7/4開催 ポスト資本主義のキャリア論|ゲスト:石山アンジュさん by WORK for GOOD

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遊んでるうちに、笑ってるうちに、障がいあるなしの壁が下がりまくるイベント「ミーツ・ザ・福祉」

「福祉」という言葉を前にすると、どこか緊張してしまう自分がいます。生半可な知識では触れてはいけないのでは…。うかつな言動をして失礼なことにならないか…。そんな逡巡を抱えて、どうも近づけず…という。

そんな福祉に及び腰な私も思わず浮き足立ってしまうようなイベントの案内をいただきました。
それは兵庫県尼崎市で2017年から行われている「ミーツ・ザ・福祉」。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で小規模での開催となった2020年と2021年の開催を挟み、久々の大規模開催となった2022年秋の「ミーツ・ザ・福祉」におじゃましました。

聴覚障がいのある人とのコミュニケーションを体験。しかし…

11月にしては汗ばむような陽気の中、会場となる橘公園野球場は大賑わい。フードやバザーの屋台もたくさん並び、福祉のイベントというより、地域のお祭りや学園祭といったムードです。車椅子に乗っていたり杖をついていたりする人もいますが、福祉のイベントだということをすっかり忘れてしまうくらい、さまざまな人たちが思い思いに楽しんでいます。

家族連れや友だち同士で遊びにきた、という感じの人でいっぱい

キョロキョロしていると、たくさんの車椅子が停められている一角に、「バリア探しゲーム」という看板が目に入ってきました。ゲームか、ちょっとやってみようかな。なんて気持ちでブースに座っている人に「こんにちは」と声をかけてみました。

小さな子どもでもチャレンジできるバリア探しゲームは大人気

するとその人は、説明が書かれた紙を見せてくれました。耳が聞こえない人だったのです。

私がチャレンジしたゲームはこんな内容。
ブースにいる人が口パクで何かを伝えるので、その「何か」を会場から探してスマホのカメラで撮影、ブースに戻ってきて答え合わせをします。

かなり、難しいことが実感できました…

ブースの人は、何度も、口パクで私に何かを伝えようとします。私も必死で口元を見て、何を伝えてくれているのか考えます。

これかなぁ。
あれかなぁ。
よし…と、会場を歩き回り、これだと思ったものを写真に収めてブースへ。

ドヤ顔で「これでしょ!」と見せたのですが…ハズレ。これは難しい。手話って大事だなあと思いました。

福祉に関心あるなしに関係なく、参加したくなる福祉イベントを

受付に、いろんな人に声をかけられている人がいます。もしやと思って声をかけたら、その人が、ミーツ・ザ・福祉の企画に携わっている「株式会社ここにある」の藤本遼(ふじもと・りょう)さん。イベント当日の慌ただしいところ、お話をお聞きしました。

来場者にも気軽に声をかける藤本遼さん

ーー今日はお天気に恵まれて、大盛況ですね。正直、福祉のイベントということで緊張していたんですけど、すっかり楽しんでしまっています。藤本さんはどういういきさつで「ミーツ・ザ・福祉」の企画に関わるようになったんですか。

藤本さん もともと尼崎市は、1982年から「市民福祉のつどい」というイベントを行っていたんです。障がいや、障がいがある人たちへの理解を深めるという目的で。それを引き継ぐかたちで、当初は僕の個人事業「尼崎ENGAWA化計画」とNPO法人の「月と風と」とで2017年から「ミーツ・ザ・福祉」としてリスタートさせました。その後、2019年からは法人化した僕の会社「株式会社ここにある」と「月と風と」で運営しています。

ーーそこには、どういう想いがあったのですか。

藤本さん 「市民福祉のつどい」は、尼崎市の事業として市の職員と障がい者団体の人たちとで実行委員会をつくって実施されてきたんです。とても意義のある取り組みだと思ったので、もうちょっと市民と障がいのある人たちが気軽に出会える機会にしたいと僕は思ったんですよね。

「月と風と」の清田さんも、事業を通して障がいのある人と関わっている中で、もっと障がいのある人たちの活動とか面白さが伝わったらいいのに、と考えていた。二人の想いと尼崎市の目的がうまく噛み合ったので、やってみようと。

ーー長年続けているイベントということで、引き継ぐにあたってこれまで実施されてきた人とのコミュニケーションには難しいところがあったのではないでしょうか。

藤本さん 僕は福祉に関しては門外漢で専門的な学びをしてきたわけではありません。でも、いろんな人が関われる場を構想することができる専門性みたいなところを認めてもらえたので、僕らが関わることに激しく抵抗する人はいなかったですね。猜疑心を持っているおっちゃんとかもいたんですけど、今ではめっちゃ協力してくれていますね。

会場には、いろんな人が自然と交われる仕掛けも

 
ーーその人の中には、それまで「市民福祉のつどい」を運営し続けてきた立場からのこだわりのようなものがあったのかもしれませんね。

藤本さん 人間は見たことがないものはわからないですし、受け入れづらい部分がありますよね。自分たちがずっと続けていたことが、よくわからん奴らが入ってくることで未知のものに変わってしまうことへの恐怖があったんだと思います。でも、「ミーツ・ザ・福祉」になったことで、もともとやっていたときと全然違う人たちが来るようになったり来場者が増えたりするのを目にして「なんじゃこりゃ!」ってなったんでしょうね。新しい景色を共有できるようになってからは、反発もなく進めていくことができるようになりました。

ーー実行委員会のメンバーには、障がいのある人もいるんですか。

藤本さん 2割から3割は障がいがある人ですね。現状は身体障がいの人がほとんどなので、コミュニケーションが難しい知的障がいや精神障がいがある人のハードルをどうやって下げていくのかといったところは、施設の人たちに聞いて工夫するようにしています。

ーー藤本さんは「ミーツ・ザ・福祉」だけではなく、まちに住む人が関われるような取り組みを尼崎で企画されていますよね。そこには、どんな想いがあるんですか。

藤本さん まあ、僕が生まれ育った街だというのが一番大きいんですけどね。ただ、「住んでる街に対して何やってますか?」って聞かれて、「これやってます」って答えられたほうがいいなあってことで、地元でいろいろやってる感じです。今って、街に住んでるっていっても、ただ住んで、消費してるだけっていう人が多いのかなと。街に主体的に関わってるということって、あんまりないんとちゃいますか。

これから20年、30年のことを考えたときに、それで社会が維持されるんかなって心配なんですよね。社会を維持していくために国がいろいろやるとは思うんですけど、国から言われて自分の街のことをやるって、おもろないでしょう。自分らでおもろいようにやったらええんちゃうんと思って、地元の人らが関われるいろんな企画をやってて、その延長として「ミーツ・ザ・福祉」があるっていう感じですね。

ーー藤本さんの生き方の延長として地域でのいろんな活動があって、そのひとつとして「ミーツ・ザ・福祉」があるということですね。

藤本さん そうなんですよ。街に住んでる人が自分たちの街のこととして関わる機会をつくる。その一環として「ミーツ・ザ・福祉」がある、ということですね。ちょっと硬い言葉で言うと。福祉のイベントやけど、福祉に関心あるなしに関係なく参加したくなる。そんなイベントとして考えてるんです。週末買い物行くよね、ユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)行くよね、ってときに、あ、「ミーツ・ザ・福祉」ってのもあるか、ってなるような選択肢にしたいなあと。

障がいのあるなしにかかわらず、街に住む人が、自分が喜ぶだけじゃなくて、誰かが喜べるかもしれん、次の世代の人も喜べるかもしれんっていうコミュニティをつくっていくことができたらええと思いませんか?

ーーなるほど。「ミーツ・ザ・福祉」というのは、障がいがある人のためということを超えて、障がいあるなし関係なく街を面白くしていくための、出会いの場、というような感じですかね?

藤本さん うーん、てゆうか、障がいがあるとかないとか、人間をカテゴライズするのって、気持ち悪くないですか。障がいあるやろとか、車椅子乗ってるやろとか、人をカテゴライズしたらつまらんでしょう。でも、障がいがあるってことで機会が失われていたり、何かをつかむハードルが高かったりすることは確かやと思います。そこを乗り越えていくために、いろんな人が友だちになる機会をつくっていきたい、っていうくらいの気持ちですね。

ーーいろんな人が友だちになる機会! それはもう、今日この場を見てたらできている感じがします。2017年にはじまった「ミーツ・ザ・福祉」ですが、今年は特にここを工夫したっていうところはあるんですか。

藤本さん コロナ禍でここ2年くらいは限られたイベントしかできなくて、久しぶりに本格的に開催できたっていうことだけでも嬉しいんですけど、コロナ禍だからやってみたというチャレンジはありますね。コロナが流行るようになってから、障がいのことを考えると近所から出られないっていう人もいるんですよ。そういう人でもリモートでイベントに参加できるように、人型ロボットの企画を考えました。モニターをもった人が会場をウロウロしていて、障がいがあって会場に来られない人と、会場にいる人がコミュニケーションできるっていうね。

来場できない障がい者の人と触れ合える人型ロボットを使った仕掛け

ーーもはや定番のイベントになりつつある「ミーツ・ザ・福祉」も、参加している人たちの声を取り入れながらアップデートしているんですね。この先、チャレンジしてみたいことはありますか。

藤本さん 僕個人の話なんですけど、年に一回のイベントじゃなくって、日常の中でいかにミーツしていくかっていうことはずっと考えてますね。たとえばシェアハウスみたいな拠点をつくるとか。車椅子の人とフツーに住んでます、っていうような暮らしをつくるとか、次の一手としては面白いんとちゃうかなと。

スタッフのみなさんからも、自分たちが楽しんでいるのが伝わってきます!(写真提供:ここにある)

ーー「ミーツ・ザ・福祉」はもうすでにいろんな人とつながって企画されてるとは思うんですけど、こういうところとつながったらもっと面白いんじゃないか、みたない人たちはいますか。

藤本さん 今回もAR(拡張現実)の仕組みとインスタを組み合わせたコンテンツを開発してもらってるんですけど、なんか技術を持ってる人が新しいことを試してみる場としては面白いんとちゃいますかね。あと、これから福祉とか医療の現場で働こうと思っている若い人も企画に入ってくるといいんとちゃうかな。患者さんとか利用者さんとかじゃなくて、お互いに人間としてフラットに関わり合うことができますから。

藤本さん、お忙しいところどうもありがとうございました!
私と別れたあと、すぐに違う人に捕まってまた話をされていました(笑)

ドッカン! ドッカン!
会場を笑いと戸惑いの渦に巻き込む「ミーツ・ザ・新喜劇」

次はどこに…と思って会場を歩いていると、たくさんの人がステージに吸い込まれていきます。私もついていく感じでステージに向かうと…そこでは何と、新喜劇がはじまりました!

どこまでがシナリオ通りで、どこからがアドリブなのか…わからない。スリルと笑いでおかしな気分にさせられながらの30分。面白いというより、解放されるような爽快感。これでいいのだー! と、ハイテンションの出演者たちに叫んでもらったような圧倒的なステージでした。

出てる人も観てる人も笑いが止まらない「ミーツ・ザ・新喜劇」

ステージの袖で、大きな声を出して出演者を支えていたのは、NPO法人「月と風と」の代表、清田仁之(きよた・まさゆき)さん。汗だくでほっとひと息ついていらっしゃるところ、すみません…。清田さんに声をかけ、話を伺いました。

新喜劇では裏方として汗を流しまくる清田仁之さん

ーー筋書きがあるようで、ないようで…。「ミーツ・ザ・新喜劇」、予想もできない展開で最高でした。

清田さん いちおう台本あったんですけど(苦笑)、練習のときからずっと、台本どおりには絶対にいかへん。障がいのある人の絶妙なアドリブのブレンドを、私は「奇跡」ゆうてるんですよね。本番になったら出演者の人がテンション上がってもうて、それがええ方向に転んで奇跡のような笑いを生み出すんです。

ーーいろんな障がいを持ってるような人が出てましたけど、練習も賑やかだったんでしょうね。

清田さん めっちゃ練習したんですよ。3カ月間、週に1回2時間ずつくらいやってました。でも、なかなかセリフを覚えてくれへん(苦笑) それでもええと思ってるんですよね。僕も学生のとき演劇やってましてね。そんときもセリフ覚えん奴おったんですよ。びっくりしますよね。演劇やってるモンとしてはセリフって覚えてくんのが当たり前やと思うやないですか。

でもそういう人と会うと、思い込みが覆されて、新しい発想が生まれますよね。セリフなしで、出てる人がやってる感を感じられるような演出って、なんやろうって。「ミーツ・ザ・新喜劇」もそういう感じでやってるから、見てる方も驚きがあるんとちゃいますかね。

出演者一人ひとりに光が当たることで飽きさせない舞台に

ーー障がいのある人たちで新喜劇をやろうというアイデアはどこから出てきたんですか。

清田さん 尼崎市役所の職員で、元お笑い芸人の人がいるんです。その人と、お笑いで障がいのある人とない人をつなぐことはできひんかなぁと話してて、そんなら漫才やってみよか、ということになったんですね。元お笑い芸人の市役所の人と手話の人とで漫才をやってみたんですけど、結構ウケまして。「自分もやりたい!」って人がいっぱい出てきたんですよ。

いろんな人の漫才ばっかり続くんもなぁ…ということで、新喜劇をやろうと。新喜劇の中に漫才を入れることもできるし、一発芸でも参加できる。何より、いっぱいの人がステージに出られる。これはええやん、ということで、今回で5回目くらいになりますね。

左が、元お笑い芸人の市役所職員の方。どんなアドリブも受け止める!

ーーあの新喜劇を観ていて私は笑ってしまったんですけど、その笑いの中には面白いっていうだけじゃなくて、心が解放されるような快感があったような気がするんですよね。「これでいいんだ!」というような。日頃いかに自分が「ちゃんとすること」に縛られて緊張して生きているかに気付かされました。

清田さん 今まで障がいのある人はかわいそうやと思ってたけど、明るい人も多いんやなあとか、ちゃんとしてへんでも楽しく生きられるんやなあとか、いや、自分らの思ってる「ちゃんと」ってなんやねんとか、いろいろ振り返るきっかけになるのかもしれませんね。新喜劇を観て笑ったその一瞬でも、そういうことを考えてもらえるとしたら嬉しいなあ。

僕自身、福祉の仕事をしていて、自分らが当たり前やと思ってたことが覆されて、より物事を柔軟に考えられるようになりました。子育てしてて、子どもに「ちゃんと学校行きや」とか言うんですけど、待てよ、そもそもなんで学校行かなあかんのやろうか、とか、考えてから話すようになったりとか。自分が思うように人が行動せえへんことにイライラするのって、意味ないなあとすら思うこともありますね。

障がいのある人らと接してたら、人の幸せっていうのは本当にいろいろで、常識一辺倒で捉えきれないっていうことを実感するんですよ。

清田さんと話しているときに絡んできたDJ Tintanheadさん。自虐ラップで笑いの渦に

ーー正直、障がいのある人と接するときに気後れしてしまうところがあるのですが、福祉の現場にいらっしゃる立場から、アドバイスをいただけますか。

清田さん 慣れかなと思うんですよね。「KinKi Kids」っていうグループ名を最初に聞いた時の気持ちを思い出してください。最初、何それって思いませんでした? そこに三重は入るの? とか、近畿ってあんまり言わへんし、関西でええんちゃう? とか思いましたよね。でも、売れてきたら慣れて普通に受け入れられるようになると。異性とか外国の人とかでも、最初は慣れてなくて緊張することがあるじゃないですか。障がいのある人も同じようなもんとちゃいますかね。出会う機会があって、慣れる。それで、接し方が変わっていくという。

ーーその、障がいのある人との「出会いの機会」のひとつが、「ミーツ・ザ・福祉」というイベントだということですね。

清田さん そうですね。「ミーツ・ザ・福祉」で、障がいのある人とのコミュニケーションへの壁が低くなる、それで、普段でもこんな風に気軽に接してみようかなあなんて歩み寄るようになる。そういう人が増えていったらいいなあと思って、チャンスをつくるような気持ちでやってます。

障がいのあるなしに関係なく、人って、「なんでこんなんやろう」っていうこと、あるやないですか。いろんな人と触れ合うことで、自分とは違う感覚とか、暮らしのことを想像する距離が伸びるっていうか。いろんな特性のある人と接することに慣れることで、人に優しくなれるっていうことが結構あると思います。

絶妙な例え話で、福祉へのハードルを下げていただきました!

イベント会場で障がいのある人たちと接したり、藤本さんや清田さんのお話を伺ったりして感じたのは、「ミーツ・ザ・福祉」が、福祉とつながるイベントというだけでなく、自分自身を含めた人、そして社会との接し方を振り返るきっかけになるイベントだということ。

毎年訪れて、楽しみながら自分の考え方をアップデートする機会にしたいです。

初めて訪れた私は、障がいのある人に話しかけられて、いきなりボケをかまされて焦ってしまったのですが、次はしっかりツッコめるくらいの余裕を持って楽しみたいですね。2023年の「ミーツ・ザ・福祉」には、みなさんもぜひぜひ!

(編集:北川由依)
(撮影:丸原孝紀)

– INFORMATION –

3/19(日)開催「ミーツ・ザ・〇〇」〜多様性とかインクルーシブとか言わずに、ただ友達になる方法〜

埼玉県草加市で「ミーツ・ザ・〇〇」を開催します。障がいがあってもなくても、ともに過ごし楽しめる場づくりや地域づくりについて一緒に考え、あなただけの何かに出会ってみませんか?

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藤本遼さん著「場づくりという冒険 いかしあうつながりを編み直す」

インタビューに応えてくださった藤本遼さんは、兵庫県尼崎市を中心に「尼崎ENGAWA化計画」や「カリー寺」といった場づくりの実践を重ねていらっしゃいます。藤本さんのプロジェクトはもちろん、全国の「場づくり」に取り組む方のインタビューを収めた書籍「場づくりという冒険 いかしあうつながりを編み直す」が、グリーンズ出版から発行されています。ぜひ読んでみてください!

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