これからの持続可能な社会をつくっていくために必要な働き方として、ビジネスを通して環境問題に取り組む人、環境にやさしい働き方をする人、つまり、グリーンカラーがいま注目を集めているのだという。
いままでの働き方といえば、夏の暑い時期でもスーツにネクタイ、白いシャツを着て働くサラリーマン、いわゆるホワイトカラーと、製造業などで作業着を着て働く人、いわゆるブルーカラー、の2つにに分けられていた。ちなみに、カラーとは、「色=color」ではなく、「襟=collar」を意味する。
持続可能な社会を実現するうえで、環境とビジネスの両立は不可欠となっている。そこで、いま、注目されているのが、ビジネスを通して環境問題も同時に解決しようという企業の取り組みであったり、そういったエコノミーや仕事を創ろう、というグリーンムーブメントだ。
新潟市で開催されたG8サミット労働相会合で採択された「新潟宣言」には、格差解消をG8が共通の課題とした上でグリーンカラージョブの創出を盛り込んだ内容となった。ほかにも、労働者一人ひとりのワークライフバランス(仕事と生活の調和)を図ることを目的とした非正規雇用の労働者ら労働弱者の支援(格差問題の是正)なども含まれている。
過去12回の労働相会合で、「労働と地球環境」というテーマが選ばれたのは、実は今回が初めて。この背景には、会合初日に市内で非正規雇用者やフリーターらが独自に企画した集会を開き、格差是正を求めてデモ行進を繰り広げたということがあったということを忘れてはいけない。この切実な訴えが、各国の危機感を募らせるきっかけになったのだ。
「ワーキングプア」(働く貧困層)という言葉に代表されるように、世界第2の経済大国であり、GDP的にも物質的にも「豊か」であるはずの日本だが、年収200万円以下の労働者は2006年には1985年以来、21年ぶりに1000万人(給与所得者層の23%)を突破。この事実を見て明らかなように、格差問題は日本においても深刻な社会問題となっている。
では、ここで、グリーンカラージョブという言葉について、少し説明しておきたい。
greenzがはじめてこの言葉を耳にしたのは、昨年の 「人々と地球のための実践的な解決策と社会変革の種をまく」イベント、Bioneers に参加したときであった。(Bioneer の参加レポートは、こちら)
その中で特に心に残ったスピーカーの一人に、Van Jonesという人物がいた。エラ・ベイカー・センター・フォー・ヒューマンライツを設立し、人種的マイノリティーに対する社会的不公平の改善と環境問題の解決に取り組むVan Jonesは、(日本では別の問題と捉えられがちな)環境問題と貧困、格差問題をつなげて、両方同時に解決する”green jobs, not jails”というスローガンを掲げ、グリーンエコノミーの創出とグリーンカラージョブの推進が、貧困のスパイラルを断ち切る道だと説いている。同団体では、社会的弱者や若者に対して、家屋へのソーラーパネル設置に必要な知識やスキルを与えるといった、「環境問題の解決に自分も役立つことができる」という生きがいや自信がもてるような社会復帰支援をしている。
Van Jonesは、グリーンカラージョブについて、こう語っている。
いま地球は、3つの危機を迎えている
Social & Economic Crisis
若者や人種的マイノリティーと一部の富める者との格差に見られる社会的、経済的クライシス
Environmental Crisis
地球温暖化や環境破壊に見られるグローバル規模の環境的クライシス
Spritial Crisis
そして、そんな社会状況ゆえに未来への希望を抱けず無気力な若者の精神的クライシスしかし、それらのクライシスを同時に解決できる方法がひとつだけある。
それが、グリーンエコノミーの創出であり、グリーンカラージョブの増加だ。
環境にやさしいグリーンテクノロジー、グリーンプロダクツ、グリーンサービス、グリーンビジネスは、もうすでに存在しているし、各地で環境革命(GREEN WAVE)は始まっている。そしてその革命は、いままでがそうであったように、金持ちや一部の人たちの利益になってはならない。中心的役割を担うべきなのは、(その多くがまともな雇用に就くことができていない)都市部の貧困層であり、若者たちだ。私たち大人は、すべての若者が、身分や人種に関係なく、平等に仕事に就けるようなグリーンカラージョブを多く増やす責任がある。GREEN IS THE PATHWAY OUT OF POVERTY
このグリーンムーブメントという大きなうねりは、多くの若者を貧困から救ってくれることだろう。
Bioneersで実際に私たちが耳にした、リズミカルでユーモア溢れる彼の感動的なスピーチの映像は、こちら。
そして、こちらの映像では、環境革命のこれまでの歴史を振り返って、グリーンカラージョブを立ち上げた経緯、そのビジョンについて語っている。ちなみに、今回の環境革命は第3次ムーブメントにあたるそうで、第1次は1908年ルーズベルト米大統領による「環境保全」運動(全米国土保全委員会の創設)、第2次は、1963年レイチェルカーソンの「沈黙の春」の発売をきっかけに全米で広まった「環境規制」運動(枯葉剤の禁止)、そしていまの第3次は、よりサステイナブルなものへの「環境投資」の拡がりだという。
日本においては、ワーキングプアは、就業していることから、アメリカに見られるような人種的マイノリティーによる失業問題ではなく、賃金水準が低く、また技能の向上や職業上の地位の向上の可能性が低いことから労働問題として捉えられている。しかし、Van Jonesの映像や言葉を聞く限り、日本でも今後格差がますます拡大していく中で、彼のような考え方とアプローチは参考になるだろう。グリーンカラーという働き方を通して、雇用者も従業員も持続可能な社会という共通のミッションにむかって仕事に取り組み、その結果、環境問題が解決されれば、それは、全人類にとってハッピーなことだといえるのではないだろうか。
歴史や政治情勢、経済システムの変化に伴って起こってきた環境革命。
7月に洞爺湖サミットを控え、日本の環境問題への取り組みに世界中の関心が高まっているなかで、日本の環境革命はどのステージに来ているのだろうか。新潟宣言の採択で満足せず、世界的なグリーンムーブメントの波においていかれないよう、グリーンカラージョブの実現に向かってしっかりと政策を実行していってほしいですね。