英ロンドンは、世界中からクリエイター・デザイナーの卵たちが集まり、世界の最新のトレンドを発信し続ける街として知られている。そんなロンドンならではのユニークな”売店(kiosk)”「Kioskiosk」が登場した。未来のクリエイターを支えるこのイベントについて、詳しくみていこう。
「Kioskiosk」は、2009年7月2日~9月2日までの2ヶ月間、毎日日替わりで、衣類・陶器・雑貨など、新人クリエイターが創作した作品を展示・販売するブースである。ロンドンのCity Hall近くにある美術館「Design Museum London」の展示会「Super Contemporary exhibition」の一環として、ロンドン市長Boris Johnsonや「London Sustainable Development Commission」のバックアップを受けている取り組みだ。また、このブースは、環境に配慮された造りになっているのも特徴的。照明やラップトップPC、ミシンなどの動力はソーラー発電でまかなわれる仕組みとなっている。
英Design Councilによると、英国におけるクリエイティブ産業の規模は620億ポンド(約9,9兆円)。サービス産業に続く主要産業になると見込まれている。また、英国のデザイン教育は世界でも高く評価されており、毎年6万人以上の学生がこの分野を専攻しているという。
しかしながら、彼らの卒業後の現実は厳しい。年々上昇する賃料ゆえ、クリエイティブビジネスを起業するにはますます厳しい状況だ。かつては新人デザイナーが多く集まっていたカムデン・マーケット(Camden Market)やケンジントン・マーケット(Kensington Market)、Manchester Affleck’s Palaceも、近年は高額な賃料になっている。
この課題に対して立ち上がったのが、英国人のWayne Hemingway夫妻だ。1980年代に新進クリエイターとして活動し、オリジナルブランド「Red or Dead」を立ち上げた経験を持つ彼らは、若いクリエイターに表出の場を提供し、起業をサポートしたいと考えた。
そこで、目をつけたのが、ロンドン市内の目抜き通りに多く点在する「kiosk」。あまり変わり映えしないロンドン土産ばかりを売るのではなく、こういう場こそ、クリエイターの発信基地にすべきとの発想から、「Kioskiosk」が生まれた。実際、「Kioskiosk」では、「Kiss My Cherry」や「Grateful Thread」、「Heidi Mottram」、「Catherine Hammerton」など、まだマイナーながらトレンドの最先端を行くブランドが多く出店する予定だ。
「Kioskiosk」のみならず、新進クリエイターと世間をつなぐための試みは、米「Oakland Mall」や「beehive co-op」、シンガポールの「inQbox」、独ハンブルグの「Yokozuna」など、世界で行われている。ただ、「Kioskiosk」がこれらと異なるのは、ロンドン市や「London Sustainable Development Commission」といった公的機関が支援し、街をあげてこのイベントを盛り立てている点だろう。もちろん、取り扱う商品がニッチすぎるがゆえに「店の利用客のニーズと合致するのか?」など、まだクリアすべき課題はあるものの、将来のクリエイターを街全体でサポートし、新しい産業としてきちんと育てていこうという点は大いに評価できる。
この夏、ロンドンに旅行する予定のある人は、ぜひ一度、「Kioskiosk」に立ち寄り、最先端のトレンドに直接触れてみてはいかが?
「Kioskiosk」に出店するブランドを調べてみよう。