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棚といっしょにつくる楽しさを届けたい。東北で棚づくりワークショップをおこなう「tanaproject」

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9月16日、東京・東日本橋であるワークショップが開かれました。集まった子どもたちが熱心につくっているのは、棚。平板から組み立てて、色を塗ったり飾り付けをしたり…みんな夢中で取り組んでいました。

「自分で使うものを、みんなでいっしょにつくる楽しさを伝えたい」。
そう語るのは、東北の被災地を中心に棚をつくるワークショップを行なっている「tanaproject」代表のもりひろこさん。活動を始めてちょうど一年たったもりさんにお話を伺いました。

きっかけは、一つの思いつき

もりさんが初めて石巻を訪れたのは昨年4月。ボランティアとして瓦礫撤去などを手伝い、その後も継続的に通いました。あるとき、避難所として使われていた学校でお湯を配った際に、地元の子どもたちと仲良くなって避難所の中へ入る機会があったそうです。初めて見た避難所での生活は、周りとの仕切りもなく、物がごちゃごちゃとしていて、震災から数ヶ月たっているのに生活環境が改善されていないことに驚いたといいます。

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もり ひろこさん

避難所の中を歩いていて、隣の人との境に支援物資の入った段ボール箱を置いている人が多くて。でもものをその上に置いたりしていて崩れかっていたりしたのを見て、そこに「ちゃんとした棚があったらいいんじゃないかな」と、ぱっと思いつきました。

例えば棚を3つ重ねて棒を通せば、ハンガーをかけたり周りとの仕切りになったり…と、建築を仕事にしているのでいつも考えていることもあって、ぱっと避難所で暮らす方々の生活のイメージが湧いたんです。

しかし、材料の調達や開催方法などはどうしたらいいのか分からず、すぐに形に移すことはできなかったそうです。転機となったのは、ある被災地の報告会で、「こういうアイデアがあるんですけど、誰か助けてください!」と話す機会を持ったことでした。すると参加者の一人に、軽くて丈夫な強化段ボールを扱っている段ボールメーカーの方を紹介してもらえることになったのです。

さっそく担当の方と話しに行くとプロジェクトを気に入ってもらい、ぜひやりましょうという話に。さらに提携している加工工場が偶然にも石巻にあることが分かり、その会社へも行き、トントン拍子で話が進んだそうです。

夏が過ぎるころには、徐々に避難所から仮設住宅へ移る人が増えましたが、仮設住宅でも収納場所は押入れだけで物は床に置いている状態だと聞き、「棚があったらどうだろう?」と仮設住宅に住んでいる人に尋ねると「ぜひ欲しい」と返ってきたので、じゃあやってみよう!とプロジェクトが始まりました。

ただ届けるだけでなく、つくる楽しさも伝えたい。

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材料の強化段ボールは、通常の段ボールを2枚重ねた程度の厚さで、丈夫な上に軽くて持ち運びが便利。これを使ってシンプルなディティールにしたいと考えていくうちに、折り目だけつけておいて、接着剤を使って簡単に組み立てられる形にたどりつきました。

この方法だと一人で組み立てることができないので、二人で協力しながら作業する必要があります。もともと、ただ棚を届けるだけではなく、つくる楽しさも伝えたいと思っていたのでピッタリだと気づきました。

たいてい仮設住宅には隣どうし知らない人同士が住んでいるので、協力してつくるワークショップを通して交流が生まれるのでは、と思ったんです。また平板なら、より多く運ぶことができるという利点もあります。

作り方は、まず折り目の通りに棚の外枠となる箱を組み立て、ボンドで接着します。

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次に、中の引き出しを同じように組み立てて、取っ手をつくります。

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あとは自由にデコレーション!色を塗ったり、折り紙を貼ったり。

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上に乗っても大丈夫!

1回目のワークショップは、2011年9月、石巻の仮設住宅で行われました。それまでは本当に必要なのか、楽しんでもらえるだろうかと不安だったそうですが、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い世代の方が参加し、みんなが心底楽しんでくれている姿を見て「支援だけじゃないものも届けられた」と嬉しかったといいます。また棚のニーズも改めて感じ、他の場所でもきっと必要だと思い続けていくことを決意しました。

その後も各地で行い、続けていくうちに被災地の問題だけでない、根本的な問題だと気づいたそうです。

今、自分で使うものを自分でつくる機会がなくなってきていると思うんです。何でも100円ショップで買えるけど、すぐ壊れちゃったりするのって寂しいじゃないですか。出来合いじゃなくて自分でつくる。自分でつくるとすごく大切にするし、そういう思いもあって自分でつくるワークショップにしたいと思いました。

これって東北だけじゃなくて、根本的な問題だなと気づいたんです。だからこれからも東京など他の地域でもチャリティーワークショップをしながら、自分で使うものをみんなで一緒につくるという考え方が広がっていくといいなと思っています。この活動を一年続けてこれたのも、支援活動や被災地の問題だけだと思っていないからかもしれません。

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今年9月で、活動を始めてちょうど一年。8月に行ったワークショップはたくさんの人が訪れ、秋以降も各地でワークショップを予定しているそうです。また、被災地支援の活動を越えて今後も継続していくためにも寄付や助成金などといった一時的な資金に頼らずに、自分たちの中で回る仕組みを築いていきたい、ともりさん。その一つとして、一年の歩みを綴った冊子「たなのほん」を一冊500円で販売し、活動資金に充てることもしています。

今後は折りたたみの椅子づくりも検討しているそう。被災地の人たちがもとの生活に戻るには数年はかかります。それまで仮設住宅などで暮らす人たちへのサポートはまだまだ求められるでしょう。また今回の震災以外にも台風や水害による避難所でも利用できるようにしたい、と今後の展望を語ってくれました。

もりさんのお話を聞いているうちに、復興支援というと食べ物や毛布、洋服といった物をただ届けることが重視されてしまいますが、「つくるのが楽しい」「みんなと話すのが楽しい」と思える日常生活でのつながりが一番大切なのでは、と思いました。これからも求められる東北への支援のヒントがtanaprojectにはたくさんつまっているようです。

(Text:木村絵里)

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