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「パートナーコンテンツ」から何が生まれるの?
ミラツク西村勇也さんと編集長YOSHが語る「グリーンズの使い方」

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特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

2月にリニューアルしたグリーンズの目玉のひとつが、さまざまなプロジェクトと一緒にコンテンツをつくる”パートナーページ”です。MAD Cityとの「MAD “Life” Gallery」や大阪ガスさんとの「マイプロSHOWCASE関西編」、Happiness Architectとの「マイプロLONDON」など、続々と進行しています。

今回はそのパートナーのひとつ、NPO法人ミラツク代表理事・西村勇也さんと、グリーンズ編集長・兼松佳宏が対談。西村さんがパートナーページに期待すること、グリーンズと一緒にやりたいことを語り合いました。

ミラツクは、“未来を創る”をテーマにダイアログBarをはじめとした対話の場をつくり、社会にイノベーションを起こすことに取り組むNPO。グリーンズでもたびたび紹介しているのでご存じの方も多いのではないでしょうか。

パートナーという新しい関係を結んだことによって、ミラツクとグリーンズの間でなんだか新しい動きがはじまりそう! ちょっとスリリングな対談の様子を、みなさんにもシェアしたいと思います。

ミラツクのコミュニティに必要なことが見えてくる

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ミラツクとのパートナーページ

YOSH ミラツクとのパートナーページ立ち上げは、お互いにとっていいタイミングだったと思います。マイプロSHOWACASE関西編などちょうどグリーンズが関西での取り組みに力を入れはじめ、東京以外のエリアにライターさんが増えてきたところだったので。

西村 そうだね。僕が京都での取り組みをより本格化しようとするタイミング、東北でもネットワークが広がったタイミングもあって。やりたかったことができる時機がととのった感じがしています。

僕の今年のテーマは情報発信による“見える化”。ひとつは「Ready For?」とのクラウドファンディング、もうひとつがグリーンズとのパートナーページなんですね。去年一年間を通して、ミラツクのメンバーシップコミュニティが80人くらいまで広がったので、広く紹介したい人のリストが100人まで見通せるようになったのもちょうどよかった。

YOSH 今、取材が終わっている人だけで34人。50人以降はどんなラインナップになっていくか楽しみです。

西村 もう100人までの見通しが立っているので、それ以降のほうが楽しみかもしれない。どんどん新しい人を紹介してもらうのか、あるいは何人かは継続的に追いかけていくのか?「誰を紹介し、応援するのか」は、ミラツクの取り組みともすごくリンクしているんです。

僕にとって「今紹介すべき人は誰なんだろう?」「この人にとって一番いいタイミングはいつだろう?」と考えることから、ミラツクのコミュニティに必要なことを考えるきっかけにもなっているんです。

YOSH リストアップすることで、ミラツクの方向性まで見えてくるのはすごくいいなあと思います。

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西村勇也さん

お互いの“強み”を活かせるパートナーシップ

西村 ミラツクが紹介したいのは、人の関係性を再構築していくような取り組み。会うと面白いしやっていることもすごくクリエイティブなんだけど、まだあまり注目されていない人たちです。僕がやりたいのは、そういう人がつくりたいと思う未来が実現していくことを後押しすること。

YOSH 「やりたいこと」って勇也くんのなかで年々進化するもの?

西村 実はあまり変わっていないんです。ただ、Ready For?やFacebookなど、やりたいことを実現するツールが世の中にたくさんできていて。やりたいことが進化したというよりは、周りのツールが進化したという感じかな。

YOSH そういう意味ではグリーンズも進化した“ツール”のひとつなんでしょうね。僕が編集長になりたての2010年と今では、僕らができることも進化しているから。メディアを使って情報発信をしようという考え方は昔からあったんですか?

西村 そうだね。ただ、昔は自前でメディアを作ろうとしていました。以前ワークショップの参加者にインタビューをしてレポートをまとめたことがあって。それはそれで良かったけれど、リソース的に続けることが難しいんです。

「ミラツク」のコアは「対話を通じて自分の軸が調い、その人自身が新しい行動をはじめる機会を提供すること」。メディアによる情報発信、クラウドファンディングによる資金調達など、「行動を始めた人に対して必要なもの」を提供するのは「ミラツク」のコアから少しはみ出るんですね。

クラウドファンディングについてはReady For?が支えてくれるし、メディアについてはグリーンズが支えてくれる。

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YOSH 「行動を始めた人を応援する」のはグリーンズの核でもある部分なので、全然ムリがないし、僕らにとっては素敵な記事が増えてすごくうれしいです。

西村 グリーンズとミラツクは、根本的な意味ではやっていることのコアは同じだと思っていて。ただ、ミラツクの強みはワークショップで、グリーンズの強みはウェブメディアだった。だから、お互いに自分のコアに集中することによって、それぞれが必要なものを提供し合える関係になれるんじゃないかと思っています。

グリーンズの読者にこそ届けたい

YOSH ミラツクのパートナーページの記事を見ていて、どんな手応えを感じていますか?

西村 グリーンズで紹介すれば、届けたい人に届く感じがします。読者にこそ届けたいという感覚かな。

YOSH ありがたいことに、僕たちの読者の方々って、スポンジみたいに吸収力があるんだと思います。情報を消費するのではなく、自分に浸透させようとして読んでくれている。そういう“スイッチが入った状態”の人に届けるのが得意なメディアなんだと思います。

でも、その人たちでさえ「おとな大学」や「三田の家」のような素敵なプロジェクトを知らないわけですから、まずはそこに向けて届けることが僕たちのやるべきことかなと。

西村 たとえば、僕がずっと紹介し続けてきた、子どものキャリア教育をしている大阪のNPO「cobon」は、掲載されて以来750以上シェアされています。僕が届けたいのは、もともと「子どものキャリア教育」に関心がある人よりも、グリーンズの読者みたいに「世の中もっと良くならないかな」「自分たちの手でなんとかなるんじゃないか」と思っている人たち。その人たちに知ってもらって「ほんとに何とかなる」って思ってほしいんです。

グリーンズが掲げる「ほしい未来は、つくろう」という根底的な部分を共有して「こんな取り組みもあるね」と見てもらえるようなメディアってほかにはないんだよね。

YOSH 昔は「セグメントがわかりづらい。エコならエコ、アウトドアならアウトドアを中心にした方がいいんじゃないか?」と言われていて。でも、今はセグメント化しなくて良かったと思っているんです。アウトドア雑誌は、アウトドア好きの人しか読まないけれど、グリーンズならアウトドアが得意でない人もアウトドア関連の記事を読んで話題にしてくれたりする。

僕たちは、「何をやっているか」ではなく価値観や向かうべき未来像が同じような人たちを応援しているんだと思います。ラベルではなく人を見るというか、「未来をつくろう、自分たちの手でやっていこう」という人なら応援したい。きっと誰もが24時間のうち何パーセントかはそういう気持ちになるだろうし、必ず僕らの記事が響く部分を持っていると信じています。

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ミラツク主催のダイアログBARに編集長も登場

「一緒にやる」のレベルを上げる

西村 今、ミラツクが「一緒にやっている」と胸を張って言えるのはReady For?とグリーンズなんですね。両方とも「こういうことを一緒にやって行こう」という話を最初からできたなあと思っていて。

YOSH ゼロから立ち上げるというよりは、育てていく感じだもんね。

西村 何もかも自力でなんとかするのはNPOらしくないなと思っていて。だけど、NPO同士のちゃんとした提携って意外と少ないんです。株式会社同士だったら株式譲渡というかたちでリスクを取りあうことができるけれど、NPOは株式もないし、お互いにお金もマンパワーもないから渡せるものがないよね。

YOSH それは面白いですね。どうしたらリスクを取りあうことができるんだろう? 今、ミラツクの「パートナーページ」を作ったことによって、毎週のようにミーティングさせてもらえるのはありがたいと思っていて。リスクはないけれど、お互い時間をかけてコミットしている。そうやって「一緒にやる」のレベルをもっと上げていけるといいと思います。

西村 もう一歩進めるとしたら、たとえばグリーンズで紹介する取り組みや人が「どうなってほしいのか?」を共有できるといいかもしれない。

YOSH そうですね、ひとことで言えば「活躍の場を広げていってほしい」というシンプルな思いです。本当は、それぞれのステージを機敏に把握して「この人はそろそろこう言う場が必要じゃないか?」と先回りできたらいいんですが、毎日2~3本の記事がアップされるなかで、すべてのプロジェクトをサポートするのは難しい。

そういう意味では取材に協力いただいた方たちと直接コンタクトしているライターさんたちに、取材したプロジェクトの動きを把握して伝える橋渡し役にもなってもらえるといいかもしれない。「その後どうなっているか」がわかりさえすれば、できることがあるはずだから。

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西村 グリーンズのライターさんは、感度が高くてアクティブな人たちだなあと思います。「自分でも何かやりたい」と思っていて、グリーンズの記事を通じていろんなことを知っていて、取材を通してネットワークも豊富に持っている。「ただ書きたい」に留まらずに、「何かおもしろいことを世の中に送り出していきたい」という、それこそソーシャルデザイナーみたいな人も多いんじゃないかな。

まずは、ミラツクのワークショップに、グリーンズのライターさんの招待枠を設けることから始めてもいいかもしれない。そのなかでミラツクとグリーンズに相互循環するしくみが生まれてくると面白いよね。

YOSH それは楽しみですね!対話の場で隣り合ったことで「この人を記事にしたい」と思うこともあると思う。

西村 ライターさんのほうから「取材先の人をワークショップに招待してもらえませんか?」という話が出てきても面白いよね。僕らにとっては、可能性を持っている人に参加してほしいし、その経路をどうやってつくるのかが大きな課題であり関心事なんです。

YOSH パートナーページでやりたかったことって、まさにこういうことだと思います。パートナーページがあることによって、話す時間が増えて、この対談がはじまった一時間半前には考えてもいなかったアイデアが出てくる。大切にしたいコンテンツだからこそ踏み込んだ話ができて「一緒にやる」のレベルを上げていく方向が見えてきたり、頭が回転したりすることがすごくあって。

西村 パートナーページはすごく可能性があると思うな。これからどうなっていくんですか?

YOSH 今はまだ編集部のメンバーが一人ひとつずつパートナーページをつくって丁寧にやってみるというフェーズだけれど、今後はライターさんなら誰でもパートナーページをつくれるようにしていくつもりで、いままさにその仕組みをととのえているところです。

西村 グリーンズのなかに、読者さん、ライターさんとはまた違うパートナーのコミュニティができていくんだろうなと思います。これから、どんなパートナーページが並んでいくのかすごく楽しみです。

YOSH グリーンズの次の一年は会員制度(greenz people)とパートナーページにフォーカスしたいと思っているので、一年後にはしっかり語れる言葉をもてるように続けて行きたいです。今日はありがとうございました!

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対談はオンラインで行いました



対談を終えて(YOSHより)

グリーンズ的場づくりの大師匠であり、親友でもある勇也くんとの対談は、娘が生まれ、助産院から退院してすぐの初仕事だったので、とても思い出深いものになりました。僕もNPO法人ミラツクの理事も務めていますが、「未来をつくる」とはどういうことか、本当にいつもたくさんのことを学ばせてもらっています。

ここ数年、そこかしこでまかれた種が、ミラツク周辺で面白いように形になってきている。そんな小さな芽を掘り起こし、丁寧に可視化していくミラツク×グリーンズの試みは、他のさまざまな中間支援団体とのコラボレーションのヒントになるかもしれません。

まずは目標の100人を紹介した先に見える景色を楽しみに待ちながら、ひとりひとりのストーリーにしっかり耳を傾けていきたいと思います。引き続きミラツクとのパートナーページをお楽しみに!