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「環境問題を解決することは、つらくて不便なものではなく、幸せなことなんじゃないか」。22歳の環境活動家・露木しいなさんが考える、幸せのつくりかた

2022年の夏からこの春にかけて、武蔵野大学のサステナビリティ学科とグリーンズは「サステナビリティ・オープンラボ」全7回をオンラインで開催しました。

この春に新設されるサステナビリティ学科。合言葉は「あしたじゃない、ずっとをつくる」です。オープンラボでは、ずっと続く未来のために様々な分野で実践をしている人たちを講師に招き、受講生と講師が対話しながら学びを深め合います。

今回取り上げるのは、22歳の環境活動家・露木しいなさん(以下、しいなさん)を迎えた最終回。しいなさんは、greenz.jpでもたびたび紹介してきたインドネシア・バリ島にあるGreen School Bali(以下、グリーンスクール)を卒業した初の日本人女性。今は大学を休学し、主に日本の中学校・高校を舞台に、講演活動をおこなっています。

中学生に講演をするしいなさん。200校3万人以上の学生に気候変動について訴えてきた。

しいなさんはどんな想いを伝えたいのでしょうか。そして、しいなさんを突き動かす原動力はどこからきているのでしょうか。
オープンラボを通して、ストレートにわたしの心に響いたしいなさんの言葉と学び。みなさんに共有したいな、と思います。

露木しいな(つゆき・しいな)
2001年横浜生まれ、中華街育ち。15歳まで日本の公立学校に通い、高校3年間を「世界一エコな学校」と言われるインドネシアの「Green School Bali」で過ごす。高校時代の2018年にCOP24(気候変動枠組条約締約国会議) in Poland、2019年にCOP25 in Spainに参加。肌が弱かった妹のために口紅を開発し、Shiina Cosmetics(現・SHIINA organic)を立ち上げる。高校卒業後は慶應義塾大学環境情報学部に入学。現在は休学し、全国の学校で講演をおこなう。Instagramでは、環境問題を解決しているアイデアを紹介する動画を40本ほど公開している。2023年5月1日、オーガニックとサステイナブルをさらに追及した口紅 SHIINA organicをリリース予定。

行動の格差は、情報の格差

今回のオープンラボには、高校生、大学生、社会人といった幅広い受講生が参加しました。若き環境活動家への関心の高さが伺えます。講義の前半で、しいなさんは受講生にたくさんの質問を問いかけました。



今地球上で起こっていることを、わたしは全然知らないのかもしれない。強烈なインパクトを放つ数字たちを前にして、胸にちくりとしたものが刺さります。しいなさんがこういった形で受講者に質問を投げかけるのには、ある理由がありました。

高校3年生のとき、しいなさんは国連の気候変動会議に参加し、スウェーデンの10代の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(以下、グレタさん)に会います。

2018年ポーランドで開催されたCOP24(国連気候変動枠組条約第24回締約国会議)で、しいなさんはグレタさんのスピーチを直接聞きました

気候変動の対策をしないスウェーデン政府に訴えるべく、グレタさんは15歳のとき、金曜日に学校を休んで座り込みをする「学校ストライキ」をひとりでスタートします。
「周りは未来のために勉強をしろと言う。だけど、環境問題を解決しなかったら未来はない。最初に解決しなきゃいけないのは環境問題の方だ」というグレタさんの主張とその姿は、多くの若者の賛同を呼びました。

グレタさんの学校ストライキは当時、国を超えて大きなムーブメントになっていました。彼女が座り込みを始めて1年後には150か国約700万人もの若者が世界中でこのストライキに参加します。
ところが同じころの日本では、このようなアクションは起きませんでした。賛同していた人はいたのかもしれませんが、ムーブメントに乗って意思表明をしようとする人が日本にいなかったことに、大きなショックを受けたんです。

この「行動の格差」はどこからくるのだろう? そう考えた結果、「情報の格差」が原因じゃないのか、と思ったのです。なので、できるだけたくさんの中学生と高校生に、今何が地球上でおこっているのかを知ってもらいたくて、学校での講演活動をスタートしました。

学校での講演の様子

プラスチック袋の廃止、ごみの分別が義務化されている日本。大雨や台風による土砂災害などの増加を肌で感じ、気候変動についての危機意識は高いにもかかわらず、確かに、デモやストライキといった「意思表示」のアクションをする機会は、日本は少ないのかもしれません。

報道の自由度ランキングで日本は、2021年に67位、2022年には71位でした。ほしい情報を自分で取りにいって、実際見に行ったり、身を持って経験することが日本では足りていないのでは、と感じました。コントロールされている情報を受けとるだけでは、情報格差は開くばかり。

わたしは、一人ひとりが行動をすることで社会は変わるはずだと信じています。わたしが高校生のときに考えついて、ノートにメモしたピラミッドを見てください。土台をつくっているのは消費者。わたしたち一人ひとりが一番強いはずなんです。だって、わたしたちがお金を払うから企業は儲かるのだし、わたしたちの一票から政府はできるんですから。

高校生のとき、しいなさんが考えついたピラミッド。消費者が企業と政府をつくり、そして世の中をつくる

「あれ? 権力って、ピラミッド構造の上の人たちが持っているものじゃ?」このピラミッドを見て、一瞬そう頭に浮かびました。そして、自分がどんな消費者なのかを痛く思い知らされたのです。つまり自分は、上から落ちてくる情報をただ受け取る、受け身の消費者なのかもしれない、ということを。

もし、このような受け身の消費者が日本の世の中の土台をつくってしまっていたら。その存在自体が、社会の問題を解決から遠ざけている大きな問題のように感じますが、それでも、しいなさんは言い切ります。

最初は何をするにも、一人ではなにも変わらないって感じてしまうかもしません。だけど、なんでも一人からしか始まらないと、わたしはいつも思っています。そして、一人ひとりが行動することによって、世の中が変わっていく。行動の先にほしい未来があるんだという希望をみなさんに感じてもらいたいです。

仲間とともに日本の環境マーチに参加するしいなさん(中央)。日本にも声をあげる若者が増えました

講演活動をするかたわら、Instagramでサスティナブルな社会をつくる事例を50s40本以上のリール動画で紹介しているしいなさん。行動しつづける彼女の原動力は、どのように育まれたのでしょうか。

行動することを、大人になるまで待たなくていい

グリーンスクールでの3年間が、人生の大きなターニングポイントになったと語る、しいなさん。

この学校で、サスティナビリティについてたくさん教えてもらいましたが、一番大きな学びは「行動することを、大人になるまで待たなくていい」と気づいたことかもしれません。今目の前に解決したいことがあったら、すぐに行動するのが当たり前、という価値観です。

しいなさんが高校3年生のときのクラスメイト。世界中から多様な国籍の生徒が集まっていた (Credit:Zissou)

グリーンスクールには教科書がありません。また、学びたいものが授業になかったら、自分でつくってもいいんです。授業の半分くらいは課外学習でした。

グリーンスクールの学生が始めたBye Bye Plastic運動のビーチクリーンに参加するしいなさんと学生たち

わたしは、肌が弱かった妹のために化粧品の研究開発をすることに。研究を進めていくうちに、モノがつくられる過程には、生産、消費、処理という3つの過程があって、それぞれの過程で様々な問題があることに気づきました。

添加物とか、動物実験とか、プラスチック容器とか。どこから手をつけたらいいの? と悩んだ時期もありましたが、まずは自分ができることだけにフォーカスして、肌と地球にやさしい化粧品の研究を3年間続けました。

同級生が理科の授業を受けている間、クラスルームの端っこで口紅をつくるしいなさん

まずはスモールスタートで手を動かしてみる。そして、自分で「あ、これはちょっと難しいかな」と気づくからこそ、「じゃあ、次はこうやってみよう」と次のアクションが見えてくるのではないでしょうか。自分のやりたいをベースに、学ぶ&行動するがセットになっているのを目の当たりにして、授業を通して生徒が行動する力を身に付けていくのも頷けます。

大人に大切にされている安心感が行動を生む

生徒たちがプロジェクトを進めるうえで、必要となってくるのは周りの大人の存在です。大人たちは、どんな関わり方をしているのか。しいなさんに聞いてみました。

先生は、絶対に生徒を否定しません。生徒の「やりたい!」をまず受け止め、一緒にやり方を考えてくれます。「なんでも聞いて」「なんでも手伝うよ」というメッセージを常に先生たちから受け取っていました。

先生や保護者、時には専門家が、いつも5、6人くらいいて、いろんな方向から助けてくれました。卒業プレゼンテーション前の数ヶ月は、毎日放課後にだれかしらを捕まえて、自分のプロジェクトにつきあってもらったんです。

しいなさんが主催した口紅づくりワークショップの様子。先生も同席

自分の気持ちが蔑ろにされていない感覚、プロセスを大切にされている感覚があってこそ、生徒たちは思い切って次のアクションに進めるのでしょう。

とはいえ、社会の仕組みとして、日本の大人たちは忙しすぎるのかもしれません。では、大人は、なんの幸せのために働くのでしょうか。しいなさんから受講者への最後の問いかけは、「幸せとは? 」でした。

「幸せ=サスティナビリティ」が成り立つために

「幸せ=便利」は本当でしょうか? わたしは多くの人が「行き過ぎた便利さ」を追い求めてしまっているのではないかな、と思っています。大量生産、大量消費、そして大量廃棄。地球の資源をたくさん使って、本当に人は幸せになっているのでしょうか。

「幸福度が高い国ランキング」と「環境とサスティナビリティランキング」は、ほぼ顔ぶれが一緒だったりします。つまり、環境問題を解決することは、つらくて不便なものではなくて、とても幸せなことなんじゃないかな、と思うのです。

そこで受講生から「自分の中では、なんとなく、自分の幸せの先にサスティナビリティがある感覚があります。けれども、結びついていない人もたくさんいる。どうしたら結びつくのか考えたい」と声があがりました。

未来について考えるためには、自分の生活が安定していることが前提になると思います。でもその一方で、日本のように衣食住が安定していても、幸福度が低くてサスティナビリティが遅れてしまっている国もあります。わたしはその原因はやはり「教育」にあると思っています。まずは現状を知ることが大事です。

だから、しいなさんは学生たちに会いにいくのです。学生時代にしいなさんのような人と出会っていたら。わたしももしかしたら、違う人生を歩んでいたかもしれません。それぐらい力強く、そして潔いしいなさんの言葉と想い。年齢や時代を言い訳にしないで、小さくても一歩を踏み出す勇気をもつことが、サスティナブルな未来をつくるヒントなのかもしれません。

– INFORMATION –

「高校生SDGs/サステナビリティコンテスト2023」の参加高校生を募集中

武蔵野大学工学部サステナビリティ学科「高校生SDGs/サステナビリティコンテスト2023」

(編集:古瀬絵里)
(編集協力:スズキコウタ、greenz challengers community)