のテーマは「地球温暖化・自然エネルギー」「生物多様性」「人権」。音楽フェスティバルの中に社会問題と向き合う場を作り、来場者にアクションへのきっかけをつくることを目的とするこのフィールドでは、音楽を楽しむように自然に、社会問題と向き合うことができるだろう。
FUJI ROCK FESTIVAL ‘08 NGO VILLAGEの様子
フジロックのこうした取り組みが他の多くのフェスへ与えた影響は大きい。今年の環境対策にも大いに期待したいところだ。
■ RISING SUN ROCK FESTIVAL 2009 in EZO (8月14日・15日)
~北海道の大地でつながりを感じる!~
北海道石狩湾の大地で朝日を見るまでオールナイトで音楽を楽しむRISING SUN ROCK FESTIVAL 2009 in EZO(以下RSR)。日本初の本格的オールナイト野外ロックフェスティバルとしてスタートして今年で11回目。規模は着実に大きくなり、昨年は7つのステージで国内外のアーティストがそれぞれのステージを繰り広げた。会場内にテントを張って夜を過ごせるのも大きな特徴のひとつ。北海道ならではの味覚や自然を満喫できるアトラクションなど、その楽しみ方は無限大とも言える。普段は何もない広大な敷地に、今年も音楽と自然の楽園が登場する。
RSRの環境対策は、北海道の大地という最高の立地でフェスが初めて開催されたとき、自然発生的に生まれた。“自然の中で音楽を楽しめるのはこの環境があってこそ”という思いが行動となり、その後環境NGO ezorockが設立された。彼らのビジョンは単純明快。
“50年後も野外で気持ちよく音楽を聞いていたい”
参加者の誰もが感じるであろうこんな思いを胸に、現在は夏フェスに限らず様々な環境活動を行っている。
RSR’08の様子
さて、環境NGO ezorockが主催者とともに実施するRSRの環境対策は、ごみの分別はもちろんのこと、オリジナル展開も興味深い。なかでも他にはない、北海道ならではの取り組みと言えるのがRSRオーガニックファームだ。これは、昨年のフェスで回収された生ごみ(その量なんと14.1t!)を堆肥化し、その一部の堆肥からなる土で育てたオーガニック野菜を、今年のフェスで提供するという目に見える「おいしい」リサイクル活動。昨年の参加者が行ったごみの13分別が、今年のおいしい食事につながり、また来年のフェスへ……。食を通したつながりは、来場者の心にフェスという限られた時間・空間にとどまらない何かを残してくれることだろう。
RSRオーガニックファームの活動の様子
実際、RSRの活動が地元の方々に与える影響は大きく、オーガニックファームの取り組みも地元の牧場や農園の協力により実現している。環境対策活動を通じてできたつながりは、今後もあらたな展開を見せてくれるに違いない。
また、今年も会場内にはNGOやNPOなど市民団体によるオルタナティブな価値を発信、提案する場「オルタナブルビレッジ」が登場する。音楽と共にNGOやNPOに触れる機会を提供するものだが、ライジングの特徴はそれが参加型、体験型で発信する場であること。
・環境に負荷の少ない持続可能な暮らし方
・人と人がつながり、支えあうコミュニティの大切さ
・暮らしの中で考え、行動することで社会が変わること
以上の3つを来場者に伝えるため、今年は“50年後の未来につづく「もうひとつの○○」”をテーマにブースが展開される。
RSR’08のオルタナブルビレッジの様子
いったいどんな団体が出展し、どんな体験ができるのか。そして、どんな未来が描かれるのか……。ライブと共にこちらも見逃せない場となりそうだ。
地元に息づき、環境情報の発信拠点とも言える存在になりつつあるRSR。今年も北海道の大地に熱い夏がやってくる!
■ 他にも続々!注目のフェス
これまでご紹介したのは何れも大規模の夏フェスとなったが、他にも注目すべきフェスはまだまだある。
公演翌朝にアーティストも参加してビーチクリーン活動を行うWINDBLOW’09(8月29日・30日)や、全フードをオーガニックに徹底した今年初開催のBIG BEACH FESTIVAL’09(6月開催・終了)、海岸にゴミ箱を設置する活動を続けているサーファーの祭典THE GREENROOM FESTIVAL(6月開催・終了)など、規模は小さくてもそのコンセプトの中心にエコを掲げるフェスが続々登場中。
今年限定、究極のシチュエーションを楽しみたいなら、7月22日の皆既日食にあわせて開催される奄美皆既日食音楽祭がオススメ!皆既日食観測で地球意識を感じながら、奄美大島の自然に包まれて音楽鑑賞なんて、どんな世界なのか…考えただけでもゾクゾクしてくる。こういった音楽と自然の融合も、今後次々に登場する予感。
あなたのお気に入りのフェスは見つかりましたか? 今年の夏フェスはエコの視点で選んでみるのもよいかも。暑い夏をあなたなりのスタイルでお楽しみください。
ステキな夏を!
まずはボランティアでの参加もオススメ!