クリエイティブアイデアを共有する国際カンファレンス「TED」は、毎年、世界を変える卓越した活動に取り組む人々を「TED Prize」で表彰。前回の「TED Prize 2010」では、英イケメンシェフのジェイミー・オリヴァー(Jamie Oliver)氏が受賞したことでも話題になりましたね。そして、このほど、ジェイミーに次ぐ「TED Prize 2011」の受賞者が発表。ただし、この人物、実は正体不明です。
JRという名の受賞者は、フランスの男性写真家ということ以外、実名も含め、その素性がほとんど明らかにされていない「覆面アーティスト」。世界中を旅しながら、経済的、社会的もしくは政治的な困難に直面している人々の顔を撮影し、その写真を印刷した大型ポスターを街のあちこちに貼って、これらの課題を広く世の中に啓発し、人間同士の尊厳を訴える活動を展開しています。
これまでに彼が手がけたプロジェクトは、パリのスラム街の人々を写した「Portrait of a Generation」、パレスチナとイスラエルでそれぞれ生活する人々の顔写真を両国を隔てるヨルダン川西岸の壁に展示した「Face 2 Face」、シエラレオネ・ケニア・リベリアといったアフリカ諸国で差別や犯罪に苦しむ女性をテーマとする「Women Are Heroes」など。いずれも、合法的な手続を経ず、ゲリラ的に実施されたものですが、世界各地で、関心と注目を集めています。
中でも、「Women Are Heroes」は、建物の壁、プールの床、大型トレーラーのボディ、橋、家屋のトタン屋根、電車の上部など、ありとあらゆる場所をキャンバスに、女性たちの活き活きとした顔写真を掲示。写真を通じて、戦争、貧困、暴力といった困難に立ち向かいながら、力強く生きる彼女たちの人生を広く知ってもらうのが狙いです。2010年には、カンヌ映画祭でこのプロジェクトをまとめた以下のショートフィルムを公開。上映後、会場ではスタンディングオベーションが鳴り止まないほど、多くの感動に包まれたそうです。
TEDでは、彼の創造性と革新的なスピリットを高く評価。写真から語られる人々の生きる姿が、他の多くの人々の心を動かし、世の中をよりよい方向へ導く可能性を秘めているとみています。「TED Prize」の受賞者は、毎年、「TED Conference」で、TEDのコミュニティに自身の思いを訴えるのが恒例イベントとなっており、JR氏も、いよいよ2011年3月2日のカンファレンスで、スピーチする予定だとか。これまでナゾのヴェールに包まれてきた彼が、どんな表情で、どんな未来を語るのか、いまから注目です。
ヨルダン川西岸のゲリラフォトアート「Face 2 Face」を見てみよう。
「TED Prize」の過去の受賞者を調べてみよう。