一見フツーなこの自転車、実は、通常の自転車と同様に移動や運搬に利用できるのみならず、収穫後のとうもろこしの殻剥き機にもなる「自転車兼農機具」だ。米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology・MIT)の学生や発明家、社会起業家などで構成される「Global Cycle Solutions」が開発したこの優れモノな農機具についてみていこう。
「Global Cycle Solutions」は、発展途上国が抱える社会的な課題を技術や製品の開発によって解決しようと取り組む発明家、社会起業家、学生らのグローバルコミュニティだ。彼らは、発展途上国の農業の約70%において農機具の不足ゆえ作業のほとんどを人力に頼っているという現状を改善するべきと考え、自転車の摩擦熱を活用した農機具の開発を行っている。この取り組みは事業性の観点からも高く評価されており、2009年、MITが主催する起業家コンテスト「MIT $100K Entrepreneurship Competition」において、観客賞(Winner of the Audience Choice Award)を受賞した。
彼らが開発を進める農機具の原理は極めてシンプル。自転車をこぐことで摩擦を起こし、摩擦熱エネルギーから電気エネルギーに変換させ、このエネルギーを農機具の動力に活用するもので、既にこの技術は自転車のライトでも広く使われてきた。2008年夏、とうもろこしの殻剥き機を搭載した自転車の第1号をタンザニアの農村アルーシャ(Arusha)で導入したところ、従来の手作業に比べて40倍も作業効率が向上したという。
自転車の摩擦熱を活用した製品の開発は、以下の動画のとおり、ペルーの「Bicilavadora」プロジェクトの「自転車兼洗濯機」など、「Global Cycle Solutions」以外でも進められている。
「Global Cycle Solutions」の取り組みにおいて特筆すべき点は、やみくもに新たな技術開発を志向するのではなく、発想の転換により、既存の技術をうまく活用して社会的な課題への解決につなげていることだ。基礎研究が不要な分、開発に費やす期間やコストも軽減できるし、安価に製品を提供することができるためより多くの場所で課題解決を実行できる。ヤワらかい発想力で、既存のものをうまく活用し、本来の目的である課題解決に着実につなげることの大切さを示しているといえよう。
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