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働き方も給与も、得意も苦手も宣言し、自分の幸福に自覚的に生きる。山形県鶴岡市、すべての命を祝福する保育園「やまのこ」でウェルビーイングの体現者になりませんか? #求人

この求人の募集期間は2023年5月30日(火)〜2023月7月31日(月)です。(※応募状況により募集継続)
募集の詳細については記事末をご覧ください。
あなたにとって、幸せとは?

ある人にとっては、「美味しいものを食べること」だったり、
あるいは、「大好きな人と一緒にいること」だったり、
「大自然の中に身を置くこと」なんて方もいるでしょう。

ではもう少し具体的に掘り下げて、「給与」や「働き方」も自分の幸福を軸に考えてみると、どうでしょう。

「幸福」な給与は、必ずしも「多ければいい」ではないかもしれません。働き方も、「残業なしで休暇や休憩も多ければいい」とは限らず、一人ひとり幸福のあり方は異なってくるでしょう。

さらに、自分ひとりの精神的な「幸福」から視野を広げて、心や体、周囲との関係性が充実している状態を表す「ウェルビーイング」という視点で考えてみると、また違ったあり方が見えてきそうです。

そんな「幸福」や「ウェルビーイング」について、真剣に問い続けながら、命とともに働き、命とともに生きる人々に出会いました。

奥に見えるのは、日本百名山のひとつ・月山。お散歩途中にはいつもこの雄大な風景が広がります。

山形県鶴岡市、月山(がっさん)を望む雄大な自然に囲まれた庄内平野に佇む「やまのこ保育園(2〜5歳児在園、定員50名)」そして「やまのこ保育園home(0〜2歳児在園、定員19名)」(以下、2園の総称として「やまのこ」)。2023年5月現在、2園合わせて子ども46人、大人23人(正社員)が日々の営みをともにしています。

保育目標に「いまを幸福に生きる人」を掲げ、保育者のみなさんは自分自身の幸福にも自覚的であり、ウェルビーイングの体現者であろうと探究を続けている。そのあり方から私は、答えのないいまの社会をしなやかに、そして健やかに生きていくためのかけがえのないヒントを受け取りました。

そんな「やまのこ」のいまを、庄内平野を吹き抜ける心地よい風とともに、読者のみなさんにもお届けします。

これまでに掲載したやまのこ保育園の記事はこちら
子どもと大人も、保育と暮らしも、会社と社会も、すべてが“地続き”。この秋拡大オープンする山形県鶴岡市の「やまのこ保育園」を舞台に、冒険するように生きてみませんか?

ひとつの保育園の存在が、会社を、そして社会を変えることだってあるかもしれない。問い続ける、いかしあう。「やまのこ保育園」で働くということ

自分で選択する、多様性の中に身を置く、循環の暮らしを体感する。
「やまのこ」の日常

4月後半のある快晴の朝。「やまのこ保育園」を訪れると、元気な子どもたちの歓声が聞こえてきました。2歳児から5歳児まで、34人の子どもたちが異年齢で混じり合い、園庭で、室内で、思い思いの時間を過ごしています。中には泣いている子もいますが、保育者はそのままを受け止め、寄り添い続けます。

「集いを始めるよー!」

保育者の呼びかけに、それぞれのタイミングで子どもたちは園舎の中へ。椅子を円座に並べて着席し、絵本の読み聞かせに聞き入ります。絵本が終わる頃にようやくみんなが集まり、お休みしている子をみんなで確認した後、保育者は子どもたちにゆっくりと問いかけました。

「今日は何をしたい?」

「くねくね山!」
「滑り台公園!」

自然の中で過ごす時間を大切にする「やまのこ」らしく、屋外を中心に次々に候補が上がり、4つのコースが決定。子どもたちは自分で行き先を決めて身支度をし、保育者のもとへ。保育者は子どもたちの声に応じてその日の配置を決定し、トランシーバーで行き先とメンバーを伝え、それぞれの目的地に向けて出発します。

こうして子どもたちの選択によってつくられる、午前の活動がスタート。年齢ごとの「クラス」という単位がなく、その日そのときの“やりたい”を中心として多様な子どもと大人が交わり合いながら集い、暮らしをつくっています。

年齢ごとのクラス単位で活動するのではなく、その日のそれぞれの関心に合わせて行き先やともに活動する仲間が決まります。

“滑り台公園”に向かう子どもたちを追いかけると、道端でパタリと立ち止まる子の姿が。草をちぎって溝に流すことに夢中になり、なかなか動こうとしません。保育者は急かすことなく、子どもと同じ目線で溝や草を見つめ、子どもとともに目の前の世界を体感します。

目的地までの到着が遅れても、子ども一人ひとりに流れている時間を大切にする「やまのこ」のあり方を感じ取ることができる場面です。

午前の活動から戻った子どもたちを待ち構えているのは、和食をベースに、地元野菜をふんだんに取り入れ、調味料にもこだわった手作りのやまのこごはん(給食)です。自分の分は自分で盛り付け、スタッフも保育者も全員が同じ食事をいただきます。心と体の喜びを大切にする、「やまのこ」らしい食のあり方です。

どうしても食事が散らばってしまう乳幼児の子どもたち。散らかったり余ったりしてしまった食事はコンポストへ。幼い頃から循環する暮らしを自然に体感しています。

心身ともにゆっくり休める午睡の後は、それぞれがやりたいことに、たっぷりじっくり取り組みます。植物を観察して模写に没頭する子、庭で木登りにチャレンジする子、保育者のやっていることを一緒にやると名乗り出る子…。この日は旬の筍の皮むきに調理スタッフと一緒に取り組む子どもたちの姿もありました。

調理スタッフと一緒に筍の皮を剥く子どもたち。よもぎケーキ、梅シロップ、梅干し、干し柿、味噌など、旬の食材や畑で取れた作物を子どもも大人も一緒に調理して楽しみます。

園舎には画材が揃った専用の「アトリエ」があり、さまざまな素材を使いながら手を使って考えたり、表現活動に没頭できます。

やがて風が変わり、空の色が変わり、それぞれがそれぞれの帰る場所へ。
「やまのこ」の一日は、こうしてゆったりと暮れていきます。

機能から存在意義へ。
素材開発の先端企業が保育園を自主運営する理由

子ども一人ひとりに流れている時間を大切に、自分で選択すること、多様性の中に身を置くこと、循環する暮らしを体感することを日々実践する「やまのこ」の保育。そのあり方は、多様な命の集合体であり、循環を必要とする実社会を生きていくための礎となる体験を、楽しみながら積み重ねているように感じられます。

ホームページに「わたしたちの願い」として掲載されているこちらの保育目標も、「幸福」や「地球」、そして「人」という言葉選びがとても印象的です。

今を幸福に生きる人として
地球に生きているという感受性を持った人として、
子どもたちが成長していくことを願い、保護者とともに歩む

この保育目標の背景には、運営会社であるSpiber(スパイバー)株式会社(以下、Spiber)の存在があります。

Spiberは、2007年の会社設立以降、新世代バイオ素材としてさまざまな産業・製品への活用が期待されている人工構造タンパク質素材「Brewed Protein™(ブリュード・プロテイン™)」の開発を行うベンチャー企業。「会社は社会のためにある」という考え方のもと、理念として「Contributing to sustanable well-being(持続可能なウェルビーイングに貢献し続ける)」を掲げています。

子どもたちお気に入りのお散歩コースの向こう側に見えるのがSpiberの本社屋。2つの園舎から徒歩ですぐの距離にあります。

Spiberにとっての素材事業は、その理念を実現するための一つの手段。同時に社員をはじめとする関わる人々が「ウェルビーイング」な状態でなければ、その理念を達成できないという考え方を持っています。

297名(2023年4月現在)の社員一人ひとりや関わる人々の幸せを考えたとき、まず始めに求められたのは機能としての保育事業だったのではないかと、「やまのこ保育園」「やまのこ保育園home」両園長・長尾朋子(ながお・ともこ)さんは語ります。

長尾さん 国外や県外から移住してきた研究者たちがここ鶴岡市で素材事業を営むときに、本人の充実だけではなく、「その社員の大切な存在である家族や子どもも満たされた状態であることを実現する必要がある」、「一部だけ幸せであることは有り得なくて、すべてはつながっている」と考えた。そして、そのための安心できる子育て環境や、英語で保護者対応が可能な保育園の整備など、ある種そういった機能を果たすことを求められて保育事業が始まりました。

もちろん機能だけでなく、「会社は社会のため」であり、「教育こそ未来のため、社会のためである」と考えて自社運営を決めたという経緯があるので、会社の願いと保育事業の願いは「人」や「幸せ」といった「ウェルビーイング」というところで強く一致して始まっているんですが。

「やまのこ保育園」「やまのこ保育園home」両園長の長尾朋子さん

2017年9月に開園し、2018年9月には2園体制になってから5年半。のべ約100人の子どもたちと暮らしをともにしてきたいま、「やまのこ」の役割は広がっています。

長尾さん ときを重ねるごとに関わる人が増えていくので、たとえば卒園児の帰る場所として、または地域の人々とつながる場所として、ここが担える役割もできることもどんどん増えて広がっている。それはすべて、関わる人々や社会の持続的な幸せというウェルビーイングにつながっているように思っていて。「やまのこ」の存在する意味が生まれ続けていると感じます。

一方、マネージャーで「やまのこ保育園home」の保育者・柏木拓人(かしわぎ・たくと)さんは少し違う見方をしているようです。

柏木さん 僕は、役割が増えているというよりは「そもそもそういう役割である」という感覚を持っています。Spiberは「Contributing to sustanable well-being」という元々包括的なアプローチが必要な目標を設定していて、これを掲げた時点で、もう関わるすべての人々のウェルビーイングも視野に入っているのかなと。

でも当然段階はあります。やっぱりまずは子ども、次に保護者やスタッフ、地域。もともと視野は広くありつつも、ちょっとずつアプローチできる輪が広がってきているという感覚で捉えています。

マネージャーで「やまのこ保育園home」の保育者・柏木拓人さん

先端企業の自社運営であることが「やまのこ」のユニークさの一つですが、Spiberにおける「やまのこ」の位置付けや役割に関しても、少しずつ変化してきていると長尾さんは続けます。

長尾さん 「やまのこ」の暮らしを経験した社員家庭も増えて、私たちも実践を通して、あぁ幸せだな、これは宝物だなっていう瞬間を経験して。最初は機能としてのニーズを求められることが多かった保育事業ですが、日々の蓄積の中で、機能を果たすことのみならず、新たな意味がつくられていく、つくっていく。そういうプロセスに今あると感じています。

2021年9月には、HR(人事セクション)と保育事業セクションが文化・環境部門という「人」を対象とした部門に統合されました。HRのメンバーとコミュニケーションを取ってそれぞれの視点を交換することで、もっとパワフルに企業文化や社会に働きかけていけるのではないかなと、柏木さんは考えています。

柏木さん 「幸福」を掲げていますが、僕らは楽園のようなものをつくろうとしているのではありません。たとえば「対話をどう促進するか」という会社や実社会にも存在するような課題があったとき、HRはシステムで解決しようとすると思うんですよね。どういう研修を用意しようか、組織図をいかに整理していくかと考える。

でも僕らは日々、教育・保育という実践において、子どもたちを集団や全体として扱うというよりは、個々の人間に伴走するというアプローチをしていて、その視点は会社における「人」のあり方を考える上でも有効な気がしています。今はHRセクションと定期的にミーティングを重ねている段階ですが、一緒になって課題にアプローチしていける可能性を感じています。そして、「人」の面でSpiberが実践する取り組みも、きっとより豊かな社会のあり方につながっていくと思っているんですよね。

機能から意味へ、さらにこれからは、よりパワフルに企業文化に働きかけていく存在として。会社という組織の中にある保育園の存在が、新たな価値を生み出し、進化し、会社全体、そして社会の変化をも後押ししていく。

「やまのこ」が放つ、唯一無二の存在価値が浮かび上がってきました。

給与も働き方も、得意も苦手も宣言する。
自分の幸せに自覚的なスタッフのあり方

ここからはより具体的に、「やまのこ」のスタッフや関わる人々のウェルビーイングの実現について探っていきましょう。マネージャーで「やまのこ保育園」保育者の谷口千尋(たにぐち・ちひろ)さん、同じくマネージャーで「やまのこ保育園home」保育者の山崎莉穂(やまざき・りほ)さん、そして引き続き園長の長尾さんにお話を聞いていきます。

左から、長尾さん、谷口さん、山崎さん

働く場所として見た「やまのこ」において最も特徴的なのは、Spiber全体で取り組んでいる給与の「自己宣言制」でしょう。会社の経営状況、チーム内でのバランス、生活の幸福度など、個々人によって必要額が異なる住宅費、生活費なども考慮に入れ、さまざまな視点から自分の給与を検討し、自分で決めます。

これまでの当たり前を覆すようなこの制度を通して、スタッフの意識にはさまざまな変化が見られるようです。

山崎さん 毎年行われる給与宣言が、自分の幸福ってなんだろうと振り返る機会になっています。自分のパフォーマンスをより発揮できるようにするにはどうすればいいのか、それぞれが悩みながら考えていて。「いかに私たちがよりよく生きられることを追求し続けられるか」ということに立ち戻って真剣に考えています。ここ数年特に、自分の心の声を聞き、チームメンバー同士で表現していく姿が見られるようになってきていると感じています。

また、「働き方」も多様です。フルタイム(8時間・週5日勤務)以外に、7時間、6時間、週4勤務、シフト制、フレックス制など、全部で6パターンの働き方があり、シフトは60パターンにもなるといいます。月の半分は遠方の実家でリモート勤務をするという方や、夏の期間だけ時短勤務を希望するスタッフもいるなど、それぞれのニーズに応じて働き方をつくっている状態です。

長尾さん 金額と同時に、時間というのもすごく選択的なものですよね。どのように働けば自分やチームが一番持続的ないい状態でいられるか、ウェルビーイングでいられるか。

なので個人の働き方も、給与のようにさまざまなバランスを模索して宣言することで、より自分の選択や考えをチームと共有できますし、それは同時に、自分の幸せやパフォーマンスに自覚的になることだと思います。雇われているから働くのではなく、ここをつくっていくときに自分の出せる力や、できることを考えるということ。これは一人ひとりの存在からつくられているチームやコミュニティ全体のことを考えることにもつながります。

働き方を一人ひとりに問うということは、私たちが真剣に働き方や場への関わり方、人生や暮らしをデザインするという気概を持っているからこそ、意味を持ってくるのだと思います。

さらに、周囲との関係性も大切にする「ウェルビーイング」を追求した結果、スタッフが勤務時間を使って自由参加する「部活」も始まりました。

遊びを探究する「あそ部」、食、畑とガーデン、生き物を循環させる企画や構想を担う「生命部」、保護者とのつながりを育む「ペアレンツ部」、溜まった写真や記録データを整理する「デジタル整理部」など、多様な「やまのこ」をつくる活動に多くのスタッフが参加しています。これも自分の幸せに自覚的であるということを実現する一つの手段。

長尾さん スタッフの得意不得意はそれぞれで、〇〇係という役割分担より、それぞれの得意や関心をいかしてコミュニティや保育がつくられたり回っていったらいいなというスタッフからの提案が、ことの始まりでした。面白かったのは、部活で大人同士で探究してここをつくるより、保育で子どもたちと過ごすことに時間と力を使いたいと「帰宅部」と宣言したスタッフに、拍手が起こったんです。それが私たちのコミュニティのいまをよく表しているなぁと。

谷口さん 部活でいいなと思うのは、その人の表情や言葉からイキイキが溢れ出るんですよね。もちろん保育をしているときもイキイキしているんですけど、「これやりたい!」っていう内なるエネルギーが湧いてくると、人間ってすごいイキイキする。そのエネルギーがメンバー同士で交換され、相互に刺激し合えることで「やまのこ」がさらに豊かになっているという手応えを感じています。

谷口さんによると、生命部の今井彩恵子さんは、植物や生き物が蠢き出す春になると一段と輝き始めるのだとか。部活があることで、2園のスタッフが交わったり、調理担当と保育担当とオフィス担当が一緒に活動したりというエネルギーの交換が起こっているのも部活の良さだと言います。

給与も働き方も、得意も不得意も宣言して、自分の幸せに自覚的に生きる。それは端的に言えば、「自分を大切にする」ということ。

長尾さん 「やまのこ」は、関わる人のニーズを大切にする、つまりその人を大切にする。ここが人を大切にする場所であるということは、子どもも大人も変わりません。

「人を大切にする」保育の範囲は時間を超え空間を超え、保護者や卒園児家族にも広がっています。今年は卒園児と在園児の交流会を行い過去の卒園児家族が勢揃いしたほか、保護者主催の味噌仕込み会が開催されるなど、コミュニケーションもより豊かに双方向になってきているいま、「やまのこ」を卒園児の居場所にもできないかと、谷口さんは思い描いています。

谷口さん ここで幼少期を過ごした子どもたちが、いつでも帰ってこれる場所にゆくゆくはなれたらいいなと思うし、そうなったら面白いなと思います。幼児と小学生が同じ場所で過ごす上での安全性や関係者の理解などさまざまなコンセンサスを得る必要はありますが、小学生になった後も、ここが学校でも家でもない居場所として機能できたら世界がもっと豊かになるんじゃないかなって。

卒園児交流会の様子。園に入った瞬間、卒園児はもちろん、保護者も満面の喜びの表情を見せてくれたことが印象的だったと長尾さん。今年の夏は卒園親子向けのキャンプも企画しているのだとか。

「人を大切に」。それはとても抽象的な哲学のように思えます。でも「やまのこ」のみなさんは、それを敢えて掲げることで、「人をどこまで大切にできるのか」「ウェルビーイングをどこまで実現できるか」というテーマに挑む大冒険の真っ只中にいる。スタッフの方々との対話を通して、私にはそんな風に感じられました。

対話を大事にする環境が、困難な状況にあった私を救ってくれた。
看護師・伊藤美奈さんの働き

「やまのこ」の働き方が見えてきたところで、ここからは、現場で働く方々のリアルな声を聞いていきましょう。

まずご登場いただくのは、鶴岡市出身の伊藤美奈(いとう・みな)さん。今回募集の対象となっている看護師の資格を持ち、現在「やまのこ保育園home」にてフルタイム勤務中。病院で不規則勤務を続けていたという伊藤さんを「やまのこ」に導いたのは、フィールドに吹き抜ける“風”だったようです。

伊藤さん 見学に来たとき、お散歩の道中に心地よい風が流れていて、「なに、この心地よい感じ!」って驚いて。ここに身を置きたいなと思いました。病院勤務は完全に室内だったので、とても新鮮だったんですよね。

看護師で「やまのこ保育園home」保育者の伊藤美奈さん

看護学校卒業後、東京と山形の総合病院で長年勤務を続けてきた伊藤さんですが、結婚と出産を経て、不規則勤務を続けていくことに対する疑問が自分の中に生じたと言います。資格をいかして働ける場所を求めて鶴岡市役所の嘱託勤務で予防接種を担当するようになり、5年間の契約が終わる頃、知人を通して知ったのが「やまのこ」の存在でした。

病院から保育園へ、大きな転身のように思えますが、抵抗は感じなかったのでしょうか。

伊藤さん 子育てはしていましたが、「まさか自分が保育現場で働くようになるとは」という感じでした。でも抵抗はなく、むしろゼロから出会っていく過程が面白いなって。経験したことない世界を知ると、生きているという実感が湧く。だから最初からこの環境を楽しめました。

入社後すぐ、0歳児のクラスを担当することになった伊藤さん。楽しみと同時に、責任も大きく感じるようになったと言います。

伊藤さん 命を預かっているという意味では自分の責任と役割は大きいと常に感じていて、そこは病院も保育現場も変わりありません。むしろ保育現場は看護師が限られた人数しかいないので、医療従事者として、病院勤務よりも責任の重さを感じています。

保育園での看護師の仕事は、日々の保育とともに、病児保育や病院の付き添い、保健日誌の記入、健康診断の実施など子どもの健康にまつわる日々の業務のほか、排泄物の後始末や既往歴のある子が発症した際の対応手順の確認・見直しなど、いざとなったとき動ける体制をつくっていくことも大事な役割。

仕事において、どのようなことを大切にしているのでしょうか。

伊藤さん 私は何よりも心地よさを大事にしています。自分が心地よい状態というのは子どもたちにも伝わっているだろうなと思うので。心地よくない状態になったときもチャンスと捉えて、どうしたら心地よくなるんだろうと考え、自分から周りに声をかけて対話をしたり。会社全体でも対話を大事にしているのでたっぷり時間を取ることができて、そんな環境をありがたく感じています。

伊藤さんが所属する「やまのこ保育園home」のみなさん(写真に加えて当日お休みのメンバー1名、他アルバイト契約等メンバーとも日々を支え合っています。

病院勤務の時代に比べて規則的な働き方が可能となり、暮らしと仕事のバランスが取れるようになったという伊藤さん。プライベートではお子さんが大きくなりましたが、昨年、パートナーが脳梗塞で倒れるという大きな衝撃の中にいました。そんな伊藤さんを支えたのは、ウェルビーイングを大事にする「やまのこ」、そしてSpiberのあり方でした。

伊藤さん まさにウェルビーイングの大切さを体感しました。介護休業を取って休むと決めてしまうのは簡単なのですが、そこから戻ったときに無理をしてしまう自分の姿も想像できて。働く時間と家族の時間を1日の中でどう大事にしていくかを考え、周りのみなさんにも相談して、働きながら最低限の休みを取ってやってみるという選択をしました。

今も夫は通院を続けていて家族で一つひとつ乗り越えている段階ですが、「やまのこ」のみなさんに支えてもらって今があります。こういうことも職場の人と分かち合えるのはありがたいし、すごいことだなと感じています。

プライベートでの困難も周りとの対話と自己選択によって乗り越え、日々チャレンジすることを楽しむ伊藤さんのあり方は、いつもとなりにいる子どもたちの生きる力にもそのままつながっていくことでしょう。

伊藤さん 保育の現場にいると同じ日はなく、子どもたちが出会っていることに一緒になって出会えることが本当に幸せです。「やまのこ」は、日々チャレンジしていける現場で、スタッフ一人ひとりとの対話の中で固定観念が崩されて、自分を削ぎ落としていくような毎日。自分の固定観念をいかに崩していけるかというのがすごく面白いですね。

見学に来た日、伊藤さんを魅了した鶴岡の風の中で日々の喜びを語るその表情は、いまを存分に生きているという実感と健やかさに満ちていました。

幸福と困難の先に、人としての健全さが見えてくる。
保育者・馬場優樹さんの働き

最後にお話を聞いたのは、岩手県遠野市から移住してきたという馬場優樹(ばば・ゆうき)さん。農業から保育への転身という異色の経歴の持ち主です。

元々農業を通して人間を見たいという気持ちを抱いていた馬場さんは、「もっと人間そのものを見たい」という気持ちから「やまのこ」の求人に応募したとのことですが、そのときの感覚をこう語ります。

馬場さん 求人記事を読んで、「やまのこ」は、保育よりも人間に視点を置いていると感じて応募しました。農業でも生きているものを観察するということをずっとやってきたんですが、やっぱり植物と人間は全然違って。最初は保育も子どももまったく知らず、保育士の資格も持っていなかった(現在は取得済み)ので、わからないことだらけでしたし、今でもわからないことだらけですね(笑)

「やまのこ保育園」保育者・馬場優樹さん

未経験で「やまのこ」の現場に飛び込み、最初に抱いたのは、「自由とは言いながらも意外と枠組みの中に日常があるんだな」という感覚だったそう。でも保育を積み重ねるうちに、その見え方も変わってきました。

馬場さん 登園時間が決まっていて、お昼の時間も決まっていて…という枠組みの中にあるのは保育園として当たり前ではありますが、朝の集いに参加するかどうか、お昼を何時に食べるか、午睡をするかどうか。それらを決めるのは子ども本人だと思っていたし今も思っているんです。

ただ、最初は子どもが発する言葉に引っ張られがちで、たとえば「食べない」と言われたらそのまま受け取っていたんですが、今は、言葉ではそう言っても、本当に食べたくないのか、それとも別の気持ちの表現なのかはわからないなと。もっとトータルに表情や前後の文脈を踏まえて子どもの気持ちを捉える必要性に想いを馳せるようになってきました。

「人間そのものを見たい」という馬場さんならではの観察眼を磨きつつ、今も日々、その葛藤の中にいると言います。

馬場さん 集いが始まる時間に、ミミズの様子を観察している子がいたとして、「集いをやるよ」ということは伝えつつ、没頭しているのか、ただの暇つぶしなのか、その熱量を見ています。究極的には外から見ているとわからないんですけどね。

そんな馬場さんが保育の中で一番大事にしているのは、「遊びを見る」ということ。

馬場さん 人間性といいますか、その人の熱量が一番発揮されるのが「遊び」なのかなと。人が遊びをつくる一方で、同時に遊びがその人をつくるというのも事実で、遊びってなんだろう?って。

今日もある子が「この花、真ん中がふわふわ」って言ったんですよ。僕は花に対して触感を意識したことがなかったから、へぇ、そういうふうに花を見るって面白いなって。一人ひとりがどう世界を認識しているか、遊びは違いが表れやすいんです。人間って面白いな、社会って面白いなって思える瞬間ですね。

「遊びを見る」ことを大事にする馬場さんは、「あそ部」に所属。仲間とともに保育の実践の中で探究を続けています。

そんな馬場さん、岩手から移住してきて感じたのは「都会に来た」という感覚だったそう。現在はやまのこ保育園から徒歩5分ほどの距離にあるアパートに住んでいますが、大自然の中に囲まれながらもスーパーにもコンビニにも歩いていけて、実は生活にとても便利な場所だと言います。

農業をしていた馬場さんからすると物足りない環境かと思いきや、ウェルビーイングを大事にする会社のあり方に対しての満足度は高く、馬場さんの生き方は健やかさを増していると言います。

馬場さん 自分の給与を決めたり、なんでも自分で考えたりすることって、幸福であると同時に実は結構困難なことです。自分と向き合わなければいけない作業ですから。わかりやすい指標に頼りたくなっちゃうし、考えることを放棄したくなっちゃう。

でも、自分の幸せに自覚的な人たちって、人としてすごく健全というか、滞っていない感じがします。子どもも大人も、そういう人が周りにいることは、すごくありがたいことだなと感じますし、面白いですね。

馬場さんが所属する「やまのこ保育園」のみなさん(写真に加えて当日お休みのメンバー1名)

人間そのものを見たいという思いを一貫して持ち続け、農業と変わらないスタンスで保育現場に立ち続ける馬場さん。これから仲間に加わってほしい人物像について聞くと、こんな答えが返ってきました。

馬場さん 保育園は一つの社会です。子どもたちにとって、どんな人がいても学びになると思います。すでにいろいろな人がいて、いろんなことがあって、それでもともに生きていこうとすることを体現する場所でありたいなと思っています。興味があったらぜひ飛び込んで来てほしいですね。

答えよりも、“ままならなさ”に対する構えや態度を。

会社としても保育園としてもウェルビーイングの実現を掲げ、関わるすべての人の幸福を追い求め、命を祝福し続ける「やまのこ」の保育。

こう表現すると、”楽園”のような保育園を思い浮かべる方もいると思いますが、取材を通して強く印象に残ったのは、実社会にもあふれる多様性や複雑さ、さまざまな課題に対して目を背けることなく子どもたちとともに向き合いながら、愚直なまでに理念の実現を追い求めようとする大人たちの生き様です。

そんな姿を通して、ぼんやりとしているように見えた「やまのこ」にとっての「ウェルビーイング」という言葉の輪郭が、少しずつはっきりとしてきました。最後に改めて、長尾さん、柏木さんによる、「やまのこ」の本質に触れる対話をお届けします。

長尾さん 保育者は命の専門家だと思うんです。安全管理をして命を守りながら遊びや冒険をする豊かさも保障する、あるいは、子どもがいっぱい生き物を捕まえてきたときに生態系のバランスに思いを馳せる、畑など土の循環を通して微生物含むすべての命が自分たちとつながっていることを感じる、といった「命に対する感度」の専門家と言いますか。それを「やまのこ」では「地球に生きているという感受性」という言葉で表現しているのかなと。

柏木さん 僕はそれと同時に、社会にあふれる“ままならなさ”に対する感受性も大事だと思っています。例えば子どもたちと森に行くと、ゴミがたくさん落ちていることがあるんです。それを遊びのように拾いたがる子がいて、その動きが周りの子たちを巻き込んでいくこともある。

ゴミ問題のように地球で起きていることを考えたときに、大人が解決方法を提示するのか、それとも子どもたち自身が生活の中で現実に出会い、遊びを通して現実との向き合い方を見出していくと捉えるのか。僕は後者で、子どもたちはそれぞれの人生を生きていくわけなので、課題に対する答えを知るよりも、”ままならなさ”に対する態度とか構えみたいなものを体感として持っていられればいいんじゃないかなって。

長尾さん それが回り回ってウェルビーイングな状態につながっていくんじゃないかと思う。幸せなことばかりを経験するのではなく、さまざまな課題に対して「自分と関係するものである」と捉える感覚や、課題や”ままならなさ”に対する答えではない、構えと態度。それを身につけてウェルビーイングな状態を自らつくっていける状態を、私たちは願ったり目指したり探したりしているんですよね。

子どもたちにとって楽園のような場をつくったり、何かの答えを提示するのではなく、地球に生きているという感受性を持ち、社会にあふれる“ままならなさ”に対する構えや態度を身につけていくこと。それがウェルビーイングにつながる。

「やまのこ」という存在が放つメッセージは、子どもも大人も、答えのないこれからの社会をしなやかに、そして健やかに生きていくためのヒントを指し示しているように私には感じられました。

記事の最後に、もう一度この問いを。

「あなたにとって、幸せとは?」

子どもや社会の幸せを願うのなら、まずは自分の幸せに自覚的になることから始めてみませんか?鶴岡の風と仲間たちが、あなたの合流を待ち望んでいます。

(撮影:五十嵐丈
(編集:山中散歩)

[partnered with Spiber株式会社]

– INFORMATION –

説明会のお知らせ
やまのこ保育園では今回の求人についてのオンライン説明会と、現地見学ツアーを予定しています。興味を持った方はぜひご参加ください。

「やまのこ」オンライン採用説明会
(1)2023年6月24日(土)14:30-16:00
(2)2023年6月30日(金)19:00-20:30
内容:園の概要説明、私たちが大切にしていること、質疑応答など
開催方法:オンライン(Google Meet)で参加者と繋ぎます
申込はこちらから

「やまのこ」リクルート現地見学ツアー
日程:2023年7月7日(金)、7月21日(金)
時間:9:30〜15:00ごろまで
場所:やまのこ保育園home/やまのこ保育園
内容:保育見学→やまのこごはん→保育者とのセッションなど
定員:各回8名(先着順)
申込はこちらから