今年の元旦からずっと、ゴミを捨てずに生活している人がいる。彼の名は、David Chameides。エミー賞を2度受賞した経歴をもつテレビカメラマンである。
Daveがロサンジェルスの自宅にゴミを保管するようになってから、もうすぐ10カ月が過ぎる。階段の脇には飲み物の空きビンが並び、地下室には発砲スチロール製のトレーやラップや紅茶ガラなどがきちんと積み上げられている。生ゴミと紙類を処理するためのコンポスターもあり、そこでは日夜ミミズと微生物が栄養豊富な肥料を生産している。
彼の目的は一体、何なのだろう?
近年、ゴミのポイ捨てはいけないという意識は広まってきたものの、ゴミを捨てる行為自体に罪悪感を持つ人は少ない。なぜかというと、ゴミはゴミ箱に捨ててしまえば、自分の目の前から消えてしまうからだ。Daveは、自分が1年間に生み出すゴミの量を把握したいと考えた。自分が出すゴミを目につく場所に保管することで、自分が何を購入しているのか、簡単に減らせるゴミは何か、どうしても発生してしまうゴミは何か、というような質問の答えを追及することにしたのだ。
きっかけの一つは、地元のゴミ埋立地の訪問だったという。そこには、毎日1万3千トンのゴミが運ばれてくる。この状態が続けば、7年後にはゴミで一杯になり、以降はゴミをアリゾナまで運んで廃棄することになる。そんな現実を目の当たりにしたわけだ。
Daveはこの取り組みに、いくつかのルールを設けている。
Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Mimi K
・保管するゴミは、彼自身のゴミに限定する。
→彼の奥さんと2人のお嬢さんのゴミは、従来通りゴミ箱やリサイクル・ボックス行きとなる。
・彼自身のゴミは、衛生上の理由で保管できないもの(生魚の包装材や医療廃棄物など)以外は、すべて保管する。残飯と紙類はコンポストする。
・プラスチックや缶など、いずれはリサイクルに回すものも、保管する。
・旅行先や外出先で出たゴミも、持ち帰る。
・床屋で切ってもらった髪の毛まで、持ち帰る。
自身のブログによると、8月1日の時点でのコレクションは、以下のとおり。
・一般家庭ゴミ:約14.1キロ
・プラスチック袋:約1.6キロ
・e-waste:約4.0キロ
・紙類(のちにリサイクル):約23.4キロ
・ボール紙(のちにリサイクル):約6.6キロ
・その他のちにリサイクルされるもの:約9.8キロ
・雑誌類(のちに病院へ寄付):約12.7キロ
・ビン・容器類:163個
ちなみに8ヶ月間で一般家庭ゴミ約14.1キロというのは、アメリカ人平均の30分の1だ。しかもその多くは、ゴミ削減のコツをつかむまでの最初の数か月間に溜まったゴミだという。
自身のウェブサイトを『SustainableDave』と名づけるほど、そもそもがエコ思想家のDaveである。そんな彼でも、自分が生み出すゴミと文字通り向き合って生活することで、さらにゴミの量を減らすことができた。
たとえば、Daveは今では職場にマイ食器を持参する。過剰包装の商品を避けるのはもちろんのこと、魚市場にはガラス容器を持参する。そんなDaveを見て、職場の仲間の意識も変わっていった。資料は紙ではなくメールで届くようになり、雑談がゴミを減らすアイデア出しの場になり、プラスチック・カップを使う人が減り、自宅でコンポストを始める人や、省エネ電球を買う人が増えた。
Daveは、ゴミを捨てない生活は“思っていたより簡単だった”と語っている。それは、彼の周りの人たちの意識が変わり、相乗効果が生まれたからなのかもしれない。彼の取り組みは、発生するゴミを意識して買い物をしたりサービスを利用したりすることの大切さを教えてくれる。
問題を生む立場じゃなくて、問題を解決する立場でいたい。
そんなDaveの気持ちは、たとえエコ思想家でなくても共感できるはずだ。
参考記事:
Time
http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1843163,00.html
CNN
http://www.cnn.com/2008/LIVING/wayoflife/08/15/his.year.of.saving.his.trash.ap/index.html