コチラのロゴで店頭でもすっかりおなじみとなったユニクロの「全商品リサイクル活動」。このたび、3月度の回収数が初めて100万点を突破したことが発表された。全国に777店舗(2009年6月10日時点)という巨大ネットワークを持つユニクロだが、100万という数字が与えるインパクトは大きい。その取り組みの詳細を追ってみよう。
ユニクロの衣料回収・リサイクル活動は2001年9月から始まった。当時はフリースのみが対象だったが、その後、対象をユニクロの全衣料に拡大し、2006年9月より毎年3月と9月の各1ヶ月間、定期的に回収・リサイクル活動を実施するようになった。集まった衣料の約90%は、UNHCR、JRCCなどの協力でタンザニア、ウガンダ、エチオピアなどの難民キャンプへの衣料支援(リユース)として使われ、残りは電気エネルギーや工業繊維などにリサイクルされている。「リサイクル活動」というネーミングだが、実際には発展途上国におけるリユースの占める割合が高いのが特徴だ。
ユニクロ店舗への持ち込まれる衣料品
回収は、洗濯済みの衣料の店舗への持ち込みのみとしており、郵送などは受け付けていない。これまで、確実にその回収実績を伸ばしてきたが、今回の「100万点」という数字は“さすが”と思わせるものがある。この数字の大きさを、株式会社ファーストリテイリンググローバルコミュニケーション部の五十嵐さんと一緒に計算してみた。
ユニクロの衣料(靴下などの衣料小物も含む)を1点平均1,000円だと仮定し、2008年8月期(2007年9月1日~2008年8月31日)の国内ユニクロ事業の売上高(4,623億円)から単純計算すると、大まかに5億点の売り上げがあったと仮定できる。そのうち、年2回の回収で今回の100万点と同様の数が集まったとすると、年間回収点数は200万。回収率はざっくり、0.4%程度となる。
「まだまだ割合的には少ないですね」
と、五十嵐さん。これまでに現地に届けられた衣料の合計は144万点に及ぶが、
「お客様の善意をお預かりしているものなので“目標”というのはおかしいですが、3,000万人以上と言われる衣料にお困りの難民・国内避難民の方に、一人一点でも届けられるようにしたいと考えています。」とコメントをいただいた。
写真提供:上岡伸輔
難民キャンプの中でユニクロの衣料を着用した子供たちの笑顔は、熱く心に残る。8月にはUT STORE HARAJUKU.において、難民キャンプ支援写真展を実施したり、ホームページで「フォトレポート」を公開するなど、客への認知の向上も怠らない。こういった努力が、今回の月間100万点という数字に結びついたのだろう。一つの大きな山を越え、ここからがユニクロにとって本当の勝負なのかもしれない。
また、ユニクロでは、このほかにも「緊急支援活動」として、地震、サイクロンなどの被害に遭った地域への衣料提供も行っている。記憶に新しい中国・四川大地震(2008年5月)やミャンマーのサイクロン被害(2008年5月)の被災地でもユニクロの衣料が活躍していたという。
さて、ユニクロのリユース活動は、ビジネスモデルに非常にマッチしており、H&M、FOREVER21などの海外ブランドが次々と出店し流行となっているファストファッション業界におけるCSR活動のモデルになりうるのではないかと思う。その安さや流行の移り変わりの速さから、大量生産、大量消費となることが予想され、エコとは正反対のイメージのファストファッション業界。衣料品廃棄物の増加に拍車がかかるのでは、と、現在の流行を不安視する声も聞かれる。
しかし、少し発想を変えてみると、流行にあわせサイクルが早い商品だから、質のよいものが回収できるし、大量生産モデルであるから、その数やサイズも揃いやすい。また、(これはユニクロ特有であるが、)老若男女を対象としたスタンダードなデザインや多様なサイズ展開は、こういった支援物質としても非常に有効だ。ユニクロにとっても、リユース商品として現地で長く着用してもらうことで、「安い=悪い」という印象を退け、商品の質の良さをアピールできる場にもなっているのではないだろうか。
ユニクロの衣料を着用するウガンダのファミリー(写真提供:上岡伸輔)
単純に業界のビジネスモデルを否定するのではなく、ユニクロのようにその業態に合った社会貢献活動を推し進めることこそ、サステナブルなCSR活動となり得るのではないだろうか。ファッション業界では、ベネトンの社会貢献活動、パタゴニアの環境活動、最近ではH&Mのオーガニックコットン商品などが知られているが、影響力のあるブランドだけに、それぞれのブランド特性を活かしたCSR活動に、大いに期待したいところだ。
今後は、衣替えの時期である6月もリサイクル活動を行い、回収が年3回となることも同時に発表された。今月もユニクロ各店で回収活動を実施中だ。
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