日本各地の田園や海岸など農山村の風景が集められたこのサイト。見ているだけで尊い気持ちになり、日本ってこんなに美しい国だったんだと改めて見入ってしまいます。
スイスにもフランスにも負けない日本の風景。手つかずの大自然だけでなく、人の手が入っているからこそ美しい景観を守っていこうと始まった「日本で最も美しい村」連合。ヨーロッパをモデルにした地域づくりの形であり、いいものを残していこうとする景観保全の動きでもあります。
地元の人々が地域の価値、資源に気付くことがカギ
日本人の多くが農業や漁業に携わっていた時代、人々は自然と共に暮らしていました。地形に沿って田畑をつくり、気候に合った家造りをするなど、農村漁村に残る風景は、人の営みの軌跡であり、自然が生活の一部だったことを物語っています。人が住む地には手入れの行き届いた自然が広がり、結果として美しい風景が保たれてきました。
高度経済成長期を経て農業や漁業に関わる人々が激減し、近年では市町村合併が進んでいることもあって、自然資源を守る人々がどんどん減っています。
そんな現状に危機感をもち発足したのがNPO法人「日本でもっとも美しい村」です。これはフランスやイタリアに既にある「最も美しい村」をモデルにしたもの。フランスで始まった「最も美しい村」は、イタリア、ベルギー、カナダで始まっており、その連合体である「世界で最も美しい村」には、日本も参加国となりました。
ヨーロッパの小さい村や町に、おとぎの国のように同じ色の壁や屋根の家々が建っている光景を見たことがありませんか。これらはほとんどの場合、美観を保つためにその土地に住む人々の自治体で決められたもの。
日本でも同じように、一度失ったら二度と取り戻せない景観や文化を守ろうと始まったのがこの「日本でもっとも美しい村」。
北海道美瑛町にある連合事務局の餌取(えとり)さんはこう言います
自然と人の営みがつくりあげた美しい景観はまだ日本各地に残っています。ただ残念なことに、地元の人ほどその価値に気付いていないことが多い。まずは豊かな自然資源や文化をもつ地域の人々に、「自分たちの手でしっかり守って未来に残していこう」という気持を持ってもらうことが一番の目的だと思ってやっています。
加盟希望のあった地域には、必ず審査員が出向いて現地を視察します。入会の条件は以下の三つ。
2. 人の手が入った景観、自然環境、祭りや建築などの文化などの地域資源が二つ以上あること。
3. 地域資源を活かす活動があること。
当活動の一番のポイントは、上記条件の3番目。
「地元に、その資源を活かす志と、具体的な活動があるかどうか」
が問われる点です。
これまでにも名湯巡りや自然遺産など、観光スポットとして各地域をアピールする手段は沢山ありましたが、地域の人々がいかに自分の土地に関心を持ち、郷土愛をもって保全のための活動ができるかが、一番のキーとなるのです。
2005年に7町村で始まった当団体も、今では加盟地域が39(36町村3地域)となっています。
企業と地域がタッグを組んで
それにしても、このウェブサイトの風景はどれも本当に素敵です。山肌の棚田、海に浮かぶ舟屋、獅子舞や数々の祭りなどさまざまな風景から村を選んで見ることができ、各地で行われるイベント(祭り)のスケジュールも辿ることができます。これを見るだけで行ってみたい!と思うのが必定。
「フランスで最も美しい村」のロゴはミシュランの星と同じようにすでにステータスがあり、ガイドブックや地図に載っています。ロゴのついた村には多くの観光客が訪れるため、加盟希望の地域が多く、なかなか入れない状況のようです。日本でも独自のロゴをブランド化して将来的には一定のステータスにしたいと考えています。
ところが、加盟地域の多くは、特に観光の盛んな温泉地や、レジャースポットばかりでなく、ごくふつうの村や町です。そんな場所に、多くの人が訪れた場合の受け入れ体制をどうつくっていくのか。まだまだ課題も残ります。
餌取さんは、こうした問題を、企業との連携を深めることで解決していけたらと考えています。
地域にとって、加盟企業からのサポートが受けられる可能性があるのも一つの魅力です。事務局がハブとなって地域と企業の間でさまざまな情報の共有を行っています。例えば、企業側が新商品を開発する際に提携先を探している時は、私たちが加盟地域を対象に情報を流します。逆に、地域側からリクエストがあって、商品開発の相談や、接客指導など、企業にサポートや支援をお願いする場合もあります。
国内のみならず、世界に向けて日本の美しさをアピールすること。見る者にも、日本の農村風景を守りたいという思いを強くさせる活動です。
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