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子どもと大人も、保育と暮らしも、会社と社会も、すべてが“地続き”。この秋拡大オープンする山形県鶴岡市の「やまのこ保育園」を舞台に、冒険するように生きてみませんか? #求人あり

グリーンズ 求人での募集は締め切りました。募集状況の確認やエントリーは、Spiber株式会社の採用ページからお願いいたします。

どこで、だれと、なにをして生きていくのか?
私たちはいつも、そんな問いとともに人生を歩んでいます。

ときに悩み、迷い、先が見えずに不安になることもあるけれど、できることなら、自分の納得感のある場所で、自分にとって大切な人たちと、いつもワクワクと冒険をするように生きていたい。

そう願うあなたを、今日は人生の冒険の場へご招待します。

舞台は山形県鶴岡市にある、子どもたちと大人たちの暮らしの場。日本海も近く、雄大な山々に囲まれた美しい景色、そして、ユネスコの食文化都市に選ばれるほどの豊かな食文化が残る鶴岡のまちに、この秋、拡大オープンする「やまのこ保育園」です。

東京から飛行機で約1時間。取材に訪れた私の目に映ったのは、園に関わる人々の、自分自身を存分に表現しながら、子どもたちとともに飽くなき探究を続ける溢れるほどのエネルギー。保育者の職場が形容される“3K”という言葉からイメージするような空気は、微塵も感じられませんでした。

限界集落もあるという鶴岡市の小さな保育園に見た、子どもも大人も“冒険するように生きる”姿、そこに感じた希望をみなさんと共有したいと思います。

子どもと一緒に暮らしをつくる。
日常の冒険を保障する「やまのこ保育園」の1日

現在の「やまのこ保育園」は、集合住宅の1階部分に居を構える、0~3歳の子どもたち19人と、大人たち13名の小さな暮らしの場。手書きの看板が掲げられた扉を開くと、にぎやかな子どもたちの声とともに、陽射しがたっぷり差し込む、木の空間が現れます。

子どもたちが直に触れる床は、栗の無垢材。柔らかな素足に、木のぬくもりが伝わってきます。この部屋では、1~3歳の子どもたちが異年齢でともに過ごしていました。

小さなテーブルや椅子、最小限の遊具とともに、子どもの手の届くところに並べられているのは、雑巾とバケツ、洗濯板、食器類など、暮らしの道具たち。「子どもと一緒に暮らしをつくる」という考えから、自分で洗濯や配膳ができる環境を用意しています。

洗濯は強制ではなく、自分で汚れているものが気になったときに子どもたち自ら実施。洗濯板を使っての手洗いは、うまくいかず床もびちょびちょになりますが、「自分で工夫して生きていく力を身につける」という考えから、大人は手を出さず、口も出さずに見守ります。「観察」は、やまのこ保育園が大切にしている基本姿勢のひとつ。

配膳は自分で。「本物に触れてほしい」という想いから、食器は陶器やガラスを使用。大人が準備を始めると、子どもたちの手も自然に動きます。

これからの時代を生きるために、「知識よりも感情知や身体知にフォーカスしたい」と、自分で選択して、やりたいことを思いっきりやって、終わりまで選択できる「自己選択」を暮らしの基本として大事にする「やまのこ保育園」。

多くの時間を、園庭と園舎の仕切りのない空間で、その子の興味の赴くままに、自由に過ごします。その横で、穏やかに見守り、ときに子どもの行動をサポートし、自らも得意なことを楽しみながら、大人たちが時間と空間をともにしています。

日常の暮らしの中にこそ、冒険がある。コンポストに入れる野菜の皮をちぎる仕事から、子どもたちの遊びが展開していました。コンポストやパーマカルチャー菜園など、「循環」を意識した場づくりが当たり前のように行われています。

園庭では、庭仕事を行う子どもたちの姿が。種を撒き、育て、収穫し、また種を採るという自然の循環を日常の中で体感します。

お楽しみの給食は、すべて手づくり。3歳児からは食べられる量を自分で盛り付けます。地元の農家さんから仕入れた野菜をふんだんに使ったお料理を、有機栽培の五分付き米とともにいただきます。

保育室から覗けるキッチンで、調理されています。

この日のメニューは、厚揚げのそぼろ煮、ポテトサラダ、豆腐のお味噌汁、あわもち入りのご飯。出汁を丁寧にとった薄味の和食を基本としたお料理は、「4回も5回もお代わりする子がいる」というのも納得。週に一度、無農薬野菜を使う日を設け、おやつも基本的に手づくりするなど、食にはとことんこだわっています。

そして「やまのこ保育園」を語る上で欠かせないのが、外遊び。「光や影、植物や石など複雑な刺激がある屋外環境で、意図しないものに出会い、心動く体験を子どもたちと一緒に楽しみたい」という想いから、雨の日はもちろん、真冬もスノーブーツとスキーウェアを着て、屋外へ出かけます。

豊かな刺激にあふれる屋外活動。5つほどの定番のコースがあり「今日はどこに行く?」と子どもたちに意見を聞きながらその日の行き先を決めています。開園から約9ヶ月間、外に出なかったのはたった2日だけだったとのこと。

子どもたちお気に入りの「くねくね山」。雪の日はちょっとした丘が連なる地形を活かして、そりすべりを楽しみます。

これが、「やまのこ保育園」のごくごくありふれた1日。「子どもたちにとっては日常こそ冒険」という想いから、行事は最小限。じっくり探求できる時間を保障することを最優先に考えています。

「保育は暮らしそのもの」。そんな言葉を体現したような子どもと大人の時間と空間が、ここには確かに存在していました。

「会社は社会のためにある」
「やまのこ保育園」がつくられた理由

「自己選択」も、「配膳」や「洗濯」も、「雨や雪の日の外遊び」も。「やまのこ保育園」の保育は、「これからの時代をどう生きていくのか?」という問いに対する園の考えかたが、反映されたもの。すべてに明確な理由が存在します。

園長の遠藤綾さんとともに園を歩き、お話を聞く中で、私は、その考えかたに、とても強く、それでいてしなやかな軸のようなものを感じました。開園からわずか1年足らず。どのように保育スタイルをつくっていったのでしょうか。

その答えは、「なぜ、やまのこ保育園ができたのか?」という大きな問いを紐解くことで明らかになっていきます。ここからは、遠藤さんのお話を聞きながら、園の設立背景を探っていきます。

園長の遠藤綾さん。2016年、「やまのこ保育園」開園の1年前に、福岡県から移住してSpiber株式会社の社員に。プライベートでは2児の母。

「やまのこ保育園」は、いわゆる企業主導型保育所で、設置・運営を行っているのはSpiber(スパイバー)株式会社。2007年の会社設立以降、人工合成タンパク質の実用化を目指して、新世代バイオ素材の開発を続けているベンチャー企業です。

たとえば、「クモの糸」から開発した「QMONOS(R)」。2015年にはゴールドウイン社と業務提携を結び、「THE NORTH FACE」ブランドから「QMONOS(R)」を用いたアウトドアジャケット「MOON PARKA(R)」のプロトタイプを発表して話題を集めました。

鶴岡市に本社とプロトタイピングスタジオを構えるSpiber株式会社。田園風景の中にあり、本社と「やまのこ保育園」は、徒歩ですぐの距離。(提供 Spiber)

山形県鶴岡市に本社を置き、社員数186名(2018年4月現在)、平均年齢35歳という数字を見れば、当然のごとく「保育園」のニーズがあったことが考えられます。でも、企業主導型保育所によく見られる他社への「運営委託」というかたちではなく、保育者を社員として雇用し、自社運営をするという決断がなされた理由は、それだけではないはずです。

遠藤さん Spiberには「会社は社会のためにある」という普遍的な企業理念があって、教育というものを自分たちの理念と地続きなものだと考えたのが大きな理由です。私たちがやるからには、企業理念と結びつけて新しい保育のありかた、教育のありかたを提案していこうと考え、自主運営を決めたんです。

ですので、保育のかたちも、「この時代になぜ教育・保育に携わるのか?」という問いから、一つひとつ自分たちで考え、試行錯誤していきたいという想いでつくっています。

「たとえば、どんな教育法やメソッドも、 “時代や場所性を掛け合わせながら、どんなものがふさわしいか?”という問いを自分たちで噛み砕いていったはず。私たちもそんな風にありたい、という壮大な想いがあります」と、遠藤さん。

Spiber社では、「幸せになる」ということが人間の究極の目標と捉えており、これはやまのこ保育園が理想として掲げる人間観「今を幸福に生きる人」とつながっています。そして保育現場のありかたにも、こんなつながりが。

遠藤さん 私たちの会社がなぜ人工合成タンパク質の実用化を目指しているのかというと、石油や石炭といった化石燃料の大量消費によって生じる地球規模の様々な課題の解決に取り組むという使命を持っているからです。この事業によって、世界を少しでも良くしたいという想いがあります。

保育園では、おやつをいただくカフェテーブルがひとつしかなく、順番が来るまで待つように環境をデザインしています。ハサミなどの道具類も部屋にひとつしかありません。わたしたちが生きている現実と同じように「足らない状況をつくる」ことによって、有限な世界の中でどんなふうに生きていくのか。日常の中から、そうしたことへの感度を高めていきたいと思っています。

おやつをいただくカフェテーブルはひとつだけ。限られた資源しかない中で、順番を待ったり分け合ったり、子どもたち自ら知恵を出し合っていくことを大事にしている「やまのこ保育園」ならではのやりかたです。

なぜ今これをやるのか、なぜそうしたいのか? 自分が世界に対して、自分以外のものに対してどうアプローチするのか? 常に問いを持ち、ゼロから考える。この企業文化が、保育園を自主運営するという大きな決断へとつながり、自分たちオリジナルの軸を持つ「やまのこ保育園」の保育をかたちづくっていきました。

そしてそんな会社のありかたが、保育者の働きかたにも大きな革命をもたらそうとしています。ここからは、働く場所としての「やまのこ保育園」の姿を見ていきましょう。

休憩60分。給料は“宣言制”。
「やまのこ保育園」が実践・提案する保育者の新しい働きかた

記事の冒頭にも触れましたが、保育者という職業に対する世の中のイメージは、決して良いものとは言えません。“3K”という言葉に代表されるように、サービス残業も多く、休みも取りにくい厳しい職場環境、そして給料が安いという一般的な見られかた。そんなイメージを払拭する職場環境を「やまのこ保育園」はつくろうとしています。

まずは、休憩時間。保育者は休憩など取る暇がないという声も聞きますが、「やまのこ保育園」ではひとり1日60分、必ず全員が休憩を取ることを大事にしています。

遠藤さん 外に出かけてもいいし、部屋で仮眠を取ってもいい。休憩の価値観はそれぞれ違うので、それぞれの過ごしかたをしています。

それは、意識の質が結果の質を生むと思っているから。保育のクオリティを維持するためには、休憩がとても重要な役割を果たすんですよね。

また、一人ひとりにあった休憩のありかたって違うと思うので、次のステップとして、たとえば10分ずつ6回取った方がリラックスできるという人はそうしてほしいし、そのためにどうしたらいいか、今後考えていきたいです。

保育者の仕事は一度に多くのことに意識を向ける専門職。集中力を保つためには充分な休憩が欠かせません。

保育者の仕事はフレックスタイム制というわけにはいかないため、どうしてもシフト勤務になります。でも遠藤さんは、その中でも自由裁量をどこまで可能にするか、ということも検討中とのこと。

また、給与についてもSpiber社が2015年から試験的に導入している「宣言制」が利用できます。「管理」から「信頼」へ。お給料を自分で決める、という画期的な制度です。

遠藤さん 入社時は協議して金額を決めますが、次の給与改定のタイミングからは、自分自身の目標とその到達度やチームへの貢献などを文章にまとめて、希望する給与額を宣言します。

これまで保育園で働いていた方などにとって自分の貢献を給与に換算するのはとても難しく、また、入社からまだ日が経っていないので、実際にその制度で給与改定したのはチームの中で2人だけです。

でも、今後はどんどん増えてくると思いますし、保育者の新しい働きかたづくりにチャレンジしていきたいと思います。

保育者の働きかたも、自己選択。「信頼」の中で成り立っています。

このような働きかたを保障しながら保育現場を円滑に運用するのは相当な苦労を伴うものかと思います。でも遠藤さんには、保育士・保育者の社会的な見られかたを変えたいという強い想いがあります。

遠藤さん 保育者の処遇が良くない背景には、誰でもできる仕事と思われていること、女性が多い職場であること、そして、そもそも子どもを大人よりも低い存在として見ていることがあると私は思っていて。

でも、本来乳幼児期に関わるというのは、人間の土台を育むということであり、専門性や資質が求められるすごく重要な仕事だと思うんですね。経済学の観点からも乳幼児期の教育の重要性は唱えられていますし、海外では大学院を卒業しないと働けないという国もあります。

日本の保育者への待遇も、本来は、もっとラディカルに見直されるべきもの。もちろん、人員配置などいろんなことをクリアしながらなので、すぐにはできないこともたくさんあると思いますが、新しい目でこういうやりかたもあっていいかも、と提案できるようになるといいな、と思っています。

休憩の時間も、お給料も、自分で決める。それは保育室での「自己選択」にも通じる考えかたです。

「子どもたちに望むことと大人のやっていることが全部輪になっている状態が望ましいし、子どもと同じように保育者一人ひとりの感覚にマッチするように環境を整えるというのはすごく難しいことでもあるけど、とても大切だと思っています」と、遠藤さん。子どもと大人を地続きで捉える「やまのこ保育園」のありかたが、働きかたにも表れていると感じます。

「なんでもっと早くやらなかったんだろう」
「日々実験みたいな感じ」
信頼できる仲間ともに生きる、冒険の日々。

さて。ここまでお話を聞いてきた遠藤さん、その保育観や子どもたちへの眼差しから、地元のベテラン保育者さんかと思われた方も多いかと思います。でも実は1年半前に鶴岡に移住してきたばかり。さらには、9ヶ月前に「やまのこ保育園」で働くことになるまで、保育士免許は持っていながらも、保育現場は未経験だったという、新米園長さんです。

遠藤さんだけではありません。スタッフのみなさん13人中7人がさまざまなバックグラウンドを持つ移住者で、「やまのこ保育園」の開園に合わせて、鶴岡のまちにやってきたのだとか。

ここからは、そんなスタッフのみなさんのお話から、「やまのこ保育園」を舞台にした生きかた・暮らしかたを感じてみたいと思います。

「この人たちと働きたい」。

東京、そして福岡で暮らしていた頃から、個人的なプロジェクトとして展開していた「こどものカタチ」を通じて知り合ったSpiber社の人々と対話を重ねるうちに、強くそう思うようになったという遠藤さん。ちょうど福岡のまちに子育て環境としての窮屈さを感じていたこともあり、小さな2人のお子さんとご主人、一家4人での移住を決めたと言います。

それまで子ども関係のNGOで働いていたため、外から保育現場に関わることはあっても、自ら現場に入るのは初めてのことでした。「園長なんて自分にできるのだろうか…?」。重圧を乗り越えることができたのは、「現場に入りたい」「子どもとの日常の中にこそ、宝がある」という想いでした。覚悟を決めたのは、開園の半年前。そこから遠藤さんの冒険が始まりました。

自らの縁を辿って採用活動に走り回り、全国から集まった8名のスタッフとともに対話を深めながら迎えた開園。以降、マネージメントの仕事も欠かせない園長という立場ながら、「そうじゃなければやっている意味がない」と、毎日必ず現場に入り子どもたちとの時間を過ごしています。

さぞかしハードな日々だったことと想像しますが、遠藤さんからは、驚くほどポジティブな言葉が返ってきました。

遠藤さん こんなに楽しいなら、なんで私はもっと早く(保育園を)やらなかったんだろう、って思いましたね(笑) 毎日が発見の連続なんですよ。子どもを見ていると、人間ってもともとこういう存在なんじゃないか、とか、見えてくるわけで。

子ども同士の関係性が開園から徐々に変化していったりするところを見ていて、宝の山を歩いているみたいな感じがしました。こんなにクリエイティブで面白い仕事ってないな、って今でも思っています。

「宝の山」と言えるほど大切な子どもたちとの時間。と同時に、遠藤さんはかけがえのない仲間という存在に出会いました。

遠藤さん 本当にいいメンバーが集ってくれていて、お互いに学び合える関係性になっています。日々の運営の見直しや子どもたちについて共有する会議の実施はもちろん、子どもたちとのエピソードを記録して語り合う会を行っていたり、3ヶ月に一度は合宿をして、答えのない問いに対して、深く語り合う時間をつくっています。

そういう中で、みんながどんどん発言してくれて、「こういうふうにも見えるけどどうかな?」という感じで、対話が深まっていくんですね。思いもよらないような素晴らしい子どもへの見方ができる人たちと一緒に、自分の成長と子どもの成長を重ね合いながら対話ができる喜びを感じています。

私は園長ではありますが、みんなを指導するような存在じゃない。お互いに貢献しあっている探検チームみたいな感じなんです(笑)

「たとえば、入園してすぐの子どもが毎日泣いている状況があったとして、それでもその子の素晴らしいところとかその子が持っている力を確認しながら、“すごいね!”と言い合える。うれしいこととして状況を拾っていける。そうやって可能性を信じる態度を前提とすることは、大人にとっても子どもにとってもすごいギフトになると思います」と、遠藤さん。

「一人ひとりが素晴らしいので多方面からいろいろな学びがある」という遠藤さん。スタッフの中には、バイリンガルでパーマカルチャーを学んでいる方、芸術大学と美術館で研究員として活躍されていた方、養護学校の元教諭、モンテッソーリ教育の国際免許を持っている方などがいるとのことで、多様な価値観が出会う学びの場となっているのがわかります。

現在0歳児クラスの担任を務める谷口千尋さんも、自分の生きかたを模索する中で「やまのこ保育園」に出会い、冒険に参加したひとり。

保育者の谷口千尋さん。7年に渡る幼稚園教諭経験を持ち、一度は現場を離れたものの、約1年前より「やまのこ保育園」に参画しました。

大学卒業後、幼稚園教諭になったものの、決まったカリキュラムに沿った一斉保育の現場の中で、「本当にこの子たちのための保育になっているのだろうか?」と葛藤するようになり、7年で退職。

その後、国際交流を目的としたNGOの活動で世界の様々な国を訪れ、多様な価値観と出会う中で考えかたががらりと変わった谷口さん。「毎日を丁寧に生きたい、本当に必要なものだけを近くに置いて最小限のもので暮らしたい」と考えるようになり、都市部からの移住を考え始めると同時に、「世界の様々な問題に対して自分が直接アプローチできる方法は子どもたちとともに生きることではないか」と思うようになりました。

そんな頃、知人を通じて知ったのが「やまのこ保育園」。遠藤さんとの対話の中で移住を決意し、開園約1ヶ月前から保育者として働き始めました。一度は離れた保育現場でもう一度冒険をしようと決めた谷口さん。移住から1年が経過しようとしている今、何を感じているのでしょうか。

谷口さん 常に対話があって、個に寄り添うということができているのが、自分にとってはすごくいい環境で。「この子は今こういったことを繰り返しているから、このようにアプローチしてみよう」って話し合って、すぐに実行できるんです。

それはたぶん、少人数という環境とともに、決まったメソッドはなく、まだみんなで模索している状況だから、っていうのもあるんですね。一つひとつ新しい問題に対して話し合って自分たちで決めていけるというのは、私が経験した保育現場とはすごく大きな違いを感じています。

「模索している状況」ということは、「判断基準がなく大変」という捉えかたもできます。でも谷口さんは「決まっていないからこそ、自分の中で噛み砕いて考えて正解かどうかはわからないけれどやってみる、という日々実験みたいな感じ」と、その状況を常に楽しむ心を持ち続けています。

その気持ちを支えているのは、仲間への「信頼」。合宿で一人ひとりのメンバーのこれまでの人生を一緒に振り返ったり、ご飯をともにつくり、ともに食べることを重ねながら生命観や哲学的なことについて議論したり。そんな“濃い”時間を共有することで、期間は短いながらも、チームとして積み上げてきたお互いへの信頼は、谷口さんの子ども観・人間観にも、大きな影響を与えているようです。

谷口さん ここでは子どもも大人もみんな下の名前で呼びますし、私たちはこの子たちより少し早く生まれてきただけと思っています。スタッフ間の上下関係もなく、仲間への信頼があるから、綾さん(園長の遠藤さん)にも、「もうちょっとこうしてほしかった」と言えるんです。みんな性格も出身地もバックグラウンドもそれぞれですが、だからこそいい刺激や新しい価値観をもらえています。

それに私、今までは子どもと大人を切り離して考えていたところがありましたが、ここに来て、子どもを見る目線がすごくフラットになりました。子どもと接していて、人がもともと持っている豊かな感性に触れることもありますし、子ども観というよりは人間観を見つめ直すことが多くなったと感じています。

子ども観が変わり、「気持ちが楽になり、肩の力を抜いて保育ができるようになった」と語る谷口さん。布パンツの使用やパーマカルチャーの概念の導入など、園の実践が谷口さんの価値観と重なり合い、学びも多い環境なのだとか。

また、働きかたについては、現場だけでなく、保育者としての学びの機会が保障されていることに、大きな価値を感じているとのこと。

谷口さん 研修や勉強に行きたいと話すと、気持ちを汲んでくれて、たとえ遠方でも価値があると理解してもらえれば、学ぶ機会をつくってくれる。保育には信頼する仲間が入ってくれますし、旅費も研修費も出してくれるんです。とてもありがたく、個人として大事にしてもらえているな、と感じます。

一方、鶴岡での暮らしの魅力について、移住者であるふたりが声を揃えて話してくれたのが、一軒家でも家賃が安いこと、通勤時間の短さ、そして野菜をはじめとする食の豊かさと雄大な風景。

中心街から少し車を走らせれば、この風景。「風景がごちそう」と遠藤さん。

ゆったりとした環境の中で暮らしと気持ちに自由が生まれた遠藤さんは、畑で野菜を育てはじめ、週末は家族で牧場へ行き馬のお世話をするように。また、「毎日を丁寧に生きたい」と願っていた谷口さんは、電化製品を最低限にして手間がかかることを楽しめるようになりました。

「責任が大きい仕事ですけど、子育てしながら続けられるというのは、距離とか地域が許してくれているというのが大きい」と語る遠藤さん。「足元から生活を見直したことで暮らしをつくっている実感、充実感があります」と笑顔を見せる谷口さん。暮らしの場を移したふたりの顔からは、人生の冒険の真っ只中にいる充実感がにじみ出ていました。

新しく生まれる「やまのこ保育園」を、
人生を楽しむ新しい仲間とともにつくっていきたい

そしてこの秋から、「やまのこ保育園」は規模を拡大。現在の園舎から徒歩の場所に新設される、全天候型子ども施設「KIDS DOME SORAI(キッズ ドーム ソライ)」の一角に園舎を構え、0~5歳を対象とした定員50名の新「やまのこ保育園」が誕生します。

現在建設が進んでいる、全天候型子ども施設「KIDS DOME SORAI」の完成イメージ。緑豊かな広大な敷地が大きな魅力です。設置・運営は、ヤマガタデザイン株式会社。

新しい「やまのこ保育園」の魅力について、遠藤さんはこう語ります。

遠藤さん やはり3~5歳がいるというのが大きいですね。園庭が園舎よりも大きくなり、屋外活動の展開が全然違ってくるのですが、その担い手となる3~5歳がいる。

たとえば子どもと一緒に探求しながら小屋づくりをしたり、火をおこして焚き火をしたり。そういうアクティビティをさらに発展させていけるという楽しみが広がります。

新しい園の広々とした園庭には、パーマカルチャー農園やアウトドアキッチン、大工仕事エリアも計画されているのだとか。屋外活動の幅は大きく広がりそうです。「子どもと一緒に循環する暮らしをつくりたい」と、谷口さん。

遠藤さん ほかにも、朝のサークルタイムでその日の暮らしかたを話し合いながら決めたり「哲学カフェ」みたいなこともやってみたい。やりたいことは山のようにあるので、それをどうやって実現していけるか、というのはこれからの課題ですね。

一番望ましいのは、各クラスがやっていることがバラバラに見えて、毎年違うというありかた。一人ひとりの子どもからすべての活動やプロジェクトが始まっていくという現場だと、たぶん毎年変わるのが当たり前になる。“定形がないのが定形”である状態を目指したい、と思います。

食べることだって、大冒険。子どもの日常に「定形」なんてありません。

園の拡大に伴い、「やまのこ保育園」では、保育者を募集しています。新しい園の構想はまだ決まりきっていないため、新しい保育者の方も一緒に描いていきたいと遠藤さんは語ります。

遠藤さん 私たちが大事にしている2つの人間観である「今を幸福に生きる人」「地球に生きているという感受性を持った人」とミッションを共有していれば、子どもの姿からそれぞれの得意や関心をエンジンに保育を展開していければよいのではと思っています。

そして、やっぱり子どもたちがその人の存在から受け取るものは大きいので、その人自身が自分の人生を楽しんでいる、というのがすごく大事だな、と思っています。さらに言うと、自ら挑戦していく人。そういう人に囲まれていると、できないことも含めて面白がれると思うんですよね。そんな気持ちのある人に出会えるといいな、と思います。

募集要項の「職種」欄には「保育士」ではなく「保育者」と記載されています。ここには、資格や経験よりも大事なものがある、という遠藤さんの想いがありました。

遠藤さん 保育経験があることはとても大切なことです。しかし、全員が経験者でなくてもいいと思っていますし、保育士資格はあとでも取れるので、必ずしも必要だとは思っていません。ただ、子どもという存在、人間という存在に関心が持てる方だときっとこの現場を楽しんでいただけるかな、と。

また、屋外の活動をより充実させていきたいと思っているので、草花の名前を覚えたり、ネイチャーゲームに関心があったり、自然と子どもの橋渡しになるようなことを、面白がれる人に来ていただけるといいですね。

とにかく、関心があること、興味が持てることが大事だと考えています。

大人だって子どもと一緒に探求し、自分自身の人生も全力で楽しむのが、「やまのこ保育園」のありかたです。

記事の最後に。遠藤さんから、未来の「やまのこ保育園」の仲間になる方へのメッセージをいただきました。

遠藤さん 保育って暮らしそのものなので、その人の価値観とか生きかたそのものが出ると思うんです。だから、人生を楽しむ気持ちや自分自身を表現していく感覚とか、そういうものが得られる場所に一緒にしていきたいと思うし、みんなが生き生きと自分の人生を歩む、そのための表現の場になるといいな、と思っています。

そして働くということの価値観が少し変わっていくといい。新しい価値観は与えられるものではなくて、ともにつくっていくものです。そういう価値観を交換できる現場を一緒につくっていきたいと思っています。

もちろんまだ開園から1年も経っていなくて、私自身、力不足を感じることだらけですし、失敗はつきもの。苦しいと感じることや、自分の限界を知るようなこともたくさんあって、本当に山あり谷ありです。でもここには、それをともに探検してくれる仲間がいる、ということは心から言えます。弱いところもみんなで共有して、対話しながら、一緒につくっていきましょう。

「やまのこ保育園」のスタッフのみなさん。この園に通う遠藤さんのお子さんも一緒に。

子どもと大人も、保育と暮らしも、会社と社会も、すべてが地続きで、しなやかにつながっている。

「やまのこ保育園」に心地よく漂うそのありかたに触れた私は、それまで自分の中にあった壁やハードル、固定観念が、やさしく崩れていくような感覚を覚えました。きっとこの場所なら、役割や立場にとらわれることなく、自分を思い切り表現しながら、冒険するように生きることができるのだと、感じずにはいられません。

新しい園の開園まで、あと4ヶ月ほど。信頼関係の中で自分自身を存分に表現しながら、仲間とともに冒険を続ける彼らがつくっていく新たな「やまのこ保育園」の誕生が、心から楽しみです。

これからあなたは、どんな人生を歩んでいくのでしょう。もし、「やまのこ保育園」のありかたに、あなた自身の想いと重なるものを感じたら、一度その門を叩いてみてください。あなたという存在が掛け合わさることで「やまのこ保育園」はさらに多様性豊かになり、あなた自身も、人生の冒険へと踏み出すことになるのかもしれません。

[sponsored by Spiber株式会社]

– INFORMATION –

やまのこ保育園 オンライン説明会と現地見学ツアー

やまのこ保育園での仕事に関心がある方向けに、オンライン説明会と現地見学ツアーを開催します。エントリーに興味を持った方は、ぜひご参加ください。

オンライン説明会※終了いたしました。
詳細・お申し込み方法のご確認はこちらのイベントページからお願いします。
・6/16日(土) 10:00-11:00
・6/21(木) 19:30-20:30
・6/25(月) 19:30-20:30
・7/8(日) 10:00-11:00

現地採用説明会※終了いたしました。
詳細の確認・お申し込みはこちらのページからお願いします。
・7/6(金)9:30集合-16:00解散
・7/7(土)9:30集合-16:00解散