Cow made of Bricks: Creative Commons. All Rights Reserved. Photo by Dark Gonk
レンガは、断熱性が高く、比較的短期間での建築が可能なことから、住宅建材として世界中で広く活用されている。しかし、この主な原料である粘土の過剰な採掘により土壌にダメージを与えるおそれがある、ということをご存知だろうか。
それなら、粘土以外でレンガを作ってみてはどうだろう…?
この有望株のひとつ、ウシのフンでできたレンガ「EcoFaeBrick」がインドネシアで生まれた。
EcoFaeBrickの原料の75%は、インドネシアのジョクジャカルタ(Jogjakarta)やGodeanなどの牧場で飼育されているウシの糞だ。以下の画像でもわかるように、このレンガ(画像左)は、通常の粘土レンガ(画像右)と見た目に変わりはないのだが、通常のレンガに比べて20%軽量化され、かつ圧縮強度が20%高いそうだ。また、生産プロセスにおいても環境に配慮されており、焼成過程では従来の薪燃料ではなく、牛糞からのバイオガスを使用している。これにより、二酸化炭素排出量が年間1,692トンも削減され、森林資源の保全にもつながった。
Comparison of EcoFaeBrick: Copyright(C)2009 EcoFaeBrick, All rights reserved.(EcoFaeBrickのホームページより抜粋)
EcoFaeBrickは、酪農・畜産業が盛んな地域での廃棄物問題の解決と地元経済の発展をミッションに掲げ、2009年、インドネシアの経営学大学院「Prasetiya Mulya Business School」の学生チームにより設立された。実際、レンガの原料を粘土から牛糞に転換したことで、53ヘクタールもの農場の土壌を守り、牛糞処理のための廃棄コストも削減できたという。また、地元農民との連携も重視した結果、彼らの収入を平均53%も増加させ、地域経済の発展にも貢献している。
温暖化ガスの排出削減、土壌保全、廃棄物の軽減、そして地域経済の活性化という”一石四鳥”を実現した彼らの取り組みは各界で注目されており、米カリフォルニア大学バークレー校(University of California Berkeley)が主催するソーシャルベンチャーコンテスト「Global Social Venture Competition」では、25カ国311通の応募の中から見事グランプリに輝いた。今後はインドネシア国内のみにならず、東南アジア・アフリカ・南米でも同様の取り組みを進める方針だという。
従来廃棄されるだけだった家畜の糞を”資源”として活用し、効果的な技術によってレンガという新しい製品に生まれ変わらせ、これにより経済的な利益を得るという一連のプロセスは、まさに”持続可能”な経済活動の実例といえる。彼らの取り組みがどのように広がっていくのか、今後もこの動向を見守っていこう。
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