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4 months ago - 2016.07.22

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アウトドアスキルを磨くことは、生きる力を鍛えること。「STEP CAMP」寒川一さんが伝えたい“楽しみながら備える”アウトドアとは?

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こちらの記事は、greenz peopleのみなさんからいただいた寄付を原資に作成しました。

みなさんは、外の気持ちのよい空気の中、おいしいごはんをつくって食べたり、テントを張ってキャンプをするなど、アウトドアでの遊びをしたことがありますか?

単なるレジャーとして捉えられているそれらが、見方によっては、いのちを守る「防災」の知識につながると聞くと、あなたはどのように感じられるでしょうか。

2011年3月の東日本大震災以降、大雨による洪水被害や、記憶も新しい2016年4月の熊本・大分を中心とする地震など、何度も壊滅的な被害を生んでいる自然災害。日本に住んでいる限り、それらは「遠いどこかで起こること」ではなく、いつ自分に降りかかってもおかしくない「自分ごと」として捉えることが求められています。

そこで今回は、災害被災時に役立つアウトドアのノウハウを、楽しく、実践的に学ぶ体験型の「防災キャンププログラム」を行う株式会社STEP CAMP代表の寒川一(さんがわはじめ)さんに、「楽しみながら備える」アウトドアプログラムについて聞きました。
 
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防災の知識を、アウトドアスキルの延長線上へ

じつは以前greenz.jpでも紹介されているのですが、寒川さんは、神奈川県三浦市でさまざまなアウトドアグッズを販売し、カラフルなハンモックが幾重にも吊り下がり、会員になるとここで昼寝が楽しめるという「ミサキシエスタサヴォリクラブ」を運営していた人。

アウトドアの達人として、焚火で焙煎したコーヒー豆をその場で挽いて、日没のひとときを焚火とともに過ごす「焚火カフェ」やハンモックで昼寝をする時間と場所を提供する「ハンモックトリップ」などを提供していた寒川さんですが、2011年の東日本大震災をきっかけに、自身のアウトドアの知識や経験が「防災」に役立つことを改めて実感。

これからの時代、アウトドアスキルを持つことは、単なるレジャーの手段ではなく、自らのいのちを守る手段として必須なのではないかと捉え直すきっかけになったといいます。

「防災」というキーワードは、わかりやすい言葉ですが、そこで思い描く絵図は、あまりハッピーじゃないことが多い。けれど、実際に災害時に必要とされる技術、例えば火のつけ方や防寒の知識などは、アウトドアを楽しむ中から身につけることができます。

それを多くの人に伝えるために、アウトドアを入口にして、楽しみながら備える「STEP CAMP」の活動をスタートさせました。

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「STEP CAMP」の活動の中心は、災害被災時に役立つアウトドアのノウハウを、楽しく、実践的に学ぶ体験型の“防災キャンププログラム”です。

具体的にはどんな内容なのでしょうか? まずは、2016年5月、東京都と神奈川県の間にある多摩川河川敷で、「STEP CAMP」が行政や地域団体と共催したワークショップ「TAMAGAWA CAMP」の様子をご紹介します。

【飲み水を確保する】

 
災害が起きて、命と安全の確保ができたのち確保しなくてはいけないもののひとつに、「水」「飲み水」があります。

災害に備え、お風呂の水は常に貯めておく、ペットボトルの水を常備しておくといった備えも当然必要ですが、アウトドアの知識で、それ以外の水の取得方法を知っておくことはとても大切です。

「TAMAGAWA CAMP」では、多摩川の水を直接すくうところからスタート、そして河原で拾った砂利、砂などと、炭を使った水のろ過方法を学びました。
 
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ペットボトルに炭を入れ、炭と手ぬぐいなどの布を使って何度もろ過をして、煮沸をすることで、非常用としての飲み水レベルまでろ過をすることができます。

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子どもたちの眼差しは真剣そのもの。

【火をおこして暖を取る、お米を炊く】

 
一方で、野外で炭火バーベキューや焚火をするとき一番難しいのは、火起こしです。

「TAMAGAWA CAMP」では、災害時を想定し、特別に薪を用意したりせず、すべて河原から拾ってきた大量の小枝や藁になった草などの材料で火をつけます。

大きさ別に仕分けして、小さく細かい火がつきやすいものから、比較的大ぶりな枝に順よく火がつくように準備するなど、焚火のプロフェッショナル寒川さんによる実践的なアドバイスが進んでいきます。

寒川さんは「実践2割、準備が8割。準備を丁寧にすることが秘訣」と話していましたが、これはアウトドアスキルに留まらない様々な段取りの秘訣かもしれません。
 
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写真では焚火台と呼ばれるグッズを使っていますが、一斗缶や金のバケツなどを使って、穴を開けて空気を通しながら焚火台の代わりにするアイデアも出されました。

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密封できるビニール袋に米を入れ、水を入れてご飯を炊きます。洗わなくてもお米は炊けます。沸騰させるお湯は、先ほど取ってきた多摩川のろ過水。こうすることでペットボトルの水を飲用のみに使うことができます。

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炊きあがったお米をみんなでおにぎりに。ビニールの上から握ることで、手を洗う水も節約できますし、食器を洗う手間や水も必要なくなります。

【テントを張り寒さをしのぐ】

 
また、テントを張ると、プライベートな空間が確保でき、雨や風、寒さなどから身を守ることができます。

テントを立てたことがない人は、いったい何をどう組み立てたらいいか? なんとなく難しそう…という先入観がある方も多いようです。まずはテントの構造について知り、どんな方法でテントを立てるのか? どうやってしまうのか? その方法を、実際に見ながら進めていきます。
 
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別のブースでは、テントメーカー主催によるテントを自分たちで立ててみる体験会も行われていました。

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テントの良さは、慣れれば設営に時間がかからないこと、簡単に移動できることの他、車中泊とは違い、広いテントでは足を伸ばして横になれることで、エコノミークラス症候群を防ぐという利点があります。

実際に、いまだに避難生活が続いている熊本地震の避難所では、「屋根の下で眠るのが怖い」という心理的不安をテント生活が軽減してくれているという効果も見られています。

【電気やガスがない状態でお湯を沸かす】

 
ケリーケトルという、電気やガスを使わずに小枝などで火を沸かすことができるアウトドア用のやかんを用いて、1リットルの牛乳パック1本分の紙だけを使って火を起こし、湯沸かしをする体験をしました。
 
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「ケリーケトル」はアイルランド生まれのアウトドア用やかん。ガスをつかわず松ぼっくりや小枝などの自然燃料でお湯を沸かすことが可能。本体は二重構造で、外壁と内壁の間に水を入れ、ファイヤーベースに小枝などを入れ火をつけると煙突効果で上昇気流が起こり、効率よく数分でお湯を沸かすことができます。

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効率的に湯沸かしするための牛乳パックの分解方法もレクチャー

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親子やグループで、こうしたワークショップ形式のイベントに参加することで、体温の保持、食料の確保、寝る場所の確保などの、基本的なサバイバルスキルを身につけることができます。

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非常時にもアウトドアにも役立つキットも販売

目標は「自分の頭で考える能力と自信」をつけること

寒川さんは、このプログラムを通じて伝えたいことは防災の知識だけではない、といいます。

今まで、自転車散歩や焚火カフェなど、いろんな手段を取ってきましたが、その提案の根っこにあるのは、アウトドアやキャンプといった「外あそび」です。

外あそびをすると誰もが気づくことですが、自分の命がいかに小さく、か弱いか? 実感としてわかります。「バーナーひとつあれば、防寒具さえしっかり用意していれば…」など、事前準備が足りないために生きることができないかもしれない、ということは自然の中ではよくあることなのです。

さらに寒川さんは、実際に災害が起こったときの心構えにも役立つと言います。

災害時、数日間の非常事態を越えた先にあるのは、食料や衣料の確保ではなく、心の問題です。「自分でできる」という自信と技術があれば、それが心の余裕につながり、より多くの人が助かるのでは? と思うのです。

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災害が起こり、被害に遭ってしまったとき、すべての人に“天候や気温などの状況を踏まえて、自分のことを自分で判断できる”アウトドアのサバイバル能力があれば、多くの人が助かる可能性が増す。それは単なる「火をおこすことができる」といった技術だけではありません。

さらに寒川さんのお話は続きます。

「自分でできる」という自信がつけば、国や行政に頼らなくても生きていけるという確信につながるかもしれない。防災といった目の前のことだけでなく、その自信は、自分たちの未来にもつながるかもしれないですよね。

そのためには、もっと日常にアウトドアの楽しさを取り入れてもらいたい。普段からキャンプ的な暮らしをしていけば、経済・仕事という概念とは違う考え方で生きる土台や自信ができて、両方の振り子のような存在としてバランスがとれるようになる可能性があると思います。

私たちの暮らしには、何が必要で、何が不必要なのでしょうか。

「STEP CAMP」の活動は、サービスや仕組みに依存せずに、自分たちでつくる、例えば電気を自家発電などのオフグリッドにしたり、暖房の燃料を薪ストーブやペレットストーブにするなど、キャンプといった非日常から、自分の日常生活を「自分でできる」「持続可能」なものへと変化させるきっかけづくりを担っているのかもしれません。

日常から解放されるキャンプのススメ

そんな「STEP CAMP」の活動を知る・体験できる施設として、通常のイベント出張スタイルに加え、神奈川県三浦市油壺に2014年春より活動拠点として、「STEP CAMP BASE」があります。
 
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STEP CAMP BASE」は、三浦市油壺・胴網海岸、秘密の小道のような急坂を降りたところにあります。

「STEP CAMP BASE」は、夏場は「海の家さざなみ」として毎日営業。焚火教室や保存袋炊飯などのアウトドアスキルの体験の他、目の前の海を利用したスタンドアップパドル教室やツアーや手ぶらでビーチBBQなども行われ、親子連れを中心に大人気の施設となっています。

また2015年5月には、「STEP CAMP」監修の書籍、『新しいキャンプの教科書』も発売されました。

本の内容は、アウトドアスキルの基本であるテントの立て方や火の起こし方・料理のレシピ以外に、キャンプで身につく「生きる力」として、少ない道具で暮らしを創造すること、災害時や避難生活など「いざ」というときに備えることにもつながるという寒川さんの考えも紹介されています。
 
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自然災害だけでなく、さまざまな社会状況が変化していくことが確実な時代、これから持たなければいけないスキルは、なんでも自分でできる独立心が大切になってくるのではないでしょうか。

防災というマイナス意識からスタートしがちなものに、アウトドアという楽しい意識のものを加え、楽しい原体験を通じて、「生きる」ための技術と知恵をつけていく。

この「楽しみながら備える」というキーワードが、これからの時代の新しい生き方の方向性のひとつになりそうです。

「STEP CAMP BASE」に足を運ぶにはちょっと遠い…という人は、まずは書籍、『新しいキャンプの教科書』を手に取ってみませんか?

『新しいキャンプの教科書』をよんでみよう!
『新しいキャンプの教科書』

writer ライターリスト

西村 祐子

西村 祐子

greenz ジュニアライター 海・山・都市の拠点を持ち「好きなことをして生きる」を多拠点で実践するべく活動しているライフクリエイター。Webプロデュース・編集・ライター業務のほか、10年以上「人生を変える」ボディセラピーサロンモアナブルーを主宰。 1人でも多くの人が、「より自分らしい生き方」に気づいていくお手伝いがしたいと、カラダからこころを変えるセラピスト業に加え、多くの人に言葉を届けるライターとして活動するようになりました。 旅が人生を変えるキッカケに!と、ゲストハウスプレスというメディアや、セラピストによる旅企画ユニットDOORSも運営しています。 BLOG: Live a good life

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